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不安解消!フリーランス的お金の貯め方&使い方をミレニアル世代経済評論家に聞く

誰もが予想していなかった新型コロナウイルスの感染拡大により、将来の予測が難しくなっている今。不安定な未来に備えて貯金を始めようと考えている方も多いのではないでしょうか。

毎月の収入にバラつきがある場合の貯金方法や、どれくらいのお金があると安心なのか…など、矢継ぎ早に浮かぶお金に関する疑問は、専門家に聞くのが一番! そこで今回は、まだ貯金まで手が回っていない若手フリーランスの貯金や投資などお金の管理について、ミレニアル世代のお金の専門家・横川楓さんにお話をうかがいました。

横川楓よこかわ・かえで

横川楓

明治大学法学部卒、その後同大学院へ進学、24歳で経営学修士(MBA)を取得。ファイナンシャルプランナー(AFP)や、マイナンバー管理アドバイザー、マネーマネジメント検定等の資格を取得。また、在学中には地下アイドルの経験があり、ライブ活動などを行うなどの異色の経歴を持つ。
著書に『ミレニアル世代のお金のリアル』(フォレスト出版)など。
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「何かあったときの救急セット」のような、もしものときのお金を確保しておく

――僕自身もフリーランスで、ライターをしているんですけど、フリーランスで働く先輩から「20代のうちは貯金しなくても何とかなる。好きなことにお金を使った方が良い」という話を聞くことが多いのです。実のところどうなのか? そして、このコロナ禍、withコロナでのお金との付き合い方をお金の専門家である横川さんのご意見をうかがいたいです。

横川楓さん

横川楓さん(以下・横川):最低限使わないお金を確保しておくことは重要だと思いますね。貯金というと「目標に向けて大きな金額をためる」イメージがありませんか? でもそうではなく「何かあったときの救急セット」のような、もしものときのお金を確保した上で、好きにお金を使うという状態が健全なのかなと。

それに、「貯金しなくても何とかなる」とアドバイスをしてくる人は、今の時点できっと自分よりも稼ぎが多い人でしょうし、貯金も自分よりある人なはず。お金に余裕があると人に対してそう言いたいような人が多いのですが、好きなことにお金を使うにもある程度のお金がないとなりませんし、大きなライフイベントのための貯金をするというよりも、今の自分に見合った生活に困らない最低限のお金を残していくというイメージです。

――なるほど。将来に向けた大きな貯金は急がなくてもいいけど、現状で必要な最低限の生活費用は確保する必要があると。

横川楓さん

横川:特にフリーランスは、会社員と違って失業保険がありません。万が一急に働けなくなったときのためにある程度は収入がゼロになっても暮らしていけるお金が必要ですよね。健康上の問題だけでなく、今回の新型コロナウイルスによる外出自粛のような、仕事ができない状況に直面したときも、制度に頼らずに自分でお金を確保しておけると安心です。

――そうなると、フリーランスとして安心して活動していくためには、いくらぐらいのお金が必要になるのでしょうか。

横川楓さん

横川:病気になってしまったり、入院したりしてしまうと、3か月~半年間は働けないこともあるでしょう。そのような事態を想定して、月収×3か月~半年分はあった方が良いと思います。毎月の売上に幅があるという場合は、去年の年間売上を12か月で割った金額から算出すればOKです。

貯金は習慣化することが大事 毎月固定の金額じゃなくてもいい

横川楓さん

――月収の3か月~半年分のお金を確保するとなると、毎月の収入のバラつきに悩む若手フリーランスが多いのでないかと思います。僕自身、月ごとで売上に倍以上のバラつきがあるため、毎月決まった額での貯金が難しいです。貯金額を決める際の、目安や考え方ってありますか?

横川楓さん

横川:収入が月によって違う場合、固定の金額じゃなくていいと思うんです。一番大事なのは、「貯金をする習慣」をつけること。例えば「収入の1割を貯金する」「毎月同じ日に貯金をする」というように、自分でルールを作って継続することが重要です。

人って、お金がないことを理由に一回でも貯金をサボってしまうと、またお金がないときにも「今月はいいや」と自分に甘くなってしまうじゃないですか。だからこそ、どんなにお金がなくても貯金を続けることに価値があります。

――なるほど。貯金って毎月固定額を貯めていくものだと思い込んでいたかもしれません。たとえ数千円の月があっても、継続することに意味があるんですね。

横川楓さん

横川:そうです。また、毎月の収入が変動するフリーランスだからこそ、仕事を増やして「貯金するために売上を上げよう」というモチベーションに持っていくのも良いと思います。

自分の目標額に合わせて、収入をある程度コントロールできるのがフリーランスの良さだと思います。

――ただ、大人になってから新しい習慣をつくるのは難しいなと思っています。何かコツなどはあるのでしょうか?

横川楓さん

横川:私自身も習慣づけは苦手で、周りでも同じような声を聞くことが多かったのですが、以前とある人から「新しい習慣を定着させるには、毎日必ずやっていることの後にやる」という方法を教えてもらい、これには「なるほど」と思いました。「歯磨きをした後にスクワットをやる」など、すでに習慣づいている行動とセットにするということです。貯金であれば、請求書を発行する日についでに貯金したいお金を貯金用の口座に移動させるといったように、普段している事務作業とセットで貯金に関する行動を起こすといいかもしれません。

毎月の貯金額が決まっている場合は、別の口座などに自動振替されるよう設定してしまうのも一つの手だと思います。意思の力だけではなく、このようにシステムに組み込む方法でもお金を貯めることができます。

事業用と個人用で分けられない場合は、無理して分けなくても良い

――お金の管理に関して質問です。現在、事業用の口座と個人口座を分けていないのですが、問題ありますでしょうか?

横川楓さん

横川:どちらが良いかという意味では、分けた方が良いと思います。ただ、フリーランスの場合、家賃や携帯代、光熱費などを事業とプライベートで共有していて、確定申告の際に事業の分を経費として按分している方が多いですよね。収入が入る事業用の口座から、生活費などを管理する個人口座にお金を移すことを考えると、手間や振込手数料が気になります。

事務所を借りていなかったり、携帯電話や光熱費もきっちり事業用とプライベートでわかれていないという場合は、きちんとわけて契約できるような状態になるまでは、わざわざ無理して口座を分けなくても良いのかなと。

――自転車操業の時期などは、同じ口座じゃないと厳しいなと感じていたので、分けなくてもいいと知り、助かりました! ちなみに、クレジットカードも事業用と個人用で分けていないのですが、こちらはいかがでしょう?

横川楓さん

横川:クレジットカードに関しても、本来は事業用と個人用で完全に用途を分けられるのであれば分けた方が良いと思います。でも、フリーランスだと難しい場合もありますよね。口座と同様、分けるのが難しい場合はあえて分ける必要はないと思います。

――口座もカードも、「フリーランスになったら分けた方が良い」という声をよく聞いていたので、新鮮でした。分けなくてもいいんですね。

横川楓さん

横川:先ほどお話ししたように、わけずに使っていたとしても確定申告の時には事業用の物だけ経費にしたり、割合で按分をすることになります。売上も増え、事業用のものを事業用として契約できるような状態になるまでは、無理してわける必要はないかと思います。

ただ、「細かく事業用の口座で収入を管理したい」など、分けたほうが管理をしやすい人や、分けることでモチベーションがあがるという人は、積極的に分けた方がいいですね。どの管理方法が、自分にとってやりやすいかで考えることが重要です。

趣味への投資は、未来の自分への投資

――コロナ禍で経済が安定しない中、今後も今まで通り仕事を続けられるのか、今までのようなお金の使い方でいいのかなど、いろいろ考えます。

フリーランスとしては、服や映画、外食など、自分の趣味が結果的にすべて仕事に繋がっていることもあり、趣味にお金を使うことを肯定的に捉えています。ある意味「自分への投資」になっているのかなとも思うのですが、お金の専門家として横川さんはどのように思いますか?

横川楓さん

横川:私も自分の趣味にはお金を惜しまずに使っているので、趣味にお金を使うことは悪いことではないと思います(笑)。それに、フリーランスの方は「好き」を仕事にしている人も多いので、趣味が仕事に繋がることも珍しいことではありません。

もちろん、借金をしてまで趣味にお金を使うのは良くないですが、生活に影響が出ない範囲であれば問題ないです。よく雑誌などで見かける「交際費3000円」「趣味のお金2000円」という生活って、結構非現実的じゃないですか。そこまで切り詰める必要はなくて、フリーランスだからこそいろいろ研究したり、勉強をしたり、人間関係の輪を広げるためにも、趣味や友達との交際費などにお金を使っていくのはすごく良いと思います。

――僕の場合は、好きなことにお金を使っていたら結果的に仕事に繋がったという状況なのですが、例えば仕事に繋がるかはまだ分からないけど「これを仕事にしたいから」と趣味に投資するのはありですか?

横川楓さん

横川:ありだと思います。会社員でも、仕事の後に社外の勉強会に参加する方はいらっしゃいます。今現在、自分がどういう働き方をしているかは別として、自分の将来に必要なことであればそこに投資するのは良いことです。

ただ、「お金」って使ったり貯めたりすることで、今もしくは未来の自分がどう得するか、ということだと思うんです。未来に残していくお金は減ってしまうけど今の自分に必要なモノにお金を使うでも良いし、今ちょっとお金を使うのを我慢して未来の自分のために投資するでも良いし、貯めることで未来の自分が得するでも良い。今しか楽しめない趣味や、イベント、勉強などにお金を使うのだって、それを逃すと後悔してしまうのでしたら、ある程度無理してでも今お金を使った方が良いと、私は思います。

――なるほど! 確かに、今の自分や、未来の自分との対話ですね。これはどっちの自分のためのお金なのか、意識的でいることが重要そうです。

重要なのは、お金の流れを把握すること

横川楓さん

――フリーランスだからこそのお金の使い方の注意点ってありますか?

横川楓さん

横川:先ほどの話と共通しますが、フリーランスの方は何が仕事に結びつくか分かりません。探求心を持ってさまざまなチャレンジをすることは良いことだと思うんです。なので、使い方というよりは管理に気を付けることが重要ですね。

管理といっても、例えば「趣味に使うお金は月3万円」といったただルールを設定する形は、あまり良くありません。ルールだけでは、結局、自分の中で例外をつくって破ってしまうことが多いのです。おすすめは、帳簿付けや明細を定期的にチェックするなど、自分がどれくらいお金を使っていて、銀行口座にはいくらお金が入っているのかを常に把握することです。把握ができていれば、収入に対してどれくらい使っているのかがわかり、使いすぎているのであれば反省をして何に使うお金を控えるかなどをきちんと考えることができますし、明確にコレに対してはいくらと上限を決める形にしなくても大丈夫だと思います。

――確かにルールだけ設定しても、「来月分で調節する」とか「今回だけ、一回だけ」のように、例外ルールを作って破ったことありますね……耳が痛いです。

横川楓さん

横川:フリーランスだと、食事や飲み会も仕事に繋がる場ですよね。月によっては多いときもあるでしょう。そうなると使う金額が毎月変動してくるのは仕方ないと思うんです。なので、お金を使い過ぎないように調節するよりも、使い過ぎてしまったときに「いくら使ったのか」「どれくらい収入を増やせば補填できるのか」など、お金の使い方を考えられるマインドを養うことが大切なのかなと。

――なるほど。最初の一歩としては、毎月の収入と支出を把握することからスタートすれば良いでしょうか?

横川楓さん

横川:そうですね。最低限それだけでも把握していれば大丈夫です。費用に対して収入が少ないのであれば、「ああ使い過ぎだな」と気付けますし、逆に「今月はある程度余裕があるから、勉強会に参加できるな」ということも分かるようになりますよね。

――お金の流れを把握する、ということが重要なんですね。

始め方は意外に簡単。投資の始め方

――投資といっても、自分磨きの投資のほかに、お金を増やすための投資もあります。最近では、ゲーム感覚で株ができるなど、投資のハードルが下がってきているように感じます。ミレニアル世代でも投資を気軽に始める人が増えてきたように思いますが、個人的には、まだ投資に対しては苦手イメージがあります。お金を増やすための投資って、20代のうちから取り組むべきだと思いますか?

横川楓さん

横川:お金は銀行口座に預けてても増えません。ただ貯金するだけではもったいないので、基本的には投資などをやった方が良いと思っています。早く始めれば始めるほど、増える金額も多くなる可能性が増えるので、早いうちからやるのも良いと思います。

投資って最初に大きなお金がかかると思っている人が多いのではないでしょうか。でも、月100円から始められるつみたてNISAなど、少額から始められる投資手段はたくさんあります。そういったものを若いうちから経験しておくと良いですね。月100円の投資ではあまり大きな変動はないですけど、これも貯金と同じくまずは習慣として身に着けることが大事なんです。

――新型コロナウイルスの影響で、今後は経済が不安定になっていくと考えられていますよね。このような状況下でも投資を始めた方が良いのでしょうか? それとも待った方が良いのでしょうか?

横川楓さん

横川:今のような状況って、たぶんこれからも定期的に起こるでしょう。待っているうちに始めるタイミングを逃してしまうよりは、やると決めたときに始めた方が良いです。株価など投資を取り巻く環境は日々変動しているので、それを気にしていたらいつまでも始められません。

また今はやっていなくても、将来的に投資を始めるつもりなら、証券口座を開設するなどして、投資がすぐに始められる準備をしておくのも良いかもしれません。投資用の口座を開設しないことには始めることはできないので。

――なるほど。証券口座を作ろうと思ったら、何から始めればいいのでしょうか?

横川楓さん

横川:銀行口座を開設するときと同じイメージで考えていいと思います。基本的には、証券会社のページにアクセスして、証券口座開設の手続きをするだけです。オススメは、ネット証券会社の楽天証券やSBI証券。本人確認書類などが必要ですが、その確認もネット上で済みますので、口座開設だけならすぐ終わります。

初心者にオススメなのは、長期保有の投資商品

横川楓さん

――投資の商品にもさまざまな種類があると思いますが、初心者にオススメの投資を教えてください。

横川楓さん

横川:初心者ならつみたてNISAがおすすめですね。つみたてNISAは、金融庁が作った制度で、年間40万円まで毎月投資信託の商品をつみたてていくというもの。投資商品自体も絞られていて、膨大な数から選ばずに済みますし、本来なら投資の利益には20%の税金がかかるのですが、それがかからないんです。投資信託とは、簡単に説明すると、いろいろな株式や債権、外国株などの詰め合わせ商品を、プロが運用してくれるというものです。つみたてNISAは、毎月100円から積み立てられる商品もあります。

――それは、損はあまりしないけど、大きくお金が増えることもない、ということでしょうか。

横川楓さん

横川:必ずしもそういうわけではないですね。大きな金額をかけているのなら、増える金額も多いですよ。積立なので毎月定額ですが、ある程度余裕が出てきたら途中で金額を増やすこともできます。試しに始めてみるにはちょうど良いと思います。

――投資と言うと株式投資を思い浮かべてしまいますが、やっぱりお金が増えるというよりは減るリスクのほうを考えてしまいますね。

横川楓さん

横川:おそらく、イメージされている株式投資は、短期売買のことですね。短期売買だと、株価の値動きをしっかりと見極めて、値上がりしたタイミングで売るということの繰り返しです。少しハードルが高いので、初心者には難しいかもしれません。

ですが、株式投資は長期投資をすることもできます。買った株を長期保有することで配当をもらったり、株主優待を受けたり、将来的な利益を見込んで短期で売らないという選択肢もあります。

――あ、そんな方法もあるんですね。購入するときに選べるんですか?

横川楓さん

横川:窓口や銘柄が変わるわけではありません。すぐに売るか、売らずに持っておくかの違いです。

――短期的な値上がりを期待するのか、長期的な成長の予測や配当、優待を目的とするかで変わるということですね。株式投資がちょっとだけ身近になった気がします。

横川楓さん

横川:投資信託と違い、株式投資では利回りや配当、直近の動きや去年の成績などを自分で調べる必要があります。そのため、少しハードルが高いように感じてしまいますよね。でも、ネット上にもいろいろと情報はまとまってますし、自分の買える値段と利回りなどのデータを照らし合わせてみて、挑戦してみるのもいいかなと思います。

――投資用の資金は、貯金とは別に用意した方が良いですか?

横川楓さん

横川:そうですね。例えば、本当に困ったときに使うために残した3か月の生活資金から捻出するのはちょっと違うと思います。なので、貯金を投資に回すというよりは、最低限の資金を確保した上での余剰資金で取り組むものだと考えてください。

――ありがとうございます。正直なところ、投資に対するハードルが一気に下がりました。まずは証券口座を作ってみます!

横川楓さん

横川:良かったです(笑)。結局、面倒くさいを理由に証券口座の開設まで辿り着かない人が多いのが現状です。そこさえ突破すれば、あとは難しいことはないと思います!

撮影:沼田学

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