投資信託での利益は確定申告が必要?必要な場合、不要な場合を紹介

2023/03/01更新

この記事の監修田中卓也(田中卓也税理士事務所)

投資信託で得た利益には税金がかかります。ただし、すべての場合に確定申告が必要なわけではありません。確定申告が不要なケースがほとんどですが、中には申告をすることで納める税金の額が小さくなるケースや、申告が必要なケースもあります。

ここでは、個人が投資信託で得た利益にかかる税金と、確定申告が不要な場合・必要な場合の他、不要であっても申告すると税額が小さくなる場合について解説します。

投資信託の分配金と譲渡益には税金が発生する

投資信託から得られる利益は、定期的に受け取る「分配金」と、売却・解約時に発生する「譲渡益」の2つがあります。分配金も譲渡益も課税対象です。分配金、譲渡所得にかかる税金の税率は、いずれも20.315%で、内訳は所得税が15%、復興特別所得税が0.315%、住民税が5%となります。

なお、復興特別所得税とは、「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法」により所得税に上乗せされているもので、2037年までとされています。

分配金:投資家に分配する投資信託の利益

分配金とは、投資信託の運用によって得られた利益を、決算ごとに投資家に分配するお金です。「普通分配金」と「特別分配金」の2種類があります。

普通分配金

普通分配金は、投資信託の運用によって得られた利益を投資家へ分配するお金のこと。分配金のうち、個別元本(投資信託を購入した際の基準価額)を上回っている部分が該当し、投資家の利益にあたるので課税対象です。

なお、ポートフォリオに株式を組み込んだ「公募株式投資信託」の場合、普通分配金は配当所得となります。ポートフォリオに株式を組み込まず、国債や社債を中心に運用する「公社債投資信託」の場合、普通分配金は利子所得として扱われます。

利子所得は、預貯金の利子に代表されるように源泉分離課税の対象となり、確定申告が不要な場合があります。ただし、公社債投資信託の普通分配金も利子所得として扱われるため、こちらは上場株式等の取引で売却損が出ている場合損益通算や繰越控除の対象とすることが可能です。預貯金における利子所得と公社債投資信託の普通分配金における利子所得とは、切り分けて考える必要があるでしょう。

普通分配金の税額の計算式

普通分配金の税額=分配金×20.315%

特別分配金

特別分配金は分配金のうち、個別元本を下回っている部分です。運用によって得られた利益ではなく、元本の一部を投資家に払い戻しているだけなので、こちらは非課税で税金は発生しません。

譲渡益:投資信託を売却・解約した際に得られる利益

譲渡益は、投資信託を売却・解約した際に得られる利益のこと。「売却時の基準価額-購入時の取得単価」がプラスになった場合は、譲渡所得となり課税されます。マイナスになった場合は、利益がないので課税対象となりません。売却・解約時にかかった手数料などの費用は利益から差し引けるので、最終的に納める税金の額は、下記の計算式で算出されます。

譲渡益の税額の計算式

譲渡益の税額=(投資信託から得た利益-売却・解約時にかかった費用)×20.315%

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投資信託の確定申告が不要となるケース

投資信託で得た利益がある場合は、税金を納めなくてはならないので、本来であれば確定申告が必要です。しかし、下記のいずれかにあてはまる場合は、確定申告が不要となります。

投資信託で得た利益が20万円以下の場合

給与所得以外の所得が20万円以下の場合は、確定申告不要とする制度があるので、申告の必要はありません。ただし、住民税については別途申告が必要です。また、副業収入などとの合計額が20万円を超える場合は、申告が必要になります。

さらに、「医療費控除を受けたい」「初年度適用の住宅ローン控除がある」など、上記以外の理由で確定申告をしなくてはいけない場合には、投資信託で得た利益が20万円以下の場合であっても確定申告の内容に含めることになります。

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源泉徴収ありの特定口座のみを利用している場合

特定口座とは、所得税や住民税の納税を簡易な税申告手続きでできるようにした口座のことです。源泉徴収ありと源泉徴収なしの2種類があります。源泉徴収ありの特定口座のみを利用している場合、納めるべき税金額が自動的に徴収されるので、自分で確定申告をする必要はありません。

NISA口座、iDeCo口座を利用している場合

一般NISA、つみたてNISA、ジュニアNISA口座は、投資上限の枠内であれば、所得税・住民税非課税なので、確定申告は必要ありません。iDeCoも分配金は非課税で再投資に回されるので、年金受け取り時に一定金額を上回る場合を除いては、確定申告の必要はありません。

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投資信託の確定申告が必要となるケース

ここまでで解説したように投資信託の確定申告が不要になる場合がある一方で、下記のような場合は確定申告が必要になります。1つずつ確認していきましょう。

一般口座を利用している場合

一般口座を利用している場合は、自動的に税金分が徴収される制度がないので、自分で確定申告をする必要があります。

源泉徴収なしの特定口座を利用している場合

特定口座を利用していても、「源泉徴収なし」口座の場合は確定申告が必要です。

口座間の同じ年の損益通算や翌年以降への損失の繰り越し控除を行いたい場合

源泉徴収ありの特定口座を利用している場合でも、口座が複数あり、売却損益を通算したい場合は確定申告が必要になります。また、損益通算をしても損失が出ている場合は、確定申告を行うことで、損失を3年間繰り越せます。

売却をした場合の損失と配当などを相殺すること、損益通算してもなお控除しきれない損失の金額については、翌年以後3年間にわたり引き続き控除することが可能です。これを繰越控除といいます。

利子所得・配当所得と売却損の損益通算をしたい場合

投資信託を含む上場株式等の取引で売却損が出ている場合、「申告分離課税」を選んで確定申告を行うことで、売却損とその年分の上場株式等の利子所得・配当所得と損益通算することができます。損益通算をしても損失が出ている場合は、確定申告を行うことで、損失を3年間繰り越せます。

配当控除を受けたい場合

配当所得については、売却損との損益通算を行う代わりに、「総合課税」を選んで確定申告を行うことで、配当所得の一定割合が税額から控除される「配当控除」の適用を受けることもできます。なお、この場合は、上場株式等の売却損と利子所得・配当所得の損益通算はできません。

申告分離課税の税率は20.315%で固定、総合課税の税率は累進課税なので、課税総所得金額が695万円以下の場合であれば、総合課税を選択した方が納める税金の額が小さくなる場合があります。

  • 「申告分離課税」を選んで損益通算・繰越控除を行う
  • 「総合課税」を選んで、配当控除の適用を受ける

ただし、いずれの場合も、合計所得金額に算入されてしまいますので、人によっては扶養控除や配偶者控除を受けられるのかの判定、あるいは国民健康保険などの算定に影響を与えます。その点についても注意が必要です。

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還付金がある

源泉徴収ありの特定口座で取引をしており、その利益が雑所得などを合わせても20万円以下だった場合、先述のように確定申告を提出する必要はありません。しかし、利益の20.315%は源泉徴収されているので、確定申告をすることでこの分の還付を受けることができます。

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投資信託の分配金・売却益を確定申告するには?

特定口座を利用している場合は、源泉徴収あり・なしどちらの場合でも、毎年1月ごろ「特定口座年間取引報告書」が送られてきます。報告書には、1年間の売買取引と分配金がすべて記載されていますので、これをもとに確定申告を行います。

一般口座を利用している場合は、各証券会社から定期的に送られてくる「取引残高報告書」や取引の都度発行される「取引報告書」をもとに、自分で売却損益を計算しなくてはなりません。分配金については、分配が行われるたびに発行される「支払通知書」や「収益分配金のお知らせ」を利用します。

投資信託の利益を確定申告した方がいいケースに注意

投資信託から得た利益は、源泉徴収ありの特定口座で取引をしている場合、確定申告は必要ありません。ただし、複数の口座間で損益通算を行いたい場合や売却損が出ており利子所得・配当所得との損益通算を行いたい場合、損失の繰り越しを行いたい場合、配当控除を受けたい場合などは、確定申告が必要になります。また、事業所得や不動産所得がある人も確定申告が必要です。

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この記事の監修田中卓也(田中卓也税理士事務所)

税理士、CFP®
1964年東京都生まれ。中央大学商学部卒。
東京都内の税理士事務所にて13年半の勤務を経て独立・開業。
従来の記帳代行・税務相談・税務申告といった分野のみならず、事業計画の作成・サポートなどの経営相談、よくわかるキャッシュフロー表の立て方、資金繰りの管理、保険の見直し、相続・次号継承対策など、多岐に渡って経営者や個人事業主のサポートに努める。一生活者の視点にたった講演活動や講師、執筆活動にも携わる。

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