利益率とは?計算方法と業種別の目安、利益率を上げるための対策を解説

2023/04/18更新

この記事の監修田中卓也(田中卓也税理士事務所)

企業がどの程度の利益を出しているかを示す利益率には、いくつもの種類があります。

ここでは、それぞれの利益率の計算方法や業種別の目安の他、利益率を上げるための方法についてご紹介します。経営状況の把握や経営方針の策定のために、利益率を活用しましょう。

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利益率とは売上高に対する利益の割合

利益率とは、売上高に対する利益の割合のことです。例えば、売上が100万円で、このうち利益が20万円なら、利益率は20%ということになります。

利益の種類の説明図

ただし「利益」と呼ばれるものには、粗利や営業利益など、さまざまな種類があります。同様に、利益率にも種類があります。利益率の計算をする際は、それがどのような種類の利益なのかを意識しましょう。

利益率と粗利率の違い

利益率の種類のひとつに粗利率があります。粗利率とは、売上高に占める粗利の割合を示すもので、「売上総利益率」とも呼ばれる利益率の1つです。

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利益率の種類

利益には5つの種類があり、それぞれ利益率を求めることができます。何を知りたいかによって参照すべき利益率が変わりますから、それぞれの特徴を知っておきましょう。

粗利率

粗利とは、売上高から売上原価を差し引いた金額のことです。粗利率が高いということは、それだけ効率良くお金を稼げているということになります。粗利率は下記のように算出します。

粗利率の算出方法

粗利率=粗利÷売上高×100

粗利率が低ければ低いほど手元に残る利益が少なくなります。同じ売上高でも、粗利率が高い企業はそれだけ多くの利益を上げられるということです。

ただし、粗利率は業界や景気、経営方針などにも左右されます。粗利率の分析を行う際には、同業他社との比較や自社の推移、景気動向などを複合的に見る必要があります。

売上高営業利益率

売上高営業利益率は、売上高に占める営業利益の割合のことです。下記のように算出します。

売上高営業利益率の算出方法

売上高営業利益率=営業利益÷売上高×100

営業利益とは、粗利から人件費や家賃、広告宣伝費といった「販管費(販売費および一般管理費)」を差し引いた金額のことです。

売上高営業利益率は、粗利率には反映されない費用もすべて含めた本業による収益率を示します。本業で稼ぐ力がどのくらいあるのかを知りたいときは、売上高営業利益率を参照しましょう。

売上高経常利益率

売上高に占める経常利益の割合を示すのが、売上高経常利益率です。売上高経常利益率は下記のように算出します。

売上高経常利益率の算出方法

売上高経常利益率=経常利益÷売上高×100

経常利益とは、営業利益に営業外損益を反映させた金額です。

営業外損益とは、本業以外で得られた収入や損失のうち、日常的に発生するもののことです。具体的には、預金の利息や配当金や雑収入が営業外収益に該当し、融資を受けた際に支払う利息や手形を割り引く際の割引料、雑損失などが営業外費用にあたります。営業利益に営業外収益を加算し、営業外費用を減算することで経常利益を算出します。

売上高経常利益率を見ると、企業の日常的な事業活動によって得られる利益がどの程度なのかがわかります。

売上高税引前当期純利益率

売上高税引前当期純利益率とは、売上高に占める税引前当期純利益の割合を示すものです。

算出方法は下記のとおりです。

売上高税引前当期純利益率の算出方法

売上高税引前当期純利益率=税引前当期純利益÷売上高×100

税引前当期純利益とは、経常利益に特別利益を加算し、特別損失を減算して算出します。

特別利益とは、固定資産の売却益や長期間保有している株式等の売却益、一方、特別損失は固定資産の売却損や火災や自然災害、盗難などにより偶発的に生じた損失などで、企業の通常の経営活動とは直接関わりのない、その期だけ特別な要因によって発生した利益や損失ととらえておくといいでしょう。

ただし、法人税や住民税、事業税といった税金の支出は含まれません。売上高税引前当期純利益率を見ることで、売上高に対して最終的にどの程度の利益を生み出せたのかがわかります。とはいえ、臨時的な損失や収入を含むため、推移を見る際は内訳も確認する必要があります。

売上高当期純利益率

売上高当期純利益率は、売上高に占める当期純利益の割合のことです。下記のように算出します。

売上高当期純利益率の算出方法

売上高当期純利益率=当期純利益÷売上高×100

当期純利益は、税引前当期純利益から法人税、住民税、事業税を差し引いた一会計期の最終的な利益です。売上高当期純利益率を見ることで、すべての収入と支出を反映させた最終的な利益率がわかります。

業種別の平均利益率

平均利益率は、業種によって目安が変わります。経済産業省が発表した業種別の売上高営業利益率と売上高経常利益率の平均を見てみましょう。

なお、この調査の対象は、従業員50人以上、資本金3,000万円以上の全国の企業です。

売上高営業利益率

売上高営業利益率は製造業が最も高く、小売業、卸売業と続きます。なお、製造業の売上高営業利益率はこの3業種の中では最も高くなっていますが、唯一2017年度から減少を続けているという特徴があります。一方、卸売業は2015年ごろから緩やかに増加傾向にあります。

製造業、卸売業、小売業の2020年度の売上高営業利益率は、下記のとおりです。

業種別・売上高営業利益率

  • 製造業:3.4%
  • 卸売業:2.0%
  • 小売業:2.8%

参考:

経済産業省:経済産業省企業活動基本調査 2021年企業活動基本調査確報-2020年度実績- 新規タブで開く

売上高経常利益率

売上高経常利益率は、すべての業種で売上高営業利益率を上回っています。これは、営業外損益がプラスであることを意味します。特に製造業では、売上高営業利益率が減少傾向にあるのに対し、売上高経常利益率は2019年度の6.0%から増加しています。また、卸売業は売上高営業利益率に対して売上高経常利益率が高い反面、小売業は両者にそれほど大きな違いがありません。

製造業、卸売業、小売業の2020年度の売上高経常利益率は、下記のとおりです。

業種別・売上高経常利益率

  • 製造業:6.5%
  • 卸売業:3.4%
  • 小売業:3.1%

企業の利益率について分析する際は、売上高営業利益率と売上高経常利益率の両方を確認しましょう。

売上高経常利益率を見ることで、企業が日常的な事業活動でどの程度の利益を上げられたのかがわかります。これは、企業の経営の安定性を図る上で重要な指針です。

一方、売上高営業利益率を見ることで、本業による稼ぎがわかります。いくら売上高経常利益率が高くても、本業で稼げていないようでは、経営が健全とはいえません。本業で稼ぐ力を見るためには、売上高営業利益率を参照する必要があります。

なお、平均利益率は、企業規模によっても異なります。下記は、中小企業庁が発表した企業規模別の売上高経常利益率です。

企業規模別に見る売上高経常利益率の推移

企業規模別に見る売上高経常利益率の推移グラフ
引用:中小企業庁「2021年版 中小企業白書 新規タブで開く」より

この図を見ると、経常利益率は大企業ほど高く、小規模になるほど低くなっていくことがわかります。大企業の方が、原価率や利益率、販売費および一般管理費、あるいは営業外収益や営業外損失の見直しを行えば経常利益が確保できる安定した経営を行いやすい体制づくりに成功している傾向があるといえるでしょう。

一方、中規模企業や小規模企業においては見直しポイントが限られており、常に厳しい経営環境におかれているとみることもできます。

利益率を上げるための改善策

自社の利益率が、同規模の同業他社よりも低い場合や、過去の実績よりも下がってしまった場合は、改善を目指す必要があります。ここでは、利益率を上げるための4つの方法について見ていきましょう。

売上を上げる

利益率を上げる1つ目の方法が、売上アップです。利益率にはいくつもの種類がありますが、その中でも営業利益率や経常利益率の改善を目指すのであれば、売上アップが効果的です。

なぜなら、これらの利益率を計算する際には、販管費を差し引くからです。販管費とは、人件費や家賃、広告宣伝費などのことで、売上の多寡にかかわらず発生するものがほとんどです。これらの費用が変わらない以上、売上が上がればその分利益率も高くなるのです。

販管費と売上高の関係例

売上高1,000万円、販管費500万円、原価率40%の企業の場合

売上原価:1,000万円×40%=400万円
営業利益:1,000万円-400万円-500万円=100万円
売上高営業利益率:100万円÷1,000万円=10%

上記の企業の売上高が1,100万円にアップした場合

売上原価:1,100万円×40%=440万円
営業利益:1,100万円-440万円-500万円=160万円
売上高営業利益率:160万円÷1,100万円=約14.5%

固定費を見直す

固定費とは、毎月ほぼ一定額かかり続ける費用のことです。事務所の賃料や人件費、光熱費、広告宣伝費、保険料などが該当します。この固定費を削減することでも、営業利益率や経常利益率を上げられます。

ただし、このうち、人件費を下げるために給与を減らしたり、従業員を減らしたりするような安易な対策は生産性や意欲の低下を招くなど問題となりかねません。無駄な残業の抑制など、問題のない形で検討しましょう。

人件費以外の固定費は、下記のような対策をすることで削減できます。

固定費の削減例

  • テレワークの導入(光熱費、家賃の削減)
  • 業務効率化につながるシステムの導入(光熱費、人件費の削減)
  • 収益の上がっていない店舗の閉鎖や統合
  • 広告の費用対効果の分析と手法の見直し
  • 保険の見直し など

変動費を見直す

変動費とは、売上に応じて変動する費用のことです。仕入代金や輸送費などが該当します。変動費を見直すことも、営業利益率や経常利益率を上げることにつながります。

変動費の削減には、下記のような方法があります。

変動費の削減例

  • 取引先の見直し
  • 運輸方法の見直し
  • 大量仕入れによる値引きを提案する
  • 現金仕入れによる値引きを提案する
  • 在庫の管理方法を見直してロスを減らす など

原価を削減する

原価は、製品を製造する際にかかる費用です。原価が減れば、それだけ手元に残る粗利が増えますから、すべての種類の利益率を上げられます。

原価を削減する方法には、下記のようなものがあります。

原価の削減例

  • 原材料の見直し
  • 製作工程の見直し
  • 適切な原材料の使用量の徹底 など

ただし、原価を削ろうとするあまり製品の品質が下がってしまうと、顧客離れの原因になります。製品だけではなく、企業そのものの信頼性を損ねる可能性もあるため、原材料の見直しなどには注意が必要です。あくまでも、クオリティに問題が出ない範囲で見直しを行いましょう。

利益率を分析する際の注意点

安定経営を行うためには、利益率を意識する必要があります。しかし、利益率の分析方法を間違えると、正しい結果を導き出すことができません。利益率について検討する際の注意点を知っておきましょう。

希望する利益を出すための価格設定に注意

ある製品について、希望の利益を出したいとき、原価に値入率を掛けてしまわないようにしましょう。なお、値入率とは販売価格に対する利益の割合のことです。

例えば、原価1,000円の製品で40%の利益率を目指す場合「1,000円×40%=400円なので、1,400円で売ればいい」というのは誤りです。1,400円で売った場合の利益率は、400円÷1,400円=約28.6%で、40%には届きません。正しい計算式は下記のとおりです。

原価と利益率から販売価格を算出する例

販売価格=原価÷(100%-利益率)

上記の例では、1,000円÷(100%-40%)=約1,667円となります。

粗利率が高いほど良いとは限らない

粗利率が高い企業は、売上高が上がった際にそれだけ大きな利益を得ることができます。ところが、一概に粗利率が高いほど良い企業とはいえません。なぜなら、粗利率が高くても、販売費および一般管理費が高い場合、売上の減少が、大きな損失につながりやすいからです。

売上高の推移と粗利率の関係例

企業A:売上高5,000万円、粗利率60%、販管費2,000万円
企業B:売上高5,000万円、粗利率30%、販管費500万円

上記の場合、企業Aと企業Bは、下記の算式でもわかるとおり、どちらも営業利益は1,000万円です。

企業A:5,000万円×60%-2,000万円=1,000万円
企業B:5,000万円×30%-500万円=1,000万円

しかし、売上が7,000万円に上がった場合と、3,000万円に下がった場合はどうでしょうか。粗利率と販管費は変化がないものとして比較してみましょう。

  • 売上が7,000万円に上がった場合の営業利益
    企業A:7,000万円×60%-2,000万円=2,200万円
    企業B:7,000万円×30%-500万円=1,600万円
  • 売上が3,000万円に下がった場合の営業利益
    企業A:3,000万円×60%-2,000万円=-200万円
    企業B:3,000万円×30%-500万円=400万円

上記のように、企業Aは売上が上がれば利益の上昇率も大きくなりますが、売上が下がると販管費が高額であるために赤字になってしまうリスクをはらんでいます。粗利率だけを見るのではなく、営業利益率や経常利益率と併せて分析を行うことが大切です。

利益率の推移を見て自社の経営状況を確認してみよう

利益率の推移を見ることで、自社の経営状況の変化がわかります。また、種類別の利益率の比較は、自社の経営状況の把握にも役立つでしょう。粗利率だけではなく、営業利益率や経常利益率など、さまざまな利益率に目を向けてみてください。

利益率を計算するために必要な各種の利益は、損益計算書を見ることでわかります。「弥生会計 オンライン」や「弥生会計」などの会計ソフトを利用すれば、簡単に正確な損益計算書を作ることができますから、経営にぜひご活用ください。

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この記事の監修田中卓也(田中卓也税理士事務所)

税理士、CFP®
1964年東京都生まれ。中央大学商学部卒。
東京都内の税理士事務所にて13年半の勤務を経て独立・開業。
従来の記帳代行・税務相談・税務申告といった分野のみならず、事業計画の作成・サポートなどの経営相談、よくわかるキャッシュフロー表の立て方、資金繰りの管理、保険の見直し、相続・次号継承対策など、多岐に渡って経営者や個人事業主のサポートに努める。一生活者の視点にたった講演活動や講師、執筆活動にも携わる。

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