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貸借対照表(B/S)とは?見方と作り方、損益計算書との違いを解説

監修者 : 齋藤一生(税理士)

貸借対照表(たいしゃくたいしょうひょう)は、事業の財務状態を表す書類「財務諸表(決算書)」のひとつです。法人および65万円または55万円の青色申告特別控除を受ける個人事業主が、確定申告で提出する書類のひとつであると共に、事業の経営状態を把握するために欠かせないものです。

ここでは、貸借対照表に記載された情報を読み解くために、貸借対照表の読み方と作り方について解説します。

貸借対照表は、会社の健康診断書のようなもの

貸借対照表とは、一会計期間時点で会社にある資産のほか、資金調達、運用状況などを示した資料です。英語ではBalance Sheet(バランス・シート)と表記され、略して「B/S(ビーエス)」とも呼ばれます。

財務諸表に該当する書類はたくさんありますが、その中でも特に重要なのが「財務三表」と呼ばれるものです。貸借対照表は、特定の期間における収益と費用の損益計算をまとめた「損益計算書」、資金の流れを示した「キャッシュ・フロー計算書」と共に、財務三表のひとつになっています。財務諸表は、一般的に決算書とも呼ばれています。

貸借対照表の構成と各勘定科目について

貸借対照表は大きく左右に分かれており、さらに右側は上下2つに分かれています。

左側は「資産」の部で、会社の資産保有・運用状況が一覧で表されています。右側の上は「負債」、右側の下は「純資産」が記載され、資産がどのように調達されたかを示しています。

なお、左側の資産と右側の負債と純資産の合計額は、常に同じ金額になります。

資産の部

資産とは、現金または換金可能な現金以外のもの、その他将来の収入につながるもの等を指します。換金可能な資産とは、具体的に売掛金、不動産、車、商品(在庫)などが該当します。

これらの資産は、その性質によって「流動資産」と「固定資産」に分類されます。表記する順番は決まっており、常に流動資産、固定資産の順に記載します。

流動資産

流動資産とは、会社が保有している資産のうち、1年以内に現金化できるものを指します。現金、普通預金、1年以内に満期となる定期預金、売掛金、有価証券、受取手形、棚卸資産(在庫)、前払金、未収金などが該当します。

固定資産

固定資産とは、会社が保有している資産のうち、長期にわたって保有するものや現金化に1年以上の時間がかかるものを指します。土地や建物、車などの「有形固定資産」、特許権や施設の使用権、営業権、ソフトウェアなどの「無形固定資産」、投資有価証券や長期預金などの「投資その他の資産」の3種類があります。

負債の部

負債とは、将来返済を要する会社の借金です。資産と同じように、「流動負債」と「固定負債」に分けられます。書き方は決まっており、常に流動負債、固定負債の順に記載します。

流動負債

流動負債とは、会社の決算から1年以内に返済する必要がある負債です。買掛金や支払手形、短期借入金、未払金などが該当します。

固定負債

固定負債とは、会社の決算から1年以内に支払う予定のない負債です。長期借入金や社債などが該当します。

純資産の部

純資産とは、返済義務のない会社の資産のことで、自己資本とも呼ばれます。

出資された金額を含む資本金や、会社が得た利益のうち社内留保の蓄積といった利益剰余金、会社設立後に株券発行などの資本取引によって生じた資本剰余金、会社が保有する株式・自己株式、利益剰余金などです。

貸借対照表を読み解くための5つのチェックポイント

貸借対照表は、流動資産、固定資産、流動負債、固定負債、純資産の5つのブロックに分かれています。一つひとつの数字よりも、5つのバランスが大切で、そこから会社の財政状態を把握することが大切です。

ここでは、貸借対照表を正しく読み解くためにチェックしたい、5つのポイントについて見ていきましょう。

1.自己資本比率をチェック

自己資本比率とは、会社の総資産に対して返済義務のない資本が占める割合のことです。これは、会社経営の中長期的な安定性、健全さを測る目安であり、一般的にこの数字が高いほど、会社の健全性が高いと判断できます。

自己資本比率は、下記の計算式で求められます。

自己資本比率(%)=純資産÷総資産×100

自己資本比率が低いということは、一般的に借入金などの負債が多いと判断できます。それだけ、返済の負担も大きく、経営に関するリスク要因としてマイナス評価になります。

反対に、自己資本比率が高いということは、返済義務のない資金を潤沢に持っていることを示し、「中長期的に倒産しにくい会社」だと判断する材料になるでしょう。

自己資本比率の標準的なしきい値は、業種によって異なります。中小企業庁の「令和元年 中小企業実態基本調査報告書」によると、産業別の平均は以下のとおりです。

全体平均 40.92%
建設業 43.23%
製造業 44.65%
情報通信業 54.25%
運輸業・郵便業 35.46%
卸売業 41.03%
小売業 30.99%
不動産業、物品賃貸業 39.94%
学術研究、専門・技術サービス業 49.72%
飲食サービス業、宿泊業 15.21%
生活関連サービス業、娯楽業 33.42%
サービス業(ほかに分類されないもの) 48.34%

※中小企業庁「令和元年 中小企業実態基本調査報告書(平成30年度決算実績)」(令和2年7月)

自己資本比率は、上記のように業種のほかに資金繰りの状況によって異なります。設備などの固定資産を多く必要とする業種では20%以上、棚卸資産などの流動資産が多い業種で15%以上が安全性の目安です。10%以下なら金融業以外は過小資本になり注意が必要です。

基本的に、自己資本比率が高いと倒産しにくいといわれますが、純資産の内訳によって異なる場合があるので注意が必要です。利益剰余金の増加によって純資産が増え、自己資本比率が高まっているのなら、経営は安泰といえます。

しかし、もっぱら株主の出資だけで自己資本比率の水準を保って、金融機関との取引実績がない場合は、必要なときに金融機関からの借入ができずに倒産する可能性もあるのです。

自社の自己資本比率が低いようなら、長期的な視点で改善を進めていくことが必要です。今後も事業拡大を目指すなら、増資による自己資本の強化が第一の選択肢となるでしょう。

一方、事業の拡大が見込めない場合は、借入金を返済して固定負債を削減する、投資を抑制して固定資産を圧縮することで、自己資本比率の改善を目指すことになります。

2.流動比率をチェック

流動比率とは、短期間に支払い義務がある流動負債に対し、すぐに現金化できる資産が大半の流動資産がどれくらいあるかを示したものです。会社の支払い能力を見る指標であり、割合が高いほど支払い能力が高いことを表しています。

流動比率は、下記の計算式で求められます。

流動比率(%)=流動資産÷流動負債×100

流動比率は、一般的には130~150%ぐらいが目安といわれており、100%以上は必須です。200%を超えていればまず支払い能力に問題なしと判断されます。つまり100%以下であれば、支払い義務のある負債がすぐ現金化できる資産を上回っていることを意味し、支払い能力に問題ありといえるでしょう。

自社の流動比率が100%を下回っているようなら、増資による自己資本の増強や短期借入金の借換え、社債発行して流動負債を固定負債へ変換するなど、返済に対して時間的な猶予を作ることが必要です。

資産は多くても、不動産や設備など、固定資産の占める割合が大きいと流動比率は小さくなります。固定資産が多い会社は、一見資産が多いように見えますが、設備などの維持費がかかる上、現金や預貯金が少なく、流動比率が低くなる場合もあるので確認が必要です。

3.当座比率をチェック

当座比率とは、流動負債に対し、流動資産の中でも現金に近い資産「当座資産」の割合を示したものです。流動比率だけでなくさらに一歩踏み込み、細かく会社の支払い能力をチェックする際に用いられます。

当座比率は、下記の計算式で求められます。

当座比率(%)=当座資産÷流動負債×100

当座資産に当たるのは、流動資産のうち現金、預金、受取手形、売掛金、有価証券の5つです。当座資産が100%を超えていれば、支払い能力に問題はないと判断できます。

流動比率と当座比率を確認することで短期的な支払い能力を確認できるので安全性を確認できるでしょう。

4.固定資産と固定負債+純資産の大小をチェック

「固定資産>固定負債+純資産」となる場合は、設備や不動産といった長く保有する資産を、長期の借入と返す必要がない資金で購入したことを意味し、経営は安定しているという判断材料になります。

反対に、「固定資産<固定負債+純資産」となる場合は、長く保有する資産を購入するために、借入金を使って短い期間で返済しようとしていることを意味し、資金繰りが危うくなる可能性が指摘されます。

5.売掛金と売上のバランスをチェック

売上に対して売掛金の金額が大きいようなら、売掛金の回収が滞っているか、回収までの期間が長すぎることが考えられます。売掛金の回収までの期間より買掛金の支払いまでの期間が短いなら、現金資産が不足して資金繰りが苦しくなります。

この場合、売掛金(未回収金)の支払いサイトを見直し、回収までのスピードを早めることが重要です。

貸借対照表の作成方法

貸借対照表は、法人が税の申告の際に提出するべき決算報告書のひとつです。そのため、法人は必ず貸借対照表を作成しなければいけません。

個人事業主の場合は、確定申告の種類によって要・不要が異なります。白色申告をする人、青色申告でも10万円の青色申告特別控除で申告する人は、貸借対照表の提出は不要です。青色申告で65万円または55万円の青色申告特別控除を受けようとする場合は、確定申告において青色申告決算書の4枚目として貸借対照表の提出が必要になります。

貸借対照表を作成するには、前提として、「複式簿記」の形式で個々の取引の仕分けを行う必要があります。複式簿記とは、取引を「貸方」と「借方」の2つに分けて記載する方法です。これに対し、お小遣い帳や家計簿のように、現金の出納だけを記録していく方式を「単式簿記」といいます。

例えば、「4月1日に、事務所の備品として、12万円のパソコンを買った」という場合、単式簿記であれば次のようになります。

日付 摘要 収入金額 支出金額
4月1日 器具備品   120,000円

これに対し、複式簿記ではパソコンを買ったことで「現金が減った」ことと「器具備品(資産)が増えた」ことを同時に表します。具体的には、下記のようになります。

日付 借方 貸方
4月1日 器具備品 120,000円 現金 120,000円

複式簿記での仕訳にはルールがあり、簿記の知識が必要です。また、日々の取引を仕訳をするとなると膨大な数になり、その分手間もかかってしまいます。そこで、日々の帳簿付けには、会計ソフトを利用するのがおすすめです。

弥生の会計ソフト「弥生会計」や個人事業主向け申告ソフト「やよいの青色申告」は、入力フォーマットに沿って取引データを入力すれば自動で仕訳をしてくれるため、簿記の知識がなくても、複式簿記での記帳が可能です。入力したデータはソフト側で自動でとりまとめて集計してくれるので、簡単に貸借対照表が作成できます。

なお、貸借対照表は決算関係書類であり、税法上、対象期間は保存しておく必要があります。

  • 法人:その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間(※)
  • 個人事業主の青色申告:7年間
  • 個人事業主の白色申告:5年間

(※)青色申告書を提出した事業年度で欠損金額(青色繰越欠損金)が生じた事業年度または青色申告書を提出しなかった事業年度で災害損失欠損金額が生じた事業年度においては、10年間(平成30年4月1日前に開始した事業年度は9年間)

貸借対照表は、紙での保管が原則ですが、電子帳簿保存法の対象です。以下の条件を満たす場合は印刷物で保管する必要はなく、電子データのまま保管することも認められています。

電子帳簿等保存(電帳法 第4条1項・2項)
最初からPC等で作成した帳簿や書類(決算関係書類、取引関係書類)を、一定の保存要件のもとに電子データのまま保存すること

なお、本条項は「容認規程」(=取り組みたい事業者が任意で行うもの)です。

貸借対照表と損益計算書の違い

貸借対照表と損益計算書は、両方とも確定申告に必要な書類です。2つの書類の違いは、貸借対照表がある時点で事業者が保有する資産・負債・純資産を一覧にしたものである一方、損益計算書は一定期間内の収益・費用を表したものだという点です。

損益計算書は、一定期間内に事業がどれだけの収益を上げ、費用をいくら使い、どれだけ儲かったのかがわかる資料です。英語ではProfit and Loss Statement(プロフィット・アンド・ロス・ステートメント)と表記され、略して「P/L(ピーエル)」と呼ばれる場合もあります。

なお、貸借対照表と損益計算書の中で、唯一リンクしている数字があります。貸借対照表にある「利益剰余金」は、会社の事業活動で得られた利益のうち、決算時点で社内に留保している金額を意味していますが、この数字を時間軸で捉えたものが損益計算書上の「当期純利益」です。配当金などを出さない中小零細企業であれば、これまでの税引後純利益の合計が利益剰余金として貸借対照表で表現されているのです。

両方とも決算書として重要な書類であり、両方を併せて見ることで、事業の経営状態がより正確に把握できます。

会計ソフトを活用して、貸借対照表作成の手間と時間を削減

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photo:PIXTA

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