固定費と変動費の違いは?分け方と効果的な費用削減方法も解説

2023/08/17更新

この記事の監修齋藤一生(税理士)

事業を営むうえで必要となる経費には、大きく分けて「固定費」と「変動費」の2つがあります。正しく経費処理を行ったり、効果的な費用削減を実現していくには、この固定費と変動費をしっかり分けて扱うことが重要です。

ここでは、固定費と変動費を分ける理由と、具体的な判断方法についてご紹介します。また、関連する経営指標や、固定費、変動費削減のポイントについて解説していきましょう。

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固定費・変動費の違いとは?

経費は、固定費と変動費に分けて考えることができます。しかし、固定費と変動費という名前は聞いたことがあっても、正確にはどのような経費が振り分けられるのか、正しく理解しているかどうか不安がある方もいるでしょう。

まずは、固定費、変動費とはそれぞれどういうものなのかを見ていきましょう。

固定費とは、売上に関係なく、常に一定の期間で発生する費用

固定費とは、事業を営むうえでかかる経費のうち、売上高や販売数量にかかわらず常に一定の期間で発生する費用のことです。

例えば、従業員の給与や賞与、福利厚生費、設備の減価償却費、オフィスや店舗の家賃、光熱費などが該当します。売上や販売数量の大小にかかわらず支払う額はほぼ固定なので、固定費と区分けされるのです。

変動費とは、売上や生産量、販売数に比例して増減する経費

変動費とは、事業を営むうえでかかる経費のうち、売上や生産量、販売数に比例して増減する経費のこと。原材料費や仕入原価、販売手数料、外注費、支払運賃、派遣社員や契約社員の給与などが該当します。

これらの費用が変動費に区分けされる理由ですが、例えば原材料費の場合、製品を100個生産する場合と1,000個生産する場合を比べると、後者は前者の10倍になります。

また、派遣社員の給与の場合、販売量が増える繁忙期のみ派遣社員を雇う場合などは「販売量の増加に合わせて増えた経費」となり、変動費になるのです。

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固定費と変動費を分ける理由

経費を固定費と変動費に分けることを、「固変分解」といいます。固変分解が必要とされる理由には、大きく分けて下記の3つがあります。

利益を予測するため

商品やサービスが売れたときの利益を予測するには、経費を固変分解しておくことが必須です。

例えば、1個1,000円の商品があり、1日に20個売れているとすると、1日当たりの売上は、1,000円×20個=2万円。これを月30日とすると60万円になります。そして、製造・販売にかかった経費の月額が40万円だとすれば、月額の利益は60万円-40万円=20万円になります。

ただし、このままでは、販売個数が2割アップした場合に、利益がどう変化するかまではわかりません。これは、経費の内訳に固定費と変動費が入っているため、販売個数が2割アップした場合の経費がいくらになるかわからないからです。

そこで、利益を予測しやすくするため、経費を固変分解し、固定費20万円、変動費20万円に分けました。この場合、販売個数が2割アップすれば、変動費も2割アップするので、変動費は24万円になります。ですから、月の売上は72万円、経費は20万円+24万円=44万円となり、利益は72万円-44万円=28万円になると予測できるわけです。

損益分岐点を知るため

損益分岐点とは、売上高-変動費で求められる「限界利益」と固定費がイコールになる点で、赤字と黒字の境目を示した大事な経営指標です。損益分岐点を求めるには、固定費と変動費をしっかり分けておく必要があります。

削減すべき費用を知るため

固定費と変動費を分け、それぞれの数値が変化した際に利益がどう変化するのかシミュレーションができれば、利益が少ない場合どの経費から削減すべきなのかを判断するのに役立ちます。

固定費と変動費の分け方

固定費と変動費を分ける絶対的な基準というものはなく、すべての経費を明確に固変分解することは不可能です。

一般的には、次の2つのうち、どちらかの方法がとられます。

勘定科目法

勘定科目法は、勘定科目ごとに、固定費なのか変動費なのかを割振っていく方法です。多くの場合、こちらの方法が採用されます。

判断に迷う場合は、どちらの性質が強いかを考えて企業ごとに判断しますが、目安にできるものとして、中小企業庁が2003年度に策定した「中小企業の原価指標」があります。

製造業 固定費 直接労務費、間接労務費、福利厚生費、減価償却費、賃借料、保険料、修繕料、水道光熱費、旅費、交通費、その他製造経費、販売員給料手当、通信費、支払運賃、荷造費、消耗品費、広告費、宣伝費、交際・接待費、その他販売費、役員給料手当、事務員(管理部門)・販売員給料手当、支払利息、割引料、従業員教育費、租税公課、研究開発費、その他管理費
変動費 直接材料費、買入部品費、外注費、間接材料費、その他直接経費、重油等燃料費、当期製品知仕入原価、当期製品棚卸高―期末製品棚卸高、酒税
卸・小売業 固定費 販売員給料手当、車両燃料費(卸売業の場合50%)、車両修理費(卸売業の場合50%)販売員旅費、交通費、通信費、広告宣伝費、その他販売費、役員(店主)給料手当、事務員(管理部門)給料手当、福利厚生費、減価償却費、交際・接待費、土地建物賃借料、保険料(卸売業の場合50%)、修繕費、光熱水道料、支払利息、割引料、租税公課、従業員教育費、その他管理費
変動費 売上原価、支払運賃、支払荷造費、支払保管料、車両燃料費(卸売業の場合のみ50%)、保険料(卸売業の場合のみ50%)
  • 小売業の車両燃料費、車両修理費、保険料はすべて固定費
建設業 固定費 労務管理費、租税公課、地代家賃、保険料、現場従業員給料手当、福利厚生費、事務用品費、通信交通費、交際費、補償費、その他経費、役員給料手当、退職金、修繕維持費、広告宣伝費、支払利息、割引料、減価償却費、通信交通費、動力・用水・光熱費(一般管理費のみ)、従業員教育費、その他管理費
変動費 材料費、労務費、外注費、仮設経費、動力・用水・光熱費(完成工事原価のみ)運搬費、機械等経費、設計費、兼業原価

回帰分析法(最小二乗法)

回帰分析法は、売上高と総費用を散布図に当てはめて固変分解を行う方法です。グラフを用意して散布図を作成する必要があるので、Excelを活用するといいでしょう。

回帰分析法は、勘定項目法に比べて手間はかかりますが、精度は高くなります。運用の簡単さをとるなら勘定項目法を、正確さを求めるなら回帰分析法を選ぶのがおすすめです。

固定費と変動費に関連する経営指標

固定費と変動費を把握できると、「限界利益」「限界利益率」「損益分岐点」という、会社を経営するうえで重要な3つの指標が得られます。それぞれどういうものなのか、押さえておきましょう。

限界利益

限界利益とは、売上高から変動費を差し引いたもので、会社や事業が儲かっているかを示す指標です。この数字が大きいほど、儲けが大きいことを示しています。

限界利益の計算式

限界利益=売上高-変動費

限界利益が黒字であれば、ひとまず事業を存続させても良いという判断ができるでしょう。

限界利益率

限界利益率とは、限界利益の売上高に対する割合です。これは「売上高が一定額増加したとき、そのうち何%が利益の増加につながるのか」を表したもので、限界利益率の高い商品・サービスほど、稼ぐ力が強いということになります。

限界利益率の計算式

限界利益率=限界利益÷売上高

例えば、販売価格が1,000円、製造・販売にかかる固定費が300円、変動費が400円の商品Aと、販売価格が2,000円、製造・販売にかかる固定費が500円、変動費が1,000円の商品Bがあるとします。

  • 商品Aの限界利益:1,000円-400円=600円、商品Aの限界利益率:600円÷1,000円=0.6
  • 商品Bの限界利益:2,000円-1,000円=1,000円、商品Bの限界利益率:1,000円÷2,000円=0.5

この場合、商品1個当たりの売上は商品Bの方が大きいですが、商品Aの方が効率的に稼ぐ力は強いことがわかります。

損益分岐点

損益分岐点の説明図

損益分岐点とは、売上-費用がちょうどゼロになる赤字と黒字の分岐点で、次の式で求められます。

損益分岐点の計算式

損益分岐点=固定費÷限界利益率

損益分岐点からは、何個以上売れれば利益が出るのかがわかるだけでなく、利益を出すために固定費や変動費をどれくらい下げればいいかシミュレーションを行うことができます。

例えば、販売価格が1万円、製造・販売にかかる1か月あたりの固定費が50万円、変動費が4,000円の商品の損益分岐点は、50万円÷((1万円-4,000円)÷1万円)=約83万3,333円です。つまり、1か月で84個売れないと、損益分岐点を下回ることになり赤字となります。

仮に、変動費を3,000円に抑えることができれば、損益分岐点は50万円÷((1万円-3,000円)÷1万円)=約71万4,285円となり、先程よりも少ない販売数で利益を出せることがわかるのです。

固定費と変動費を削減するための方法

経費のうち、固定費の割合が大きいと、売上高にかかわらず常に一定額の経費が出ていくので、なかなか損益分岐点に達しません。反対に変動費の割合が大きいと、損益分岐点を超えても少ししか利益が伸びません。

これらの問題を解消するには、固定費、変動費を減らす必要があります。

固定費の削減方法

固定費の削減方法としては、次のようなものが挙げられます。

  • 業務効率化などを進めて、時間外労働を減らす
  • アウトソーシングを活用する
  • テナント料の安いオフィスへ移る
  • 電気やガス料金を見直し、安いプランに乗り換える
  • 不要なリース契約を解除する
  • 契約の電子化により、印紙の添付を不要にする

人件費はもちろん、オフィスの家賃や電気代、ガス代などにも目を向け、あらゆる固定費を見直すのがポイントです。

変動費の削減方法

変動費の削減方法としては、次のようなものが挙げられます。

  • 大量仕入れや現金仕入れを行い、仕入れ単価を下げる
  • 現在より安く仕事を受けてくれるアウトソーシング先を探す
  • 仕入先や外注先との価格交渉を行う
  • ペーパーレス化をすすめ、印刷費用や消耗品費を抑える

ただし、仕入先・外注先との価格交渉や外注先の変更は、製品やサービスの質に影響する可能性があるため、慎重に進める必要があります。また、ペーパーレス化などは、売上に影響しないものから優先的に削減するのがおすすめです。

損益分岐点や売上を分析するなら、会計ソフトを活用しよう

経費を固定費と変動費に分けることは、限界利益や損益分岐点といった経営に欠かせない指標を導くうえで、避けては通れないものです。

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この記事の監修齋藤一生(税理士)

東京税理士会渋谷支部所属。1981年、神奈川県厚木市生まれ。明治大学商学部卒。

決算書作成、確定申告から、起業(独立開業・会社設立)、創業融資(制度融資など)、税務調査までサポート。特に副業関連の税務相談を得意としており、副業の確定申告、税金について解説した「副業起業塾 新規タブで開く」も運営しています。

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