ミュージシャンの確定申告 楽器の原価償却や経費はどうする?

2021/03/30更新

この記事の執筆者宮原 裕一(税理士)

ミュージシャンは芸術的な側面もあり、なかなか商売と結びつかないイメージがあります。しかし、その仕事で報酬を得ているからには、ミュージシャンといえども個人事業主の一人として、確定申告が必要になってきます。ミュージシャンの収入には印税、原盤収入、ライブの出演料や投げ銭、音楽レッスンの講師料、物販の売り上げなどがありますが、そこから経費にできるものとして、楽器機材の購入費、練習費、リハーサル代、原盤制作費などがあります。

これらのことを頭に入れたうえで、今回は、ミュージシャンが確定申告をするときに気をつけたいポイントを説明します。

POINT

  • 高額な楽器は何年かにわけて経費にする
  • 自主制作は原盤とCDをわけて考える
  • 急に多額の印税収入が入ったときは平均課税を検討する

25万円のギターを買ったらどうする?

楽器は数十万するのがざらで、中には100万円を超えるものもありますね。楽器は買ってから何年も使用するものですが、会計のルールでは『減価償却資産(げんかしょうきゃくしさん)』という取り扱いになります。ざっくりいうと、買ったときの一回で経費にならず、何年かに分割して経費にしていくというものです。

具体的には、この種類のものなら何年でという「耐用年数」というものが国税庁で決められていて、楽器だと5年で経費にする決まりになっています。この5年というのは新品の場合で、中古であれば別に算式があって最短2年まで縮まります。

例えば25万円のギターを買った場合、単純に考えると5年かけて経費になるので1年あたり5万円を『減価償却費(げんかしょうきゃくひ)』として経費にすることになります。

ここで、青色申告をしている方には特例があります。1組30万未満のものであれば、この取り扱いにかかわらず年間合計300万円までを1回で経費にすることができます。

なお、青色・白色を問わず、10万円未満のものであれば「消耗品費」などとして1回で経費にできます。

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自主制作にかかった費用はどうする?

自分の作品を聴いてもらい、そして購入してもらうためには、CDやダウンロードデータなど、カタチあるものにする必要があります。これらを販売するために、複製のおおもとになるマスターを制作します。音楽出版社などと契約していなければ、当然ですが自分の負担でマスターを制作することになりますね。この自主制作にかかった費用はどうなるのでしょうか?

例えばスタジオ代や機材レンタル、エンジニア代や外部ミュージシャンの演奏料などマスターの制作には様々な費用がかかります。これらは原盤の制作費として扱い、先ほどの減価償却の考え方で、2年で経費にすることになります。

マスターから複製して作るCDなどの制作費は、その製品の原価として扱います。1枚当たりの単価を計算しておき、売れ残っているものは在庫としてその年の経費から除く必要があります。

ただし、実務的なところでは何度もプレスすることが少ないことから、マスターも含め制作費すべてを製品の単価に割り振るということも考えられます。

1発当たったら税金の計算はどうなる?

所得税は、その年の所得(儲け)が高くなるにつれ税率が上がっていく仕組みになっています。その税率は、低いところで5%(課税所得195万円未満)から最高45%(課税所得4000万円以上)までと相当の差が出ることになります。高額所得者は住民税10%、事業税5%と合わせると60%にもなりますから、儲けの半分は税金だというのも納得ですね。

さて、ミュージシャンの収入として「印税」は欠かせないものです。ただこの印税、売れた場合にはかなりの金額になってきて、思いもよらない収入になり多額の所得税がかかることもあります。しかも、その後売れ続けるかどうかがわからないのが怖いところで、ある種不安定な収入であると言えます。

じつは、著作権の使用料や作曲の報酬などは『変動所得』というものにあたり、所得税を緩やかにする『平均課税』という制度が用意されています。平均課税は簡単に言うと、その収入が5年間かけて得られたものだと仮定して、儲けを5年間に平均し、その金額の水準での税率を使って所得税を計算するという仕組みです。結果として1年の収入として計算するよりも税額が低くなる可能性が大きいです。

例えば、通常の所得が200万円、その年だけ変動所得が800万円の場合、合計1000万円に対して所得税は180万になりますが、平均課税で計算すると80万円にまで軽減されます。
ただし、この平均課税の適用には変動所得が所得全体の2割以上などいくつかの条件があり、またその計算も複雑ですので事前に税務署や税理士に相談してみることをおすすめします。

photo:Thinkstock / Getty Images

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この記事の執筆者宮原 裕一(税理士)

宮原裕一税理士事務所新規タブで開く」代表税理士。弥生認定インストラクター。
弥生会計を20年使い倒し、経理業務を効率化して経営に役立てるノウハウを確立。経営者のサポートメンバーとして会計事務所を営む一方、自身が運営する情報サイト「弥生マイスター」は全国の弥生ユーザーから好評を博している。

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