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企業からのニーズ増加中!フリーランス人事という働き方、報酬の決め方

従来、フリーランスと言えば、デザイナーやカメラマンといったクリエイティブ職の人がなるもの……というイメージがありました。でも実は最近、人事や広報、営業といったビジネス職でもフリーランスという働き方が広がってきているのです。

そこで今回は、一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会の理事も務めつつ、ビジネス系フリーランス女性と企業のマッチングサービス等を運営する株式会社Warisの共同代表・田中美和さんにお話をうかがいました。

田中さん自身はフリーランス(個人事業主)として活動していた時期もあるそうですが、ビジネス系フリーランスの中でもフリーランス人事の実態をうかがいます。働き方や仕事の取り方、キャリアの考え方とは……?

(※この取材はオンライン会議ツールを使用し、リモートでインタビューしたものです)

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田中美和(たなか・みわ)

田中美和(たなか・みわ)

株式会社Waris共同代表。一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会理事。国家資格キャリアコンサルタント。
慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、日経ホーム出版社(現日経BP社)入社。編集記者として「日経ウーマン」の企画・取材・編集・執筆に携わる。女性が自分らしく前向きに働き続けるためのサポートを行うべく2012年退職。フリーランスのライター・キャリアカウンセラーを経て、2013年に株式会社Waris共同創業。著書に『普通の会社員がフリーランスで稼ぐ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)がある。
https://waris.co.jp/
note: https://note.com/tanakamiwa
Twitter: https://twitter.com/Miwa_Tanaka57

増えている「フリーランス人事」その実態とは

――田中さんは現在Warisの共同代表などをされているとのことですが、以前はフリーランスだったこともあるそうですね。そのあたりも含めてご経歴を教えていただけますでしょうか。

田中美和

田中美和(以下、田中):キャリアとしてはもともと、日経BPにて丸11年ほど編集者兼記者を務めていました。当時は『日経ウーマン』という働く女性向けの雑誌を担当しており、数多くの方を取材したのですが、その中で女性の働き方に大きな課題を感じるようになったのです。

もっと女性がいきいきと働き続けられる社会を作っていきたい。そう思って会社を辞め、まずフリーランスとして働きました。その頃は会社員時代の経験を活かしたライター・編集業に加え、在職中に取得したキャリアカウンセラーの資格を活かし、フリーランス人事のHRとして企業の採用活動に携わったりもしました。その後に仲間との出会いもあり、2013年にWarisを創業して今に至ります。

――「女性×ビジネス系フリーランスのエージェント」という領域に事業を定めたのはなぜだったのですか?

田中美和

田中:女性の働き方を考えるとき、働く時間や場所に悩みを抱えている方がとても多いと思ったんですね。育児や介護によって女性がある種の制約を受けるのが、日本では現状まだまだ一般的です。そうしたとき、時間と場所の自由度が高いフリーランスという働き方が、女性たちの選択肢を広げるのではと思いました。

また、当時はフリーランスと言えばデザイナー、エンジニアのようなクリエイター職を思い浮かべる方が多い状況でした。だからいわゆる普通の会社員からすると、「私はクリエイターじゃないしフリーランスにはなれないな」という話になってしまうんですよね。

でも、私たちの創業メンバーのうち、私ももう1名もフリーランス人事として働いていましたし、クリエイターではなく人事や財務経理、広報、マーケティング、営業といったビジネス系の職種でも実際にフリーランスになれるのです。だからこそ、あえてビジネス系に焦点を当ててこれまで事業を展開してきました。

――Warisに登録する女性のビジネス系フリーランスの方々は、今増えてきているのですか?

田中美和

田中:はい。弊社の人材紹介サービスの登録者を「Warisパートナー」と呼んでいますが、2019年度から登録者数が非常に伸びてきています。現在では約1万1000名となっています。

社会全体で「働き方改革」や「人生100年時代」といった言葉が使われるようになり、それに伴う副業解禁の流れ、さまざまなクラウドツールやフリーランスマッチングサービスなどテクノロジーの加速も相まって、個人の価値観が変わってきたのではないでしょうか。

下の図の中央の円グラフを見ると、Warisパートナーは職種別だとマーケティングが一番多く、全体の19%を占めています。人事は全体の14%で2番目に登録者の多い職種です。

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「Warisパートナーの属性」人事のほか広報11%、営業10%、経理・財務9%と、ビジネス系フリーランスが多く登録している

フリーランス人事のクライアントは多種多様

――フリーランスの人事はどのような企業からどんな需要があるのでしょうか。

田中美和

田中:大企業から中小・ベンチャーまで幅広く仕事の依頼があり、これはどちらが多いとも言い切れないですね。

また、依頼される仕事については、次の図の業務内容を見ていただくとイメージがつかみやすいと思います。

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「Warisプロフェッショナル 職種別 稼働単価一覧」カテゴリごとの業務内容と時間単価が示されている。「業務の市場価格をつかむのも重要」と田中さん

田中美和

田中:人事職の仕事としては、大きく分けると採用と採用以外の2つがあります。

まず採用の方は、どんな職務内容の方を何人くらい採るのかという採用要件定義や計画立案、そして媒体選定や広告出稿といった計画実行の部分。

また、ダイレクトリクルーティング戦略やスカウティング、採用面接の代行といった業務も含まれます。

そして採用以外だと、労務関係や人事制度の設計、あるいは人材教育や研修関係の業務も依頼される場合があるでしょう。

特に中小・ベンチャー企業では、社員数が増えて既存の人事制度で対応しきれなくなり、現状に即したものにアップデートしたいなどの要望が出やすいです。

――大企業と中小・ベンチャーで、依頼される業務に傾向の違いはありますか?

田中美和

田中:大企業、もしくは新規上場などある程度の規模感の企業さんの場合、産休代替や繁閑の差を調整するような業務を依頼される場合が多いですね。例えば、新卒採用は秋口から春先に活発化し、業務も過多になって忙しくなっていきます。そうしたとき、フリーランス人事の方に助っ人的に採用業務を担ってほしい、というようなニーズがあります。

一方、中小ベンチャー企業さんの場合は、比較的経営者との距離が近く、二人三脚で人事制度を練り直す、あるいは採用の戦略立案から面接等の実務まで担当するなど、川上から川下まで一貫して任せたいというオーダーも多いですね。

状況は各企業によるので一概には言えませんが、ざっくり言うと大企業の方が依頼される業務が限定的で、中小・ベンチャーだと経営陣の近くで企画・戦略だけでなく実務もふくめて業務を任されるケースが目立ちます。

――なるほど……。働き方としては、基本的には業務委託契約を結ぶ形でしょうか。

田中美和

田中:そうですね。フリーランス人事では、私の知る限り業務委託契約が一般的です。企業側の希望でどうしても雇用契約を結びたいということであれば契約社員となるケースも中にはありますが。

フリーランス人事の仕事の取り方、報酬の決め方は?

――企業がフリーランス人事に仕事を依頼したいときは、どのように探すのでしょうか?

田中美和

田中:これは特に人事分野に限った話ではありませんが、企業がビジネス系フリーランスを探す場合、まずは過去の従業員や知り合いから探すのがオーソドックスな方法だと思います。

あとはWarisのようなエージェントサービスやビジネスマッチングのサービスなどを利用されることも最近の傾向として見受けられますね。

私も理事を務めているフリーランス協会では、フリーランス人材マッチングサービスのカオスマップを公開しています。今、フリーランス人材マッチングサービスはこんなにあるんですよ。

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「副業・兼業・フリーランス人材マッチングサービスのカオスマップ」(フリーランス協会作成)

――人材マッチングサービスって本当にたくさんあるんですね……!

田中美和

田中:そうなんです。事業者によっても特徴があって、例えば図の中ほどにはエンジニアや開発系に強い業者もあります。人事関係では図の下部に、Warisも含めた多くのサービス運営者がありますね。カオスマップから分かるように、これらのマッチングサービスを利用する企業は増えている状況です。

――では、フリーランス人事が仕事を得る際も、人とのつながりで仕事を得るか、もしくはこれらのマッチングサービスを利用する営業の仕方がメインなのでしょうか。

田中美和

田中:はい、おっしゃる通りです。フリーランス協会が毎年出している「フリーランス白書」でも、どのように仕事を探しているかという質問に対して、7割以上のフリーランスの方が過去の取引先や前職とのつながりといった個人的な人脈で仕事を見つけると回答していました。

ですので、フリーランスの人事として仕事をしていきたいのであれば、まずはご自身のつながりのある方に対して声をかけてみるのが良いかと思います。加えて、マッチングサービスの利用も検討してみると良いでしょう。

――マッチングサービスのエージェントは多様ですが、選び方はあるのでしょうか?

田中美和

田中:エージェントはそれぞれ強みや特徴が違ったりもしますので、情報を集めて、強みや特徴が合うところに気軽に登録されてみてはと思います。たいていどのエージェントでも登録面談という形で、仕事の希望を相談できる機会があります。

ざっくばらんに相談すれば、ご自身が目指す姿の整理にもつながるかもしれません。まず一歩、始めてみれば、フリーランスとして働く選択肢も現実的に見えてくると思いますよ。

――「Warisプロフェッショナル 職種別 稼働単価一覧」の中で、業務内容に対する時間単価が記載されていました。フリーランスで契約を結ぶ際には値付けが重要だと思いますが、報酬はどのように決めていけばいいか、アドバイスをいただけますでしょうか?

田中美和

田中:まず、報酬の決め方ですが、考え方としては一覧表にも記載していた「時間単価」がベースになってきます。だいたい人事関係の業務だと時間あたり3000円〜7000円前後が相場ですね。

金額の幅は、その方のスキルレベルや業務内容によって、あるいは企業の予算感によって変わってきます。戦略レイヤーの業務ほど単価は高くなってくるでしょう。このように時間単価×稼働で決めるのが一般的です。

次に、ご自身として収入全体をどうデザインしていけばいいのか、という観点があると思います。これに関してはいくつか考え方があります。例えば、ご自身の会社員時代の年収から算出するやり方。

ただ、フリーランスになると社会保険料がすべて自己負担になるので、会社員時代よりは少し多めに1.5倍〜2倍ぐらいは稼げるようになろう、などと考えられるでしょう。

ほかにも、とてもシンプルな考え方としては、月額手取りで欲しい金額を設定して、その上で希望の稼働時間から割り戻していく方法があります。

フリーランスの稼働時間は完全に本人の自由なので、抑え気味に月10〜20時間で、という方もいますし、あるいはフルタイム以上の150〜180時間稼働したい、みたいな方もいると思います。

例えば月額30万ほど必要で、稼働に使えるのは100時間ぐらいであれば、単純に割り算して時間単価で3000円はもらえる仕事をしたい、と決まっていきますよね。これも一つの手でしょう。

――とても分かりやすいです! お話を聞くと、企業と報酬を決めていく際はまず相場感を理解しておくのが大事そうですね。

田中美和

田中:そうですね。フリーランスの報酬は市場価格ですので、業務内容の希少性によって価格が上下します。

ただ、これまで会社員として働いていると相場感もなかなか分からないとも思うので、そんなときは私たちのようなエージェントを利用して聞いてみるのも良いでしょう。

あるいは、クラウドソーシングサービスなどではWeb上に業務内容と報酬が公開されているので、それらを見て確認するのも良いと思いますよ。

フリーランス人事のメリット・デメリットを聞く

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――フリーランス人事のワークライフバランスや働き方について感想は耳にされますか?

田中美和

田中:Warisに登録されているフリーランスを対象に行なった、2020年1月 27日~2月7日のアンケート調査によれば、回答者179名中「フリーランスになって満足している」と答えた方は9割以上でした。これはかなり高い数字ではないかと思います。

どんな点に満足かという質問では、「自分のスキルを活かせて、かつ働く時間と場所の自由度も高いところ」と答える方が多いです。

実際このアンケート調査によると、75%以上の人がリモートワークないし在宅勤務で仕事をされているようですね。ビジネス系フリーランスの間にもリモートワークは浸透しているみたいです。

また、ワークライフバランスについても柔軟に選ばれている方が多い印象ですね。

Warisのご登録者は30〜40代の女性が中心ですが、フリーランスで働きながら大学院に通ったり、あるいは不妊治療と両立したりという方もいます。

人それぞれ本当に多様なライフの形を、フリーランスとして働くことでバランスを取る方が多いですね。

――一方で、人事だけに限らないかもしれませんが、ビジネス系フリーランスの働き方におけるデメリットはどんなところでしょうか?

田中美和

田中:デメリットは大きく2つ。ひとつ目は社会保障が手薄である点、ふたつめは、会社員に比べ収入が不安定な点だと思います。

まず社会保障に関しては、ご自分で加入することになりますし、労災もビジネス系フリーランスの方が入れるものは、現状ほぼありません。

ですので、ご自身でうまくカバーしていく必要があります。例えばフリーランス協会では、フリーランス向けの損害賠償責任保険や、所得補償保険も提供しています。

ほかにも民間の保険が出てきていますので、情報を集めてやりくりするのが良いでしょう。

ふたつ目の収入が不安定という点に関しては、複数の収入源を確保してリスクヘッジすることしかないかなと思っています。

最近、コロナ禍でも影響がほとんどなかったフリーランスの方を何人か取材したのですが、そういった方々は常に複数のクライアントを持たれていました。多い方だと常に10社以上と取引されています。なので、主な収入やクライアントを極力、一社依存しない意識を持つと良いと思います。

――では最後に、フリーランス人事としてキャリアを積んでいく上では、どのようなプランや方向性を持って働くべきでしょうか。

田中美和

田中:フリーランスで人事を行う最大のメリットは、さまざまな案件を経験できる点です。会社員の場合は、自分が属している企業の手法や方針にのっとって業務を行なっていきますが、フリーランスでは複数案件を経験することによって、自分のスキルをスピーディーに深めていくことができます。

また、最近では「HRビジネスパートナー(HRBP)」という概念も出てきています。純粋に人事のチームメンバーとして採用業務を行うだけではなく、経営者のビジネス上のパートナーとして、より戦略的なサポートを提供する人事職、という意味合いです。

このようなプロフェッショナルスキルは、特に中小・ベンチャー企業の案件で経営者とともにプロジェクトを進めることで身につきやすいでしょう。

ぜひそんなところも意識して、多様な案件に触れてご自身のスキルアップを目指してみてはいかがでしょうか。

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