【確定申告護身術】新型コロナ関連の給付金は課税対象?マスクは医療費控除?

新型コロナウイルス感染症の影響で、あらゆる変化が起こった2020年。いろいろな制度変更がありましたし、事業に関するお金の動きが大きく変わった方も多いでしょう。そのため、「確定申告にはもう慣れてるよ」という人でも、意外な落とし穴や盲点が予想されます……!
今回は、「2020年(令和2年)分の所得税の確定申告をしっかりやり遂げたい」という人に向けて、抜けや漏れを防ぐための「確定申告護身術」を紹介しましょう!
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目次
入場整理券がないと確定申告会場に入れない!?新型コロナ関連の給付金や助成金は課税対象!?【2020年分の確定申告の護身術】
コロナ禍によるさまざまな影響があった2020年分の確定申告は、要注意ポイントがこれまでより多いかもしれません。申告書類の作成や提出前に、チェックしてみてください!
相談や書類の提出、確定申告会場に行けばいいんだよね? 今回の申告はは「入場整理券」がないと入れないって!?
2020年分の確定申告については、混雑緩和のため、確定申告会場に入場できる時間枠が指定された「入場整理券」がないと中に入れません。
入場整理券は確定申告会場での当日配布もありますが、混雑状況などによっては、後日じゃないと入れない……という恐れも。心配な場合は、オンライン(LINE)での事前発行を利用しましょう!
2019年分の確定申告、期限延長されてラッキー♪→2020年分の申告の前までに済ませないとダメ~!
2019年分の確定申告については、納税者の個別の事情を考慮して、申告期限が延長されています。そのため2019年分の申告ができていない人は、2020年分の所得税の確定申告書と同時に提出してもOK!
ただし、2020年分を提出し、後日に2019年分を提出すると、「期限後申告」のペナルティを受けてしまうので、順番を間違えないように!
新型コロナ関連の給付金や助成金は、事業に関連するものなら課税対象
法令等の規定により、非課税所得とされるもの以外の給付金や助成金は、所得税の課税対象になります。
持続化給付金や中小企業者等応援給付金、雇用調整助成金、小規模事業者持続化補助金、家賃支援給付金など、2020年はいろいろな給付金や助成金の支給を受けた人も多いはず。売上ではなく雑収入などとしてきちんと仕訳を!
マスクや自己判断のPCR検査費用、医療費控除の対象でしょ?え、無理??じゃあ経費にできる!?
マスクなどの感染症対策グッズの購入費や、自己判断のPCR検査費用は、治療ではなく予防のための支出なので、残念ながら医療費控除の対象にはなりません……。
ただし、自己判断でPCR検査を受けて、陽性であった場合、そのあとの治療にかかわる費用としてPCR検査費用も医療費控除の対象になります。また、「事業に必要だ!」「マスクや検査で安全性を証明しないと仕事にならない」という場合は、必要経費にしてOKです。
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65万円控除ができない!?マイナンバーカードにロックが!【e-Taxの護身術】
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ目的でも、税務署に直接行かずに電子上の申告が行えるe-Taxの活用が推奨されています。しかし、e-Taxには特に気をつけておきたい注意点がたくさん……!
e-Taxが使えないと、青色申告しても10万円損しちゃってヤバい!?
2019年分までの青色申告特別控除額は、65万円または10万円の2段階でした。2020年分以後は、65万円、55万円、10万円の3段階になります。
2020年分からは55万円控除の要件に加えて、「e-Taxによる電子申告」または「電子帳簿保存」をする場合は、引き続き65万円の控除を受けられます。複式簿記で期限内の申告でも、電子帳簿保存の承認を得ずに書類での提出だと55万円に引き下げられてしまいます(泣)
青色申告65万円控除を狙っている人は、ぜひe-Taxを!税理士に提出を依頼している場合も、e-Taxに対応しているか確認しましょう。
税務署のパソコンだと65万円控除できないの?
税務署に設置してあるパソコンは特殊な仕様で、青色申告決算書などのデータを送信することができません。データを紙に印刷して提出することは可能ですが、これは電子申告ではないため、65万円控除が受けられないのです。
「天下の税務署さまならe-Tax余裕っしょ!」と思い込まず、e-Taxで書類を提出したいなら、自宅などのパソコンで!
マイナンバーカード持ってるからe-Tax余裕!……使えないってなんで?電子証明書の有効期限とは??
成人の場合、マイナンバーカード自体の有効期限は発行日から10回目の誕生日までです。ところが、マイナンバーカードに搭載されている電子証明書の有効期限は、発行日から5回目の誕生日!
マイナンバーカードの運用が始まった2016年初頭にすぐ発行して、確定申告期日までに誕生日が来る人は、2021年で電子証明書の有効期限が切れている可能性があります。期限の数ヵ月前に、更新をお知らせする通知が届いているはずなので要チェック!
間違え続けると地獄! マイナンバーカードのパスワードはミス3回か5回でロック!
マイナンバーカードに設定したパスワードの入力を、連続して3回(署名用電子証明書は5回)間違えるとロックがかかってしまいます。しかも、インターネット上での再設定はできず、役所に行かないと再設定できません。
確定申告期日ギリギリにロックがかかると、マイナンバーカードでのe-Tax(電子申告)ができなくなって終了……。おまけに青色申告65万円控除も受けられない(涙)
ID・パスワード方式でe-Taxやろうと思ったら、会計ソフトと連動しないんだが……
複雑な青色申告の強い味方・会計ソフト。いろいろなソフトがありますが、会計ソフトからID・パスワード方式でそのままe-Taxを行うことはできません。
ID・パスワード方式の場合、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で、会計ソフトで作成したデータを手動で転記して申告書を作成し、そのデータをe-Taxへ送信する必要があります。転記ミスやタイムオーバーに気をつけて!
在宅業務が増えたら家事按分も変わる?経費にできるもの・できないもの、忘れがちなもの【経費に関する護身術】
所得税の確定申告で多く見られる失敗が、経費に関する勘違いや計上漏れなどです。特に2020年分は、コロナ関連で経費にできる意外なものや、忘れがちなものが多いかも!? しっかり確認して、経費に関するうっかりミスや申告漏れを防ぎましょう!
コロナ禍で増えた在宅業務。家事按分はどうしたらいいの?
家事按分の割合は、実際の仕事の状況と照らし合わせて合理的に説明できればOK。コロナ禍で在宅勤務が多くなったなら、それに伴って家事按分の割合が増えるのもOKです!
ただし、家事按分の計算方法を年や月ごとにコロコロ変えたりするのは避けましょう。計算方法を月ごとにコロコロ変えると脱税行為とみなされる場合も……。
白色申告の家事按分、事業で使う割合が「50%超」じゃないと認められないの? ズルくね?
2020年に在宅業務が増え、「家事按分の割合が増えたぞ~」と思っている人も多いでしょうが、白色申告の場合、「業務・仕事の部分の割合がおおむね50%超の家事関連費だけが対象」という点には要注意!
自宅兼事務所の一部屋を明確に事務所として使っているケースなどは、その部屋の広さが全体の50%を超えていなくても家事按分の対象にできますが、しっかり証明できないとNGです。
コロナ禍で仕事がストップ。遊休資産ってなにそれ?減価償却の対象??
事業に使うために取得したものの、仕事が減ったり、休業などでその使用や稼働を休止している資産のことを「遊休資産」といいます。コロナ禍で遊休資産を抱えた人もいると思いますが、遊休資産であっても、メンテナンスが行われており、いつでも使える状態であれば減価償却の対象にできます。
コロナ禍でのイベントや出張のキャンセル料は泣き寝入りだ~(涙)……経費にしてもいいの!?
イベント会場や飛行機、ホテルなど、事業で利用するため予約していたものがキャンセルになり、キャンセル料を取られてしまっても、泣き寝入りする必要はありません! キャンセル料や解約手数料、払戻手数料などは、支払手数料として経費計上できますよ。
スタッフのために購入したマスク。これはまさか棚卸不要……?
新型コロナウイルス感染症防止の目的でマスクを購入し、期末に使い切らずに残った場合、棚卸が必要と考えがち。でも、事業用に感染拡大を防ぐためのマスクや消毒液などは、購入したタイミングで経費扱いにしてもOK!とされているんです。
コロナ禍でテイクアウトなどの新業務をスタート! そっか、消耗品等も棚卸資産に含まれるんだね……
飲食店では、新たにテイクアウト業務を始めて、そのために容器を仕入れるようになったお店もあるでしょう。そこで気をつけたいのが棚卸。
お店で使用している食器とは異なり、テイクアウト用に仕入れて期末に使い切らなかった分の容器などは、忘れずに棚卸をしないといけません。
在宅業務の環境を整えるための椅子や観葉植物、経費にできたらうれしすぎ←OK!
2020年は会社員だけでなく、個人事業主やフリーランスも在宅業務が増えた人が多いでしょう。自宅兼事務所の環境を整えるため、事業用の家具やインテリアなどを購入したケースもあるのでは?
事業用の机と椅子など、仕事で使用することが明らかな家具や家電は、問題なく経費に計上できます。また、お客様やクライアントなどが来る場所に関しては、飾りつけやインテリアにかかった費用も経費になるので、確認してみてください。
取引先に常駐するのに定期券を買っていたけど在宅業務に→払い戻ししたけど差分は戻らず……交通費で計上しちゃうよ?
在宅業務が増えた分、職場への移動が減って、定期券を使わなくなり払い戻しした……というケースもたくさん想定される2020年。しかし定期券は割引金額で購入しているため、利用しなくなったからといって、残念ながら全額払い戻ししてもらうことはできません……。
払い戻しをしてもらった場合、実際に払い戻しされた、手数料と使用分が差し引かれた金額を仕訳しましょう。払戻手数料の分は、支払手数料として計上してください。
急な休業要請の影響で廃棄した食材、いったい何費?
休業要請で泣く泣く食材(棚卸資産)を廃棄することになってしまったとき、その食材の損失や費用の額は、通常の廃棄ロスや廃棄損ではなく、「災害により生じた損失(災害損失)の額」に当てはまります。あまり使い慣れない科目かもしれませんが、「災害損失」の勘定科目で処理するといいでしょう。
オンラインレッスンなどの動画配信をスタート。機材の購入費だけでなく、保険料や修繕費も経費にせよ!
事業で使う機材を購入した場合、購入費は経費としてわかりやすくイメージできると思います。ところが、保険料や修繕費はうっかり忘れがち! 高額の機材を導入すると同時に保険をかけた場合や、壊れてしまって修理をした場合も、それらにかかった費用をしっかり計上してくださいね!
ECサイトに出店したよ~っ!←それに関するもろもろの経費計上、忘れがち
コロナ禍でお店や委託販売先が休業になり、ECサイトへの出店を新たに始めた個人事業主もいると思います。店舗のオープンと同様、ネットショップの開店や出店にも費用はかかります。
ECサイトへの出店費用や登録費用、サイトに掲載するための商品撮影費用、商品を送るための資材費、ラベルの印刷費、売上金の振込申請を行う際の振込手数料や事務手数料……など、忘れちゃダメですよ。
また、個人でオリジナルのECサイトを構築した場合は、構築費用やSEO対策費、サーバーやドメインの利用料なども経費になります。
安心してください! 従業員に支払った休業手当も経費になります!
コロナ禍の影響で、「初めて従業員に休業手当を支給しました!」という人も多いかもしれませんね。
休業要請など何かしらの理由によってやむなく休業する場合、従業員に休業手当を支払わなければいけないケースがあります。そのため、事業に必要な費用として、個人事業主では必要経費になると考えられます。「休業手当」などのわかりやすい科目を設定して、処理をするといいでしょう。
まとめ
個人事業主が避けては通れないビッグなイベントである所得税の確定申告。今回の2020年分の場合は、新型コロナウイルス感染症の影響で、ここで挙げたようにさまざまな注意点やチェックポイントが考えられます。
特に、「例年とは異なるお金の動きがあった」「コロナ禍をきっかけに新しい業務を始めた」「在宅業務が増えた」などという人は、書類の提出前に、今回の内容を念入りに確認してみてはいかがでしょうか。確定申告護身術で、抜けや漏れを防ぎましょう!
photo:Getty Images