電子帳簿保存法の2024年からの改正点、インボイス制度との関連も解説

2023/11/30更新

この記事の監修者小林祐士(税理士法人フォース)

電子帳簿保存法とは、国税関係(法人税法や所得税法など)の帳簿や書類を電磁的記録(電子データ)で保存することを認める法律です。

電子帳簿保存法は1998年に施行されてから、時代の変化に合わせて改正が行われてきました。直近では2022年に大幅に改正され、この改正によって「電子取引のデータ保存」は義務化となっています。なお、「電子取引のデータ保存」については2023年12月31日まで猶予期間(正確には宥恕期間)が設けられておりました。2024年1月からは完全義務化となり、ほぼすべての法人や個人事業主、一定要件の副業の場合でも対応する必要があります。

そこで本記事では、電子帳簿保存法について、概要と直近の改正点、インボイス制度との関連などについて解説します。「電子取引のデータ保存」の保存要件などを正しく理解し、スムースに対応するための準備を進めていきましょう。

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電子帳簿保存法の概要

電子帳簿保存法とは、国税関係(法人税法・所得税法など)の帳簿や書類を電子データで保存するときの取り扱い方などを定めた法律です。

電子保存の形式は「電子取引のデータ保存」「国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存(電子帳簿等保存)」「スキャナ保存」の3種類があります。2024年1月から義務化されるものと、2024年1月以降も任意のものに分けられます。

電子帳簿保存法の対象となる書類

電子帳簿保存法の対象となるのは、「国税関係帳簿」「決算関係書類」「取引関係書類・電子取引書類」の3つに大きく分類できます。

電子帳簿保存法の対象文書

国税関係帳簿 仕訳帳、総勘定元帳、売掛帳、買掛帳、現金出納帳、固定資産台帳など 電帳法第4条1項 国税関係書類 決算関係書類 貸借対照表、損益計算書、試算表、棚卸表など 取引関係書類 自己発行の写し 請求書(控)、見積書(控)、納品書(控)、注文書(控)、領収書(控)など 電帳法第4条2項 電子帳簿等保存(電子データ保存) 自己が最初からPC等で作成した帳簿書類 相手先から受領 請求書、見積書、納品書、注文書、領収書など 電帳法第4条3項 スキャナ保存 紙で発行・受領した書類 電子取引 電子メール、EDI、クラウドサービス等による授受 請求書、見積書、納品書、注文書、領収書など 電帳法第7条(旧第10条) 電子データ保存 データで授受された取引情報

それぞれ、具体的にどのような書類が該当するのかを見ていきましょう。

なお、下記3つのいずれにも含まれない契約書や検収書なども、紙で発行・受領した書類は、スキャナ保存が可能です。

国税関係帳簿

国税関係帳簿とは、法人税法や所得税法といった、国税に関わる法律によって保存が義務付けられている帳簿です。

仕訳帳や総勘定元帳、売掛帳、買掛帳、現金出納帳、固定資産台帳などが該当します。

決算関係書類

決算関係書類には、貸借対照表や損益計算書、試算表、棚卸表などが該当します。

取引関係書類・電子取引書類

取引関係書類とは、取引についてやりとりした請求書、見積書、納品書、注文書、領収書などの書類です。また、取引関係書類を電子メールやクラウドサービスなどによって授受された場合は、電子取引書類に該当します。

電子保存の形式と義務化の有無(2023年9月末時点)
2024年1月から義務化されるもの 2024年1月以降も任意のもの
電子取引のデータ保存 国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存(電子帳簿等保存)
スキャナ保存

電子帳簿保存法の対象者

電子帳簿保存法の対象となるのは、企業の規模や、法人か個人事業主かといった違いを問わず、国税関係帳簿書類を保存しなければならないすべての事業者が対象です。

そのため、電子帳簿保存法の改正も、ほぼすべての法人と個人事業主に影響があります。特に、2024年1月から義務化される「電子取引のデータ保存」については、ほぼすべての事業者が2024年1月から対応する必要があります。そのため、猶予期間の終了する2023年12月31日までに対応の方針を決める必要があるでしょう。

また、副業についても同様です。所得税法上、「ある年の雑所得を生ずべき業務に係る収入金額について、前々年の金額が300万円を超える場合」には、その業務についてやりとりした請求書や領収書などの取引関係書類を保存する義務があります。そのため、電子データで請求書や領収書を授受した場合は、当該電子データを保存することとなります。

電子帳簿保存法の区分と保存要件

電子帳簿保存法は、3つの保存形式に分けられています。ここでは、電子帳簿保存法の3つの区分別に、それぞれの保存要件についてご説明します。

電子取引のデータ保存(義務)

メールやクラウドサービスなどの電子取引されるデータは、2024年1月より電子保存が義務化されます。例えば、これまではPDFデータで受け取った請求書を印刷して、紙で保存することができましたが、2024年1月からは原則として、電子データで受け取ったものは電子データのまま保存する必要があります。また、電子データで発行した場合も同様で、電子データのまま控えを保存する必要があります。

電子データを保存する際には、電子帳簿保存法のルールにしたがって保存する必要があります。受け取ったデータをただパソコン上に保存しておくのではなく、「電子取引のデータ保存」の要件を満たして保存しなくてはいけません。保存要件には「真実性の確保」と「可視性の確保」があります。

電子取引データの真実性を確保する要件 ①取引先から受け取る電子データにタイムスタンプを付与してもらう
②授受した電子データはすみやかに自社でタイムスタンプを付与し、保存する者または監督者に関する情報を確認できるようにしておく
③電子データの訂正や削除をした際に記録が残るシステムまたは訂正や削除をできないシステムを導入して授受・保存する
④正当な理由のない電子取引データの訂正や削除の防止に関する事務処理規程を定めて、その規程に沿った運用を行う

真実性の確保では、上記のうち、いずれかの要件を満たす必要があります。これは電子取引の改ざんを防止するための要件で、電子データにタイムスタンプを付与したり、システムを導入したり、事務処理規程を定めたり、といった方法があります。例えば、弥生製品をお使いであれば「スマート証憑管理」というサービスを利用すると、③に該当するため、真実性の確保の要件を満たすことができます。

システムを用いずに電子取引データを自社で管理する場合は、改ざんやデータの破損、紛失などを起こさないよう、①②④のいずれかに該当するように管理を徹底しなければなりません。

電子取引データの可視性を確保する要件 保存場所にパソコンなどの電子計算機、プログラム、ディスプレイ、プリンターおよびこれらの操作マニュアルを備え付け、画面・書面に整然とした形式および明瞭な状態ですみやかに出力できるようにしておく
電子計算機処理システムの概要書を備え付ける
検索機能を確保すること ①取引年月日、取引金額、取引先で検索できる
②日付または金額の範囲指定で検索できる
③2つ以上の任意の検索項目を組み合わせて検索できる

また、電子取引データは可視性も確保しなくてはなりません。要件は上記のとおりです。データがすぐに見られる状態にしておくことが目的で、原則として、上記のすべてを満たす必要があります。このうち検索要件については税務調査の際にダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合は②③は不要となります。また、基準期間の売上高が5,000万円以下の方はダウンロードの求めに応じることができるようにしているのであれば検索要件のすべてが不要とされます。詳しくは国税庁の「電子帳簿保存法特設サイト新規タブで開く」をご確認ください。

国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存(電子帳簿等保存)(任意)

国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存(電子帳簿等保存)とはパソコンなどで作成した国税関係帳簿や国税関係書類を電子データとして保存する際の取り扱いを定めたものです。例えば、弥生会計など会計ソフトで作成した帳簿や書類などを紙に出力して保存することなく、電子データとして保存することができます。ただし、電子取引データの保存とは異なり保存は任意のため、2024年1月以降も義務化されるわけではありません。

なお、国税関係の帳簿や書類を電子データで保存するためには、複数の保存要件を満たす必要がありました。しかし、2022年の改正によって、要件が大幅に緩和されています。

まず、2022年1月以降、国税関係帳簿の電子帳簿保存は「その他の電子帳簿」と最大65万円の青色申告特別控除を適用できる「優良な電子帳簿保存」の二種類になりました。税務署長の事前承認は不要になりました。

そして、簿記の正規の原則(一般的に複式簿記)に則って帳簿をつけていれば、下記のように、最低3つの要件を満たすだけで保存が可能となります。

保存要件概要 国税関係帳簿 国税関係書類
優良
帳簿
その他
帳簿
真実性の確保 記録事項の訂正・削除を行った場合には、これらの事実及び内容を確認できる電子計算機処理システムを使用すること 必要 不要 不要
通常の業務処理期間を経過した後に入力を行った場合には、その事実を確認できる電子計算機処理システムを使用すること 必要 不要 不要
電子化した帳簿の記録事項とその帳簿に関連する他の帳簿の記録事項との間において、相互にその関連性を確認できること 必要 不要 不要
システム関係書類等(システム概要書、システム仕様書、操作説明書、事務処理マニュアル等)を備え付けること 必要 必要 必要
可視性の確保 保存場所に、電子計算機(パソコン等)、プログラム、ディスプレイ、プリンタ及びこれらの操作マニュアルを備え付け、画面・書面に整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力できるようにしておくこと 必要 必要 必要
検索要件 取引年月日その他日付、取引金額、取引先により検索できること 必要 不要 不要
日付又は金額の範囲指定により検索できること 必要※1 不要 不要
二つ以上の任意の記録項目を組み合わせた条件により検索できること 必要※1 不要 不要
税務職員による質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じることができるようにしていること 不要 必要※2 必要※3
  • ※1:保存義務者が、税務職員による質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には、検索要件のうち②③の要件が不要となります。
  • ※2:優良帳簿の要件を全て満たしているときは不要となります。
  • ※3:検索要件を満たしている場合には「ダウンロードの求めに応じること」の要件は不要となります。

国税関係帳簿や国税関係書類などの電子保存は義務ではないため、パソコンなどを使って電子で作成したデータを紙で保存しても問題ありません。電子保存に対応するメリットとしては、下記のようなことが挙げられます。

電子データで保存するメリット

  • 紙に印刷する手間やコストを削減できる
  • 破損や紛失リスクが減少する
  • 探したい書類がすみやかに見つかる
  • 業務効率化につながる

さらに、電子帳簿等保存に対応して、国税関係帳簿の電子帳簿保存については要件を満たす場合は「優良な電子帳簿」として、最大65万円の青色申告特別控除の要件や過少申告加算税の軽減も適用できます。

過少申告加算税とは、税務調査を受けた後に修正申告をしたり、税務署による申告税額の更正を受けたりした場合に、通常の納税額の他にペナルティとして課される税金です。

また、最大65万円の青色申告特別控除は、最大55万円の特別控除の適用要件をクリアしたうえでe-Taxによる電子申告または優良な電子帳簿保存(仕訳帳・総勘定元帳など)を行うことで適用を受けられます。

電子帳簿保存で青色申告特別控除65万円控除の適用を受けるためには、優良な電子帳簿の要件を満たして電子データによる備付けおよび保存を行い、一定の事項を記載した届出書を法定申告期限までに提出することが必要です。

そして、所得税の確定申告書の「収入金額等」を記載する項目には、帳票をどのように作成・保存しているのかを記載する「区分」欄が、2021年分の書式から追加されていますので、対象の場合は区分に数字を記載します。

㋐欄、㋑欄の区分の□には、確定申告対象年の記帳・帳簿の保存状況について記載します。

電子帳簿保存法の規定に基づく優良な電子帳簿の要件を満たし、電磁的記録による保存に係る届出書(又は電磁的記録に係る承認申請書)を提出し、総勘定元帳、仕訳帳等について電磁的記録による備付け及び保存を行っている場合は、「1」を記入します。

事前準備や保存要件を満たす環境などが必要な優良な電子帳簿保存よりもe-Taxでの申告の方が、最大65万円の青色申告特別控除を受けやすいと言えるでしょう。

スキャナ保存(任意)

スキャナ保存は、紙で受領した書類や、自社または自分が作成・発行した紙の国税関係の帳簿や書類などをスキャンして読み取ったデータを保存する形式です。

スキャナ保存も、電子帳簿等保存と同様に義務化されていないため、対応するかどうかは任意となっています。スキャナ保存をする場合は、電子取引データの保存と同様に、可視性を担保することと、改ざん防止のために真実性を担保すること、検索機能を確保することが要件となります。

スキャナ保存の要件
項目 内容 補足
帳簿との相互関連性 書類に対応する帳簿との間で相互にその関連性を確認できる 2024年1月1日以後は「重要書類」のみ確認できればよく、「一般書類」では不要です。
訂正や削除ができないシステムに保存する、またはタイムスタンプを付与するなど
  • 訂正や削除ができないシステムに保存する、またはタイムスタンプ付与する(訂正や削除ができないシステムに保存する場合はタイムスタンプの付与は不要)
  • 書類の受領等後または業務の処理にかかる通常の期間(最長2か月以内)を経過した後、すみやか(概ね7営業日以内)に付与が必要
バージョン管理 書類を訂正、または削除した場合は、その事実および内容が確認できる
検索機能の確保 次の要件による検索が可能
  • 取引年月日その他の日付、取引金額
  • 日付または金額の範囲を指定して検索
  • 2つ以上の任意の項目を組み合わせて検索
すみやかに表示できるシステムである必要があります。税務職員によるデータのダウンロードの求めに応じられる場合は、「2つ以上の任意の項目を組み合わせての条件設定」といった検索機能にかかる一部要件は不要です。
バージョン管理 書類を訂正、または削除した場合は、その事実および内容が確認できる

また、税制改正に伴い、2022年からスキャナ保存は下記のような制度の廃止や要件の緩和が行われました。

スキャナ保存の要件の緩和内容

  • 税務署長の事前承認制度を廃止
  • タイムスタンプの付与期間が最長約2か月と概ね7営業日以内に変更
  • 受領者等がスキャナで読み取る際の国税関係書類への自署が不要に
  • 電磁的記録について訂正や削除を行った場合に、これらの事実および内容を確認することができるクラウド等において、入力期間内にその電磁的記録の保存を行ったことを確認できるときはタイムスタンプの付与に代えることが可能に
  • 検索要件の記録項目について、取引年月日その他の日付、取引金額および取引先に限定されるとともに、税務職員による質問検査権にもとづく電磁的記録のダウンロードの求めに応じる場合には、範囲指定および項目を組み合わせて条件を設定できる機能の確保が不要に
  • 相互牽制、定期的な検査および再発防止策の社内規程整備等の適正事務処理要件を廃止
  • スキャナ保存された電磁的記録に関連した不正があった場合の重加算税の加重措置を整備

電子帳簿保存法に対応するメリット

電子帳簿保存法に対応することで、法人や個人事業主にはどのような影響があると考えられるのでしょうか。電子帳簿保存法に対応するメリットとしては、下記のようなことが挙げられます。

コスト削減につながる

帳簿や書類を電子保存することで、紙の書類を整理してファイリングしたり、管理したりする人件費を削減できます。紙代やインク代、書類の郵送代など、1回あたりの金額は安価であっても、年単位で見るとまとまった費用となります。こうしたコストも削減が可能です。

また、紙の書類をファイリングして保存しておくスペース代も、電子保存によって削減できます。

帳簿類や取引書類は7年程度と長期にわたって保存することが義務付けられているため、すべての帳簿や取引書類を紙で保存するとなると、ある程度の広さの管理場所が必要となります。保存すべき書類の分量によって、事務所内での保存が難しくなれば、トランクルームや書類保管サービスなどの利用も検討しなければなりません。

その点、電子保存なら場所を取らずに必要書類を長期間保存できる点は大きなメリットです。

保存に関する業務を効率化できる

帳簿や書類を紙ではなく電子システムを使ってデータで保存することで、こうした書類の保存に関する業務を効率化できる点もメリットといえます。

まず、紙の帳簿や書類を保存するためには、印刷作業とファイリング作業が必要となります。用意したファイルにラベルをつけ、規則に則って整理しなければなりません。電子保存ならパソコンの画面上の操作だけで手軽に保存が完了します。なお、スキャナ保存をする場合は、スキャンの作業が発生する点には留意が必要です。

また、帳簿や書類を破棄する際も、紙の場合は溶融処理など、外部に情報を漏らさないよう徹底したうえで破棄する必要があります。電子データであれば、画面上で削除が可能なため、安全かつ手間もかかりません。

書類の確認がすぐにできる

紙で保存した帳簿や書類は、必要になるたびに保存場所へ取りに行かなければなりません。該当する書類を保存しているファイルにラベルなどをつけていたとしても、書類を確認するには時間と手間がかかります。トランクルームや書類保管サービスなどの外部の倉庫を利用していれば、さらに時間がかかるでしょう。

一方、電子保存であれば、パソコンなどの画面上で日付や内容などで検索し、手軽に必要な帳簿や書類のデータをすぐに確認することが可能です。

電子帳簿保存法に対応するデメリット

電子帳簿保存法に対応するメリットは多くありますが、デメリットがないわけではありません。どのようなデメリットがあるのか、詳しく見ていきましょう。

システム導入および運用コストがかかる

帳簿や書類を電子保存するために電子帳簿保存法に対応するシステムを新たに導入する場合、導入費用として一定のコストがかかります。

例えば、クラウドサービスを利用するなら、導入時の初期費用とクラウドサービスの運用中に毎月発生する月額費用がかかるケースが多いようです。事業者の規模や利用したいサービス、機能を踏まえて、自社に適したシステムを選ぶ必要があります。

業務フローを見直す必要がある

帳簿や書類の電子保存をするにあたり、スムースに対応できるように業務フローの見直し、適切な管理が必要です。

例えば、電子保存用のシステムを導入するのであれば「電子保存のどの段階までの処理にそのシステムを使うのか」「誰がシステムの運用を担当するのか」といったことを決めなければなりません。

従業員に従来の保存方法から電子保存へ変更することを周知し、電子帳簿保存法に対応するための電子データの作成方法や、保存されているデータの適切な管理方法も共有を徹底する必要があります。

電子保存に滞りなく対応するためにはさまざまな準備が必要となるため、スケジュールに余裕を持って対応方針を決めることがポイントです。

システム障害などのリスクに対応しなければならない可能性がある

紙ではなく電子データとして帳簿や書類を保存する場合、システム障害などのトラブルが発生するとデータが閲覧できなくなるリスクや、データが消失するリスクに備えなければなりません。そのため、導入するシステムを選ぶ際には、過去のシステム障害の発生頻度や対応時間、対応方法などについても確認が必要です。

また、自社のトラブルによって電子データの閲覧ができなくなるリスクにも備える必要があります。システムにアクセスするためのネットワークの遮断やパソコンのトラブルなどが起こると、必要な電子データの閲覧ができなくなる可能性があるためです。

システムトラブル発生時の対処法を事前に取り決めておきましょう。

電子帳簿保存法に対応しなかった場合の罰則

電子帳簿保存法では2024年1月より義務化されます。2024年1月以降、電子帳簿保存法に対応しなかったり、違反したりした場合は、さまざまな罰則を受ける可能性があります。

ここでは、電子帳簿保存法の不正抑止を目的とした罰則を確認しておきましょう。

重加算税の加算措置

電子取引データ保存やスキャナ保存について隠蔽や改ざんなどが発覚した場合、それによって起こった申告漏れ等に対する重加算税が10%加重されます。二重帳簿の作成や帳簿類の隠匿、破棄などの不正行為も該当します。

重加算税の加算の具体例

例えば、税務署の調査が入り過少申告が発覚した場合は、追加で納める税金の5%もしくは10%の過少申告加算税を支払うこととなります。さらに、過少申告加算税が課せられる場合において、電子データに悪質な隠蔽や改ざんがあった場合は、「過少申告加算税の基礎となる税額×通常の重加算税35%」に、ペナルティとして10%が加重されます。

2024年1月からの電子帳簿保存法改正による変更点

電子帳簿保存法は、施行以来、何度か改正を重ねています。最近では、2022年の改正によって、電子帳簿保存に対応するにあたり、税務署へ事前申請をする必要はなくなりました。事前に書類などを提出しなくても、電子帳簿等保存を適用することが可能です。

電子帳簿保存法の改正は、令和5年度税制改正においても2024年1月から適用される改正が行われています。ここでは、2024年1月からの改正における、保存形式別の変更点を確認していきましょう。

電子取引のデータ保存に関する改正

電子取引のデータ保存については、検索要件について大幅な緩和が行われました。また、宥恕措置の廃止と新たな猶予措置の整備も行われています。

検索機能のすべてを不要とする措置の対象者の見直し

税務署の調査が入る際は、調査担当者からのダウンロード要請に応えられる場合、すべての検索要件が不要となります。このすべての検索要件が不要となる対象者が、下記のように変更されました。

基準期間の売上高が5,000万円以下の者である場合

基準期間は法人なら2事業年度前、個人なら前々年にあたります。その期間の売上高が5,000万円以下(改正前は1,000万円以下)であれば、検索要件はすべて不要です。

電子取引を書面出力している者が一定の要件を満たす場合

電子取引データを書面に出力し、取引年月日、取引先などで整理された状態で提示することができる場合は、検索要件はすべて不要です。

宥恕措置の廃止と新たな猶予措置の整備

電子取引で受け取った請求書などのデータあっても、2023年12月31日までであれば、印刷して紙での書面の保存をすることで電子データの保存に代えることが可能です。2023年12月31日にはこの宥恕措置は終了します。

また、改正で新たに整備された猶予措置もあります。2024年1月からは「電子取引データ保存への移行ができなかった相当の理由がある」「税務調査などの際に、電子取引データのダウンロードの要請およびその電子取引データをプリントアウトした書面の提示・提出の求めにそれぞれ応じることができる状態である」という2つの条件を満たす事業者については、電子取引データを書面に出力し、かつ電子取引データをダウンロードできる状態にしておけば、保存時に満たすべき要件は不要となります。

国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存(電子帳簿等保存)に関する改正

一定の範囲の帳簿が電子帳簿の要件を満たす場合、過少申告加算税が5%軽減される「優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置」の適用を受けられます。

2024年1月からこの対象となる帳簿の範囲について見直しが行われました。

優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置の対象となる主な帳簿

  • 仕入帳
  • 総勘定元帳
  • その他必要な帳簿(売上帳、仕入帳、経費帳、賃金台帳、売掛帳、買掛帳、固定資産台帳)

なお、この軽減措置を受けるためには、適用を受けようとする所得税や法人税の法定申告期限までに「国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等に係る過少申告加算税の特例の適用を受ける旨の届出書(優良)」を提出する必要があります。

スキャナ保存に関する改正

スキャナ保存については、2024年1月から適用要件が下記のように変更されています。

解像度、階調、大きさに関する情報の保存が不要

国税関係書類をスキャナ保存する場合の解像度、階調、大きさに関する要件が不要となりました。なお、スキャナで読み込む際の解像度(200dpi以上)や階調(原則としてカラー)などは変更されていません。データ内に保持していた解像度や階調の情報も不要です。

入力者等情報の確認要件が不要

スキャナ保存をする際、誰がスキャナで読み取り作業を行ったかという入力者等情報の確認が不要となりました。

帳簿との相互関連性の確保が必要な書類が重要書類に限定

国税関係書類について、スキャナで読み取った書類はすべて帳簿との関連性を求められていました。しかし、法改正によって重要書類についてのみ、帳簿との関連性が求められるように変更されました。

重要書類は、契約書や領収書、送り状、納品書などの、資金や物の流れに関係する書類が該当します。

電子帳簿保存法とインボイス制度の関連

2023年10月1日からスタートするインボイス制度では、要件を満たした請求書や領収書などの総称である適格請求書(インボイス)が取り扱われます。

適格請求書は、紙の書類の他、電子データで発行・交付することも可能です。適格請求書の電子データを電子メールやWebサイトを介して授受した場合や、電子データ交換による取引を行うEDIなどによって発行または受領した場合は、電子帳簿保存法に準じた方法での保存が必要です。

また、電子取引で発行または受領した適格請求書は、電子取引のデータ保存要件が適用されます。

紙で受領した適格請求書は、紙のまま保存して問題ありません。紙で受領した適格請求書をスキャナ保存をする場合は、スキャナ保存の保存要件を適用することとなります。

なお、適格請求書として取り扱えるのは、記載要件を満たした下記のような書類です。

適格請求書として取り扱われる主な書類

  • 請求書
  • 見積書
  • 納品書
  • 領収書
  • レシート(適格簡易請求書)

電子帳簿保存法への対応は早めに行いましょう

電子帳簿保存法は、事業に関連する書類の電子保存を認める制度です。特に電子取引の電子データ保存については、副業収入を含むほぼすべての事業者に対して2024年1月から完全義務化されます。どのような書類を電子保存するべきか、保存形式や保存期間などを正しく理解し、できるだけ早く対応しましょう。

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この記事の監修小林祐士(税理士法人フォース)

東京都町田市にある東京税理士会法人登録NO.1
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