【新型コロナ】経営をつなぐために融資を活用!事業者が今すぐ確認すべき貸付金・特別融資など「借りられるお金」

新型コロナウイルスの影響は、中小企業や飲食店などの資金繰りにも大きな影響を及ぼしています。売上が減少する一方で、家賃や人件費などの固定費は支払わなければならないという状況のなか、さまざまな救済の施策が行われています。資金繰りの要である融資においても、従来にはない特別な措置がとられています。どのような融資・貸付制度が利用できるのか、まとめました。
自分がどんな融資への申し込みができるのか確認しておきましょう。
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2022年(令和4年)分の所得税の確定申告の申告期間は、2023年(令和5年)2月16日(木)~3月15日(水)です。最新版の確定申告の変更点は「2023年(2022年分)確定申告の変更点! 個人事業主と副業で注目すべきポイントとは?」を参考にしてみてください!
目次
- POINT
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- 多くの事業者にとって、新型コロナを乗り切るためにも融資の活用は死活問題
- 新型コロナウイルス関連の融資は、大きく分けて民間金融機関(保証協会付き)、日本政策金融公庫、商工組合中央金庫の3種類の金融機関で行なわれている
- 窓口相談に行くときは、「事前に予約すること」「必要な書類をしっかりそろえていくこと」が大事
経営をつなぐために「融資」を活用する
新型コロナウイルスの対策として、多くの施策が行われています。事業者に対しては、法人200万円、個人事業主100万円の持続化給付金や従業員に休業手当を支払った場合に助成される雇用調整助成金などなど。
もちろん、もらえるお金はもらっておくべきですが、なかには受給までにタイムラグがあったり、損失を補填するには金額が足りなかったりということもあります。
そこで重要になってくるのが融資です。飲食店や理美容などの業種では、そもそも開業する際に設備投資や物件契約のために、融資を受けていることが多いと思います。そのため、融資の重要性やありがたさというものはもともと理解している人も多いでしょう。この新型コロナウイルスの危機においても、真っ先に「融資が必要」と感じている経営者もたくさんいたでしょう。
この新型コロナウイルスが多大な影響を及ぼすなか、融資についても、普段は見られないさまざまな施策が取られています。融資において重要なのは、まずは自分が申し込みの要件を満たしているかどうかということです。以下では、飲食業以外の業種、サービス・小売り・フリーランスなどでも適用できるものも紹介してます。
一つずつその特徴を見ていくことで、どのような融資への申し込みができるのかということを把握しましょう。
2020年に開業した場合で前年同月比の売上がないといった場合、新型コロナウイルスの特別措置の要件に該当しない場合こともあります。そういった場合には、創業融資などの制度を活用することで資金調達することも検討しましょう。
借入先ごとの主な新型コロナウイルス対策融資
主な新型コロナウイルス対策融資は、借入先に応じて、大きく以下の3つに分かれています。
借入先 | 内容 |
---|---|
民間金融機関 (保証協会付き) |
・セーフティネット4号認定(前年同月比で売上20%減) ・セーフティネット5号認定(前年同月比で売上5%減) ・危機関連保証制度(前年同月比で売上15%減) |
日本政策金融公庫 | ・新型コロナウィルス感染症特別貸付(前年同月比で売上5%減) ・マル経融資(前年同月比で売上5%減) ・セーフティネット貸付(売上減少要件無し) |
商工組合中央金庫 | ・危機対応融資(前年同月比で売上5%減) |
借入先その1:民間金融機関(保証協会付き)
信用保証協会という、万が一返済できない場合の保証をしてくれる機関がつくため、金融機関にとっては返済されないなどの心配が少なく、比較的融資しやすい制度になっています。
1)セーフティネット保証融資4号
新型コロナウイルスのような突発的事由により経営の安定が難くなった事業者に対して、信用保証協会が通常の保証限度額とは別枠で借入債務の100%を保証する制度です。
対象者 | 法人:中小企業/小規模企業、個人事業主 |
---|---|
保証割合 | 100%保証 |
保証限度額 | 一般保証とは別枠で2億8,000万円 |
融資対象者:
以下のいずれにも該当する中小企業者や個人事業主が対象になります。
- 指定地域において1年間以上継続して事業を行っている
- 災害の発生に起因して、当該災害の影響を受けた後、原則として最近1ヵ月の売上高等が前年同月に比して20%以上減少しており、かつ、その後2ヵ月を含む3ヵ月間の売上高等が前年同期に比して20%以上減少することが見込まれる(売上高等の減少について、市区町村長の認定が必要)
2)セーフティネット保証融資5号
売上高等が減少している中小企業・小規模事業者の資金繰り支援措置として、信用保証協会が一般保証とは別枠で融資額の80%を保証する制度です。セーフティネット保証融資4号に比べて売上の減少割合が5%と少ないため利用しやすい一方で、対象となる業種が限られていて、かつ保証割合が80%と少ないのが特徴です。
なお、コロナウイルスの影響でセーフティネット5号は、令和2年(2020年)5月1日付で令和2年(2020年)5月1日~令和3年(2021年)1月31日の期間限定で全業種が対象になっています。さらに、令和3年(2021年)1月26日官報掲載により、令和3年(2021年)6月30日まで指定期間を延長されています。
- 【参考】
- 中小企業庁:セーフティネット保証5号の指定業種を拡充します(令和2年5月1日~令和3年1月31日)
- 中小企業庁:新型コロナウイルス感染症に係る危機関連保証及びセーフティネット保証5号の全業種指定を延長します(令和3年1月26日)
対象者 | 法人:中小企業/小規模企業、個人事業主 |
---|---|
保証割合 | 80%保証 |
保証限度額 | 一般保証とは別枠で2億8,000万円 |
セーフティネット保証4号と5号は併用することができますが、保証限度額は同じ枠になります。
融資対象者:
業況の悪化している業種に属する事業を行う中小企業者であって、以下のいずれかに該当する中小企業者や個人事業主が対象です。基本的には、1.を満たすかどうかで判断します。
- 最近3ヵ月間の売上高等が前年同期比で5%以上減少している
- 製品等原価のうち20%以上を占める原油等の仕入価格が20%以上上昇しているにもかかわらず、製品等価格に転嫁できていない
3)危機関連保証制度
危機等で実際に売上高等が減少している中小企業者を支援するための措置です。
対象者 | 法人:中小企業/小規模企業、個人事業主 |
---|---|
保証割合 | 100%保証 |
保証限度額 | 一般保証とセーフティネット保証限度額は別枠で2億8,000万円 |
融資対象者:
新型コロナウイルス感染症に起因して、原則として、最近1ヵ月間の売上高等が前年同月比で15%以上減少して、かつ、その後2ヵ月間を含む3ヵ月間の売上高等が前年同期比で15%以上減少することが見込まれる中小企業者(個人事業主含む)が対象となります。
- 【参考】
- 経済産業省:危機関連保証の概要
仮に一般保証、セーフティネット保証(4号・5号)、危険関連保証3つの枠を全て使うと、8億4,000万円の借入が可能です。
セーフティネット保証(4号・5号)、危険関連保証は、売上減などの一定要件を満たせば、「信用保証付き融資における保証料・利子減免」を利用することができ、4,000万円までの当初3年の利子が補給されたり、保証料の負担がゼロ、または1/2になります(個人事業主と小・中規模事業者では要件が異なる)。
さらに、最大5年間の据え置き期間や無担保といった措置、既存の借り入れにの借り換えなども可能です。
どの融資を利用すればよいかなどの相談や申し込みは、近くの信用保証協会や各金融機関に相談しましょう。とはいえ、現在各窓口は、非常に混雑しており、いきなり窓口にいっても相談ができるかどうかわかりません。まずは事前に電話で相談の時間を予約するなど、落ち着いて行動するようにしましょう。
借入先その2:日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は政府系の金融機関です。個人事業主も含め小規模事業者も利用できます。
1)新型コロナウィルス感染症特別貸付
対象者 | 法人:中小企業/小規模企業、個人事業主 |
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融資限度額 | 国民生活事業:8,000万円、中小企業事業:6億円 |
利下げ限度額 | 国民生活事業:4,000万円、中小企業事業:2億円 |
融資対象者:
新型コロナウイルス感染症の影響を受けて一時的な業況悪化を来たし、最近1ヵ月の売上高が前年または前々年の同期と比較して5%以上減少した事業者が対象です。
ただし、業歴3ヵ月以上13か月未満の場合、または店舗増加や合併、業種の転換など、売上増加に直結する設備投資や雇用等の拡大を行っている企業(ベンチャー・スタートアップ企業を含む)については、売上規模自体が大きくなっていて、単純に前年同月比との比較が適切でないこともあります。
その場合は、前年(前々年)同期と単純に比較できない場合等は、最近1ヵ月の売上高が、次のいずれかと比較して5%以上減少しているケースでも対象となります。
a) 過去3ヵ月(最近1ヵ月を含む)の平均売上高
b)令和元年12月の売上高
c)令和元年10月~12月の売上高平均額
貸付期間は、設備資金であれば20年以内、運転資金であれば15年以内と長く、さらに据置期間(元本の返済はせずに、利子だけを支払う期間) 5年以内で設定できます。
2)マル経融資(小規模事業者経営改善資金)
申請先 | 各商工会議所、各商工会 |
---|---|
対象者 | 法人:中小企業/小規模企業、個人事業者 |
融資限度額 | 2,000万円 |
融資対象者:
商工会議所や商工会などの経営指導を受けている小規模事業者の商工業者が、経営改善に必要な資金を無担保・無保証人でご利用できる制度です。
新型コロナウイルス感染症の影響により、最近1ヵ月の売上高が前年または前々年の同期と比較して5%以上減少している場合、さらに以下の特例措置が設けられています。
<融資限度額>
通常のご融資額 + 別枠1,000万円
<利率>
【当初3年間】 経営改善利率1.21%(令和2年4月1日時点)- 0.9%(別枠の1,000万円以内)
【4年目以降】 経営改善利率1.21%(令和2年4月1日時点)
<返済期間(うち据置期間)>
設備資金10年以内(4年以内(別枠の1,000万円以内)
運転資金 7年以内(3年以内(別枠の1,000万円以内))
新型コロナウイルス感染症特別貸付や新型コロナウイルス対策マル経融資を利用する場合、「特別利子補給制度」を併用すれば、借入後当初3年間分は利子を後で国から補給してもらえます。そのため、実質的に無利子になります。
特別利子補給制度の利用には、売上が小規模事業者15%減、中小企業者20%減などの要件があり、利子補給の対象となる融資限度額は、国民生活事業3,000万円、中小企業事業1億円です(個人事業主については要件はありません)。
3)経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)
対象者 | 法人:中小企業/小規模企業、個人事業者 |
---|---|
融資限度額 | 4,800万円 |
利率 | 1.91%(国民事業/令和2年4月1日時点) |
対象者は幅広く、以下のとおりです。
- 最近の決算期における売上高が前期または前々期に比し5%以上減少している方(※)
- 最近3ヵ月の売上高が前年同期または前々年同期に比し5%以上減少しており、かつ、今後も売上減少が見込まれる方(※)
- 最近の決算期における純利益額または売上高経常利益率が前期または前々期に比し悪化している方
- 最近の取引条件が回収条件の長期化または支払条件の短縮化等により、0.1ヵ月以上悪化している方
- 社会的な要因による一時的な業況悪化により資金繰りに著しい支障を来している方または来すおそれのある方
- 最近の決算期において、赤字幅が縮小したものの税引前損益または経常損益で損失を生じている方
- 前期の決算期において、税引前損益または経常損益で損失を生じており、最近の決算期において、利益が増加したものの利益準備金及び任意積立金等の合計額を上回る繰越欠損金を有している方
本来の制度は上記のとおりですが、新型コロナウイルス感染症の特例措置として、「売上高が5%以上減少」といった数値要件にかかわらず、今後の影響が見込まれる事業者も含めて融資対象になりました。
今すぐは影響が出ていない場合でも、今後の影響を見越して、資金を準備したい場合に有効です。
借入先その3:商工組合中央金庫(商工中金)
商工組合中央金庫でも、新型コロナウイルス感染症による影響を受け業況が悪化した事業者に対し、危機対応融資による資金繰り支援を実施しています。
普段は中規模以上の企業を対象にしている金融機関ですが、新型コロナウイルス対策のため融資案件について日本政策金融公庫のみでは対応しきれなくなっており、商工中金も小規模な融資に対応をしている状況です。
ただし、商工中金は、普段は大きな規模の企業を相手に大口の融資を行っている金融機関です。新型コロナウイルスによる緊急事態とはいえ、やはり融資の審査の目も厳しくなります。まずは、普段から小規模の事業者を相手にしている日本政策金融公庫を検討したほうがよいかもしれません。
その他に、都道府県など自治体独自で行っている融資制度や利子補給制度、信用保証料補助制度もあります。どの窓口も込み合っていますが、急ぐ場合には早く手続きできそうなところからあたってみましょう。
相談に行くときはしっかり事前準備をしておこう
各金融機関の融資窓口は、新型コロナウイルス関連融資の相談で非常に混雑しています。また、相談者同士が過密にならないように、事前予約制をとっているところもあります。
相談に行く際には、必ず予約の必要性を確認のうえ、融資のための必要な書類(前期の決算書や新型コロナウイルスの影響で落ち込んだ売上の数字が分かる試算表など)を持参するようにしましょう。書類をしっかりとそろえていくことで、窓口での待ち時間を短縮することもできます。
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写真: 塙薫子