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フェムテックとは?市場規模は5兆円!サービス事例や起業時のポイントを解説

女性の健康の悩みを最新技術で解決する「フェムテック」。近年、市場が急速に拡大し、さまざまな製品やサービスが登場している注目の分野であり、日本国内企業の参入も相次いでいます。

今回はこのフェムテックに注目。いったいどんなものなのか、実際にあるサービスや事例、小規模事業者が取り組む上でのポイントにも触れながら解説します。

  • 「フェムテック」とは「女性特有の健康問題をテクノロジーの力で解決すること」
  • 「ルナルナ」など、フェムテック分野で成功を収めているビジネスモデルは多い
  • ターゲット層が広く、解決すべき事例は未だに多いため、スモールビジネス参入の余地は十分にある

フェムテックとは?

まだまだ聞き慣れない方も多いかと思いますが、フェムテックという言葉は「Female(=女性)」と「Technology(=テクノロジー)」の2つからできた造語です。デンマーク出身の女性起業家 イダ・ティンが月経アプリへの投資を募集する際に用いたのが最初だといわれており、女性特有の健康問題をテクノロジーの力で解決することを表す言葉です。

近年、このフェムテックに取り組む企業が増えており、従来とは異なる発想の生理用品や妊活をサポートする製品、育児に役立つアイテムなどがマーケットに続々登場。経済的効果も大きく、2025年までには世界市場の規模が5兆円に迫る見通しともいわれています。

日本でも総合商社の丸紅がフェムテックのプロジェクトチームを発足させたり、2022年2月に開催予定の「健康博覧会2022」ではフェムテックゾーン開設が決定するなど、動きが活性化しています。

フェムテックが拡大した理由は、テクノロジーの進化と女性の活躍

女性特有の身体や病気の悩みというのは、非常にデリケートな分野です。公の場で話題にしづらく、タブー視する風潮がこれまでは少なからずあったかと思われます。それがなぜ近年、フェムテックの市場が広がってきたのでしょうか。理由としては次のようなことが考えられます。

理由1.テクノロジーの進化

まず考えられるのは、技術の進化です。発展したセンサーの技術などを活用することで、女性の体調に関する情報を記録、データ化できるようになり、月経管理アプリなどが登場しました。テクノロジーの力で女性の不調をサポートできる希望ができたことがフェムテック市場の拡大へつながったと言えます。

理由2.社会で活躍する女性たち

女性たちが社会で目覚ましい活躍を見せ、企業で重要なポジションを担うのはもちろんのこと、自ら起業する女性も増えてきました。そうした中で女性が女性のためのサービスを開発する事例が増加したことも、フェムテックが勢いづいた要因の一つと考えられます。

理由3.女性たちが社会に声を上げる手段として

近年になって、女性たちがこれまで人に言いづらかった悩みをオープンにしていく動きが加速化しつつあります。その象徴的な出来事の一つが、女性たちがSNSなどで連帯してセクハラや性的被害を訴えた「#MeToo」運動です。女性たちが声を上げる社会へ世界が変革しつつあり、それもまた女性の健康をサポートするフェムテックを後押ししたと言えるでしょう。

フェムテックで解決が期待できる課題とは

フェムテックでは女性のどのような悩みが解決できるのでしょうか。

月経、生理の悩み解決

生理とともに訪れる身体の不調をサポートするフェムテックとして、月経時期を予測するアプリ、快適さを重視した生理用品の月経カップや吸水ショーツなどのアイテムが登場しています。

妊娠・出産・授乳等の悩み解決

人によっては課題となる、妊娠や出産。そもそも妊娠できるか否か……という悩みから始まり、妊活や不妊治療による消耗やストレス、妊娠した際の体調管理、出産後の授乳などの問題といったように、悩みは本当に尽きません。

これらをサポートするフェムテックとして、妊活中や妊娠期間の体調管理ができるアプリ、母乳育児に役立つウェアラブル搾乳機などのアイテムが出てきています。

更年期、乳がん等の悩み解決

年齢を重ねた女性が迎える更年期の悩みに対応するフェムテックは、更年期や閉経などを表すメノポーズ(menopause)という言葉から「メノテック」とも呼ばれる注目カテゴリー。こちらの分野では、オンライン相談サービスや骨盤底筋を鍛えるトレーニングアイテムなどが登場しています。

また、女性がかかりやすい病気と向き合ったフェムテックの事例としては、乳がん患者向けのブラジャーなどが挙げられます。

セクシャルウェルネスの悩み解決

「セクシャルウェルネス」とは、セクシュアリティに対して身体的、感情的に健康である状態のこと。健全な性というのもまた女性の大切な課題であり、性的な健康や喜びのためのケアの提案、セクシャルやウェルネスをコンセプトにした製品が登場し始めています。

フェムテック分野の事例

現在、国内外でさまざまな事例が登場しているフェムテック。実際にどのようなものがあるかをご紹介しましょう。

生理日予測アプリ「ルナルナ」

ルナルナ」は、2000年にスタートし、2021年に累計1700万ダウンロードを突破した国内のフェムテックの草分け的サービス。生理日予測や排卵日予測など女性の身体のリズムに合わせた健康管理ができ、最近では化粧品メーカーとコラボレーションした美容アドバイスのコンテンツなども取り入れています。

フェムテックの商品に特化したECサービス「fermata store」

fermata store」は世界初のフェムテック専門のオンラインストア。月経や妊娠&産後ケア、セクシャルウェルネスなど各分野の製品が揃っています。オンラインのお店に加えて、2020年に日本初のフェムテック専門の路面店「New Stand Tokyo」を東京・乃木坂にオープンし、2021年には「女性からだ会議大賞®2021」の優秀賞を受賞しました。

産後の尿もれ予防グッズ「エルビートレーナー」

エルビートレーナー」は尿もれの原因となる出産や加齢による骨盤底筋の衰えを防ぐために開発された、イギリス発のトレーニングデバイス。スマホと連動させてゲーム感覚で飽きずに訓練を続けられるのが特徴。アカデミー賞の候補者に配られるノベルティに選ばれて話題を呼びました。1,000人以上の医療従事者が推奨している製品です。

女性向けプロテイン「KOREDAKE」

KOREDAKE」は、女性に不足しがちな成分をふんだんに取り入れたプロテイン。2020年に販売開始後、口コミをきっかけに話題に。2020年10月時点での累計販売数が発売開始直後と比較して100倍と急成長し、Instagramでのタグ付け投稿も5,000件を突破したという注目製品です。

スモールビジネスで「フェムテック分野」に挑戦する際のポイント

急激な躍進を遂げ、ビジネスとしての注目度も高まりつつあるフェムテック。この領域に小規模事業者が挑戦する際には、どのようなことを押さえておくべきなのでしょうか。

健康、ストレス、生活改善…多岐にわたる女性のニーズに対応する

フェムテック市場に今後参入していくならば、月経、妊娠、更年期、セクシャルなど既存のプロダクトにとらわれず、女性のストレス問題に焦点をあててみる、子育て世代だけでなく高齢者向けサービスを考えてみるなど、より多様な視点からアプローチを考えていくことが大切と言えます。

女性の細やかなニーズに応える商品開発

女性の健康問題は、非常に繊細かつ複雑なもの。たとえば、更年期の症状だけでも、ほてり、動悸、不眠などさまざまなものがあります。それだけに、潜在する細やかなニーズにしっかりフィットするフェムテックを提案できれば、固定ファンをつかんで定番商品化という成功につなげていくこともできるでしょう。そして、細かい希望に対応した商品開発は、大企業よりも試行錯誤の段階から融通を利かせやすいスモールビジネスのほうが有利になる場合もあります。

デジタルネイティブな若者をターゲットに

フェムテックのおもなターゲット層と考えられるのは、妊娠、出産、子育てなどに直面する20代~40代の女性。ただ、女性の身体の悩みというのは、初潮を迎えて急激に身体が変化する10代のときから既に始まるものであり、かつ、近年になって女性の身体と性に関する話題がよりオープンに取り上げられるようになったことを考慮しても、今後フェムテックのニーズがより若い層に広がることも十分考えられます。

また、今の若い世代は生まれたときからパソコン、スマホと親しんでいるデジタルネイティブ。いい商品を見つけたときにSNSで共有する人が多いだけに、若い層を取り込むことで製品への注目度を高めることが期待できます。これらのことから、フェムテックのビジネスを展開する際は、10代~20代の若者へのアプローチを常に意識しておくのが得策と言えるでしょう。

コミュニティ活用でユーザーの声を反映

フェムテック製品は女性のデリケートな悩みに触れるもの。それだけに、実際に使うユーザーの声に耳を傾けることが非常に大切ですが、そこで役立つのがコミュニティの形成です。

例えば、フェムテック製品の展示やワークショップ、ユーザーたちのコミュニケーションなどを目的としたイベント「Femtech Fes!」など、スモールビジネスの小回りが利く強みを活かして、フェムテックに関心がある女性たちの少規模コミュニティを立ち上げていくやり方などもよいでしょう。

身体の悩みは大勢の人がいる場所では話しづらいという女性は決して少なくはないはず。それだけに、あえて少人数にすることでユーザーの正直な思いや要望を聞いて商品に反映していくことも可能なはずです。

時流に合わせたサービス作りを考えていく

近年、女性のライフスタイルは急速に変化しています。そのため、フェムテックに挑戦する際は、常に時流を見据えて、取り組んでいるものが時代にマッチしているかどうか見極めることが大切です。

たとえば、前の項で紹介した生理管理アプリ「ルナルナ」は、2000年にスタートした当初は生理日の管理を主体とするサービスでしたが、時代の流れとともに進化し、現在は、さまざまな機能を追加したり、コラボサービスなどを展開しています。

新しいアイデアを取り入れたり、方向転換をしたりする場合、スモールビジネスの身軽さを活かすことで、より時代のニーズに合ったものを目指していくことが可能になるでしょう。

フェムテックは未知の可能性を秘めた新たな市場

女性の健康や性と向き合うフェムテックは、未知の可能性を秘めている市場だと言えます。女性たちの声に耳を傾けて細かいニーズを探り、時流に合ったサービス作りを心がけるなど、ポイントを押さえて展開していけば、新規参入の事業者でも成功は十分期待できるでしょう。

参入を検討している方は、今回紹介した事例などから挑戦の仕方を考えてみてください。

photo:Getty Images

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