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コロナ禍から1年、中小企業が生き残るための資金計画とは?資金繰り表の活用法

新型コロナウイルス感染症の影響で資金繰りに悩む中小企業が増えています。コロナ禍がまだしばらく続きそうな現状では売上低迷を余儀なくされる時期が長引く可能性もありそうです。先まで見通しを立てるためには1〜2年程度の資金繰り表を作成しておくことが得策のひとつ。どのような資金繰り表であれば現状を乗り切ることができるのか?数々の融資相談に携わる資金調達のエキスパート・公認会計士・大野修平先生にそのヒントをうかがいました。

大野修平(公認会計士・税理士)

OneWorld税理士法人 公認会計士・税理士。
大学卒業後、有限責任監査法人トーマツへ入所。金融インダストリーグループにて、主に銀行、証券、保険会社の監査に従事。トーマツ退所後は、OneWorld税理士法人にて開業支援、融資支援、税務顧問などの業務を行う。また、毎週、補助金と融資の勉強会を開催し、中小企業の資金繰り支援にも力を入れている。

コロナ禍では「新しいニーズ・価値観に対応するため」の資金調達を

——2020年4月30日公開『【新型コロナ】経営者が今すぐ判断すべきは「まず事業が3ヵ月耐えられるかどうか」』で大野先生に取材させていただきました。あれから1年、現在もコロナ禍が続いています。1年前と比較して、最近の状況をどのように感じていますか。

大野修平先生(以下、大野):

1年前の4月はまったく準備がないなか、ある日突然コロナが流行し、緊急事態宣言が発令された時期でした。事業者は売上が大きく下がる不安から「あと何週間かでキャッシュがなくなる」「従業員を辞めさせなければならないのか?」「休業?もしかしたら、お店を閉店することになるのか?」……等々、不安な声を上げていたと思います。

しかしあれから1年が経ち、国民も事業者も今の状況に慣れてきて、少し前向きに歩み出していると思います。コロナ禍がいまだ続く最中での売上回復は難しいかもしれませんが、そんな苦境下でも前向きに新しいビジネスを始めようとしたり、経営改善を図ろうとしたりする方が私のもとにも相談にきています。

——1年前の取材では「業種によっては2年くらいマイナスの影響が続く」「ワーストのケースを想定して事業計画をたてておこう」といったお話が印象的でした。今もそのお考えに変わりはありませんか。

大野:

そうですね。今の状況を見ていても「2年」という数字はわりあい当たっていたんじゃないかと思っています。感染症の専門家ではないので確実なことは言えませんが、2021年から2022年の間に多くの国民でワクチン接種の動向が拡がり、コロナの脅威を季節性のインフルエンザくらいに抑えることができれば、経済も徐々に回復していくかもしれません。

ただ、我々がCOVID-19に打ち勝ったとしても、また次のコロナウイルスや別の感染症の出現も起こりえます。デジタル化・非対面化の進んだビジネスのこの潮流は、2022年以降も決して無視できないのではないでしょうか。

——コロナ禍が1年、2年と続き、資金面で不安を抱える経営者が増えていると思います。特に不安視されているのは、手元の運転資金が底をつく資金ショートです。現状を乗り切り、事業を継続していくための心構えについて、まずは教えていただきたいです。

大野:

1年前は本当に大急ぎで資金調達をしなければいけない状況でしたから、資金を出す側・貸す側も「なんとかこれで乗り切ってくれ!」と、比較的柔軟な審査でお金を出してくれました。しかし1年が経った今、再び同じ方法で「お金を出してほしい!」と頼んでも、なかなかお金は出てこないと思います。「1年前に融資したお金が返ってきていないから」と断られるのが現実ではないでしょうか。

——ならばどうすべきでしょうか。

大野:

コロナ禍という回避しようもない外的要因があったとはいえ、過去のビジネスがうまくいかなくなってきているのは現実です。だからこそ経営者は「新しいニーズ・価値観に対応するため」に資金調達をする、という考えに切り替えることが必要だと思います。

——つまりは、新しい商品・サービス・事業の開発に動き出すということでしょうか?

大野:

当然、既存のビジネスとは違うことをはじめるのですから、勇気がいるでしょう。過去に実績もありません。お金を出すほうとしても「本当にニーズがあるのか」「思いつきではないのか」など厳しく審査するかもしれません。

だからこそ、十分に比較検討したなかでなぜそのビジネスをやる必要があるのか、ある程度の裏付けを準備しておく必要があります。具体的には、市場調査・ターゲットへのヒアリング・簡単なサンプルを使ったテストマーケティング等々の前段階を経て、事業計画書に落とし込む。それが資金調達を受ける際に不可欠な説得材料・データになります。

大野先生おすすめの融資は…?

——さて、2021年4月時点でおすすめの資金繰り方法はありますか?

大野:

まずは経済産業省が発行する「新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者向けパンフレット」を紹介します。ここには経産省管轄の支援策がまとめられていて、情報もその都度更新されています。なかでも「資金繰り支援」でいえば「政府系金融機関による融資」が案内されているので必見です。

——制度の概要を教えてください。

大野:

政府系金融機関による融資では、日本政策金融公庫等の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」を利用されている方が多いと思います。この融資の良いところは、条件に当てはまれば“実質無利子化”が可能な「特別利子補給制度」をオプションとして付けられること。そして、据置期間「5年以内」に設定されていて最初の5年間は元本返済の必要がないこと。金利もそれほど高くありません。

——かなり魅力的な制度ですね。

大野:

ただ1つ注意が必要な場合があります。実務上、「据置5年」はこの約1年間で段階的に長くなってきたものなんです。制度が始まったばかりの頃にこの貸付を受けた方のなかには、現場の判断で「据置1年」とかに設定されている場合があります。

——5年の据置が受けられたのに自分の場合は1年、ではなんか損した感じですね。

大野:

そういう方は、もう一度借入先である公庫さんに連絡をして、既存融資からの「借り換え(借り直し)」をしたほうがよいでしょう。同じ経産省パンフでは「新型コロナ特例リスケジュール」という「1年間の元本返済猶予の要請を実施」等を行う制度もあります。しかし制度名にもある通りあくまで“リスケ”ですから「返済の約束を守れなかった」という失点になりかねません。後々追加融資を受けるときに審査が通りにくくなるという懸念があります。

——借り換えならばそうはならないのですか?

大野:

はい。たとえ相手方からリスケを勧められたとしても「自身よりも遅いタイミングで借りた事業者の多くは、より長い据置期間を設定されている」ことなど理由に交渉するのがベターでしょう。また、現場ベースでは、新型コロナウイルス感染症特別貸付の期限が「2021年6月末(※)」ということも言われていますし、そうなると利子補給制度も終了する可能性が高いです。現状では制度自体が期限延長になる可能性が高そうですが、ご利用を検討されている方、あるいは借り換えが必要な方は急いだほうがよいかもしれません。

(※)2021年5月25日付で、経済産業省より、政府系金融機関による実質無利子・無担保融資について、「当面今年前半まで」とされていた申込期限は、「当面年末まで」継続されることが発表されました。(2021年5月26日 大野先生からの情報により、スモビバ!編集部追記)

——民間の融資制度ではいかがでしょうか。

大野:

経産省のパンフレットでは「民間金融機関による信用保証付融資」として「セーフティネット保証4号・5号」や「危機関連保証」という資金繰り支援制度が紹介されています。なかでもご覧いただきたいのは、それらに付帯する「伴走支援型特別保証制度」です。これは2021年の4月からはじまった新しい制度で、セーフティネット保証4号・5号と危機関連保証の認定を受けていると、信用保証料の事業者負担を引き下げることができます。

なお、現状では、4号は2021年9月1日(※)まで、5号と危機関連保証は2021年6月30日までとなっています。これらも延長される可能性が高そうですが、ご利用を検討されている方は念の為急いだほうが良いと思います。

(※)セーフティネット保証4号の指定期間が延長され、2021年9月1日までとなることが発表されました。また、危機関連保証についても2021年12月31日まで指定期間が延長される予定と発表されています。危機関連保証の期間延長は、2021年6月24日に告示が予定されています。(2021年6月4日 大野先生からの情報により、スモビバ!編集部追記)

経営者が知っておくべき「資金繰り表」基本のキ

——ご紹介いただいた融資を受けるにしても事業計画書を作成するにも、自社の資金繰りを管理・把握しないことには何も始まりません。そこで必要になるのが「資金繰り表」です。しかしなかには資金繰り表を作成したことがない経営者の方もいると思います。どのように作成していけばよいのか指南いただけますか。

大野:

資金繰り表はエクセルなんかで作成することが多いのですが、ここからは私が普段使っている資金繰り表をベースにお話しましょうか。

エクセルで作成した下の表では、損益計算書と資金繰り表をまとめています。損益計算書は、経営成績を出す資料であり、売上から売上原価・人件費・広告宣伝費・地代家賃等を差し引いて営業利益・経常利益・純利益等を算出します。

大野先生が作成された損益計算書の例(一部抜粋)
(↑画像はクリックすると大きく表示できます)
大野:

この損益計算書に続いて、「税引後当期純利益」の項目の下から資金繰り表が記載されています。

大野先生が作成された資金繰り表の例
(↑画像はクリックすると大きく表示できます)

——いきなり基本的なことで恐縮なんですが、そもそもなぜ損益計算書と資金繰り表の2つを作っておく必要があるのでしょうか。

大野:

理由として第一に、損益の動きとお金(現金)の動きが微妙にずれることがあるからですね。例えば、従業員の10月分給与を11月15日に支払っていたとすると、損益計算書では「10月の人件費」として計上されるのに対し資金繰り表では「11月の支出」として計上されます。

——売上にしても、売上から、売掛金の回収までには時間的なズレが発生するということですね。

大野:

第二の理由として、損益計算書にどうしても計上されないお金の出入りが発生することです。例えば借入金として1,000万円の現金が増えても、借入金は、負債として貸借対照表に記載されるため損益計算書に計上されず、資金繰り表で別途計上しなければなりません。借入金の返済も同様です。他にも例えば内装工事などの固定資産を購入した際の支出も貸借対照表に記載され、損益計算書には計上されないため、資金繰り表で追加計上しなくてはなりません。一方、それらの固定資産を減価償却する際には、損益計算書には記載されますが、実際には現預金は出ていかないため、資金繰り表からは除く必要があります。

——なるほど!

大野:

いずれにせよ損益計算書だけでは本当の経営状況を把握することはできません。現金の動きを追う必要があります。資金ショートしないためにも、資金繰り表を作成しておく必要があるんですよ。

——業種によって資金繰り表に違いがあったりもしますか。

大野:

資金の出入りに大きなズレが発生しがちな業種は、資金繰り表があったほうがよいですね。飲食店などで現金商売がメインのところなら、新規出店などの設備投資がない限りそれほど大きくはズレないのですが、売掛金が多く発生する業種や大きな設備投資が発生するビジネスなどでは手元の現預金の管理が大切になるので、資金繰り表を作成したほうがよいです。

まずは顧問税理士に相談を!

——資金繰り表の作成において注意すべき点はありますか。

大野:

ご覧いただいた通り、資金繰り表は“横方向”に時間が進んでいきます。通常は4月・5月・6月……というふうに1カ月ごとに作成・更新するパターンが多いのですが、1カ月スパンの管理で安心していると、月半ばに資金ショートするケースが起こり得ます。

(↑画像はクリックすると大きく表示できます)
大野:

だから資金繰りに心配な方は月次ではなく、週次・日次の資金繰り表を作成したほうがよいかもしれません。短いスパンで管理するほどより安全な資金繰りを行えます。このあたりは、手間とそこから得られるベネフィットを比較して検討してもらえると良いと思いますが、少なくとも年次で資金繰り表を作成することはほとんど意味がないので、最低でも月次で作成するべきでしょうね。

——お話を伺っていると、資金繰り表作成はなかなかハードルが高そうです……。作成の際には何から着手すればよいのでしょうか。

大野:

そうですね。実際に作成するにはかなりの手間・知識が伴うと思いますよ。やっていることが「お金を数えているだけ」なので損益計算書より簡単そうに思われがちですが、慣れていないとかなり難しいのが正直なところではないでしょうか。

ですので、「どうやって作成するのか」「何から着手すべきか」の回答としては「まずは顧問税理士に相談せよ!」ということになります。期末決算に必要な損益計算書・貸借対照表など、会計上の書面作成しか顧問税理士にお願いしていないのであれば「コロナ禍で先行き不透明だから、資金の動きを把握するために資金繰り表を作成してほしい」とお願いしてみてはいかがでしょうか。

——作成支援をお願いするとどのくらいかかるものなのでしょうか。

大野:

その辺は顧問税理士の方次第だと思います。例えば弊所だと、資金繰り表を作成し融資までお手伝いさせていただいた方の場合、融資の成功報酬として「融資金額の5%」をいただいています。もし、顧問の先生が資金繰り表などの対応をしていない場合には、是非弊所にお問い合わせください。ちなみに我々の事務所では資金繰りや融資に関する勉強会も定期開催しているので、是非参加していただきたいです。

——やはりお金のプロに頼むのが一番ですね。最後に、これからもしばらく続きそうなコロナ禍を踏まえ、資金調達を検討される経営者に向けてメッセージをお願いします。

大野:

ここでお話してきた資金繰り表の最大利点は「どこでお金が足りなくなるのかがわかる」ことですが、融資を受けるときにも「無理なく返済する」ことの証明になります。当然、金融機関にとっても資金繰り表を示してくれる経営者は「貸しやすい企業・信頼できる経営者」です。

意気込み・気合いだけで融資を受けられる時代ではありません。実際私も、融資の相談を受ける際「資金繰り表もなしにお金を借りるのは危険だから止めましょう」とアドバイスしています。

コロナ禍でビジネス転換期を迎えている経営者も多いと思いますが、こんな時代だからこそ資金繰り表を含めた事業計画の価値が高まっているはずです。新たな事業計画と着実な資金繰りで、この逆境に打ち勝っていただきたいと願っています。

撮影:塙薫子

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