脱ギリギリ!確定申告を余裕で終わらせるための習慣化・効率化のコツ

2021/09/02更新

この記事の執筆者入野 拓実(税理士)

「確定申告が毎年期限ギリギリになってしまう」とお悩みの方は多いようです。

  1. 年明け頃「そろそろ準備しないと」と思いつつも動き出せない
  2. 3月になりようやくレシートをかき集める
  3. 数日かけて一気に入力
  4. 3月15日に提出

というのが典型的なパターン。今回は、「もう確定申告で慌てたくない!」という方に向けて、日々効率的に入力作業をしていくためのコツをお伝えします。

「申告期限直前にまとめて入力」は、実は非効率

確定申告期限直前に1年分の作業をまとめて行おうとして、スムーズに進まなかった経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

たとえば、

  • レシートをなくした
  • 控除証明書をなくした

→再発行の手間がかかる。最悪のケースでは経費にできないことも考えられる

  • ソフトの操作方法を忘れた
  • 振込の内容が思い出せない

→思い出す時間のロス。毎年毎年同じところ躓くので二度手間

  • 通帳が合計記帳された
  • ネットバンクの履歴が過去2ヵ月しか遡れない

→銀行に再発行の依頼をしなければならない

こうしたトラブルのせいで、余計に時間がかかるわけです。確定申告書を作成したらしたで、表示された税額に「えっこんなに税金払うの!?」とびっくり。ですが、今更ジタバタしても、既に申告期限直前ですから、節税ができるはずもなく……。すぐに納税資金を用意しなければならない、というお悩みもよく耳にします。

さらに、申告期限直前になって「なんとかならないか?」と税理士に相談や依頼をしようと思っても、

  • 割り増し料金がかかる
  • 対応してもらえない
  • そもそも直前じゃ打つ手がない

ということも。確定申告は、遅くなればなるほど打つ手がなくなるもの。だからこそ、早め早めの行動が大切になってきます。

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定期的に、コツコツ入力をするメリット

こうしたトラブルを避けるためには、「定期的にコツコツ入力する」ことが大切です。
定期的に入力をすれば、

  • 書類を分けて保管
  • 記憶が残っているからパパッと入力
  • 事前に税額を予測
  • 必要に応じて節税対策

といったことが可能になります。結果的にストレスも溜まらないし、お金も残せるし、時間も短く済むのです。

「わかってはいるけど、面倒臭いんだよ…」と思った方もいらっしゃるかもしれません。気持ちはとてもよくわかります。私自身、日々入力をしながら「面倒臭いなぁ」と感じていますので。

ですが後回しにすると、先述したように、余計面倒臭いことが起こってしまう。だからこそ私は、コツコツ定期的な入力を習慣化・効率化するために、以下のような工夫をしています。

習慣化のコツ:曜日・時間を固定する

最も重要なのは、入力をルーティーン化してしまうこと。まずは、入力をする曜日・時間を決めてみましょう。週に1回、10分だけ時間を作ればOKです。皆さんの都合の良い曜日・時間で構いません。他の仕事や用事が入りにくいタイミングを選ぶといいでしょう。

ちなみに私は、毎週月曜日の朝9時~が入力タイムです。忘れないように、Googleカレンダーに定例スケジュールとして設定し、予定は入れません。毎週が厳しい方は、月1、例えば「毎月第一金曜日の9時」など、少しハードルを下げてでも習慣化していきましょう。

できれば週1、少なくとも月1のペースを守ることが大切です。

効率化のコツ①:書類整理のコツ

自分で決めた日時になったら、まずは書類整理を行います。

領収書、レシートの整理

まず財布からレシートを出し、プライベートのものは捨ててしまいましょう。経費のレシートは保管する必要がありますが、保管場所を決めておくことも大切です。

  • 自宅の押し入れの中
  • 事務所の倉庫

など、きちんと決めて一か所にまとめておくようにしましょう。バラバラだとどこに置いたかわからなくなったり、なくしてしまう方も多いです。

保管方法は色々ありますが、オススメなのはポケットファイル。月ごとに入れていくだけで済むので、ラクです。決済手段が複数ある場合(現金払い、クレジットカード払いetc)には、それぞれファイルを分けてもいいでしょう。

プライベートか経費かわからないレシートについては、

  • 後で考える用の箱に入れておく
  • 勘定科目「仮払金」にしてとりあえず入力

のどちらかで処理しておきましょう。確定申告の時に調べて、まとめて処理すると効率的です。

売上の請求書の整理

クライアントに提出した請求書は、きちんとファイリングしておきましょう。PDFなどのデータで作成・提出している場合は、PC内で整理しておけば問題ありません。源泉徴収されている場合は、源泉徴収税額の管理も忘れずに。

通帳明細の管理

預金明細を長期間放置してしまうと、

  • 紙の通帳→合計記帳(一定期間の入出金の合計額のみが記帳される)
  • ネットバンク→過去2か月分しか遡れない

といったトラブルが起こります。ですから、定期的な記帳や明細のダウンロードをしておきたいものです。

ネットバンクをクラウド会計ソフトに同期している場合も、同期エラーなどで明細の取得漏れが起こることがあります。同期エラーが起こっていないか、最低でも月1くらいのペースで確認するようにしましょう。

その他の書類

以下の書類は、日々の入力では使いませんが、確定申告書を作成するときに必要になります。

  • 医療費のレシート(医療費控除をする場合)
  • 控除証明書(国民年金、生命保険)
  • 納付額証明書(国保)

紛失しないように、きちんとファイリングしておきましょう。

効率化のコツ②:会計ソフト入力のコツ

帳簿をつけるときは、会計ソフトを使いましょう。最近の会計ソフトは、初心者でも使いやすいような工夫がされています(画面ガイドのわかりやすさetc)。

何より、

  • 自動的に複式帳簿、貸借対照表が作成される→青色申告55万円特別控除の要件をクリア
  • ネットバンクやクレジットカードの明細を取り込める(データ連携機能)

といったメリットがあります。そして、会計ソフトへの入力は、以下のような工夫で効率化することができます。

現金を使わない

入力が面倒くさくなる最大の要因は、現金です。
現金を使うと、

  • 現金残高(現金出納帳)を合わせる
  • 領収書の発行
  • データがない=同期できない

といった手間がかかります。キャッシュレスと違って明確な証拠が残らないという点でも、好ましくありません。今まで現金を使っていた方は、入金、支払ともに、キャッシュレスに切り替えていきましょう。現金の取り扱いをなくすことが、効率化の第一歩です。

仕事専用口座、仕事専用カードをつくる

仕事で使っている預金口座やクレジットカードは、仕事専用にすることをオススメします。プライベート・仕事兼用にしてしまうと、

  • 経費かどうかの判別
  • 仕事に関係ない取引を事業主勘定で処理

といった手間が生じるからです。仕事専用にしてしまえば、支払いは経費、入金は売上、と機械的に処理することができます。
現状、プライベート・仕事兼用にしてしまっている場合は、

  • 来月の請求書から振込先を切り替える
  • 新しいクレジットカードを作る

といったことをやっていきましょう。

業務をシンプルにする

日々の業務が煩雑だと、入力も煩雑になります。
例えば、

  • 料金体系が複雑
  • お客様ごとに値段が違う
  • 決済手段が多い
  • 未回収の取引先がある

という状況だと、なかなか効率化はできません。例外を減らし、シンプルにしていきましょう。

11~12月頭ごろ、決算予測・対策をしてみる

もし余力のある方は、11~12月頭ごろに、決算予測・対策をしてみてもいいでしょう。

  • 最終的な利益(所得)はいくらくらいになりそうか?
  • その金額だと、税金はどれくらいになるのか?
  • 税金を減らすために何かできないか?

といったことを事前に知り、考えておけば、納付期限直前に「こんなに税金払うの!?」と驚くこともなくなります。
具体的には、以下の手順で予測を行います。

  • 事業所得(利益)を予測する
  • ①から所得控除を差し引き、課税所得を計算する
  • ②に税率をかけて、税額を計算する

1 事業所得(利益)を予測する

例えば、1~10月までの数字が、

売上:1,000万円
経費:200万円
利益:800万円

だったとしましょう。この数字の平均を使って、11~12月の業績予測ができます。

売上:200万円(各月100万円)
経費:40万円(各月20万円)
最終的な利益:800万円+(200万円-40万円)=960万円

という流れで、ざっくりと予測していくのです。まずは、「推移表」を使って1~10月までの数字を眺めてみるとイメージしやすいと思います。

2 ①から所得控除を差し引き、課税所得を計算する

①から「青色申告特別控除」と「所得控除」を差し引くことで、課税所得(税率をかける金額)を計算することができます。所得控除は数が多く、要件も細かいので、以下のものだけピックアップしてざっくり予測しても良いでしょう。

名称 控除金額 要件
青色申告特別控除 10 or 55 or 65万円
  • 青色申告をしていること
  • 複式簿記で帳簿付けをしていること等
  • 控除金額によって要件が異なる
基礎控除 原則48万円 所得2,400万円以下
社会保険料控除 年内に支払った社会保険(国保、年金)の金額 自分または同一生計親族の社会保険料を支払うこと
小規模企業共済等掛金控除 年内に支払った小規模企業共済、iDeCoの掛金の金額 小規模企業共済、iDeCoの掛金を支払うこと
配偶者控除 原則38万円 配偶者の所得が48万円以下など
扶養控除 原則38万円 扶養親族の所得が48万円以下など
  • 頻出&税額への影響が大きいものをピックアップしました。

所得控除の合計額が260万円だったとすると、960万円-260万円=700万円が課税所得となります。

3 ②に税率をかけて、税額を計算する

「所得税の速算表」を使えば、簡単に所得税を計算できます。

課税される所得金額 税率 控除額
1,000円 から 1,949,000円まで 5% 0円
1,950,000円 から 3,299,000円まで 10% 97,500円
3,300,000円 から 6,949,000円まで 20% 427,500円
6,950,000円 から 8,999,000円まで 23% 636,000円
9,000,000円 から 17,999,000円まで 33% 1,536,000円
18,000,000円 から 39,999,000円まで 40% 2,796,000円
40,000,000円 以上 45% 4,796,000円

所得税の速算表

引用元:国税庁HP「所得税の税率」新規タブで開く

今回の課税所得は700万円ですから、「6,950,000円から8,999,000円まで」のところを見ます。あてはめて計算してみると、

700万円×23%-63万6,000円=97万4,000円

が、確定申告で支払う所得税の予測金額です。

  • 実際にはこの金額に2.1%の復興特別所得税が加算されます

事前にざっくりと見積もっておけば、準備ができます。
必要に応じて、

  • 小規模企業共済やiDeCoの加入、増額、前払い
  • 経営セーフティ共済への加入、増額、前払い
  • 必要なものがあれば買っておく

などの節税対策を行いましょう。

まとめ

1年分まとめて入力するよりも、定期的にコツコツ入力しておいた方が、結果的に時短になりストレスも少なく済みます。

  • 習慣化のコツ
  • 書類の整理のコツ
  • 入力効率化のコツ

を参考に、次は余裕のある確定申告を目指しましょう。

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この記事の執筆者入野 拓実(税理士)

1989年生まれの税理士。28歳の時に千葉県柏市で独立開業。リーマンショックや震災で複数の担当先の倒産を目の当たりにし、財務・経営分析を研究。顧問先には「不況に耐える会社作り」「手元にお金を残す経営」をモットーにサポート。執筆・セミナー・YouTubeでも、フリーランス・中小企業向けに発信を行っている。

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