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noteフォロワー数5.7万人超の林伸次さんに聞く!コロナ禍の飲食店開業はチャンス!?

Twitterフォロワー数は1.1万人、noteフォロワー数は5.7万人を超え、Webマガジン「cakes」で長きに渡って連載「ワイングラスのむこう側」を持つ、ワインバー「bar bossa」店主の林伸次さん。東京・渋谷で20年以上続く同店を経営してきた林さんは、現在のコロナ禍での飲食店開業に対して「逆にチャンスなのではないか」と言います。それはなぜなのでしょうか。

リーマンショック、東日本大震災の危機も超えてきた林さん。ご自身がお店を経営する上での苦労、接客業の工夫や、新著『大人の条件 さまよえるオトナたちへ』の内容も踏まえ、飲食店経営を長く続けていくための戦略や考え方を取材しました。

(※この取材はオンライン会議ツールを使用し、リモートでインタビューしたものです)

林伸次(はやし・しんじ)

林伸次

1969年生まれ。渋谷のワインバー「bar bossa(バールボッサ)」店主。 レコファン(中古レコード店)で2年、バッカーナ&サバス東京(ブラジリアン・レストラン)で2年、 フェアグランド(ショット・バー)で2年勤務。1997年渋谷に「bar bossa」をオープン。 2001年ネット上でBOSSA RECORDSをオープンし、選曲CD、CDライナー執筆多数。 著書は『バーのマスターは、なぜネクタイをしているのか?』(DU BOOKS)、 『恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる。』(幻冬舎)など。2020年11月に新著『大人の条件 さまよえるオトナたちへ』(産業編集センター)を上梓。
bar bossa

コロナ禍の飲食店経営の現状

――林さんには2014年にスモビバ!で飲食店の経営について取材させていただきましたが、コロナ禍の影響もあり、当時と比べて環境は大きく変化していると思います。ご自身のお店も踏まえて、現在の飲食店経営をめぐる状況はどのようなものでしょうか?

林

林伸次さん(以下、林):僕は渋谷で24年間バーを経営してきて、実はこれまでも何度か経営危機を経験してきました。まずはじめは2008年のリーマンショックのとき。それ以前の日本はけっこう景気が良くて、大企業の方々が2万円のワインを経費で落としてクライアントを接待する場所……というのがバーだったんです。しかしその文化はリーマンショックで途切れ、多くのお店が潰れてしまいました。

次が2011年、3.11の東日本大震災。原発問題や計画停電なんかもあって日本全体が危機的状況のなか、六本木や渋谷など都心で朝まで飲むなんてことは被災者の方たちに失礼だという風潮で、お客さんは一気に来なくなりました。ただ逆に当時、Twitterで困っている業界やお店を拡散し、みんなで助けようというムーブメントも流行ったんです。時流に追いつけなかった古いタイプのお店は潰れてしまいましたが、僕もその流れに乗ってSNSを活用したり、一時的にランチも営業したりして乗り越えました。

そして2020年以降のコロナ禍です。今回もTwitterでシェアしてお店を助ける動きや、テイクアウト利用、先払いチケットといった試みはあったのですが……。飲食店は密になる上、飛沫が飛んで移りやすいという意見が主流になり、お店に来てくださいとおおっぴらに言えなくなりました。さらに、20時以降は営業自粛が勧告されているなか、お店がこっそりと営業していないか電話して確かめる「自粛警察」が出てきていたりもします。

それでも現在は、時短営業による1日6万円の協力金のおかげで、僕のような規模の小さい飲食店経営には比較的余裕がある状況ですね。1回目の緊急事態宣言のときは行政による営業補填のタイミングが遅くて資金繰りで厳しい面がありました。反省を踏まえて改善策が打たれていると思っています。

――コロナ禍での接客ではどのような部分に気を遣われていますか?

林

林:飛沫対策のマスクやこまめな消毒は当然行っています。あとはカウンターにアクリル板を設置する、席に間を空ける、お客さんの人数制限をする、といった対応ですね。ただ、この点に関してはワクチンなどでコロナがいずれ収束すれば元に戻ると考えています。バーでの接客のスタイルはコロナ後もあまり変わらないだろうと楽観視している部分はありますね。

林さん流・長くお店を続けるための考え方

――これから飲食店の開業は、コロナ以前とどのようなところが異なりますか?

林

林:これまではいわゆる「飲食店の方程式」がありました。例えばランチを提供するお店であれば、最寄り駅の乗降客数は、近くの大企業の社員数は……と計算することで数字が見込めた。しかし、それはもう成り立たないかもしれませんね。都心部にオフィスがある多くの企業で社員のリモートワーク化が進んだため、近くの飲食店がどんどん潰れているという話も聞きます。

だから僕は、お店をやるなら次の流行を見つけるしかないと思っています。最近僕が注目しているのは、コミュニティやサロンなどのイメージです。人間が欲しているのは「知りたい」「行きたい」「仲間になりたい」の3つだけらしいんですね。これを活用して、会員制のサブスク型飲食店を経営する、とかはアリなんじゃないかと思います。

例えばビルやマンションの中の飲食店をすべて会員制にして、月額1万円を払うと会員になれるようにする。そして自由にお茶やランチをしてもらうとか、恋人やビジネスパートナーを探せるコミュニティづくりを行うというのも良いかもしれません。サロンにくっついてくる宗教っぽさには注意する必要がありますが、これからの時代の繋がり方のひとつのかたちなのではないかなと思います。

――なるほど。飲食店もいまの時代に合わせてビジネスを考える必要があるということですね。

林

林:あとは飲食店って結局、家賃と人件費がかかります。そこで、電話かネット注文のみに応じてデリバリーする「ゴーストレストラン」というやり方も最近出てきていますね。そしてレストラン自体をメディアにしてしまって、YouTubeやSNSなどで発信する。最近流行っているMr.CHEESECAKEはシェフ自身がメディアになって発信していますが、このようにSNSやインターネットでお客さんに知ってもらえれば、家賃と人件費を押さえて商品を売ることが可能です。

他にも例えば、最初からミシュランを狙う方法もあるらしいです。ミシュランの星を取ったあと、得たブランド力を使って百貨店の地下売り場で商品を売ったり、コンサルをしたりする、という。自分自身がブランドになれれば家賃と人件費を使わない方法でメディアになることができて、ファンを作れます。難しい部分もあるかも知れませんが、これができれば一番強いですよね。

話をする林さん

――マーケティングの方法も重要になってきそうです。では次は「お店を続けていく」ということに関してお伺いします。林さんは20年以上の長きに渡ってbar bossaを経営されていますが、長く続けていくためにどんなことを意識していますか? 具体的な方法などあれば教えてください。

林

林:僕は「商いは飽きないこと」だと思っています。bar bossaが他のお店と違うのは、常に新しいお客さんを開拓したことですね。そもそも長く同じお店に通い続ける人は滅多にいないので、いろいろなところにボールを投げるしかないんです。お店はたいてい6年で終わるという法則があり、通常はそこで閉店して別の店舗を始めるのですが、僕はお客さんをどんどん変えていくスタイルにしました。

僕のお店は、開店当初はアーリーアダプターの方が来る場所だったんです。マガジンハウスの方が来てHanakoやBRUTUSに載り、それを見たトレンドに敏感なアーリーアダプターの方が来て……といった雰囲気でした。また、その数年後はミュージシャンや映画関係者が集まるお店になったんですね。当時、僕は音楽ライターとしてCDのライナーノーツを書く仕事もしていて、お店でも演奏会をしたり、インディペンデントの映画を上映したりしていました。

しかし、その後だんだんと音楽配信の時代になり、CDが売れなくなってしまった。当然CDのライナーの仕事もなくなりました。どうしようかなと思っていたところで、cakesの加藤貞顕さんに声をかけられて恋愛コラムを書くことになったんです。すると、結婚したいけど出会いがない人たちがいっぱいいると気づいたんですね。なるほどと思って、お店で男女が出会える会を開催したりしていくうちに、またお客さんの層が変わっていきました。このような感じで投げる場所を常に変えてきたんです。

――6年ごとにお店は終わっていくという法則があるなかで、それでも場所を変えずにお店を続けることにしたのはなぜだったのですか?

林

林:結果的にそうなった感じでしたね。4〜5年目に売上が良かったので、2軒目の出店を考えて物件を見たこともありました。でもそのとき、歳を取ってくると新しい流行を先取りできなくなると気づいたんです。経験上、35歳以降になると流行も後追いになってしまいます。

飲食店は流行する前に気づくことが大事で、はやる前に台湾のタピオカが面白いとか、ふわふわパンケーキの魅力に気づかないといけない。しかしそのためには若さとセンスが必要です。だから新店舗を展開するのはやめて、1店舗で違うやり方でやらなければと気づきました。

――ただ一方で、「ボサノヴァを流すバー」であることは開店当初から変わらない点かと思いますが、それはなぜだったのでしょうか?

林

林:僕のバーの師匠が中村悌二さんという方なのですが、「バーは、いつ行っても同じ雰囲気で、同じマスターが出てきて、同じ値段で同じ酒が出てくれば潰れない」という法則があると教えられました。そこだけはブレずにやっていこう、とは考えていましたね。

林さん

飲食店開業はいまがチャンスの理由とは?

――以前の取材時、お店をオープンするときは「このまま営業したらすごく儲かってしまうんじゃないかというくらいの設定で」とおっしゃっていました。ただし、今はコロナ禍で満席にはできず、今後も外出自粛などの要請があれば難しいこともありそうです。現状ではどのように向き合えばよいのでしょうか。

林

林:難しいことは多いですが、飲食店を開業したいと思っている場合は逆にいまがチャンスかもしれないんです。お店がたくさん倒れてしまって空き物件も多いので、不動産屋さん側に家賃交渉がしやすい状況でもあります。20万円が10万円になったら、今後景気が良くなっても同じ値段のままで基本は据え置けるので、今始めるのはアリだなと思いますね。

加えて、メディアやアーリーアダプターの方々は常に新しいネタを求めています。「コロナだけどこんなに面白いお店が開業した」というネタはメディアの食いつきも良いですし、いまはほとんど誰も始めていないのでブルーオーシャンなはず。狙い目だと思います。

――いずれコロナが終息したとしても、beforeコロナにはもう戻れないと言われています。これからの飲食店はどのように変わっていく、または変わるべきだと思いますか?

林

林:会社が終わったあとに付き合いで飲みに行く「おっさん文化」的な古いスタイルが、ちょうど終わる良い時期なんじゃないかと思いますね。これまで日本の飲食業界はこれまで忘年会など会社の宴会でお酒をたくさん飲んでもらい、お金を回収するシステムになっていました。一方、料理の値段は安すぎると思っています。日本がこれから(少子高齢化などで)経済が落ち込む、また卸業者さんのことも考えると、これからは料理でもちゃんとお金を取るべきです。

今後は会社の宴会需要をターゲットにしていた大手居酒屋チェーンが厳しくなるはず。逆に僕たちのような小さなお店はむしろチャンスになるという気がしています。三軒茶屋あたりにあるお店などは、テレワークで家にいる社会人のランチ需要や昼飲み需要もあって、今とても儲かっているとも聞きますね。

他の飲食店経営の方向性としては、まだ注目されていない日本のお茶など未発掘のものをチェックしたり、サブスクや会員制などで繋がれる場所を作ることも重要だと思います。働き方が流動的になった現在では、会社が居場所としての機能を失いつつある。第3の居場所として飲食の拡張を模索していっても面白いんじゃないでしょうか。

――最後に、コロナ禍の今、またはこれから近い将来、飲食店を開業したいという人に向けたアドバイスをいただけますでしょうか。

林

林:例えば今、多くのアパレル店舗が閉店したり、化粧品が売れていないなど先行き不透明な業界はたくさんあります。飲食店も倒産は多いですが、しかし飲食業界には強みがあります。まずひとつは、人は必ず食事をすること。もうひとつは、デート需要が決してなくならないこと。マッチングアプリで誰かと知り合ったとしたら、必ず「どこかで食事をしましょう」という話になりますよね。それに女性を誘うとき、「公園に行きましょう」ではなく「おいしいお店を見つけたから行きましょう」の方が、絶対に良いわけです。

AIが発展していったとしても人は食事しないといけませんし、どうしてもリアルなお店に行くことになるでしょう。それに、ロボットがシェーカーをカシャカシャやっているお店よりも、「名物マスターが立つお店に行きたい」と人々は絶対に言うはずです。「だから大丈夫ですよ」と、これから飲食店を開業したい人に向けて僕は言いたいですね。

撮影:沼田学

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