振替納税とは?手続きの方法や注意点などポイントを解説!

所得税の確定申告では、1年間の所得を集計して、所得税額を確定させます。医療費などの各種控除によって、所得税の還付を受ける人もいれば、納付が発生する人もいます。
確定申告の結果、所得税を納税することになった――。
そんなときに、納税する方法がいくつかあります。現金に納付書を添えて納付する方法もあれば、電子納税する方法もあります。そのほか、クレジットカードによる支払いや、コンビニで納付書を添えての二次元バーコード決済で支払いなども行うことができます。
どうしても一括で支払えない場合は、分割で支払う「延納」も条件を満たせば、認められています。税金の支払いが困難な場合は、検討してみてもよいかもしれません。
そんな多岐にわたる納付方法のなかでも、利便性が高いのが「振替納税」です。この記事では、振替納税のメリットや注意点、具体的な手続き方法について解説します。
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目次
- POINT
-
- 振替納税とは、銀行口座からの引き落としで納税する方法のこと。残高に注意。
- 2021年からスマートフォンでも手続きが可能になった。
- 引き落としの口座には、ゆうちょ銀行を含む全国の銀行や信用金庫、労働金庫、信用組合、農協や漁協を指定することができる。
振替納税は、口座引き落としで納税する制度
振替納税では、銀行口座からの自動引き落としによって納税することができます。最大のメリットは納付の手間が省けることです。一度手続きをしておけば、自動で口座振替になるため、2回目以降は何もしなくても、引き落とされることになります。小売業、飲食業など、毎年納付をしている業種であれば、振替納税にしておくと便利ですね。
クレジット払いやコンビニ払いも便利ですが、つい忘れてしまったりするもの。多忙な人ほど、振替納税のメリットは大きいといえるでしょう。
そして振替納税の場合、納付が期日よりも約1カ月先になるので、資金繰りに余裕ができることも大きなメリットです。
2020年分(令和2年分)でいえば、所得税の確定申告における法定納期限は2021年(令和3年)4月15日(木)ですが、振替日は2021年(令和3年)5月31日(月)です。申告・納付期限の延長に伴う振替日の変更で、令和2年分については、振替日が延納期限と同一日の2021年(令和3年)5月31日(月)です。
振替納税を始めるときの手続方法
振替納税の手続きは2通りあります。書面の提出かパソコンやスマートフォンからのオンライン手続きです。オンラインでの手続きは2021年1月からできるようになりました。
先に書面で提出する場合の依頼書の作成について説明します。
依頼書の作成
振替納税を利用する場合は、「預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書」(振替依頼書)を作成します。下記のPDFファイルに必要事項を入力して、プリントアウトしたものを提出するという流れになります。
依頼書では、自分の氏名と提出先の税務署名を記載し、口座振替を開始する月日を選択します。次に、依頼書の提出日を選択のうえ、引き落としを行う金融機関の銀行名、支店名、口座の種類、口座番号、自分の住所と氏名のフリガナを入力していきます。
ここまで入力できたら、約定を確認の上、印刷します。出力されたら、同時に出てくる控えは保管しておき、提出用に署名と捺印を行いましょう。
まずは、引き落とし口座について入力した部分に、氏名を手書きで書くところがあります。署名をしたうえで、金融機関の届け出印を捺印します。この際に、届出印を間違えないように注意すること。最後に右上に、自身の印鑑を捺印すれば、届け出の作成は終了です。
依頼書の提出
依頼書が作成できたら、「納税地を所轄する税務署」もしくは「振替依頼書に記載した金融機関」へ、国税の納期限までに提出しましょう。2020年分の納期限は、下記を参照してください。
納期等の区分 | 法定納期限 | 振替日 |
---|---|---|
確定申告 | 2021年4月15日(木) | 2021年5月31日(月) |
確定申告延納 | 2021年5月31日(月) | (注) |
(注)申告・納付期限の延長に伴う振替日の変更により、振替日が延納期限と同一日の令和3年5月31日(月)となります。このため、確定申告書に延納届出額を記載した場合であっても、確定申告に基づき納付いただく税額の全額を一括して振替納税による口座引き落しを行います
- 【参考】
- 主な国税の納期限(法定納期限)及び振替日
振替納税ができる金融機関
引き落としを行う口座については、全国の銀行や信用金庫、労働金庫、信用組合、農協や漁協を指定することができます。ゆうちょ銀行でもOKです。
ただし、一部のインターネット専用銀行は利用できない場合があります。事前に金融機関に確認するようにしましょう。
2021年からパソコンやスマートフォンでも手続き可能に
2021年1月から、e-Taxでも振替依頼書の提出ができるようになりました。パソコンやスマートフォンからe-Taxにログインし、必要事項を入力していきます。
振替依頼書等の記入や金融機関届出印の押印もプリンターも必要ありません。
振替納税の注意点
便利な点が多い振替納税ですが、注意点もあります。
残高不足だと延滞税がかかる
引き落とす口座に残高がきちんとあるどうかは注意しなければなりません。残高不足の場合は、延滞税が発生してしまいます。
きちんと振替日を把握した上で、十分な残高があるかを確認するようにしましょう。振替日については、税金の種類によって異なるので、その点も注意が必要です。
引っ越した際には手続きが必要
引っ越しをして所轄税務署が変更になった場合は、手続きが必要です。実はこの手続きが2021年1月から簡略化されました。
個人事業主が移転した場合、税務署に「所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する届出書」を提出しなければなりません。そのときに、振替納税を利用していて、引き続き同じ口座から引き落とすには、これまで別途申請が必要でした。
しかし、今は手続きが簡単になり、「所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する届出書」の4.「振替納税を引き続き希望する。」で「はい」にチェックするだけで、同じ口座で継続して振替納税を行えます。
所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する届出書(PDF/133KB)
この届出書は移転する際、いずれにしても必要なものです。もし近々、事業所の引っ越しを予定していたとしても、振替納税への切り替えは済ませてしまっても問題はなさそうです。
ただし、移転などを機に引き落とし口座を変更したいという場合は、新規のときと同様に「預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書」に必要事項を記入して、税務署に提出することになります。
振替納税をやめるときの手続き
納税方法を変えるなどの理由で振替納税の利用を取りやめる場合は、「振替納税の取りやめ申出書」を作成して、納税地を所轄する税務署に提出しましょう。
申出書はこちらからダウンロードできます。
納付期日が約1カ月先で便利な振替納税
振替納税は「納付期日が約1カ月先で、初回は手続きが必要だけど2回目以降は不要」、始めるのが億劫なイメージですが、初回もそれほど面倒な手続きではありません。
税金については、いろいろ事務処理が発生します。簡略化できるところはしておいたほうが無難です。特に納税は忘れてしまうと、延滞などのペナルティを課せられてしまいます。
便利な振替納税への切り替えを検討してみてはいかがでしょうか。