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損益分岐点とは?計算方法や活用法、分析の仕方をわかりやすく解説

監修者 : 田中卓也(田中卓也税理士事務所)

事業を営む際、利益を上げることは大きな目標のひとつ。

そこで重要になるのが、どれくらい売上をあげれば黒字になるのか。売上と費用がちょうど一致する「損益分岐点(そんえきぶんきてん)」がどこにあるのかを知ることです。

本記事では、損益分岐点の算出方法とそこからわかること、限界利益について、分析方法と経営への活用(損益分岐点比率・安全余裕率・目標利益達成売上高)、そして損益分岐点を下げる方法など、わかりやすく解説していきます。

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損益分岐点とは、売上と費用が同額になる売上高のこと

損益分岐点とは、ある事業において売上と費用がまったく同じ金額、つまり利益がゼロになる売上のことです。損益分岐点を上回る売上があれば利益が出て黒字になり、下回ると赤字になります。そして、費用は、売上規模などによって変動費する変動費と売上に関係なく一定の金額がかかる固定費に分けます。

【損益分岐点の検討例】
月々の家賃などの固定費が50万円のお店で、1台1万円の商品を売っていたとします。この商品の仕入価格は、1台あたり3,000円です。

上記の場合、売上が0円だと固定費の50万円分が赤字になります。それでは、売上がいくらあれば赤字にならないのでしょうか。1台販売するごとに3000円の仕入れが発生するわけですから、この部分が売上に連動する変動費です。このような計算をするときに利用されるのが損益分岐点です。

このお店では、1台1万円の商品を売り、1台販売するごとに3000円の仕入れが発生するわけですから1台商品を売ると7,000円の利益になります。この利益で固定費をまかなうことができれば、赤字になることはありません。そのための計算式は、下記のようになります。

50万円÷7,000円=約71.4

つまり、毎月72台の商品を売ることができれば、赤字にはなりません。金額にすると、1万円×72台=72万円です。

よって、毎月約72万円の売上があれば良いということがわかります。損益分岐点を知るには、このように、最低限稼がなければいけない金額や、販売しなければならない数量を明確にする必要があるのです。

損益分岐点を考える際に算出すべき費用

損益分岐点を考えるうえで重要なのが、固定費と変動費を正しく算出することです。この2つが不正確では、損益分岐点も正確に算出することができません。

固定費

固定費とは、売上にかかわらず必要な金額を指します。具体的には、家賃、人件費、リース料、広告宣伝費、水道光熱費、固定資産税などです。「広告宣伝費や水道光熱費は月によって変わる、あるいは給与も固定費分と歩合分は違う」などと思う方もいるかもしれませんが、損益分岐点を把握する上で年の平均を算出する、四半期ごとの平均を算出する、あるいは人件費・賃借料・その他の経費というように予算取りを行いザックリと把握しておくことは重要です。

上記の事例では、説明をわかりやすくするために、月々の家賃50万円のみを固定費としていますが、最低限の光熱費やアルバイト代など、売上にかかわらず必要な金額、言い換えれば「売上が0円でも必ずかかる経費」を把握しておくことはたいへん重要です。

変動費

変動費は、売上額の増減によって変動する費用のことです。具体的に何が変動費にあたるかは業種によっても異なりますが、仕入額や飲食店の材料費、外注費、販売手数料などが変動費にあたるでしょう。

上記の例でいえば、1台1万円の商品を売り、1台販売するごとに3000円の仕入れが発生するわけですから、変動比率は30%ということもいえます。

損益分岐点を考えるうえで知っておくべき「限界利益」「限界利益率」

損益分岐点を考える際に知っておかなければならない用語に「限界利益」「限界利益率」があります。限界利益とは「売上額から変動費を引いた金額」のことで、限界利益率とは「売上額に対する限界利益の比率」のことを言います。

例えば、仕入額が3,000円、販売額が1万円の商品を月に100台販売している店舗の場合、限界利益は(1万円×100)-(3,000円×100)=70万円になります。1台1万円の商品を売り、1台販売するごとに7000円の利益が発生するわけですから、限界利益率は30%ということもいえます。

限界利益が固定費の金額を超えてプラスにならないと、固定費をまかなうことができません。変動費が売上額を上回ってしまう場合とは「売れば売るほど事業が赤字」ということになり、事業の見直しが必要でしょう。

なお、損益分岐点は変動費と固定費の合計が売上と一致する金額ですから、限界利益は固定費とほぼ同じ金額となります。

【限界利益と固定費の計算例】
月々の固定費が50万円のお店で、1台1万円の商品を売っています。この商品の仕入れ価格は3,000円です。

これは先述した損益分岐点検討例と同じ内容で、損益分岐点は約71.4でした。そこで、72台商品を売った場合の限界利益を計算してみると、

(1万円×72)-(3,000円×72)=50万4,000円

で、固定費とほぼ一致します。

損益分岐点から経営目標や売上不足の対処法がわかる

損益分岐点を知ることは、売上が不足している場合の改善に役立ちます。

現在の売上が損益分岐点を下回っている場合、何らかの対策を講じなければなりません。そのとき「どのくらい売上を増やせばいいのか?」または「どのくらい経費を減らせばいいのか?」、その金額を明確にすることで、目標値を定めることができます。

例えば、上記のお店の場合、商品を今月60台販売したなら、現在の売上は60万円ですから、「72万円-60万円=12万円」で、あと12万円売上を上げれば良いということがわかります。

一方、経費を削減する場合は、現在上げられている利益について考えてみましょう。その場合、固定費と変動費の削減(あるいは変動比率の削減)を検討することになります。

固定費を削減する

現在、毎月60台売れているのであれば、固定費を除いた利益は(1万円-3,000円)×60台=42万円です。つまり、固定費を42万円に下げることができれば、赤字にはなりません。

設例では、月々の家賃などの固定費が50万円のお店ということですから、たとえば、家賃という項目であれば、実際には「立地条件を見直す」「家賃の低いところに移転する」「大家さんと交渉する」という検討や行動が必要となります。

変動費を削減(変動比率を削減)する

先述の例で考えた場合、固定費の50万円に対して、8万円分不足しています。つまり、60台分の仕入額を8万円圧縮できれば、赤字を解消できるということです。8万円÷60台=約1,333円ですから、1台あたりの仕入値を1,600円にすれば赤字がなくなります。

この場合は「仕入業者の変更を行う」「見積もりを提出させ、比較検討し、競わせる」という経営判断が必要になります。

もちろん、この場合には3,000円の仕入れ値を1,600円に下げるということですから、相当の反発や取引先を失うというリスクをもあります。したがって、経費を削減し経営改善を行っていく場合、固定費の削減と変動費の削減の両方を行って赤字解消を目指すことが現実的です。損益分岐点を基準に考えていくことで、具体的な経営目標や対処法を知ることができるのです。

損益分岐点の見方は2通りある

損益分岐点は、売上高で見るか、販売数量で見るかの2種類があります。先述のとおり、固定費や変動費をひとつずつ順番に計算することでも損益分岐点を求めることができますが、実際には取り扱う商品は1つではない場合が多く、より複雑な計算が必要になるでしょう。

そこで、損益分岐点売上高と損益分岐点販売数量を算出するための計算式をご紹介します。

損益分岐点売上高の計算方法

損益分岐点売上高は、下記の式で算出できます。

【損益分岐点売上高の算出方法】
損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率

固定費は、あらかじめそれぞれの事業にかかる固定費を計算することで知ることができます。一方の限界利益率は、売上高に対する限界利益の割合を示す数字です。限界利益÷売上高で求められます。

【損益分岐点売上高の算出例】
月々の固定費が50万円のお店で、1台1万円の商品を売っています。この商品の仕入れ価格は3,000円です。

上記の場合、1台あたりの限界利益は、1万円-3,000円=7,000円です。限界利益率は、7,000円÷1万円=0.7(70%)です。

上記の事例にあてはめると、50万円÷70%=約71.4万円と算定されます。冒頭で説明した50万円÷7,000円=約71.4と、ほぼ同義の算式になっている、ことがわかるでしょう。

よって、損益分岐点は50万円÷0.7=約714,286円となります。

なお、固定費や限界利益率の把握が難しい、あるいは手数がかかると思われる方は、以下のように置き換えて、算出してみることもそれなりに経営指標としては役立つと考えます。

固定費:販売費および一般管理費の平均値
限界利益率:売上高総利益率

損益分岐点販売数量の計算方法

損益分岐点販売数量は、下記の式で求めます。

【損益分岐点販売数量の算出方法】
損益分岐点販売数量=固定費÷1個あたりの限界利益

先程の例では、1個あたりの限界利益は7,000円でした。

50万円÷7,000円=約71.4

つまり72台を売り上げれば、黒字になるということがわかります。これは、最初に行った計算とも一致します。この設例では1台あたり1万円の売価という前提条件なので損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率で、説明した部分とも一致します。

損益分岐点のグラフの読み方と作り方

損益分岐点を考えるうえでは、下記のような形のグラフがよく出てきます。このグラフを正しく読み解き、作ることができれば、損益分岐点が簡単に理解できるようになるでしょう。

続いては、損益分岐点グラフの読み方と作り方についてご説明します。

損益分岐点グラフの読み方

グラフの色で塗られた部分が固定費と変動費、点線が売上です。損益分岐点とは、売上と費用が同じ金額になる点ですから、両者が交わる点が損益分岐点ということになります。

このグラフでは、売上にかかわらず一定の固定費がかかり、それとは別に、売上を上げるごとに変動費が増えていく様子が示されています。これは、売上を上げるためにはそのための仕入といった変動費が必要になるためです。一方、家賃や人件費と言った固定費は、売上に関わらず一定額がかかり続けます。

売上が少ないと、変動費も固定費も回収することができず、大きな赤字が発生します(=色のついた部分の上辺と点線までの距離が長い)。一方、売上が上がってくると、だんだんと固定費と変動費の回収が進みます(色のついた部分の上辺と点線までの距離が短くなっていく)。

そして、売上と費用が同一になる損益分岐点を境に、売上が増えるごとに利益が発生します(点線が色のついた部分を超えて右肩上がりになっていく)。

損益分岐点グラフの作り方

実際の損益分岐点グラフは、それぞれの業種によって傾きなどが違います。例えば、自宅で仕事をしているアフィリエイターにとって、固定費はサーバー代や光熱費程度でしょう。一方、店舗を構えている美容院では、家賃やスタッフの給与などの固定費がかかります。

それぞれの事業ごとの損益分岐点を知るために、損益分岐点グラフを作ってみましょう。

  1. 縦軸に金額、横軸に売上高(または販売量)でグラフを作る
    金額の目盛りは、それぞれの事業規模に応じてつけましょう。
  2. 横軸と並行に固定費のラインを引く
    目盛りに沿って、売上が上がらなくてもかかる固定費のラインを引きます。固定費のラインは必ず横軸と平行になります。
  3. 変動費のラインを引く
    変動費は、固定費の一番上のライン、縦軸との交点からスタートして右肩上がりに引きます。傾きはそれぞれの事業の原価率によって決まります。例えば、1個3万円、原価率30%の商品を売る場合、1個売れたと(売上3万円)の変動費は9,000円、100個(売上300万円)なら90万円です。
  4. 売上の線を引く
    売上は、縦軸と横軸の交点から右肩上がりに引きます。傾きは事業によって異なりますが、「3」で挙げた例であれば、売上個数が100個のときに売上高が300万円になるようにラインを引くことになります。
  5. 交点を確認する
    売上と費用の交点が損益分岐点です。グラフを見ることで、おおよそどのくらい売り上げれば赤字が出ないのかを判断することができます。

損益分岐点の活用方法

損益分岐点は、さまざまな経営分析に活用することができます。ここでは、損益分岐点を使った3つの分析方法の計算式と、それらの計算によって何がわかるのか解説します。

損益分岐点比率

損益分岐点比率とは、損益分岐点をもとにした事業の収益性を示す割合のことです。下記の式で求めることができます。

【損益分岐点比率の算出方法】
損益分岐点比率=損益分岐点売上高÷実際売上高

これによって、損益分岐点までにどの程度の余裕があるのかを知ることができます。例えば、損益分岐点売上高が500万円、実際の売上高が700万円の事業について計算してみましょう。

500万円÷700万円=約71.4%

つまり、現在の売上高の71.4%まで売上が減少しても、赤字にはならないということです。反対に、71.4%よりも売上が落ちると損益分岐点を下回り、赤字になってしまいます。また、逆に、「今期の損益分岐点売上まで、あと200万円」あるいは「今期の損益分岐点売上まで、あと28.6%」というように経営のモチベーションアップに使うこともできます。

安全余裕率

安全余裕率も、損益分岐点売上高と実際の売上高を比較する分析手法です。計算式は下記のとおりです。

【安全余裕率の算出方法】
安全余裕率=(実際の売上高-損益分岐点売上高)÷実際の売上高

実際の売上高が700万円、損益分岐点売上高が500万円の例で計算してみましょう。

(700万円-500万円)÷700万円=約28.6%

損益分岐点比率が現在の売上高がどの位置にあるのかを示すのに対し、安全余裕率は、あとどのくらい売上が下がっても良いかどうかを示す数値です。そのため、安全余裕率は、「100-損益分岐点比率」と同一の数字になります。

安全余裕率が高ければ高いほど、企業の安定性が高いといえるでしょう。反対に、安全余裕率が低い場合、赤字に転落する危険性が高いということです。早急に対策をとる必要があります。

逆に、安全余裕率が高い事業年度が継続しているのであれば、「新たな設備投資」「給与の増額」等への余力があることになります。

目標利益達成売上高

損益分岐点は、売上と費用がトントンになる点を示す数値です。一方、目標とする利益を上げるためにはどれだけの売上を上げれば良いのかを計算する方法が、「目標利益達成売上高」です。

目標利益達成売上高の算出に損益分岐点売上高は使いませんが、損益分岐点を考えるうえで必須の限界利益を使います。

【目標利益達成売上高の算出方法】
目標利益達成売上高=(固定費+目標の利益)÷限界利益率

つまり、約215万円の売上を上げれば、目標が達成できるということになります。また、上記の金額に変動費率30%を掛けることで、おおよそいくらの変動費が必要なのかも算出できます。

214万3,000円×30%=64万200円(目標達成のために必要な変動費)

なお、目標利益達成売上高の設定については「なぜ、〇〇万円が目標利益達成売上高なのか」ということを社内に共有しておくことが望ましいです。

損益分岐点を下げる方法

安全余裕率が低い場合は、事業の在り方を見直す必要があるでしょう。

「実際の売上数量を増やす」というのもひとつの方法ですが、売上を上げるためには、さらなる販売人員の採用や宣伝広告費などの増加を伴うことがあります。また、売上数量を増やすということは、それだけ変動費が増えるということでもありますから、効果を上げるのが困難な方法でもあります。

そこで検討したいのが、そもそもの損益分岐点を下げる方法です。同じ売上高だったとしても、損益分岐点が低ければそれだけ黒字を出しやすくなります。損益分岐点を下げるための3つの方法を知っておきましょう。

固定費を下げる

固定費の削減は、損益分岐点を下げる方法として最も取り組みやすく、なおかつ効果の高い方法です。固定費は内部的に発生している費用ですから、変動費に比べて、企業努力によって下げられる可能性が高いでしょう。そのうえ、固定費は売上にかかわらず必ず発生する費用です。ここを削減できれば、経営上大きなメリットを得られます。

ただし、固定費の削減をする際、安易に人件費をカットするのは避けましょう。人件費を削ると、スタッフのモチベーションが低下して製品やサービスのクオリティが下がるおそれがあります。固定費の削減は、業務効率化や、テレワークの推奨による事務所家賃・光熱費の低減など、できるだけ働くスタッフに不安や影響を与えない方法で行う必要があります。

変動費を下げる

変動費を下げることでも、損益分岐点を下げることができます。ただし、変動費を下げることによって商品やサービスのクオリティが下がると、顧客離れが起こって売上数量が減る可能性があります。品質は変えずに大量仕入によるコスト削減を目指すなど、できるだけ製品のクオリティに影響がない方法を検討しましょう。

商品単価を上げる

商品単価を上げると、限界利益率がその分上がります。

【商品単価を上げた場合の例】
1台1万円、仕入価格3,000円の商品を1万1,000円に値上げした(固定費は50万円)。

元々の限界利益は7,000円、限界利益率は7,000円÷1万円=70%です。これが、値上げ後は限界利益8,000円、限界利益率8,000円÷1万1,000円=約72.73%に上昇します。

損益分岐点は固定費÷限界利益率なので、限界利益率が上がればその分、損益分岐点を下げることができます。

上記の例の場合、元々の損益分岐点は50万円÷0.7=約71万4,286円です。一方、値上げ後は50万円÷72.73%=約68万7474円になります。

68万7474円円÷1万1,000円=約62.49

よって、これまで72台の売上がなければ赤字だったのに対し、63台の売上で赤字を回避できるようになります。ただし、商品単価の値上げは顧客離れにつながる可能性もありますので、慎重に検討することが重要です。

会計ソフトの分析機能を事業成長に役立てよう

事業を営むうえでは、闇雲に売上アップを目指すのではなく、損益分岐点をもとに目指すべき売上額を算出しましょう。併せて、損益分岐点をできるだけ低くして、少ない売上で多くの利益を上げられるような体制を作っていくことも大切です。

そのためには、損益分岐点を知ることと、適切な損益分岐点分析を行うことが大切です。「弥生会計 プロフェッショナル」では、損益分岐点分析が可能です。入力された情報をもとに自動で集計を行い、部門ごとや期間ごとにも損益分岐点売上の算出やグラフの作成ができますので、ぜひご活用ください。

photo:PIXTA

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