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家族と一緒に起業!家族を従業員として雇うメリットや注意点とは?

起業するときに、事業内容によっては、人手が足りず従業員を雇用しようと思うことがあります。そんなときに、身近にいて一緒に働いてくれる家族と起業する人もいるでしょう。

しかし、家族を雇う場合、通常の雇用の手続きとは異なる点があります。

今回は、個人事業主と法人それぞれのケースで、家族と一緒に働く場合に気を付けるポイントについて解説します。

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  • 青色申告をする個人事業主が家族への給与を経費にするには、青色事業専従者給与の届出書の提出が必要である
  • 家族従業員は、原則として雇用保険や労災保険の対象にならない
  • 家族従業員については、実際に働いていないのに給与を支払うことや、税務上のみなし役員の扱いに注意しなければならない

「家族と一緒に起業」どんなパターンがあるのか?

起業するときに家族を従業員として雇用したり、会社を設立して役員に就任してもらうなどのパターンがあります。

まずは、起業する際に家族も仕事に従事してもらう場合、どのような形が考えられるのか、パターン別に見てみましょう。

個人事業主として起業し、家族を従業員として雇う場合

個人事業主として起業して、家族に仕事を手伝ってもらうパターンです。また、飲食店などを夫婦で切り盛りするといったケースでも、どちらかが個人事業主となって、もう一方を雇っているということになります。

個人事業主の場合は、特に後述する青色事業専従者の扱いが重要です。

法人として起業(法人設立)し、家族を従業員として雇う場合

会社を設立して、家族に仕事を手伝ってもらうパターンです。この場合は、社長の家族といっても、雇用するのは法人です。そのため、個人事業主のように青色事業専従者の届出をするといった手続きは不要です。

会社で雇用する場合は、基本的に家族従業員以外の従業員を雇用する場合と大きな違いはありません。異なる点としては、家族従業員は原則として雇用保険に加入できないといったことや、労災保険の対象外であるといった点があります。

法人として起業(法人設立)し、家族を役員とする場合

会社を設立するなら、従業員として雇用する方法のほかに、取締役などの役員として就任してもらうこともあります。

役員に就任してもらう場合は、社会保険・所得税などの扱いは家族以外の役員と何ら変わりありません。どちらかといえば、後述するように、登記されていなくても税務上の役員として扱われる「みなし役員」に該当するケースがあるので、家族に働いてもらう場合の働き方には、注意する必要があります。

節税効果も!従業員として雇うメリットとデメリット

家族従業員を従業員や役員として働いてもらうと、どのようなメリットがあるのかをまとめてみましょう。

個人事業主が従業員として家族を雇う場合のメリット

まずは個人事業主が従業員として家族を雇う場合のメリットについて見ていきます。青色申告の場合も白色申告の場合も、個人事業主と生計を一にする配偶者や子などの親族(年末時点で15歳以上の者に限る)で、年間6か月を超える期間、専属的に従事している人が条件になります。別に仕事をしていて、副業的に手伝っている場合は認められないということです。専ら従事する「専従」である必要があります。

メリット1:青色申告の場合は、青色事業専従者給与を必要経費として計上できる

個人事業主が青色申告者であれば、「青色事業専従者給与」を必要経費として計上できます。

青色事業専従者の給与は必要経費に算入できるので、その分、個人事業主の所得税や住民税を減らすことができます。

ただし、青色事業専従者にとっては、その分が給与所得になったり、青色事業専従者は配偶者控除や配偶者特別控除、扶養控除の対象にできなかったりといった側面もあります。また、給与の額も、世間一般の相場を目安に設定する必要があります。具体的に、どの程度かけ離れていたら認められないということは定められていませんが、少なくとも、どのような仕事をやってもらうか明確にして、青色事業専従者給与の金額もそれに見合ったものにしましょう。

青色事業専従者にすべきかどうかについては、税理士に相談するなどして決めましょう。

メリット2:白色申告の場合は、事業専従者控除が受けられる

個人事業主が白色申告者であれば、青色事業専従者のように家族への給与を必要経費に算入することはできませんが、「事業専従者控除」を受けることができます。

事業専従者控除は、「控除」の名の通り、給与の支払いの有無にかかわらず家族従業員がいれば受けられる控除です。

控除額は、以下の金額のいずれか低い額です。

1)配偶者であれば86万円、配偶者でなければ専従者一人につき50万円
2)事業専従者控除を適用する前の事業所得等の金額を専従者の数に1を足した数で割った金額

青色事業専従者給与と異なり、実際に給与を支払っていたとしても、上記の計算で決まった額が必要経費の算入額となり、かつ家族従業員の給与所得となります。

メリット3:労働保険の手続きが必要ない

これは法人にも言えることですが、家族従業員の場合は、原則として労災保険や雇用保険の対象になりません。

家族従業員が、労災保険や雇用保険の対象となるのは、家族従業員以外の従業員がいる場合で、かつ、家族従業員もそれ以外の従業員と同様の働き方をしているといった場合です。

家族従業員以外の従業員と同様の働き方というのは、次の2点を満たすことです。

1)事業主の指揮命令に従っていること
2)始業・終業や休憩時間、休日などの勤務形態や、給与の計算基準が、家族従業員以外の従業員と同様であること

家族従業員以外の従業員 上記2つの要件 家族従業員の労働保険関係
いない 労災保険や雇用保険に加入できない
いる 満たす 労災保険や雇用保険に加入しなければならない
満たさない 労災保険や雇用保険に加入できない

法人が従業員として家族を雇う場合のメリット

次に法人が従業員として家族を雇う場合のメリットについて見ていきましょう。

メリット1:人材募集をする必要がない

家族従業員の場合は、人材募集をする必要がなく、また退職の心配もないので雇用が安定するという人事的なメリットがあります。特に法人の場合は、個人事業主の事業専従者や青色事業専従者のように、6か月などの従事期間による制約がなく副業的にも働いてもらうことができるため、人が足りないときに手伝ってもらうという働き方も可能です。

メリット2:各種所得控除を受けながら給与を経費に入れられる

例えば扶養の範囲内で働きたい場合、配偶者控除や扶養控除を受けながら、給与も経費に入れることが可能です。特に家族従業員は、労働保険と同じように、他に従業員がいて、かつ同じような待遇で働いているといった要件を満たさなければ最低賃金の適用もありません。働く時間にかかわらず、毎月の給与を、所得控除を受けられる金額に抑えておくことも可能です。

具体的には、年収を103万円以内に設定して、12で割って85,000円といった額面で給与を支給しているケースが多いです。

ただし、個人事業主については、青色事業専従者は配偶者控除や扶養控除の対象にできない点に注意が必要です。

法人が役員として家族を雇う場合のメリット

法人が役員として家族を雇う場合、次のようなメリットがあります。

メリット1:労務管理が不要になる

役員の場合は、出勤簿の作成や残業代の計算など、労働基準法に定められた各種の労務管理が不要です。

このメリットは、家族従業員以外の従業員がいる場合に特に当てはまります。家族のみで経営している場合は、家族が役員ではなく従業員であっても、労務管理が不要です。しかし、家族従業員以外の従業員がいると、労務管理が必要になる場合があります。その点役員であれば、どのようなパターンでも労務管理が不要です。

労務管理の要否

家族以外の従業員 家族が役員 家族が従業員
あり 不要 必要な場合あり(※)
なし 不要 不要

※労務管理が必要な場合とは、労働保険の家族従業員への適用要件と同じく以下の要件を満たす場合です。
1)事業主の指揮命令に従っていること
2)始業・終業や休憩時間、休日などの勤務形態や、給与の計算基準が、家族従業員以外の従業員と同様であること

メリット2:モチベーションのアップにつながる

役員に就任してもらうのであれば、仕事へのモチベーションアップにつながることもあります。家族ではない役員と同じように、経営陣の一人として扱うのであれば、本人のやる気にもつながることもあるでしょう。

ただし、家族を役員として業務に従事してもらう場合には、職務の範囲もより明確にしておいたほうがよいです。例えば、投資をするなど支出が絡む場面で、お互いの資金への意識が違うと意見の相違も生まれます。

特にこうしたことは配偶者が役員のケースに多いように感じます。家族だからこそ口が出しやすいという点もありますので、家族を役員にする場合は、どこまで役員として経営にコミットするのかということを事前にしっかりと話し合っておきましょう。

メリット3:役員のための保険の加入ができる

生命保険会社によっては、法人の役員向けの保険メニューを用意しています。法人で生命保険に加入することで、保障を受けつつ生命保険料(保障内容などによっては一部)を経費として計上できます。

個人事業主が家族を雇う場合の、給与の支払いに必要な手続き

個人事業主が家族を雇用する場合は、青色申告と白色申告で手続きが異なります。

事業主が、青色申告事業者の場合は、管轄の税務署に対して「青色事業専従者給与に関する届出書」の提出が必要です。

提出期限は、家族従業員を雇用した日から2か月以内(1月1日~1月15日の間に雇用した場合はその年の3月15日まで)です。

分かりやすく「雇用した日」と書きましたが、厳密には、「家族への給与の必要経費算入を開始する日」が正解です。家族従業員を雇用したら必ず青色事業専従者給与に関する届出書を提出しなければならないわけではありません。青色事業専従者給与は、受け取った家族の給与所得となり、家族に所得税が課税されます。どちらが税金面で得なのか、税理士や家族と相談して提出すればよいでしょう。

その他の書類としては、家族が初めて給与を支払う従業員や役員である場合、管轄の税務署に対して、「給与支払事務所等の開設届出書」という書類を提出する必要があります。

この届出書は、給与支払いを行う事業者として、税務署に所得税の源泉徴収を行うことを伝えるための書類ですので、忘れずに提出しておきましょう。

法人が家族を雇う場合の、給与の支払いに必要な手続き

従業員や役員である家族に対して、給与を支払う場合も、基本的には家族以外の従業員や役員に対して給与を支払う場合と変わりません。

健康保険や厚生年金保険も加入義務がありますし、所得税の源泉徴収や住民税の天引きについても通常通り行います。唯一違う点としては、雇用保険料の天引きをおこなわない点です。役員であればもともと雇用保険に加入できませんが、従業員であっても、家族従業員は雇用保険に原則として加入できません。よって、雇用保険料の天引きも必要ありません。この点は個人事業主も同じです。

「給与支払事務所等の開設届出書」が必要なのは個人事業主の場合と同じです。ただし、家族に給与を支払う前に、自分の役員給与の支払いをしていれば、そのタイミングで届け出ることになります。

家族を雇って起業する際の注意点

家族を雇って起業する際の注意点について見ていきましょう。

注意点1:名ばかり従業員、名ばかり役員に注意

家族従業員や役員について最も基本的ですが、意識されにくい点が名ばかり従業員や名ばかり役員です。「名ばかり」とは実際には勤務していないのに、給与を支給することです。家族に「節税」のために扶養の範囲内で給与を支給するといったケースが考えられます。家族に給与を支給するには、事業のために働いているということが大前提です。

「節税」という言葉が独り歩きして、実際には家族は勤務していないのに、給与を支給して経費計上するといったことはできません。働いているからこそ給与を支払うことができるという基本的なことを忘れないようにしましょう。

注意点2:税務上の「みなし役員」に注意

法人の場合、役員報酬には厳しい制限が設けられています。例えば、役員報酬の月額は年間を通して一定額である必要があったり、役員に賞与を支給する場合は決められた期限までに税務署に支給日や支給額を届け出る必要もあります。しかし、従業員であればこのような制限はありません。

もしこうした制限が取締役など登記された役員だけに有効だとすると、実質的には経営者なのに、こうした役員への給与の制限を回避するためにあえて家族従業員として勤務するということも可能になってしまいます。そのため、登記されていない人でも、実際には経営者と同視できるような人は役員報酬の規定を適用しなければいけません。

このみなし役員については親族にだけ適用されるわけではありませんが、家族経営の会社は要注意です。一方の配偶者が代表取締役で、もう一方は登記されていないけど給与を支払っているといった会社で、「従業員」である配偶者の給与が毎月変動していれば利益調整だととらえかねられません。立場は「従業員」であっても、家族従業員への給与を明確な理由なく毎月変動させるのは、税務上避けたほうがよいでしょう。

注意点3:家族従業員以外の従業員とのバランスに注意

家族従業員の以外の従業員がいる場合は、家族従業員との給与体系や働き方の違いに気を付けましょう。

あまりに家族従業員と家族従業員以外の従業員で待遇に差があれば、家族従業員以外の従業員の不満・不平の温床となります。みなし役員の規定もありますし、家族従業員についても出勤簿を付けるなど、労務管理をしっかりと行うようにしましょう。

メリットや注意点をしっかり理解してから検討しよう

家族従業員は、事業主にとって一緒に働きやすい反面、特に税務の点でみなし役員の規定をはじめ、多くの検討事項があります。家族従業員については、経営のかじ取りを誰がやるのかを明確にすることや、給与の額の理由付けのためにも、どの範囲で業務をやってもらうのかということをしっかりと決めておくことが大切です。

※記事内にある各書式は、2021年9月現在、税務署などで配布しているものです。変更になる場合があります。

photo:Getty Images

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