フリーランスでも労働組合に入れる?相談内容、メリットや種類、費用まで

「今の働き方で、果たして自分らしい生活を送れているのだろうか?」「この待遇ではどう考えてもやっていけない気がする……」。働き方への関心が高まるなか、自身の職場での待遇に疑問を持つ声が増えてきています。
フリーランスの場合、パワハラ、セクハラ、報酬の未払い問題などに直面したときどうしたらいいのでしょう?そんなとき、会社員ならば社内外の労働組合に相談することができますが、フリーランスでも労働組合に加入できるのでしょうか。解説していきます。
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目次
- POINT
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- 労働組合とは、労働条件を維持や改善、または、経済的な地位の向上を目的とする、労働者が主体の組織。
- フリーランスが所属できる労働組合もあり、増加傾向にある。
- 労働基準法が適用されないフリーランスこそ、自衛のために、労働組合への加入を検討するべき。
そもそも労働組合とは?フリーランスでも労働組合に入れる?
そもそも、労働組合について、よく知らないという人も少なくないでしょう。かくいう私も中小企業に18年間勤めて、このたび独立しましたが、労働組合には全く縁がありません。
フリーランスに限らず、会社員にとっても、労働組合は身近な存在とは言いにくいのではないでしょうか。
労働組合って何?
労働組合とは、労働条件を維持や改善、または、経済的な地位の向上を目的とする、労働者が主体の組織です。「労働者が主体」……ここが大事です。労働者が主体なのに、その存在すら知らない、頼ったこともない人が多いなんて、本来はおかしいですよね。
労働者が主体である労働組合は、どんな相談に乗ってくれるのでしょうか。見ていきたいと思います。
フリーランスと労働組合
「いやでも自分はフリーランスだから、労働組合なんて関係ないよ。そういう保証のない世界に自ら飛び出したわけだから、一人で生きていく覚悟はできてるよ」
そんなふうに考えているフリーランスの人もいるかもしれません。かくいう私がそうです。アウトローの一匹狼を気取って、労働組合なんて無縁だと思っていましたが、フリーランスの諸先輩方に話を聞くと、報酬に関するトラブルが非常に多くて、びっくりしました。要は未払いですね。
会社員でも、もちろん給与のトラブルはありますが、フリーランスのほうが、立場が弱い分、問題が発生しやすいようです。私も、もしものときのために、知識として知っておいたほうがよさそうですね……。
実は今、フリーランスを対象とした労働組合やユニオンが次々に結成されています。日本労働組合総連合会(連合)は2020年に、フリーランスなどを対象にした会員制度「連合ネットワーク会員」を新設することを決定し、2020年10月には専用サイトが開設されました。
「フリーランスだから、労働組合とは無縁」から「フリーランスだからこそ、労働組合に入ろう」へと、世の中の流れが変わってきているといえるでしょう。
労働組合に入るメリットは?
労働組合に入るメリットは、何といっても「団体で交渉できること」。この一点にあるといっても過言ではありません。
たった一人で会社側と交渉するのは困難を伴います。会社側も一人の意見や要望ならば、不都合な内容であれば積極的に解決しようとしません。たとえそうした悪意がなくても、一人一人の労働者に対応するだけの時間的な余裕もないのが現実です。
しかし、労働者が労働組合に加入し、団体交渉としてアプローチすれば、要望された会社側も、きちんとした対応をせざるを得ません。
労働における悩みや不安などを相談でき、かつ、団体交渉によって、実際の解決に導きやすい――それが、労働組合に加入するメリットです。
どんな相談に答えてくれる?
フリーランスで起きやすい「報酬未払い」や「セクハラ・パワハラ」
具体的に、労働組合では、どんな相談に対応してくれるのでしょうか。
まず筆頭に挙げられるのが、給与など労働条件の維持や向上についてです。ただし、フリーランスの場合は、会社員と違い、月給制ではないので「給料が上がらない」「雇用体系をいきなり変えられた」「解雇された」といったたぐいの悩みはありませんが、「受注した業務が、最初に聞いていた話と違う」「いきなり案件の中止が言い渡されたが、すでに作業をしてしまっている」といったことは、十分に起こり得ます。
また、そうしたフリーランスとトラブルを起こしやすい会社は、経営的に余裕がないところが少なくありません。そのため、相手側もフリーランス側の要求を認めれば死活問題になることが多く、簡単には合意に至りません。そんなときこそ、労働組合を通じての交渉が、力を発揮しやすいと考えられます。
中でも、深刻なのが「報酬の未払い問題」です。理由をつけて支払わなかったり、連絡自体がとれなくなくなったりすることが起こり得ます。
未払い問題は、一人では解決しにくいため、泣き寝入りしやすいのですが、そのままにしておくと、他のフリーランスにまで被害が及びかねません。
仕事上のトラブルがあった場合は、労働組合に積極的に相談するようにしましょう。第三者の意見は聞くだけでも、視界が広がることがあります。
そうした労働条件の維持や改善や、未払い報酬の請求以外にも、パワハラやセクハラの問題があります。特にフリーランスの場合、パワハラやセクハラを受けやすい環境にあります。どうしても、仕事を受ける側は弱くなりやすいからです。
なかでも女性は、一度や二度は嫌な目にあったことがあるのではないでしょうか。「打ち合わせ」と称して、不必要に会おうとするのも、パワハラやセクハラの案件といってよいでしょう。最近はそういったSNS上の告発もよく見られます。
しかし、本来「依頼をする側(主に会社)」と「依頼を受ける側(フリーランス)」の立場に上下関係はないはずです。労働に関するあらゆる問題を、労働組合では、相談することができます。
費用は労働組合によってそれぞれ
団体交渉に要する費用については、加入する労働組合によって異なりますが、月額で支払う組合費から賄われることが多いです。
ただし、個別の案件については、必要に応じてカンパを求められることもあります。
労働組合による交渉によって、何を勝ち得たいのか。それを明確にしたうえで、費用対効果をふまえて、最終的にどんなアクションを起こすのか決定するとよいでしょう。
組合費は経費に計上できる?
フリーランスが労働組合に加入した場合、「組合費が経費として計上できるのか」も気になります。事業に関係するという前提で、組合費は経費にできます。確定申告では「租税公課」の勘定科目で、計上してください。
ちなみに「租税公課」の「租税」は国税や地方税の税金を指し、「公課」は税金以外で公に課せられた費用を指します。「公課」には、給与の支払いに伴う社会保険料のほか、商工会議所や同業者組合などの会費、組合費などが含まれます。
労働組合費は「公課」の組合費に、該当するといえるでしょう。個別の不明点については、最寄りの税務署などにお問い合わせください。
- 【関連記事】
- 租税公課とは?所得税や印紙税は経費として計上できる?
フリーランスが入れる労働組合の種類は?
労働組合には、以下の5つの種類があります。
企業別労働組合 | 特定の企業に所属する労働者が加入できる労働組合 |
---|---|
職業別労働組合 | 所属企業にかかわらず、同一の職業に就いている労働者が加入できる労働組合 |
産業別労働組合 | 所属企業にかかわらず、同一の産業に就いている労働者が加入できる労働組合 |
一般労働組合 | 所属企業、職業、産業にかかわらず、労働者であれば加入できる労働組合 |
合同労働組合 (合同労組) |
所属企業、職業、産業にかかわらず、労働者であれば加入できる労働組合(一定の地域ごとに組織) |
このうち「(1)企業別労働組合」以外は、個人で加入することが可能で、正規雇用、非正規雇用を問わずに入れます。そして、なかには、フリーランスの加入を認めているところもあります。まずは自分の業種で、どんな組合があるかをリサーチしてみるとよいでしょう。
フリーランスが加入できる労働組合として、具体例を紹介しますと、私が所属する出版業界では、フリーランスとして働く編集者、ライター、校正者、デザイナー、イラストレーター、カメラマンなどが所属できるユニオン「出版ネッツ」(出版労連に加盟)があります。
これから、こうしたフリーランスに向けた労働組合が、増えていくと思われます。加入する際は、ご自分の業種をふまえて、改めてリサーチしてみてください。
また、冒頭で紹介した連合ネットワークは、業種にかかわらず、「曖昧な雇用やフリーランスとして働く方たち」ならば加入対象となります。組合員や雇用労働者ではない方は一度、検討してみてもよいかもしれません。
- 【参考】
- 働く(Work)みんなの連合サポートQ
いずれにしても、具体的に問い合わせをして疑問点を解消しながら、加入をご検討されることをお勧めします。
まとめ
以上、フリーランスの労働組合について解説しました。
「フリーランスになったら、不安定なのは仕方ないよね」
そんな認識が、私も含めて強かったのですが、働き方が激変している昨今の流れにはそぐわないのだなと、今回の記事を執筆して私自身も認識を改めました。
もはや、会社員としての働き方が、スタンダードだとは言い切れない時代になってきました。その一方で、フリーランスは、労働基準法も適用外となります。
働き方が多様化するなかで、フリーランスもまた安心して働けるような仕組みづくりが、これからますます進むことでしょう。
ちなみに現在、厚生労働省では、雇用類似の働き方に関する保護のあり方について検討を進めているそうです。
2020年10月時点では、最終的な結論は出ていませんが、「形式的には自営業者であっても、実態上は雇用労働者と同じように働いている人が一定割合いて、(=雇用類似の働き方)そういう人たちをなんらかの形で保護をすることが必要だ」という共通認識を持つところまで議論は進んでいるそうです。
働き方が多様化する中で、国のほうでも問題意識を持って取り組んでいるのだと思います。
労働者として正当な条件のもとで、正当な取引ができるように、最新情報をアップデートしていく必要がありますね。
労働上のトラブルがあっても、一人ではなく、相談できる場所があります。フリーランスでも入れる労働組合を探してみましょう!
photo:Getty Images