好きを仕事にする「ビジネスオーナー型の副業」とは?1万人の起業に関わったプロが提唱

2023/12/04更新

この記事の執筆者阿部桃子

副業解禁の動きが広がるなか、働き方改革やテレワークの導入で時間に余裕ができたことも相まって、「副業にチャレンジしてみようかな?」「起業へと繋げたい」と考えている方もいるかもしれません。そんななか、好きなことを仕事にし、人生を楽しみながら稼げる仕組みを構築していく攻めの働き方である「ビジネスオーナー型の副業」に注目が集まっています。

そこで今回は、ビジネスオーナー型の副業を提唱し、今までに一万人の起業をプロデュースしてきた「起業のプロ」新井一さんにインタビュー。ビジネスオーナー型の副業とはどのようなものなのか、成功の秘訣は何かを伺いました。

新井一(あらい・はじめ)

起業18フォーラム代表
1973年生まれ。会社員のまま始める起業準備コミュニティサロン「起業18フォーラム新規タブで開く」主宰。自分らしく好きなことを仕事にして生きていきたいと考える人々を幅広く支援。
特徴は、人生を変えたいという会社員はもちろん、自立を目指す主婦からニート、フリーターなど起業とは程遠いと思われがちな人たちを一発逆転させてきたこと。
主な著書に『会社で働きながら6カ月で起業する』(ダイヤモンド社)『朝晩30分・好きなことで起業する』(大和書房)

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「ビジネスオーナー型副業」とはなにか?

そもそもなぜ起業をプロデュースされるようになったのでしょうか? ご経歴とともに教えてください。

新井一さん(以下、新井):私は23歳で営業職の会社員になりました。ただ、人間関係を作るのが得意なほうではなく、社内の人間関係で悩んでいた時期がありました。しかし、仕事自体は好きだったので、会社を辞めるに辞められない状態だったんですね。

そんななか、当時(約25年前)はインターネットがやっと世に出てきたころで、私は見様見真似でホームページを作り、海外在住の日本人向けに情報発信などを行っていました。その結果、ホームページ制作のノウハウが多少身に着いたとき、知り合いから「ホームページの作り方を教えて欲しい」と頼まれるようになったのです。会社の外で喫茶店の会議室を借りて勉強会を開くようになりました。すると、続けていくうちに、参加者から「お金を払うからもっと教えて欲しい」と言われることが多くなってきまして。

また、教えてほしいと言われる内容も「あなたのように会社員のまま別の仕事をする方法を教えて欲しい」に変化していきました。この副業や起業のコンサルティング業が1年半~2年で軌道に乗り、その後独立したという流れです。

ご自身のなかで、「副業」というのはどんな位置づけでしたか?

新井:会社では全く認められず、会議で発言しても誰も相手にしてくれない状況でした。でも。会社の外では教えることが上手だとほめられたり、勉強会では先生と言ってもらえて、お金を払って遠くから会いに来てくれたんです。このギャップはすごいなと感じました。まさに、その仕事こそが自分の居場所でしたね。

では、新井さんの提唱されている「ビジネスオーナー型の副業」とはどのようなものでしょうか?

新井:小さなビジネスを1から自分で作り上げ、好きなことをやりたいようにやって、お金を得られるというものです。物を仕入れてきて売るのでも、人に何かを教える、翻訳する、ライティングする、コミュニティを主催するなど、何でもOK。誰かが作ってくれたパッケージではなく、自分で事業を作っていくというイメージです。

ビジネスオーナー型ではない、他の副業とはどこが違うのでしょうか?

新井:たとえば、コンビニでのアルバイト、ウーバーイーツなどのギグワークでしょうか。ビジネスオーナー型の副業とは、雇い主にこれをこの通りにやりましょうと言われてやるのではなく、これをやるためにはどうしたらいいか?を自分で考えて作っていくやり方です。また最近では、パッケージ型の副業、すなわち、仕入れや販売のマニュアルが提供される副業も流行っていますが、こちらもビジネスオーナー型の副業とは違います。

ビジネスオーナー型副業は自由に好きなことができる反面、「自分にもできるのだろうか?」と不安になる人もいそうです。性格的、タイプ的に向き不向きはありますか?

新井:決まった枠組みを与えられてその通りに仕事をするのが好きな人は、アルバイトやギグワークも向いているでしょうし、会社員のままでもいいと思います。でも、人生で好きなことを仕事にしたい、生き甲斐を大切にしたいと考えるなら、ビジネスオーナー型の副業がオススメだと思います。

今の世の中は、私たちが10年前に想像していた世界をはるかに超えていると思うんです。正直、女の子がただラーメン食べてる動画でさえ100万回再生されたりします。それって何の需要だ?って思うのですが、明らかに誰かの何かを満たしているわけですよね。

そう考えると、好きなことをやって誰かが評価してくれるかどうかは、やってみなければ分からない部分が大きいと言えます。とにかくまずは自分がやりたいことをやってみればいいと思います。

新井さんへの取材はオンラインにて行った

ビジネスオーナー型の副業をはじめるには何をすればよいのか?

ビジネスオーナー型の副業をはじめたいと思ったら、どのような準備をすればいいでしょうか?

新井:まず準備期間としては6カ月を目安にするのがちょうどいいと思います。情報収集と称して3~4年も準備している人も多いのですが、本やパソコンばかりみていても、何も始まりません。その6カ月間でやるべきことは、大きく次の3つです。

まず1つ目は、自己分析。自分は何をしたいのか、どんな働き方がしたいのかを掘り下げていきます。具体的には、職歴、趣味歴、家庭内での役割歴から考えていくとよいでしょう。家庭内での役割とは、掃除、収納、料理などの家事を中心に考えても良いですし、子育て経験があれば、子育て中に使ったオススメグッズを発信する、子育てママを励ます会を開催する、といった副業もありですね。

家事や子育てなどの経験からでも副業になり得るのですか……!

新井:はい!また、働き方から考えてみるのも良いでしょう。これまで働いてきて良かったこと、嫌だったことを振り返る。すると、収入が大事だと思っているとか、あるいは週3日しか働きたくない、沖縄で海の見える場所で働きたい……など、譲れる部分と譲れない部分が見えてきます。

なるほど!まずは自分の気持ちに向き合うところから始めるのですね。

新井:それと並行してビジネスの基礎知識もつけていく必要があります。これがやるべきことの2つ目ですね。初めは、世の中にはどんなビジネスが存在していて、どんな人がどのようなビジネスを成功させた、という事例を学ぶレベルでOKです。

というのも、会社員経験が長い方は既存のものにとらわれやすいです。料理にたとえるなら、「名前のついた料理しか作れない」状態で、「創作料理」が苦手なことが多いんです。材料は山ほど持っているのに作り方を知らないという。でも、たくさんの料理やレシピ(=他のビジネスの例)を見ると、こんなやり方やあんなやり方もあるんだと、アイデアが浮かんできます。そうやって、自分で新しい発想を知るイメージです。その後は段階に応じて、マーケティングや経営の知識を身に付けていけば良いでしょう。

ビジネスの知識というと難しそうですが、世の中にどんなビジネスがあるか、という事例を知るくらいなら始められそうです!

新井:最後に、仲間を見つけることです。誰にでも辛かったり、モチベーションが下がるときがあるものです。そんなときに仲間は非常に重要でしょう。

ただ、注意してほしいのは、この「仲間」とは「同じ志を持った相談相手」というイメージで、あくまでも事業は一人でやる方がよいと思います。仲間と一緒に組むと、熱量とスピード感の違いが明らかになって、喧嘩になる場合も多いです。そうではなく、常に良い緊張感を保ちながら刺激を与え合える存在が見つかれば、自身にとって大きなプラスになるでしょう。

「人を笑わせるのが好き」だから、人を笑わせるトレーニングを提供して成功

新井さんがプロデュースされた方で、ビジネスオーナー型副業を成功させた方の実例を教えていただけますか?

新井:まずは、マンションの管理会社に勤めながらスクールビジネスを展開された方ですね。彼は当初、「自分は人に教えるのが好き。また、マーケティング系の本も好きで、今までたくさん読んできた。だからその内容を人に教えたい」とおっしゃっていました。でも、本からの知識は実務で培った訳ではなく、彼に身に付いたものでもない。それだけでビジネスを展開するには難しい状況でした。

なるほど。

新井:そこで一旦仕切り直し、今までどんな仕事でどんな努力をしてきて、何を解決してきたか、また、どんなときに楽しいのと感じるか、大変だと感じるのかをじっくり洗い出しました。

そのなかで彼は、仕事でもプライベートでも、周りの方を笑わせて場の雰囲気を和ませるように努力してきたことが分かりました。また、実際に彼は人を笑わせたり楽しませたりするスキルを身に着けてもいたのです。そこで、彼のそうした人柄を生かして、人を笑わせたり、気の利いたことを言えるようになるためのトレーニングを提供するスクールビジネスをスタートしました。

すると世の中には、「面白いやつと言われたい」というニーズがすごくあったんですね。こうしたスキマのニーズを狙って成功したケースです。

実務で身に付けた内容で勝負する、スキマを狙う、この2つが成功のポイントですね。

新井:彼が最初参入しようとしたマーケティングなどの分野というのは、この道で10年以上食っているプロがいるので、実務経験のない新参者が割り込んでも、勝ち残っていくのはなかなか難しい面があるんですよ。

新井さんの主宰する起業準備コミュニティサロン「起業18フォーラム」にやってくるみなさんは、最初からアイデアを持っているんですか?

新井:いえいえ。みなさん「私なんてスキルもアイデアもないです」と言われます。でも、いろいろな角度からほぐしていくと必ずキラリと光る何かが出てきます。

あとは、仲間から「○○さんって癒し系ですよね」「△△の分野についてよく知っていますね」といった指摘を受けると、「あれ?僕ってそうなんだ?」と、他の人と比べて自分が優れている点や、逆に特に優れてはいない点に気づけるんです。自分が足が速いか遅いかは人と走ってみなければ分からないですからね。

ちなみに、仕事歴が乏しい人はどうすればいいんでしょうか?趣味歴を生かした実例はありますか?

新井:無印良品が好きで、自分で商品を使ってみた感想をSNSやブログに上げていたら、月収300万円になった方がいます。この経験をさらに生かして、魅力的なSNSやブログの書き方を教えるスクールを立ち上げたケースもありました。

あとは、本業は旅行代理店でコーヒーが大好きだった方がコーヒー豆の販売を始めて、次にコーヒーの淹れ方教室を開設、さらに、こだわりのコーヒーを飲むコミュニティを作ったというケースもありましたね。

趣味でもビジネスへと発展できるんですね。

新井:はい。なので、やりたいことをどんどんやればいいと思います。

新井さんはこれまで全国で1000回を超えるセミナー・講演をしてきたという

集客できるかできないかにスキルの高さは関係ない!?

ただ、お客様を得ることって実際問題難しくないのですか?やっぱりみなさんSNSを駆使されたりするのでしょうか。

新井:そこは実は、SNSでなくても大丈夫です。SNSが好きな人はそれでいいし、苦手なら違う方法でやっても何とかなりますよ。

えっ!そうなんですか。

新井:はい。肝心なのはツールではなく、誰に何を発信するか。内容に魅力があれば人は必ず集まってきます。というのも、企業と違って、私たちは大量に人を集める必要はありません。

自分自身が楽しいと思っていることを世の中に伝えれば、多少の人は集まってきます。「俺はナポリタンがずっとずっと大好きで、1年中朝から晩までナポリタン食べてるんだ!!」って人がいたら、なんかすごく気になっちゃいませんか?

気になっちゃいます(笑)。でも、そこから収益を上げられるようになるんですか?

新井:マネタイズするには、売るか、広告収入を得るか……などですが、自分の業種に応じてビジネスの種類に応じて当てはめていけば良いです。実際最初は疑心暗疑だった人も、1年半~2年で結果を出しています。

副業から独立するタイミングは?判断基準は2つ

副業を始めてから、独立して会社を辞めるタイミングはどう判断されるんでしょうか?

新井:これは本当に人それぞれです。配偶者様が絶対許さないから辞められないという人もいれば、会社に行っている時間が耐えられないといってすぐに独立する人もいます。

ただ、独立してもOKな判断基準は2つあります。

  • お金の成長……理想的には、会社員で稼いでいるのと同じくらいの年収になること
  • 心の成長……自分が経営者として動くという自覚が芽生えること

この両輪が揃っていないとダメです。先にお金の面だけが育っても、心の成長が追いついていなければ「この状態はいつまで続くのか」などと怖くてやめられません。

でも実際、多くの人がお金より先に心が成長して、お金がついてきてないのに独立したくなっちゃうんです。そうした場合は私が止めに入ることが多いですね。

失敗例もあるんでしょうか?

新井:典型的なのは数百万円を投じてカフェなどの店舗を構えたけれど、お客さんが全然来ない……というような失敗事例ですね。

たとえば、駅前の好立地でおいしいコーヒーやスイーツを提供するカフェのビジネスに個人資本が参入したとしましょう。

これはスターバックスやドトールコーヒーなどの大手資本と同じような戦略ですよね。これは競争が非常に激しくリスクが高い。ということは、「好立地×美味しい食事」以外でビジネスモデルを作るべきことは明確です。このように視点を変えて、スキマに気づく目を養うことが大事なんです。

先ほど教えて頂いた、準備期間に事例を学ぶ大切さがここにある訳ですね。しっかり学んでおけば、失敗も避けられると。

新井:ただ、みなさん失敗が怖い怖いというのですが、私は、「失敗してもらうために会社員のままでいてください」と伝えています。失敗から学べることもありますし、副業なら失敗しても路頭に迷うことはありませんから。あとは、好きなことをやっていると少々うまくいかなくても、「失敗した」と思わなくなってくるんですよ。

それでは最後に、ビジネスオーナー型副業に興味を持っている会社員の方にメッセージをお願いします。

新井:いまでも上司のパワハラに苦しんでいるなど、組織で辛い思いをされている方ってものすごくたくさんいます。そんな方々に「あなたはもっと違うことができるんですよ」とお伝えしたいです。そこに気が付けるかどうかで人生の結果が大きく変わってくるはずですから。

私の仕事はロケットを飛ばしているわけじゃなくて、気球の重りを外していると思っています。誰もがみな強力なエンジンを持っていて、ボーボー吹かすこともできる。しかし重りが繋がっていて跳べないんです。

会社員はこうあるべきとか、ひとつの会社に長く勤めなければならないなど、自分のなかでつっかえている重りを切り離してもらうことがまず最初の一歩。もしその一歩が無理なら、まず半歩からでも踏み出してもらえればいいなと思いますね。

この記事の執筆者阿部桃子

早稲田大学卒業後、出版社、テレビ局勤務などを経てフリーランスに。専門分野は教育・育児支援、ビジネス、キャリア。『日経トレンディ』『AERA with Kids』『Bizmom』などで執筆。2児の母。活字好きの子どもを増やすべく、地域で読書ボランティア活動にも励んでいる。

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