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2020年(令和2年)分の年末調整、変更点は?【人事給与担当者必見】

2020年(令和2年)分の年末調整は、新たな制度の導入や、それに伴う申告書の様式の変更など盛りだくさんです。ミスのできない年末調整。どのような変更が行われるのか見ていきましょう。2020年(令和2年)分の年末調整について、税理士・社会保険労務士の渋田貴正先生が解説します。人事給与担当者必見です。

お知らせ

2022年(令和4年)分の所得税の確定申告の申告期間は、2023年(令和5年)2月16日(木)~3月15日(水)です。最新版の確定申告の変更点は「2023年(2022年分)確定申告の変更点! 個人事業主と副業で注目すべきポイントとは?」を参考にしてみてください!

POINT
  • 2020年から、基礎控除と給与所得控除の改正が行われる
  • 新たに「給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」が導入される
  • 制度の改正などの情報について、2020年10月中にはあらかじめ各従業員に周知しておくことがベター

2020年(令和2年)分の年末調整の変更点

2020年に変更が行われるポイントについて見ていきましょう。

給与所得控除額、基礎控除額の改定

何よりも大きな改正が、給与所得控除額の減額と、それに対応した基礎控除額の引上げです。基礎控除は、所得があるすべての人にとって関係する控除ですし、年末調整を受けるということは給与所得者であるということ。つまり、すべての人にとって、関係してくる改定なのです。

まず、給与所得控除は、以下の通りに改定されます。

給与収入(1年間に支給を受けた給与の額面合計) 給与所得控除額
2019年まで 2020年以降
1,625,000円まで 650,000円 550,000円
1,625,001円から 1,800,000円まで 収入金額×40% 収入金額×40%-100,000円
1,800,001円から 3,600,000円まで 収入金額×30%+180,000円 収入金額×30%+80,000円
3,600,001円から 6,600,000円まで 収入金額×20%+540,000円 収入金額×20%+440,000円
6,600,001円から 8,500,000円まで 収入金額×10%+1,200,000円 収入金額×10%+1,100,000円
8,500,001円以上 10,000,000円まで 1,950,000円(上限)
10,000,001円以上 2,200,000円(上限)

表を見ればわかるように、まず給与所得控除額の最低額が10万円少なくなっています。給与所得=給与収入-給与所得控除です。つまり、給与所得控除が少なくなるということは、給与所得が大きくなり、所得税の金額も大きくなるということです。

それでは増税なのかといえば、一概にそうとは言い切れません。合わせて、基礎控除の金額が以下のように改定されているからです。

納税者本人の合計所得金額 基礎控除額
2019年まで 2020年以降
2,400万円以下 一律38万円 48万円
2,400万円超2,450万円以下 32万円
2,450万円超2,500万円以下 16万円

基礎控除は最低額が10万円アップしていますが、合計所得金額(給与以外の全ての所得を合算した所得金額)が2400万円を超えるような高所得者については、改正前に比べて基礎控除額が少なくなっています。

給与所得控除について見てみると、年収850万円を超える人については、上限額が引き下げられています。

結果的には、年収850万円を超える人については、まず給与所得控除の上限額引き下げによって増税改正となり、さらに合計所得金額が2,400万円を超える人については基礎控除も引き下げられるので、さらなる増額改正となっています。給与の年収が850万円以下で、他に収入がない人にとっては、最終的な税額には影響がでないことになります。

給与所得控除が関係ない個人事業主などについては、基礎控除が10万円アップすることで減税改正といえますが、年末調整の対象となる給与所得者については一部増額改正ということです。

配偶者や扶養親族等の合計所得金額要件等の見直し

上記の基礎控除の増額改定は、年末調整を受ける本人だけでなく、その配偶者や扶養している親族すべてに適用されます。その結果、各種の控除を受ける条件となる、配偶者や扶養親族の合計所得金額についても、以下の通り改正されます。

控除の種類 合計所得金額
2019年まで 2020年以降
配偶者控除・扶養控除・障害者控除 38万円以下 48万円以下
配偶者特別控除 38万円超123万円以下 48万円超133万円以下
勤労学生控除 65万円以下 75万円以下

各控除を受けるための合計所得金額が上がっているので、控除を受けやすくなったのかといえば一概にそうとは言い切れません。

給与所得控除の最低額が55万円で、基礎控除が48万円なので、103万円という年収の壁自体は変わっていません。扶養に入る人が給与所得以外(雑所得など)で所得を得ている場合であれば、10万円分だけ所得が増えても、扶養に入れられるという意味では有利な改正といえます。

扶養に入る人がパートタイマーなど給与所得者であれば、扶養に入るための年収の上限に変動はありません。

所得金額調整控除の新設

2020年から新たに導入される控除があります。それが「所得金額調整控除」です。給与所得控除と基礎控除の改正は、高所得者にとっては増税となる改正でした。

とはいえ、これでは子育て等を行っている人にとって、税負担が過重になることが懸念されました。そこで、導入されるのが、所得金額調整控除です。

給与所得控除は、給与の年収850万円を超えると195万円で頭打ちになってしまいます。そこで、給与年収が850万円を超える人についてのみ、以下のいずれかに該当すれば、給与所得控除に上乗せして、所得金額調整控除を給与所得から控除することができます。

1) 本人が特別障害者に該当する者
2) 年齢23歳未満の扶養親族を有する者
3) 特別障害者である同一生計配偶者又は扶養親族を有する者

特に2つ目に該当するケースが多いと思われます。扶養控除の対象となるのは16歳以上ですが、所得金額調整控除を受けるためには23歳未満であればよいので、中学生や小学生や未就学児などの子がいる場合でも対象となります。

控除額は、以下の計算式で計算します。

所得金額調整控除額=((給与等の収入金額と1,000万円のいずれか少ない額) - 850万円)×10%

最大で、15万円を給与所得から控除できるということです。

さらに老齢厚生年金や、老齢基礎年金などの公的年金等にかかる雑所得がある場合は、以下の金額も上乗せして控除を受けられます。

こちらは公的年金を受給している人が対象なので、参考程度に見ておけばよいでしょう。

追加の所得金額調整控除額=((給与所得控除後の給与等の金額と10万円のいずれか少ない額) + (公的年金等に係る雑所得の金額と10万円のいずれか少ない額))-10万円

寡婦控除の適用要件の見直し

寡婦控除は、夫と離婚または死別した後に再婚していない女性が、一定の要件を満たす場合に適用を受けられる控除です。

寡婦控除について、これまでは事実婚、いわゆる内縁関係については再婚と扱われてきませんでしたが、2020年からは内縁関係についても再婚と同じように扱われます。

つまり内縁関係にある夫がいれば、寡婦控除は受けられないということになります。

合わせて、以下のひとり親控除の新設に伴って、「ひとり親」に該当する場合は、ひとり親控除の対象となるため、寡婦控除は適用されないことになります。

ひとり親控除の新設

「ひとり親」に該当する場合は、一律35万円の控除を受けることができます。

ひとり親とは、以下の要件を満たす者を言います。

1) 生計を一にする子(扶養親族となる子に限る)がいること。
2) 内縁関係を含む配偶者がいないこと。
3) 本人の合計所得金額が500万円以下であること。

婚姻歴・性別に関わらず、同一生計の子を扶養する寡婦控除に該当しないひとり親は適用ができます。

住宅ローン控除

住宅ローン控除については、2021年(令和3年)まで制度が続いています。

大きな特徴は、消費税10%への増税後に住宅を購入した場合には、控除期間が10年から13年に延長されるということです。5%から8%に消費税増税が行われたときには、控除額が20万円から40万円に増額されましたが、控除期間は10年のままでした。今回は、控除額だけでなく、控除期間も13年に延長されます。

申告書用紙の変更

申告書用紙

国税庁[手続名]給与所得者の基礎控除、配偶者(特別)控除及び所得金額調整控除の申告より ※2020年9月現在の書式

これまでは無条件で適用されていた基礎控除に要件が付加されたことで、年末調整の申告書も変更が行われます。その名も、「給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」です。

2019年までは「給与所得者の配偶者控除等申告書」でしたが、基礎控除の改正や所得金額調整控除の導入によって、さらに複雑化した申告書となりました。もはや名前を正確に覚えることも困難なレベルですが、これ1枚で、基礎控除・配偶者控除・配偶者特別控除・所得金額調整控除の適用が受けられるというものです。

令和2年についても、申告書の様式が変更になるということは把握しておきましょう。

詳細については、国税庁の給与所得者の基礎控除、配偶者(特別)控除及び所得金額調整控除の申告もご覧ください。

他にも、扶養控除等(異動)申告書や保険料控除申告書などの各申告書についても、マイナーチェンジ(年の表示が変わるなど)があります。年末調整業務を行う際には、上記の申告書以外も、新しい様式を使用しましょう。

年末調整業務への影響は?

2020年の年末調整は、多くの点で改正が行われます。そのため、各申告書についても、変更が行われます。

中でも最も大きな変更は、先ほども記載した「給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」の導入です。

記載方法もさることながら、所得金額調整控除については初見ですし、今まで当然に適用を受けられていたため、意識したこともないような基礎控除の欄もあります。

これらについては、年末調整の書類を配布する際、または事前にその制度概要も簡単に周知しておいたほうがよいでしょう。

事前に周知するなら年末調整の書類配布が11月半ばだとして、10月中には行うくらいでちょうどよいかもしれません。

年末調整の電子化

年末調整については電子化も行われています。これまでは生命保険料の控除証明書などが紙ベースであったため、紙のやり取りが必要となっていました。

しかし、2020年の年末調整からは生命保険料、地震保険料、住宅ローンの残高証明書などを保険会社や金融機関から電子データでダウンロードして、国税庁の「年末調整控除申告書作成用ソフトウェア」などに読み込ませることで、各申告書を作成して、電子データで会社に提出するというものです。

こうしたことが慣れている人であれば、問題なく対応してくれるかもしれませんが、やはり不慣れな従業員もいるかと思います。各事業者の実情に応じて紙で行うか、電子にて行うかを統一したほうがよいでしょう。紙だと、会社に届けたり郵送したりする手間が発生するので、テレワークに移行した会社は、年末調整も電子化するほうがよいかもしれません。

法定調書の電子的提出義務の対象枚数を引き下げ(1,000枚以上⇒100枚以上)

年末調整が終われば、とりあえず担当者としては一息つけるでしょう。しかし、そのあとにもう2つほど仕事があります。それが法定調書の提出と、各自治体への給与支払報告書の提出です。

このうち、法定調書については前々年の提出枚数が100枚以上になる場合にはe-TaxやCDなど電子提出が義務付けられています。膨大な量の法定調書を紙で提出すると、さすがに税務署職員も管理や内容の把握が大変です。効率的な行政運営のために義務付けられているということです。

例えば2019年1月に提出した法定調書の枚数が100枚を超えていたなら、2021年1月に提出する法定調書は電子提出によらなければならないということです。従来は1,000枚以上でしたので、より多くの事業者において電子提出が必要になるということです。

法定調書は年末調整後の給与以外にも、オフィスの大家さんやデザイナーなど外部への支払い状況を集計したうえで作成します。担当部門が人事と経理で分かれているなどの場合には、すべて数字を集めたうえで判断することになります。

まとめ

毎年言えることですが、年末調整の業務において最も重要なのは、期限を決めてそれまでに年末調整を受ける全従業員から各申告書や控除証明書を集めきることです。申告書の記載方法についてしっかりと把握しておくことも重要ですが、実際のところ、すべての従業員が申告書を読み込んで、正確に記載してくるということは、ほぼないでしょう。ある程度は、年末調整の担当者が追記したり、修正したりということが必要になってきます。

それでも申告書や控除証明書などのベースがないとチェックすらできません。各申告書の提出は期限厳守であることや、紙で収集する場合には各控除証明書や前職の源泉徴収票はコピーではなく原本を提出することなどをしっかりと周知しておいて、書類回収がスムーズに進むようにしておきましょう。

電子データにて行う場合にも、操作方法などで混乱が発生することが考えられます。特に導入初年度などは紙での収集以上に、スケジュールに気を配ったほうが良いでしょう。

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