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開業届の基礎知識【書き方や提出先、費用や期限はいつまで?】

個人事業主として開業するときに「個人事業の開業・廃業等届出書」、通称「開業届」を出すことは、青色申告が行えるなどの大きな節税につながります。今回は開業届の提出先、提出期限や書き方、メリットについて解説します。

お知らせ

令和3年度の税制改正により、年末調整の各種申告書における押印義務が廃止されました。
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POINT
  • 個人事業主として開業するときは「個人事業の開業・廃業等届出書」(通称「開業届」)を出すことが必要
  • 開業届の記載にあたり、職業によっては「個人事業税」がかかるので事前の確認が必要
  • 「開業日」は「店舗を起ち上げた日」「サイトを立ち上げた日」などを基準に。提出は開業日から1カ月以内に

そもそも個人事業主の開業届とは?

個人事業主の「開業届」とは、事業を開始する旨を税務署に報告する届出のことです。書類の正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」です。提出しなかった場合の罰則はありませんが、個人事業主として事業を始める場合には提出しなければなりません。事業をやめるときには同書類を「廃業届」として提出することになります。

個人事業主の開業届、提出先と提出期限は?

個人事業主の開業届は、税務署に提出します。ご自身の住所(あるいは事業所の住所)の所轄税務署を調べておくようにしましょう。

開業届を提出する期限は「開業から1カ月以内」となっています。ただし、個人事業主の場合「いつが開業日なのかはっきりわからない」ということも多いため、開業届を出す予定を立て、逆算して開業日を設定しても問題ありません。

個人事業主の開業届の書き方

開業届の書き方は、次の通りです。

知っておきたい基礎知識「確定申告」個人事業主のための開業・廃業等届出書の書き方と申請から引用

記入にあたり、特に注意しておきたい点が2つあります。

注意点①職業欄

職業によっては、「個人事業税」という地方税がかかります(事業所得が290万円を超えた場合)。事業所得がかかる職業のことを「法定業種」と言います。

【法定業種】
区分 税率 事業の種類
第1種事業
(37業種)
5% 物品販売業 運送取扱業 料理店業 遊覧所業
保険業 船舶定係場業 飲食店業 商品取引業
金銭貸付業 倉庫業 周旋業 不動産売買業
物品貸付業 駐車場業 代理業 広告業
不動産貸付業 請負業 仲立業 興信所業
製造業 印刷業 問屋業 案内業
電気供給業 出版業 両替業 冠婚葬祭業
土石採取業 写真業 公衆浴場業(むし風呂等)
電気通信事業 席貸業 演劇興行業
運送業 旅館業 遊技場業
第2種事業
(3業種)
4% 畜産業 水産業 薪炭製造業
第3種事業
(30業種)
5% 医業 公証人業 設計監督者業 公衆浴場業(銭湯)
歯科医業 弁理士業 不動産鑑定業 歯科衛生士業
薬剤師業 税理士業 デザイン業 歯科技工士業
獣医業 公認会計士業 諸芸師匠業 測量士業
弁護士業 計理士業 理容業 土地家屋調査士業
司法書士業 社会保険労務士業 美容業 海事代理士業
行政書士業 コンサルタント業 クリーニング業 印刷製版業
3% あんま・マッサージ又は指圧・はり・きゅう・柔道整復
その他の医業に類する事業
装蹄師業

法定業種に含まれていない場合については、事業所得が290万円を超えても個人事業税がかかりません。現在のところ「ライター業」「執筆業」「ミュージシャン」「漫画家」などは法定業種に含まれていませんが、法定業種の中から無理に選ぶ必要はなく、ライター業、執筆業などと記入すれば問題ありません。

ただし、個人事業税は地方税であり、都道府県によって異なる部分もあるため、事前の確認が必要です。「個人事業税 都道府県名」で検索してみましょう。

開業届は国税である「所得税」に関係するものであり、個人事業税に直接関わる地方自治体への届出は「事業開始等申告書」で行うことになります。ただし、確定申告により国から地方自治体に通知され、事業開始等申告書を提出したのと同じことになるため、事業開始等申告書の提出は義務付けられていません。

事業開始等申告書」は開業届の地方版のような位置付けの手続きです。「個人事業の開業・廃業等届出書」(開業届)は国税である「所得税」に関係し、個人事業税に直接関わる地方自治体への届出は「事業開始等申告書」で行います。手続きしなくとも問題ないものですが、可能であれば提出しておきましょう。

事業開始等申告書

事業開始(廃止)等申告書 – 東京都主税局

業種によっては、「開業届」以外の届出や許認可申請が必要となりますので、国税庁ホームページ、あるいは地方自治体のホームページや窓口で確認するようにしましょう。

注意点②開業日

開業日の確たる定義はありません。実店舗がある場合には、「店舗を起ち上げた日」などとし、1カ月以内に開業届を提出するようにしましょう。店舗がない場合や、開業日がはっきりしない場合には、「サイトを開設した日」「開業届を出す日に間に合いそうなキリのよい日」などでも問題ありません。

開業日がはっきりしにくい職種の場合でも、開業しようと考えたときから「開業準備期間であること」を意識し、仕事に関わる領収証などはしっかり集めておいてください。開業にかかる費用は「開業費」となり、経費として計上することができます。

また、開業届の提出そのものには費用がかかりません。印紙等も不要です。その他の費用は以下の通りです。

  • 郵送する場合……郵送の料金
  • e-Taxを利用する場合……ICカードリーダライター、インターネットなどの料金

青色申告承認申請書など、開業届以外に必要な書類は?

事業を始める際、開業届以外にも提出したほうがよい書類があります。

所得税の青色申告承認申請書

開業届と同時に「青色申告承認申請書」を提出することで、開業初年から節税効果の高い青色申告を行うことができるようになります。青色申告承認申請書は、青色申告を行うための申請書です。青色申告を開業初年分からおこなうためには、原則として、開業から2カ月以内に提出する必要があります。これまで白色申告を続けてきた方も、青色申告に切り替える場合、提出する必要があります。期限は青色申告をする年の3月15日です。

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知っておきたい基礎知識「確定申告」個人事業主のための青色申告承認申請書の書き方から引用

青色申告承認申請書の書き方は、次の通りです。

知っておきたい基礎知識「確定申告」個人事業主のための青色申告承認申請書の書き方から引用

給与支払事務所等の開設届出書

給与支払事務所等の開設届出書」は、給与の支払いが発生する事務所を開設した場合、事務所所在地所轄の税務署に提出します。開設以外にも、移転や廃止があった場合には同様の手続きが必要となります。期限は開設、移転または廃止した日から1カ月以内です。

青色事業専従者給与に関する届出書

青色事業専従者給与に関する届出書」は、生計を一にしている配偶者や親族が事業に従事しており、給与の支払いが発生する場合に、事務所所在地所轄の税務署に提出します。これにより、給与を経費として計上すること(青色事業専従者給与)が可能となり、大きな節税を期待できます。

なお、給与を支払う対象は「専従者」と呼ばれ、次の条件を満たす必要があります。

  • 個人事業主と生計を一つにして暮らしている配偶者や親、祖父母、子ども
  • その年の12月31日現在で、年齢が15歳以上(学生は原則不可)
  • 年間のうち6カ月以上はその事業に従事すること

個人事業主が開業届を提出するメリット・デメリットは?

個人事業主が開業届を提出することは特に義務付けられておらず、届け出を出さずに事業を続けても納税さえしっかり行っていれば罰則などはありません。ただし、事業を継続する上では、開業届を出したほうが有利です。以下、詳しくご説明します。

メリット1.青色申告ができるようになり、税務上有利になる

青色申告を行うと、「最大で65万円の特別控除」が受けられるほか、赤字を繰り越し、翌年以降の黒字と相殺したり、30万円未満の固定資産が一度で経費にできるなど、多くの節税効果があります。

メリット2.自分の「屋号」「屋号の銀行口座」を持てる

自分の「屋号」を持つことができます(開業届の屋号欄は、無記入でも問題はありません)。これにより、屋号で銀行口座をつくることも可能になります。個人名の口座でもビジネスを続けることはできますが、取引においてはより信頼が高まるでしょう。

メリット3.条件次第で「事業所得」で確定申告できる可能性も

副業の場合、「雑所得」として申告しなければならないことも多いのですが、継続的にその事業を行い、事業を行っていると客観的に認められる場合、開業届を提出することで事業としての、事業所得として確定申告できる可能性が高くなります。

なお、雑所得とは、「利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得」に含まれない所得のことを言います。公的年金等、非営業用貸金の利子、著述家や作家以外の人が受ける原稿料や印税、講演料や放送謝金など(国税庁ホームページより)、いわゆる「業態化していない所得」が該当します。

「副業の所得規模が小さいから雑所得にしていた」といった場合、自分の副業の実態を見直し、事業として考えられる場合には開業届を提出してみましょう。

メリット4.事業所得での申告が認められれば「損益通算」が可能になる

事業所得としての申告が認められる場合、「損益通算」という処理が可能になります。事業で出た赤字を給与所得など黒字の出ている別の所得から差し引き(利益と損失を相殺)し、課税対象となる所得を減らして節税することができます。

ただし、事業所得として認められるにはそれなりの要件(継続的にその事業を行っていると客観的に認められるかなど)を満たす必要があり、要件を満たせていないと判断された場合には雑所得扱いになることもあります。雑所得は損益通算ができませんので、注意が必要です。

メリット5.クレジットカードの審査の信用向上に繋がる

クレジットカードの審査基準は各社異なり、確実であるとは言えませんが、屋号があることで社会的信用が上がり審査を通りやすくなるという考え方もあります。屋号のありなしだけで判断されることはないため、あくまでも「信用性を補強できる可能性があるかもしれない」というレベルですが、覚えておきましょう。

デメリット1. 副業の人が事業所得で申告した場合、会社に知られる可能性も

開業届を提出しただけでは会社に副業がばれることはありませんが、事業所得で確定申告した場合、住民税の額が変わり、会社の経理に給与以外の所得を疑われる可能性があります。

なお、これは地方税の徴収には「特別徴収」と「普通徴収」があり、普通徴収にすれば副業分の税金は自分で納税にすることになり、給与から天引きされる金額に変化はありません。

ただし、普通徴収であっても住民税がマイナスになった場合(副業に損益が出て、住民税が減る場合)には、所属している会社に通知が行くため、副業がばれるリスクが発生します。節税を考える方は注意が必要です。

デメリット2. 失業保険を受けられない可能性がある

失業保険の受給には、「再就職の意思がある」という条件を満たす必要があります。開業している場合、再就職の意思がないと見なされ、失業保険を受けられない可能性が大きくなります。「将来、どのように働いていくか」まで考え、開業するかしないかの判断をすることが重要です。

デメリット3. 記載した業種によって税率が変わってくる

デメリットと言うよりは「注意すべき点」です。既に触れたように、業種によって個人事業税の税率は異なり、3~5%の幅があります(「法定業種」参照)。法定業種に当てはまらない業種や、所得が290万円以下の場合は個人事業税が発生しません。

税率が高い業種は不利に感じられるかもしれませんが、正しく申告しなければ脱税に繋がりますので気をつけましょう。なお、個人事業税は経費計上できる税金であり、節税の効果があります。また、青色申告をすれば自動的に計算されるものなので、個人事業税のみの申告はありません。

まとめ

先に述べたように、個人事業主で開業届未提出でも、罰則などはありませんし、義務でもありません。

ただし、開業届は、事業を継続するには非常に重要なものです。開業とあわせて青色申告承認申請手続きを行うことにより、さまざまな税制上の優遇を受けることが可能になります。開業届を出すことで、「税金を払わなくてもよい証明」や「大きな節税」に繋がると理解しましょう。顧客に「源泉徴収」されている個人事業主の場合、還付金を受け取ることができるチャンスです。

ご自身の事業の展望を考えるきっかけにもなりますので、ぜひ「まだ開業届を提出していない」という方はもう一度この記事の内容を確認してみてください。

なお、この度の新型コロナ感染症の経済対策の経済支援については、事業者として確定申告を行っていることが非常に重要なポイントとなりました。感染症の流行や大きな災害などによる社会的な混乱が発生した際には、事業の実態を明確化しなければ受けられない補償やサービスがあることも十分に理解しておきましょう。

photo:Getty Images

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