決算整理仕訳とは?手順や注意すべきポイントなどを解説

2023/11/07更新

この記事の監修税理士法人 MIRAI合同会計事務所

決算整理仕訳は、事業年度に一度の決算のときにだけ行う特別な仕訳です。期中に作成した帳簿と、決算時点での状況でずれが生じないよう、決算時には、減価償却費の計上など、期中には行わない特別な仕訳を行います。このようなズレを実際の情報に合わせて修正したり、企業の財産や収益を会計上適切に処理したりするのが、決算整理仕訳です。決算整理仕訳は期中とは違った処理を行うため、わかりづらい点も多いかもしれません。

ここでは、決算整理仕訳の手順や注意すべきポイントなどを、具体例と共に解説します。

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決算整理仕訳の目的と必要書類

そもそも、決算整理仕訳の目的とは何なのでしょうか。ここでは決算整理仕訳の目的と、決算整理仕訳を行う際に作成が必要な書類について説明します。

決算整理仕訳の目的

決算整理仕訳とは、期中に作成した仕訳帳を決算時点の情報に合わせて修正し、決算時点での状況とズレが生じないようにするための仕訳です。

仕訳とは、企業が行ったすべての取引を複式簿記のルールで帳簿に記録することですが、期中の仕訳と、決算時点の情報にずれが生じることはよくあります。このようなズレが生じないようにする目的で行うのが決算整理仕訳です。決算整理仕訳では、売上の確認、現金・預金の確認、減価償却費の計上、棚卸資産の確認、保有株式や有価証券の確認などを行い、決算書の作成に必要となる正確な数字を確定させます。

例えば、在庫価格なども、期首と期末では金額が変わってくるでしょう。また、今期の売上ではあるものの取引先からの入金は来期になる場合などの事業年度をまたぐような取引は、決算時に帳簿を修正する必要があります。

決算整理仕訳の際に使用する書類

決算整理仕訳を行う際には、「決算整理前残高試算表」が必要です。また、決算整理仕訳を経て、会計処理にミスがないか確認するには「精算表」を使います。

まず、決算整理仕訳を正確に行うために必要なのは、決算整理前残高試算表です。決算整理前残高試算表は、日々の仕訳が勘定科目別に転記された総勘定元帳の情報をもとにして作成する書類です。決算整理前残高試算表を作成して、勘定科目別に借方と貸方の数字が一致していることが確認できれば、仕訳帳の処理が正しく行われていることがわかります。なお、試算表は決算整理仕訳の後にも作成する場合があり、このときの試算表を「決算整理後残高試算表」と呼びます。

また、決算整理仕訳の後に、会計処理のミスがないかをチェックするために作成するのが精算表です。精算表は、決算整理前残高試算表から決算整理仕訳を経て、貸借対照表と損益計算書を作成するまでの一連の流れを一覧表にまとめたものです。

法人の決算手続きは複雑なため、注意していてもミスが起こりやすくなります。精算表は必ず作らなければいけないものではありませんが、作成することで貸借対照表や損益計算書での金額の記載ミスなどを防ぐことができます。加えて、当期純利益や決算のあらましを前もって知りたいときなどにも役立ちます。

精算表についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

精算表とは?書式や書き方、作成のポイントなどを解説

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決算整理仕訳の手順

決算業務をスムースに進めるには、決算整理仕訳の流れをしっかり理解しておくことが大切です。決算整理仕訳の手順は下記のとおりです。

1 現金・預金の残高を実際に確認し、帳簿との過不足がないか確認する

現金や預金の実際の残高が、帳簿の残高と一致するかどうかを確認します。一致しなければ、利息の計上漏れや、受け取った相手先が銀行で換金していない未取付小切手などがあるかもしれません。また、銀行の都合で換金ができていない未取立小切手がある可能性も考えられます。期末残高に過不足が出ないように、日ごろからきちんと残高確認をしておくことも大切です。

2 売掛金や買掛金の金額を決算日に合わせて修正する

入金が来期になる未回収の売上については、当期の売上として売掛金で処理します。入金された月で売上計上をすると、次期の売上になってしまうため注意しましょう。例えば、期中の仕訳では入金されたタイミングで売上としていた場合でも、決算時には売掛金で仕訳をします。仕入などの買掛金についても同様です。

3 前払金を調整する

前払金とは、商品などの購入の際に一部を前払いする費用のことです。商品やサービスの代金の一部を前払金として支払った場合、その分を当期から控除します。

また、前払金を支払った場合は、流動資産として次期に繰り越します。なお、継続して受けるサービスの年払いなど、当期に支払った費用に翌期分が含まれている場合には、前払費用として計上し、当期から前払分(翌期分)の費用を控除します。

4 決算時点の棚卸資産を計上し、売上原価を計算する

棚卸資産とは、在庫のことです。実地棚卸の際に期末在庫数量や在庫の状態を確認し、当期に販売した売上原価(実際に販売した商品の仕入高)を計算します。

5 固定資産の減価償却を行い、減価償却費として費用計上する

減価償却とは、固定資産の取得にかかる費用を、耐用年数に応じて配分して計上していく会計処理です。建物や自動車といった固定資産の減価償却費を固定資産台帳と突き合わせ、間違いがないかどうかを確認しましょう。

6 決算時点の時価にもとづいて有価証券の評価を調整する

有価証券の取得価額と決算時の時価を比較し、帳簿価格を変更します。この処理のことを、評価替えといいます。

7 貸し倒れが見込まれる場合、貸倒引当金を計上する

受取手形や売掛金などの貸し倒れリスクに備えるための金額を計上します。計上したこの金額のことを、貸倒引当金といいます。

8 追加仕訳を仕訳帳に反映させ、総勘定元帳に転記する

決算整理で仕訳した内容を仕訳帳に反映します。反映が完了したら、その内容を総勘定元帳に転記します。

決算整理仕訳の具体例

実際にはどのようなタイミングで決算整理仕訳を行うのでしょうか。ここからは、「売上原価の計算」「貸倒引当金の計算」「減価償却費の計算」の3つのケースについて、具体例を挙げながら解説していきます。

具体例1:売上原価を計算するときの決算整理仕訳

決算では、当期の売上を確定するために、販売した商品やサービスの売上原価(当期に販売した商品の仕入高)を求める必要があります。そのため、あらかじめ棚卸資産を計上し、実際に仕入にかかった費用を計算しなければなりません。

ただ、同じ商品を仕入れても時期によって価格が変わることがあり、その場合は、期首の棚卸高(期首商品棚卸高)と決算時点の棚卸高(期末商品棚卸高)が異なります。決算整理仕訳を行う際には、期末棚卸金額を用いて正しい金額に修正します。

売上原価を求める計算式は下記のとおりです。

売上原価の計算式

売上原価=期首商品棚卸高+仕入高-期末商品棚卸高

ここでは、商品の仕入高が20万円、期首商品棚卸高が2万円、期末商品棚卸高が4万円の場合の決算整理仕訳について考えてみましょう。上の計算式にあてはめると、売上原価は18万円となります。

この場合の決算整理仕訳は下記のとおりです。

売上原価の決算整理仕訳の例
借方 金額 貸方 金額
仕入高 20,000円 繰越商品 20,000円
繰越商品 40,000円 仕入高 40,000円

具体例2:貸倒引当金を計算するときの決算整理仕訳

貸し倒れとは、取引先の倒産などで、売掛金や貸付金などの債権の回収ができなくなることです。もし貸し倒れが発生する可能性がある場合、回収できないおそれのある金額を損金にあらかじめ算入し、「貸倒引当金」として計上することができます。

例えば、売掛金100万円のうち10%(10万円)を貸倒引当金として計上する場合の決算整理仕訳は、下記のとおりです。

貸倒引当金の決算整理仕訳の例
借方 金額 貸方 金額
貸倒引当金繰入 100,000円 貸倒引当金 100,000円

具体例3:減価償却費を計算するときの決算整理仕訳

建物や自動車、機械などの固定資産を取得したときは、取得費用を耐用年数に応じて分割して費用計上します。この会計処理が「減価償却」です。なお、税務会計においては、固定資産の種類によって定められた法定耐用年数で減価償却を行う必要があります。

また、減価償却費の計算方法には、定額法と定率法の2種類があります。まずはそれぞれの計算方法について、みていきましょう。

定額法での計算

定額法は、毎年同じ金額を減価償却費として計上する計算方法です。定額法によって、減価償却費を求める計算式は下記のとおりです。

減価償却費の計算式(定額法の場合)

減価償却費=取得価額×定額法の償却率

なお、取得価額とは、固定資産を取得したときの費用のことです。また、定額法の償却率は、国税庁によって作成された「減価償却資産の償却率等表 新規タブで開く」に記載されている数値を使用します。資産を取得した時期によって、参照する表が変わります。

定率法での計算

定率法は、初年度に減価償却費を大きな金額で計上しておき、翌年度以降は毎年一定の償却率を掛けることによって、徐々に減少させていく計算方法です。定率法の償却率は、固定資産の取得価額や法定耐用年数ごとに法令で定められた数値を使います。

減価償却費の計算式(定率法の場合)

減価償却費=(取得価額-減価償却累計額)×定率法の償却率

なお、定率法の償却率は、国税庁によって作成された「減価償却資産の償却率等表 新規タブで開く」に記載されている数値を使用します。

例えば、取得価額が100万円、償却率が10%、耐用年数が10年間の機械設備を取得した場合の決算整理仕訳について考えてみましょう。定額法の計算式にあてはめると、減価償却費は10万円となります。

この場合の決算整理仕訳は、下記のとおりです。

減価償却費の決算整理仕訳の例
借方 金額 貸方 金額
減価償却 100,000円 機械設備 100,000円

決算整理仕訳で注意すべきポイント

決算整理仕訳を計上した後の勘定科目残高(勘定残高)は、決算書である貸借対照表や損益計算書に反映されるものです。そのため、もし決算整理仕訳にミスがあると、決算も誤った内容になってしまいます。ミスを防ぎ、正しく決算を行うために、決算整理仕訳では下記のポイントに注意が必要です。

勘定残高のダブルチェックをする

決算整理仕訳を行うときは、決算整理前残高試算表や精算表を活用して、必ず勘定残高のダブルチェックを行いましょう。決算整理仕訳では、決算時点の情報に合わせて勘定科目を修正し、最終的な勘定残高を確定させます。もし決算整理仕訳にミスがあった場合、その後作成する貸借対照表や損益計算書の内容にも誤りが生じてしまいます。念には念を入れてしっかりとチェックすることが大切です。

決算整理仕訳の前期比較をする

仕訳の計上漏れを防ぐには、前期に行った決算整理仕訳と比較する方法が効果的です。前期に計上した決算整理仕訳を確認し、同じように仕訳を計上すると、漏れやミスの防止に役立ちます。もし決算整理仕訳の結果に疑問が生じた場合も、前期比較を行うことで手順に誤りがないかを確認しましょう。

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決算整理仕訳は、決算書を正確に作成するために欠かせない重要な会計処理です。決算整理仕訳で確定させた最終的な勘定科目残高は、貸借対照表や損益計算書にも反映されるため、計上漏れや計算間違いのないように十分注意しなければなりません。

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この記事の監修税理士法人 MIRAI合同会計事務所

四谷と国分寺にオフィスのある税理士法人。税理士、社会保険労務士、行政書士等が在籍し確定申告の様々なご相談に対応可能。開業、法人設立の実績多数。
「知りたい!」を最優先に、一緒に問題点を紐解き未来に向けた会計をご提案。

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