住民税はいつまでに、いくら納めるの?税額の計算方法や、納付までの流れを解説

2024/01/16更新

住民税とは、個人が住んでいる自治体に納める税金のことです。住民税の通知は、本人宛て、あるいは勤務先のどちらかに毎年6月に届きますが、この金額はどのように算出されているのでしょうか。住民税の通知が本人宛て、あるいは勤務先のどちらかに届くかで住民税の納付方法が異なるのですが、ここではまず、住民税の金額の算出方法や税率、納付の方法などについて解説します。

なお、住民税には個人住民税と法人住民税がありますが、本記事では個人住民税について解説しています。

住民税の種類

住民税とは、自治体に納付する税金全般を指す言葉です。住民税には、都道府県に納付する「道府県民税(都民税)」と、市区町村に納付する「市町村民税(特別区民税)」の2種類がありますが、両者を合わせて住民税と呼びます。

両者は合算されて納税するので、納税者自身はとくに道府県民税と市町村民税を意識する必要はありません。住民税に該当する税金は下記のとおりです。

住民税に該当する税金

  • 所得割:前年の所得に応じて課される住民税
  • 均等割:居住市区町村から均等に課される住民税
  • 利子割:預金に利息が付されるときに差し引かれる住民税
  • 配当割:配当金を得たときに差し引かれる住民税
  • 株式等譲渡所得割:株等の売買をしたときに課される住民税

利子割、配当割、株式譲渡所得割は金融商品にかかる住民税です。したがって、一般的に住民税といった場合、上記のうち所得割と均等割の合計を指すケースが多いでしょう。所得割は該当の住所地に住んでいる方の所得に応じてかかる税金、均等割は該当の住所地に住んでいる方に均等に課せられる税金です。

会社員の場合は年末調整をする、個人事業主の場合は、所得税の確定申告をすることで、所得が確定し、その結果が市区町村に送られ、市区町村の課税課といった担当部署がその情報を共有することによって住民税額が確定します。

会社員の給与から天引きされている住民税も、所得割と均等割の合計です。本記事でも、以降の段落では所得割と均等割の合計を住民税として解説していきます。

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住民税の金額

住民税の税率は、どこの自治体に住んでいても基本的に同一です。所得割と均等割の税率は、下記のとおりです。

所得割

  • 市町村民税(特別区民税):課税所得額の6%(政令指定都市は8%)
  • 道府県民税(都民税):課税所得額の4%(政令指定都市は2%)

均等割

  • 市町村民税(特別区民税):3,500円
  • 道府県民税(都民税):1,500円

上記の合計が住民税の金額になります。ただし、自治体によって所得割の割合や均等割の金額が異なるケースもあります。例えば、2022年度の神奈川県横浜市の住民税は、下記のようになっています。

2022年度の横浜市の住民税率

  • 所得割
    市町村民税:課税所得額の8%
    道府県民税:課税所得額の2.025%
  • 均等割
    市町村民税:4,400円
    道府県民税:1,800円

住民税の算出方法

住民税は、前年の課税所得額をもとに算出します。新社会人は前年が学生であるため基本的に住民税の基礎になる「前年度の収入」がない、もしくは、基準に達していないことが多いので、実際に住民税を支払い始めるのは、社会人2年目になってからになるでしょう。そのため、住民税の徴収が始まる社会人2年目の6月以降に手取りが減った!と驚いたりするのです。住民税の算出方法について順を追ってご説明します。

  1. 1.
    総所得額を算出
    給与所得や雑所得といった所得額を合計し、総所得金額を算出します。
  2. 2.
    所得控除額を算出
    扶養控除や基礎控除など、適用される所得控除の合計を算出します。
  3. 3.
    課税所得額を算出
    「1」の総所得額から「2」の所得控除額を引き、課税所得額を求めます。
  4. 4.
    所得割額を算出
    「3」で算出した課税所得額に所得割の率を掛けて、所得割額を算出します。
  5. 5.
    税額控除を差し引く
    「4」で算出した所得割額から税額控除の額を差し引いて、最終的な所得割の金額を求めます。
  6. 6.
    均等割を加算する
    「5」で算出した最終的な所得割に均等割を加算することで、納付すべき住民税額が決まります。

なお、これらの計算は、各自治体が確定申告や年末調整の結果にもとづいて行うものです。個人や企業の経理担当者などが計算をする必要はありません。逆から見ると、「間違った所得税の確定申告書を提出した」「年末調整で勤務先に提出し忘れた生命保険料控除がある」といった場合ですと、誤った住民税が課されてしまいます。

個人からみると確定申告や年末調整といった手続きは所得税のみならず、住民税にも影響を与えますので注意しましょう。

自分の住民税額を調べてみよう

住民税額は、「住民税額決定通知書」に記載されています。詳細な書式は自治体によって異なりますが、「税額」と書かれている欄に、市町村民税(特別区民税)と道府県民税(都民税)、それぞれの所得割額と均等割額や控除額、それらの合計額などが記載されています。

会社員であれば、通知書を紛失してしまったとしても、月々の給与明細を見れば、毎月いくら住民税を納付しているのか、確認が可能です。会社員以外の方は、通知書といっしょに送られてくる納付書の金額を確認してみましょう。

住民税の納付方法と納付期限

住民税の納付方法には、「特別徴収」と「普通徴収」の2種類があります。ただし、どちらの方法で納付するかを、個人で決めることはできません。基本的に会社員は特別徴収で、それ以外の方は普通徴収です。

普通徴収の場合、住民税の通知が本人に届き、本人が納付するのに対し、特別徴収の場合、住民税の通知が勤務先に届き、給与から天引きされて納付します。

ここでは、それぞれの税額の決定から納付までの流れをご説明します。

普通徴収

普通徴収は、フリーランスなどの個人事業主、そのほかにも住民税を給与から天引きされていない方が、自身で住民税を納付する方法です。 会社員などの給与所得者でも、副業などの雑所得で所得税の確定申告をした場合、給与からの天引きではなく、自分で住民税を納める「普通徴収」を選択すると、給与の天引き以外に住民税を別途納める場合もあります。

普通徴収の住民税額の確定から納付までの流れは下記のとおりです。

  1. 1.
    所得税の確定申告を行う(通常、3月15日まで)
    年間の収入や経費などを取りまとめて確定申告を行います。確定申告は所得税の納付のために行うものですが、各自治体に情報が共有されるので、確定申告をすれば住民税の申告は不要です。

    なお、1年間の所得の合計額が48万円以下の方など、所得税の確定申告をする必要がない場合でも、収入があるのであれば各自治体に対して住民税の申告をしなければいけません。詳しい申告方法は、市区町村役場の市民税課などに問い合わせましょう。

  2. 2.
    各自治体から自宅に税額決定通知書と納付書が届く(6月)
    各自治体から、自宅に税額決定通知書と納付書が届きます。
  3. 3.
    納付期限までに住民税を納める
    普通徴収では、1年分の住民税を4分割して納付します。通常は、6月、8月、10月、1月の末日までの4回と各市区町村で指定されていますので、納付期限までに指定された金額を納付しましょう。なお、一括で納付することも可能です。

特別徴収

特別徴収では、企業が従業員の住民税を給与から天引きして納付します。そのため、企業に勤めている従業員は、原則、自分で住民税を納めに行く必要はありません。なお、特別徴収は企業の義務です。給与の額が少なくて住民税が引けないなど、特別な理由がない限り特別徴収をしなければいけません。

住民税を特別徴収する場合の税額の確定から納付までは下記のような流れになります。

  1. 1.
    年末調整を行う(12月または翌年1月)
    12月の賞与と給与の額が確定したら、企業が年末調整を行います。これによって、各従業員の1年間の収入と各種控除の額が決定します。
  2. 2.
    給与支払報告書を従業員の住む自治体に提出(翌年1月末日まで)
    翌年1月末日までに、年末調整の結果をまとめた「給与支払報告書」を、それぞれの従業員が住む自治体に提出します。例えば、2022年分の給与支払報告書は、2023年1月末日までの提出が必要です。
  3. 3.
    各自治体から送付される特別徴収税額決定通知書を従業員に配布(5月)
    各自治体は、企業から送られてきた給与支払報告書をもとに税額を算出し、企業宛に「特別徴収税額決定通知書(特別徴収義務者用)」と「特別徴収税額決定通知書(納税義務者用)」を送付します。企業は、特別徴収税額決定通知書(納税義務者用)を各従業員に配布します。
  4. 4.
    給与に各従業員の住民税を反映させ、特別徴収を行う(6月~翌年5月)
    各自治体から送られてきた特別徴収税額決定通知書(特別徴収義務者用)をもとに、6月分の給与から各従業員の住民税を天引きします。
  5. 5.
    翌月10日までに特別徴収した住民税を自治体に納付する(7月~翌年6月)
    天引きした住民税は、翌月10日までに自治体宛に納付します。例えば、2023年6月分の給与から天引きした住民税は、企業が取りまとめて7月10日までに納付しなければなりません。

    なお、給与などの支払いを受ける人が常時10人未満である小規模な事業体であれば、6月分から11月分を12月10日までに、12月から翌5月分を6月10日までにといったようにまとめて納付することが可能な市区町村もあります。一般的に「市民税・県民税特別徴収税額の納期の特例に関する申請書」という届出が必要ですが、事務負担の軽減につながるのであれば、確認してみましょう。

住民税が非課税になる条件

住民税は、自分が暮らしている自治体に納める税金ですが、条件によっては非課税となる場合もあります。ここでは、住民税が非課税になる条件について見ていきましょう。

生活保護を受けている

生活保護受給者は、住民税が非課税になります。また、所得税も非課税です。

前年の合計所得が一定以下

前年の合計所得の金額が一定の基準以下の場合、住民税が非課税になります。非課税になる基準は各自治体によって定められているため、お住まいの自治体のWebサイトなどで確認しましょう。

東京23区内在住で住民税が非課税になる例

  • 配偶者や扶養親族がいない方:前年の所得が45万円以下
  • 配偶者や扶養親族がいる方:前年の所得が、35万円×自分を含めた家族の人数+31万円以下
  • 障害者・未成年者・寡婦またはひとり親の方:前年の所得が135万円以下

住民税を納付する際の注意点

住民税額は課税所得額をもとに計算されますが、その納付に関して注意したい点がいくつかあります。続いては、住民税の納付に関して、気を付けておきたい点を4つご紹介します。

納付は翌年に行う

住民税は、前年の所得の状況に応じてかかる税金を納付するというしくみです。そのため、「たまたま前年の売上が大きかった」という方など、一時的に多額の所得があった方は、その翌年の住民税額が高額になります。「前年は会社勤めをしていたが、今年は転職期間中である」というように、たとえ、納付する年の収入が少なくても、減免されることはありません。

通常よりも多くの所得を得た際は、翌年の住民税納付のために納税預金として区分しておくなどの対策をとることをおすすめします。

年の途中で引っ越しても1月1日時点に住んでいた自治体に納付する

住民税は、毎年1月1日時点で住所がある人が課税対象です。

2022年分の住民税は、2022年分の所得の状況に応じて2023年6月から2024年5月にかけて納付します。その納付期間中に引越しをしたとしても、その年の1月1日時点で住んでいた自治体が納税地になりますから、住民税の納付先や金額が変わることはありません。

住民税の納付期間中に引っ越した場合
東京都中央区に3年間住んでいた会社員が、2023年4月1日に大阪府大阪市に転居し、2024年1月1日時点でも大阪府大阪市在住の場合

  • 2022年6月~2023年5月:2022年1月1日時点では、東京都中央区在住なので、東京都中央区に納付(2021年分の所得の状況に応じてかかる住民税)
  • 2023年6月~2024年5月:2023年1月1日時点では、東京都中央区在住なので、東京都中央区に納付(2022年分の所得の状況に応じてかかる住民税)
  • 2024年6月~2025年5月:2024年1月1日時点は、大阪府大阪市在住なので、大阪府大阪市に納付(2023年分の所得の状況に応じてかかる住民税)

退職した場合の住民税の納付方法

企業を退職した場合は、最後の給料日以降、住民税の特別徴収をしてもらうことができなくなります。その場合は、下記のいずれかの方法で残りの住民税を納付しましょう。

一括徴収

残りの住民税を、最後の給与や退職金から一括で差し引きます。1~5月までの退職の場合は、原則としてこの方法がとられます。

普通徴収

6~12月までに退職した場合は、残りの住民税が普通徴収に切り替わります。自宅に納付書が届くので、自分で納付しなければなりません。

特別徴収の継続

転職先が決まった状態で退職した場合は、転職先の企業の給与から天引きしてもらえる場合もあります。退職する企業と転職先の企業、両方で手続きが必要になるため、担当者に相談してください。ただし、退職後にフリーランスになるなど、雇用されない働き方をする場合、普通徴収になります。

海外への引越しや海外から引越しをした場合

海外へ引越しをする際は、転出前に残りの住民税を全額納付する必要があります。一方、1月1日時点では海外にいて、その後日本に転居してきたという場合、その年の住民税は課税されません。

住民税を納付しないとどうなる?

普通徴収の住民税の納付を忘れてしまったり、金銭的な事情で納付しなかったりすると、督促状が届きます。督促状が届いても納付しないと預貯金はもちろん給与なども差押えをされる可能性があるため、必ず納付しましょう。

なお、納期限までに住民税を納付しなかった場合、延滞金が加算されます。

どうしても住民税を納付できないときの対処法

どうしても住民税を納付できないときは、市区町村役場の市民税課で相談することをおすすめします。状況に応じて、分割納付や納付期限の延長といった制度を利用できる場合があるからです。無断で延滞するのではなく、きちんと相談をして納付する意思とその根拠を伝えることで、いきなり財産が差し押さえられるリスクを軽減できます。

住民税の仕組みを知っておこう

住民税は、前年の所得にかかる税金を納付する仕組みとなっています。これを理解していないと、いつ、どこに、いくら納める必要があるのかがわからず、混乱してしまいますし、家計の計画も立てることができなくなります。

住民税の仕組みを理解して、必要なときに必要なお金を用意できるようにしておくことが大切です。

photo:PIXTA

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