農家の方必見! 農業収入や兼業農家の確定申告の方法と注意点

2021/03/30更新

この記事の執筆者内田敬博

日本の農業は、野菜・果樹・米など日本国内で生産された安全な農作物の供給を求められる一方、近年では海外の農産物との競争に勝ち抜くためにも農業経営の確立、発展が求められています。以下では、農業のための会計・確定申告で使用する勘定科目と注意すべきポイントについて記載します。

POINT

  • 収入は、販売方法ごとに
  • 棚卸しでは、農薬・肥料を忘れずにチェック
  • 兼業の場合は、青色申告特別控除に注意

収入及び経費

農協へ出荷、地元スーパーへ直接卸、軒先販売など、多様な販売方法がありますが、販売方法ごとの売上金額がわかりやすいように会計ソフトにも同様に「農協出荷」「スーパー出荷」「軒先販売」等の「勘定科目」または「補助科目」を作成すると良いでしょう。

なお、農協やスーパーへ販売をして、後日代金が振り込まれる場合の売上を計上する日は、現金を受け取った時ではなく、仕切書等に記載された納品の日で計上します。これにより販売した日で売上を計上することができます。

費用については段ボールやビニール袋等の資材のほか、販売手数料も漏れなく計上して下さい。特に販売手数料は精算明細書に相殺されている場合があります、この場合には相殺前の販売金額を売上に計上します。

農作物の販売収入のほかに補助金収入・奨励金収入があれば、これも収入として計上します。また、取得価額10万円未満の農機具などの売却収入がある場合には、忘れずに計上して下さい。これらの収入は農作物の販売収入とは区別し、「雑収入」として会計ソフトあるいは決算書にも計上します。

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農作物を自分で消費等した場合

少し細かい話になりますが、農作物等を自己で消費した場合には、販売金額を見積もり売上高に計上します。これを「家事消費」といいます。この時の販売金額は、収穫時等の販売金額と同じです。あきらかに家用の畑で作られた農作物については家事消費に計上する必要はありませんが、これらに直接関係した経費も計上できません。

青色事業専従者給与を忘れずに

青色申告者については、下記の要件に該当する家族がいる場合には、その家族に支払う給料を必要経費にすることができます。

  • 事業者と生計を一にする配偶者その他の親族(年末で15歳以上)であること
  • その年を通じて6月超その事業者の事業に専ら従事していること
  • 税務署に届け出た「青色事業専従者給与に関する届出書」に記載されている金額の範囲内であること
  • 労務の対価として相当であること、また実際に支払われていること等

この適用を受ける場合は、3に記載した「青色事業専従者給与に関する届出書」を、原則としてその年の3月15日までに所轄の税務署に提出しなければなりませんので、忘れずに提出しましょう。

忘れてはいけない棚卸しと減価償却

12月31日は、商品となる農作物が無くても、確定申告に向けて必ずやっておきたい作業があります。それが棚卸しです。農薬・肥料や梱包材、苗代用ビニールなどの数量を数え、費用から資産に振り替えます。これらのものは、特に忘れてしまいがちですので、必ず実施しましょう。

未販売の農作物があった場合には原則として庭先における包装費等を除いた裸の販売価格(軒先裸価格)によって評価し、棚卸しに計上します。

30万円未満の資産を費用に

減価償却資産とは、購入した時にすべてを消費せず、長い期間使用できる資産で金額が10万円以上のもののことです。農家の場合は、自動車や草刈り機、耕耘機などの農耕機具が該当します。これらの減価償却資産は、法律で決められた期間で費用にしなければなりません。

たとえば、トラクターなどの農業用設備は、7年間で費用にします。これを「減価償却」と言います。

なお、青色申告者の場合は、30万円未満の資産を年間300万円未満まで購入した年に全額費用にできる特典がありますので、忘れずに費用処理しましょう。

不動産の貸付と兼業している場合の決算書

農家では、所有している土地建物を駐車場やアパート等に貸し付けている場合も多いです。その場合は、農業所得の他に不動産所得が発生します。農業所得とは区別して不動産の貸付に関する収入および費用を集計し、不動産所得用の決算書を作成します。

青色申告者で、農業所得について複式簿記により貸借対照表を作成して期限内に申告していれば、儲けから最大55万円を控除できる青色申告特別控除が適用になります。

さらに最大55万円の特別控除の要件を満たしたうえで、e-Taxによる申告(電子申告)もしくは、承認を受けて電子帳簿保存をしている場合は、最大65万円の控除ができます。

不動産所得が事業的規模(※注)に満たない場合でも、最大65万円(もしくは55万円)の控除が可能ですので注意しましょう。なお、その場合の青色申告特別控除は、最初に不動産所得から控除し、残った金額を農業所得の順に控除します。
(※注:事業的規模とは貸家であれば5棟、貸室であれば10室以上の貸付規模のことをいいます)

以上、注意点をまとめてみました。

所得税の確定申告では農業所得専用の決算書が用意されていますので比較的作成しやすいと思います。農業専門ソフトではなくても、弥生会計などの会計ソフトでも農業所得の青色申告決算書を作成できます。この際に会計ソフトを導入されるのも良いと思います。

photo:Thinkstock / Getty Images

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この記事の執筆者内田敬博

横浜市青葉区出身。税理士。弥生認定インストラクター。 弥生会計を使う地元密着の税理士として日々活動中。

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