所得税の確定申告はいくらから?個人事業主や副業などケース別に紹介

2024/02/29更新

この記事の監修田中卓也(田中卓也税理士事務所)

一定の条件に当てはまる人は、年に1度必ず所得税の確定申告を行わなくてはいけません。申告が必要な条件を満たしているにもかかわらず申告しないと、ペナルティとして無申告加算税や延滞税というような追加で納める税金が増えてしまうため、「いくらから申告が必要か」は正確に把握しておくことが大切です。

どのような人に所得税の確定申告が必要か、収入額や働き方が異なる5つのケースと併せて見ていきましょう。

所得税の確定申告はどんな人に必要?

所得税の確定申告は、個人が1月1日~12月31日の1年間の所得を計算して税務署に報告し、その額に応じた税金を納める手続きのことです。納税額を自分で計算して確定させ、自分で申告するため確定申告と呼ばれているのです。

もし源泉徴収されているなら、正しい税額から源泉徴収されている税額を差し引き、税金の不足分があれば追加で納め、過払い分があれば返してもらいます。

まずは、所得税の確定申告が必要な方と不要な方についてご紹介します。

所得税の確定申告が必要な人

所得税の確定申告は基本的に、「所得金額-控除額」がプラスになる方全員に必要です。所得金額とは「収入-収入を得るために支出したお金」のことで、例えば自営業者なら「売上総額-(仕入金額+必要経費)」、給与所得者なら「総収入-給与所得控除」で求められます。

控除は、個人の事情を加味して税負担を調整する制度で、基礎控除や配偶者控除といった課税所得から一定金額を差し引く「所得控除」と、住宅ローン控除や配当控除といった課税額から一定金額を差し引く「税額控除」の2種類があります。

所得税の確定申告が不要な人

原則、「所得金額-控除額」がプラスになる人全員に必要とされる確定申告ですが、必要ない場合もあります。会社員の多くは、年末調整をするので確定申告は不要です。

ただ一方で、働き方の多様化で副業が増えてきました。例えば、給与所得者の場合、1か所からしか給与をもらっていない会社員(年収2,000万円以下)が、副業をしていても、副業の所得が20万円を超えない場合、所得税の確定申告は必要ありません。

税法上、副業という定義はなく、給与所得者の場合は給与所得および退職所得以外の所得が20万円を超えるかどうかが基準となるので、それぞれの所得の区分にあてはめて計算することがポイントです。

このように、確定申告が必要な方・不要な方の要件は細かく決められており、いくらから確定申告が必要かは、収入や働き方によってさまざまです。代表的なケースとして「個人事業主」「副業をしている給与所得者」「公的年金等の受給者」「専業主婦・主夫」「一時所得があった方」の5つのケース別に、所得税の確定申告の要不要を見ていきましょう。

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個人事業主の場合

個人事業主は「所得税額」を計算し、「税額控除」を引いた額がプラスになるなら所得税の確定申告が必要です。所得税額は速算表を参照し、下記の式を使用すれば簡単に求められます。

所得税額=課税される所得金額×税率-控除額

※ 課税される所得金額は、1,000円未満の端数金額を切り捨てた後の金額です。

所得税の速算表
課税される所得金額 税率 控除額
1,000円~194万9,000円 5% 0円
195万円~329万9,000円 10% 9万7,500円
330万円~694万9,000円 20% 42万7,500円
695万円~899万9,000円 23% 63万6,000円
900万円~1,799万9,000円 33% 153万6,000円
1,800万円~3,999万9,000円 40% 279万6,000円
4,000万円~ 45% 479万6,000円

例えば「課税される所得金額」が400万円なら、所得税額は下記のようになります。

400万円×20%-42万7,500円=37万2,500円

課税される所得金額

課税される所得金額は、「各種所得の合計額-所得控除」で算出します。所得控除とは、課税所得から一定金額を差し引けるもので、基礎控除や社会保険料控除、生命保険料控除などが当たります。

個人事業主の所得は、基本的には「収入-経費」です。給与を含めた他の所得もある場合は、「各種収入の合計額-各種経費の合計額」で、事業収入しかない場合は「売上総額-(売上原価+必要経費)」で求めます。

税額控除

税額控除とは、上記で算出した所得税額から直接一定金額を差し引くものです。住宅ローン控除、配当控除、政党等寄附金等特別控除などがあります。

所得控除や税額控除がいくらになるかは、収入や所得によって異なります。いくらであればプラスになり、所得税の確定申告が必要になるのかは一概にはいえず、確定申告が必要かどうかは計算してみないとわかりません。

個人事業主で所得税の確定申告が不要な人は?

所得金額が、多くの人に適用される所得控除である「基礎控除」以下の金額なら、確定申告は不要です。

基礎控除は合計所得金額が2,400万円以下の場合、48万円です。所得が48万円以下なら、課税される所得金額が発生しません。「課税される所得金額×税率-税額控除」はプラスにならず、所得税の確定申告は不要となります。

個人事業主の確定申告については、以下の記事で解説していますので参考にしてください。

副業をしている給与所得者の場合

給与所得者は、給与や賞与から所得税が源泉徴収されており、年末調整で過不足分が調整されるので、年収2,000万円を超えない限り、基本的に所得税の確定申告は必要ありません。

しかし、副業をしている場合は、所得金額によって申告が必要になることもあります。具体的な例を見てみましょう。

勤務先からの給与以外に、20万円以上の所得がある

大家として家賃収入を得ている、ブログを運営して広告収入を得ている、ハンドメイド作品を販売して収入を得ているなど、副業を行っており、その所得が年間20万円を超える場合は所得税の確定申告が必要になります。

この「年間20万円」は所得を指すため、例えばフリマアプリでハンドメイド作品を売って100万円の収入を得ていても、制作に85万円かかっていれば所得は15万円となり、確定申告は不要です。

2か所以上から給与をもらっている

アルバイトの掛け持ちなどで2か所以上から給与を受け取っているとき、給与の全部が源泉徴収の対象となる場合で、年末調整されなかった給与の収入金額と給与所得および退職所得以外の所得金額との合計額が20万円を1円でも超えると、所得税の確定申告の対象となります。

給与所得者で所得税の確定申告が不要な人は?

給与所得者は年収2,000万円を超えない限り、基本的に所得税の確定申告は必要ありません。

また、副業をしていたり、2か所以上から給与をもらっていたりしても、給与の収入金額の合計額から、雑損控除、医療費控除、寄附金控除、基礎控除以外の各所得控除の合計額を差し引いた金額が150万円以下で、かつ、給与所得および退職所得以外の所得金額が20万円以下の人は、申告の必要はありません。

例1

勤務先から400万円の給与を受け取り、勤務先で年末調整を行っていて、バイトなどの副業での給与収入が15万円を得ているがバイト先でも源泉徴収の対象とされていれば確定申告は不要です。なぜなら、年末調整されなかった給与の収入金額と給与以外の収入とその他の所得の合計が20万円以下になるからです。

例2

A社から100万円、B社から80万円の給与を受け取っている人が、雑損控除・医療費控除・寄附金控除・基礎控除以外の所得控除が、給与所得控除62万円、生命保険料控除5万円あるとします。

この場合、給与収入から各種所得控除を引いた合計は給与収入(100万円+80万円)-各種所得控除(62万円+5万円)=113万円で150万円以下になるので、給与の全部が源泉徴収の対象とされていれば所得税の確定申告は不要です。

給与所得者の確定申告については、以下の記事で解説していますので参考にしてください。

公的年金等の受給者の場合

公的年金等の受給者は、年金等の収入が400万円以下であれば基本的に所得税の確定申告は必要ありません。ただし、アルバイトなどで公的年金等以外に20万円を超える所得がある場合は、確定申告が必要になります。

公的年金以外の所得としては、例えば次のようなものがあります。

  • アルバイトの給与
  • 個人年金の受け取り
  • ネットオークションでの売上
  • 生命保険の満期払戻金
  • 原稿料、講演料、印税などの受け取り

なお、海外の年金を受け取っている場合は源泉徴収がされないので、原則として所得税の確定申告を行う必要があります。

専業主婦・主夫の場合

専業主婦・主夫は、扶養されている場合、基本的に所得税の確定申告の必要はありません。ただし、アルバイトをする、フリマアプリで嗜好品を販売するなどで副業の所得を得ている場合、状況によっては所得税の確定申告が必要です。

状況別に、所得税の確定申告の要不要を見ていきましょう。

給与所得が103万円以下の場合

専業主婦・主夫の収入が、パートやアルバイトによる給与所得の場合、年間の収入が103万円以下であれば、所得税の確定申告は不要です。

給与所得控除分として最低55万円+基礎控除分48万円が適用されるためです。この場合、納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下であれば、納税者本人が年末調整や確定申告で配偶者控除の適用を受けられます。

給与所得が103万円を超える場合

専業主婦・主夫のパートやアルバイトによる収入が103万円を超えても、1か所から給与を受け取っている場合は、源泉徴収と年末調整が行われるため所得税の確定申告は不要です。

この場合、納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下、専業主婦・主夫本人の年間合計所得金額が201万6,000円未満であれば、配偶者が、年末調整や確定申告で配偶者特別控除の適用を受けられます。

2か所以上で合計103万円を超える給与を受け取っている場合

専業主婦・主夫の給与収入が103万円を超え、さらにパートやアルバイトの掛け持ちなどで2か所以上から給与を受け取っている場合は、給与所得者が副業をして2か所以上から給与を受け取っているケースと同じになります。

年末調整が行われていない方の給与の収入金額とそれ以外の所得金額の合計が20万円を超える場合は確定申告が必要ですが、給与収入の合計額から、雑損控除・医療費控除・寄附金控除・基礎控除以外の各種所得控除を引いた金額が150万円以下、かつ給与所得および退職所得以外の所得が20万円以下なら所得税の申告は不要です。

この場合も収入が201万6,000円未満であれば、納税者側においても配偶者特別控除の適用を受けられます。

給与以外の所得が年間20万円を超えている場合

給与以外の所得を得ている場合に確定申告が必要なのは、所得が年間20万円を超えるケースです。

例えば、ハンドメイド作品をネット上で販売して100万円の収入があり、材料費として20万円かかっている場合、所得は100万円-20万円=80万円。基礎控除を引いた金額は80万円-48万円=32万円となりますので、他に適用される控除がない場合は、所得税の確定申告が必要です。

開業をする場合

専業主婦・主夫は、配偶者の扶養家族になったままでも、開業することが可能です。

副業として仕事をした場合、そこから得られた所得は「雑所得」となり、所得税の確定申告が必要です。また、副業を営利性、有償性を有し、かつ反復継続して行われる場合など事業として行う場合は「事業所得」になり、一定の期日までに所得税の青色申告承認申請手続をするなどを行えば、青色申告特別控除などの特典が受けられます。

どちらの場合も合計所得金額が48万円以下であれば、納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下の場合、配偶者控除が適用され、所得税の確定申告の必要はなくなります。

なお、開業して仕事をすると個人事業主となりますので、「課税される所得金額×税率-税額控除」がプラスになるなら、所得税の確定申告が必要です。

一方、個人事業主では赤字の場合は原則、確定申告をする必要がありません。しかし、個人事業主で青色申告をしている場合は、損失申告をすることで、事業の赤字を他の所得の黒字と損益通算できたり、翌年以降の3年間に赤字を繰越し(純損失の繰越控除といいます)が可能になりますので、確定申告しておいたほうがいいでしょう。

一時所得があった人の場合

個人事業主、給与所得者、専業主婦・主夫にかかわらず、一定額以上の金額を「一時所得」として得た場合は、所得税の確定申告が必要です。

一時所得とは、懸賞の賞金や競馬の当選金といった、一時的に得た臨時収入のことで、下記4つの条件を満たすものとして定義されています。

  • 営利目的の継続的行為から生じたものではない
  • 労務や役務の対価ではない
  • 資産売却や譲渡の対価ではない
  • 一時的な所得である

一時所得は、具体的には次のようなものが該当します。

  • 懸賞や福引の賞金、賞品
  • クイズ番組の懸賞金
  • 競馬や競輪の払戻金
  • 生命保険の解約返戻金や満期金(一時金として受け取る場合)
  • 長期損害保険の満期返戻金
  • 法人から贈与された金品(業務として受けるものや継続的に受けるものを除く)
  • 遺失物取得または埋蔵物発見者が受ける報労金

しかし、これらを受け取ったからといって、必ずしも所得税の確定申告が必要となるわけではありません。一定以上の金額を受け取った場合のみ、所得税の確定申告の対象となりますので、下記の計算で確かめてみましょう。

一時所得の金額=総収入金額-収入を得るために支出した金額-特別控除額(最大50万円)

収入を得るために支出した金額とは、収入を得るためにかかった直接的な経費のことを指し、例えば競馬なら払戻しを受けたレースの馬券購入費や、生命保険にこれまで支払ってきた保険料のことです。

特別控除額と相殺されるかがポイント

「総収入金額-収入を得るために支出した金額」が50万円以下なら、特別控除分で引ききれるので、所得税の確定申告は必要ありません。

「総収入金額-収入を得るために支出した金額」が50万円を超える場合は、その2分の1に相当する金額を他の所得と合算し、確定申告を行います。

例えば、専業主婦・主夫でパートによる給与収入が年間103万円以下の方が、満期保険金を受け取った場合を考えてみましょう。「受け取った保険金-これまでに支払った保険料」が50万円以内の場合であれば、一時所得はゼロ円です。給与収入も給与所得控除と基礎控除の範囲内なので、所得税の確定申告は必要ありません。

一方、「受け取った保険金-これまでに支払った保険料」が50万円を超えている場合は、所得税の確定申告が必要になります。

なお、保険料の支払いは配偶者が行ったなど、保険料の支払人と受取人が違う場合は、所得税ではなく贈与税の対象になります。

所得税の確定申告が必要かどうか確認しよう

所得税の確定申告が必要か不要かは、得ている所得の種類や所得の額によって異なります。

うっかり申告漏れをしてペナルティを受けることがないように、環境が変わったときや一時所得があったときは、特にしっかりとチェックしましょう。

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この記事の監修田中卓也(田中卓也税理士事務所)

税理士、CFP®
1964年東京都生まれ。中央大学商学部卒。
東京都内の税理士事務所にて13年半の勤務を経て独立・開業。
従来の記帳代行・税務相談・税務申告といった分野のみならず、事業計画の作成・サポートなどの経営相談、よくわかるキャッシュフロー表の立て方、資金繰りの管理、保険の見直し、相続・次号継承対策など、多岐に渡って経営者や個人事業主のサポートに努める。一生活者の視点にたった講演活動や講師、執筆活動にも携わる。

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