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【新型コロナ】経営者が今すぐ判断すべきは「まず事業が3ヵ月耐えられるかどうか」

【資金調達のエキスパート会計士・大野先生緊急インタビュー】

新型コロナウイルスによる感染症流行の影響で、多くの中小企業が経営に打撃を受け、苦しんでいます。このコロナ不況を乗り切るため、中小企業はどのように自社への影響を見極め、今後のビジネスについて検討していけばいいのでしょうか?

今すぐ緊急でやるべき行動や対応策、当面の資金繰りなどについて、公認会計士・税理士で、資金調達や融資支援の専門家である大野修平先生に、緊急インタビューしました。

(※この取材は、オンライン会議ツールを使用し、リモートでインタビューしたものです)

お知らせ

2022年(令和4年)分の所得税の確定申告の申告期間は、2023年(令和5年)2月16日(木)~3月15日(水)です。最新版の確定申告の変更点は「2023年(2022年分)確定申告の変更点! 個人事業主と副業で注目すべきポイントとは?」を参考にしてみてください!

大野修平(公認会計士・税理士)

大野修平

公認会計士・税理士。
大学卒業後、有限責任監査法人トーマツへ入所。
金融インダストリーグループにて、主に銀行、証券、保険会社の監査に従事。
トーマツ退所後、現在は開業支援、融資支援、税務顧問などの業務を行う。
また、毎週、補助金と融資の勉強会を開催し、中小企業の資金繰り支援にも力を入れている。

POINT
  • キャッシュが回るのかどうかが大事。だいたいではなく、なるべく「資金繰り表」を作って把握すること
  • 当面の資金繰りとして、まずは事業が3ヵ月持ちそうかどうかを最初の判断の目安とする
  • 支援融資や特別融資をすぐに利用できるよう、これまで売上の集計はすぐにやっておく

業種によっては「2年くらいマイナスの影響が続く」というワーストのケースも想定すべき


──2020年4月現在、新型コロナウイルスの感染拡大にともなう経済的な影響が、さまざまな業種に表れてきています。オオノ先生の会計事務所にも、多くの不安の声や相談のお問い合わせが届いているかと思います。具体的にはどういった業種の方や、どんな内容の相談が多いでしょうか?

大野修平先生

大野修平先生(以下・敬称略):
僕たちの事務所は、クライアントの業種を絞っているわけではないので、本当にいろいろなところから問い合わせが来ています。もちろん飲食店やインバウンド関係の方は多いですし、ITスタートアップのベンチャー企業の方たちからもかなりのお問い合わせをいただいています。

ご相談の内容もさまざまですが、総じて言えば、やはり資金繰りに関することがメインですね。比較的、資金に余裕がある方でも、「新型コロナの問題がいつ終息するのか、出口が見えない」ということ不安から、なかば保険のように、今のうちに資金を借りることなどを検討していらっしゃるようです。


──新型コロナが与える経済的な影響の大きさや、幅広さがうかがえますね。今回の新型コロナによる経済不況を前に、中小企業の経営者は自社の業績や資金繰りへの影響をどのように見極めればいいですか?

大野修平先生

大野:
まずは、自分の会社の売上にどれくらいの期間、コロナの影響が及びそうか、考えてみるのがいいかなと思います。例えば、飲食業やライブハウスなど、地方自治体から休業要請が出ているような業種ですと、フル稼働できるまで戻るにはかなり時間がかかるのではないか、と僕は考えていて。

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(※チャート作成:大野先生)

大野修平先生

大野:
公認会計士や税理士は、医療や公衆衛生の専門家ではないので、ここの部分の判断は非常に難しいところなのですが、いま僕たちがクライアントの事業計画書を作るときは、新型コロナの影響を最低でも1年程度は見込むようにしています。あと数ヵ月で終わるだろうと高を括るのではなく、業種によっては「2年くらいマイナスの影響が続くのではないか」というワーストのケースを想定して事業計画を立てるほうがいいでしょう。

どの業種でも、ビジネスモデル自体を大きく変えざるを得ない


──すでに事業計画書を作成している場合でも、新しく作り直すほうが賢明でしょうか?

大野修平先生

大野:
事業計画というのは基本的に、突発的な事態があろうとなかろうと定期的にアップデートしていく必要があります。ただし、今回の新型コロナのように前提条件が大きく変わってしまったのであれば、あらためて事業計画書を作り、「うちのビジネスはこれからどういうふうになっていくのだろうか」ということを、限られた時間のなかでもういちど冷静になって考えないといけません。

おそらくどの業種も、ビジネスモデル自体が大きく変わらざるを得ませんよね。いま一度、自分のビジネスの根源的な‟提供価値”というものを見つめ直し、「こういう状況でそれをお客様にお伝えするには、どんなコミュニケーション方法をとるべきか」とか、「どんなオペレーションが必要で、どんなチャネルを使うのか」などを考え直してみる必要があるのではないでしょうか。


──ビジネスモデルは、本質的な提供価値があってこそのものですよね。

大野修平先生

大野:
そうです。例えば、これまではクライアントを支援するためにいろいろな会場でセミナーをやっていましたが、今はすべてオンラインのセミナーになっています。最初は僕も心理的な障壁があって、「オンラインでセミナーなんて、うまくできるわけないよな」と思い込んでいましたし、確かに最初はなかなかコツがつかめず、反応も悪かったので、「もうオンラインなんか嫌だ……」とさえ思っていました。

でも不思議なもので、試行錯誤していくうちに解決策が見えてきて、今だとリアルでやっていた頃より集客も反応もいいんですよ。あらためて「自分たちが何を提供しているのか」という基本に立ち戻れましたし、「オンライン化するのも、慣れればたいした問題じゃなかったな」「最初はスムーズにいかないという前提で、みんなで助け合っていけば大丈夫だな」というのが、現在の実感としてあります。


──飲食店もリアル店舗での飲食が減っている分、テイクアウトやデリバリーが増えているようですね。

大野修平先生

大野:
飲食店だと、「美味しい料理を出す」というのが提供価値の1つだと思うんです。あとは「お客さんが楽しむ場を作る」というのももちろん大切です。しかし、それらはリアル店舗がなければ絶対にできないというわけではなく、そうじゃないやり方だってきっとあるはずなんですよ。

いま、みんなでオンライン飲み会とかやっているじゃないですか。そのときに、「同じお店の料理を、リモートで一緒に食べてもらえないかな?」とか考えるみると、意外にできるかも、と思ったりもします。

もしビジネスをやめる方向で決断するなら、一刻も早く弁護士に相談を


──新型コロナ以降の事業計画を考え直す際に、経営が大丈夫かどうか、大まかに見極めるポイントがあれば教えてください。

大野修平先生

大野:
まずはキャッシュが回るのかどうかという点がもっとも重要かなと思います。キャッシュについてはだいたいの目安で考えるのではなく、なるべく正確なの「資金繰り表」を作りましょう。融資を受けるのであれば、その返済計画も資金繰り表に反映させて、本当にこのお金で足りるのか、この金額で会社を何ヵ月回せるのか、そもそも借りたお金を返せるのか……そういった点を見極めたいところです。

もちろん新型コロナに関してはまだ不確定な要素が多いですから、事業計画書や資金繰り表を作るポイントとしては、楽観的にならないことが必要です。最大限に新型コロナの影響を受けてしまった場合にどうなのか、考えないといけないですね。


──経営者として、最悪のケースを想定するべきなんですね。

大野修平先生

大野:
その結果、厳しい話ですが、「これはもうビジネスを続けられないな」という結論に至る方も出てくるでしょう。あるいは、世代や年齢によっては、「これを機に事業を閉じよう」という方たちだっているはずです。

とはいえ、いきなり「経営やめまーす!」と事業を放り投げるわけにはいきません。もしビジネスをやめる方向で決断するなら、一刻も早く弁護士のところに相談に行き、どういうふうにソフトランディングしていくか相談しましょう。もしくは、現在の事業を続けるためにどうしてもリストラクチャリングが必要であれば、社労士の力を借りるなどするのがいいと思います。


──ここで事業を一旦やめて、また数年後にやり直す……という可能性も、ライフプランの1つとしてはあり得ますよね。

大野修平先生

大野:
再チャレンジするときに何が重要になるかというと、前回のやめ方なんですよ。それは金融機関へのお金の向き合い方や、取引先との付き合い方、お客さんとの関わり方など、すべてを含みます。

「迷惑をかけるようなやめ方をしやがって」と思われてしまったら、「もう一回事業をやります!」と言っても、誰もついてこないですよね。ビジネスは法律云々の話だけでなく、人と人との話でもありますから、やめる際にも礼儀は必要です。


──逆に、これから創業しようと思っている方にアドバイスをするとしたら?

大野修平先生

大野:
まずは「そもそもこの状況下で創業すべきか」を冷静に考える必要があると思います。あまり言及されないのですが、「いつ創業するか」は創業における非常に重要な要素です。これからますます混迷を極めるであろうこのタイミングで創業することの是非をご自身で一度考えてみる必要があると思います。

検討したうえで「今、創業することがチャンスだ」という積極的な結論にたどり着くこともあるでしょうし、「創業しか残った道はない」という消極的な結論にたどり着くこともあるでしょう。いずれにせよ、創業を希望するのであれば、やはり最初はお金を借りることを考えないといけないでしょう。

とはいえ、今の新型コロナ関連の貸付制度は大抵、売上実績が3ヵ月出てからじゃないと受けられないんです。そのため、資金繰りを考えないまま創業すると、一瞬で会社が潰れちゃう可能性だってあります。新型コロナ関連ではない通常の創業融資制度を使って借入をしておくなど、手元資金をしっかり準備したうえで創業しましょう。

今すぐすべきことの判断の目安は「3ヵ月耐えられそうかどうか」


──では、現在の事業をどうにか継続させたい経営者が、今すぐしておいたほうがいい緊急対応策は、どんなものが考えられますか?

大野修平先生

大野:
会社を続ける場合、資金調達が一にも二にも大切です。もう一度、最初に私があげたチャートを見てみてください。「3ヵ月以上は資金が持ちそうだな」と思ったら、先ほど話したように、1~2週間ほどかけて事業計画書や資金繰り表を作り直しましょう。それを持って金融機関に融資などの申し込みに行くと、スムーズに話が進むのではないでしょうか。

一方で、「3ヵ月以内に資金がショートしてしまいそう……」という場合は、なりふり構っていられません! 付き合いのある金融機関にすぐ連絡をして、「今、こういう状況なんだけど」と相談してください。


──金融機関にする相談する判断の目安は、なぜ3ヵ月なのでしょう?

大野修平先生

大野:
今はどこの窓口も混んでいるので、僕の中では、融資を申し込んで皆さんの口座に着金するまでに、最長で3ヵ月くらいは見ておいたほうがいいと考えているんです。こういう危機のときは、最悪のケースを想定しておくべきだと思うので。


──その3ヵ月間に、資金調達以外にできることは何かありますか?

大野修平先生

大野:
支出の抑制、いわゆる経費削減も考えられますが……実際には簡単ではありません。コストの大きい経費から減らすとなると、売上原価、人件費、家賃のいずれかになるかと思いますが、売上原価はそのまま売上に直結するので、なかなか削減できませんよね。

また、人件費は残業を減らすことなどが主ですが、本当に切羽詰まっている場合だと、従業員に退職してもらうところまで視野に入れないと、安定して資金を回せなくなる可能性もあります。

家賃も、この状況下では安いところへの引っ越しもすぐにはできないと思うので、挙げられるとしたら「大家に家賃交渉をしてみましょう」ということになります。


──たしかに、店舗などを構えている業態の場合、家賃の支払いが当面の資金繰りを圧迫する……という話もよく聞きます。

大野修平先生

大野:
今後、そういった家賃交渉は増えると思います。考え方として、家賃というのは、その場所でどれだけ売上が立つかによって賃料が決まるんです。だから、「売上が落ちているので、家賃もまけてほしい」というのは理論的には言えますね。

でも、その対応策は、大家サイドの生活について考えると、悩ましい論点なんですよ……。今後は、大家業の人たちに対する政府の支援も望まれます。


──大家さんも慈善事業じゃなくビジネスなので、難しいところですね……。

大野修平先生

大野:
そうなんです。とはいえ、経費削減はずっとやっていかないといけない重要なことですから、人件費や家賃などの大きな経費に手をつける同時に、細々したものについても無駄な経費を削減できないか検討するのがいいでしょう。


──これまで経費削減に気が回らなかったという経営者の方がいれば、この機会に見直すと効果があるかもしれませんね。

大野修平先生

大野:
景気がいいときは、戦略的投資という名目のもと、経営者の方はいろいろな広告を打ったり、交際費をたくさん使ったりしてきたと思うんです。でもこれからは、そういった部分をもう少しシビアな基準で判断していくべきじゃないでしょうか。

国の支援策は経済産業省の特設ページを確認しよう


──「新型コロナの影響で経営が心配だけど、情報が錯綜して何から手をつければいいかまったくわからない」という声をよく聞きます。まず最低限チェックしておくべき情報源などはありますか?

大野修平先生

大野:
僕がここ最近ずっと見ているのは、経済産業省の新型コロナ関連の特設ページです。そこに掲載されている「新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ」というパンフレットのPDFをチェックするのがいいかなと思います。

国から出ている支援策は間違いなくここに網羅されており、内容も随時更新されています。ただし、自分ひとりですべての情報を網羅しようと思うと、パニックになってしまうかもしれません。

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▲経済産業省「新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ」のPDFサンプル(2020年4/27現在)


──項目がズラッと並んでいて、悩んでしまいそうです。自分では判断がつかないときは、誰かに相談するのがいいでしょうか?

大野修平先生

大野:
そうですね。顧問の税理士や会計士がいるなら、その人たちの力を借りながら、支援策を検討しましょう。顧問契約を結んでいない場合は、税理士や、中小企業に強い経営コンサルタントなどを新たに探すのもいいと思います。今の政府施策などの情報をこまめに収集しているはずなので。


──何もわからない状態の経営者が、個人で各省庁の窓口などにいきなり相談を持ちかけるのは、やはり難しいですか?

大野修平先生

大野:
パンフレットにもいろいろな相談窓口が載っていますが、そもそも電話が繋がらないというのが今の状況で……。それよりは、普段からお付き合いがある税理士や社労士のほうが、まだ連絡がつきやすいんじゃないでしょうか。しかもこれだけ支援策が多いと、自分が最初にどの窓口に問い合わせればいいかも、よくわからないですしね。

資金繰りについては一人で悩まず、金融機関に相談を


──税理士さんなど、専門家の探し方のポイントはありますか?

大野修平先生

大野:
例えば、ひと口に税理士といってもいろいろな人がいて、それぞれ得意・不得意な分野があります。僕の場合、資金繰りのことは得意ですが、実は税金のことはちょっと苦手で、弊所の他の所属税理士に任せています(笑)。社労士さんでも、助成金や労務に強い人もいれば、そういった分野はノータッチ……という人もいるので、その専門家の得意分野を見極める必要がありますね。オススメの探し方は、知り合いや同業者の口コミや紹介でしょう。

あと、資金繰りについて相談するのであれば、金融機関が一番いいと思いますよ。金融機関の人は、お金の専門家ですから。ただし、金融機関では事業計画書の作成まではしてくれないので、そういったところまでしっかり考えたいなという方は、弊所にご連絡をいただければ、ワンストップで支援をさせていただきます、と告知をしておきます(笑)。


──自分自身に置き換えて考えてみても、知識がなく、余裕もない状態なので、専門家を頼るほうが圧倒的に安心できそうです。

大野修平先生

大野:
経営者のなかには、「融資メニューや、保証協会の保証メニューを決めてからじゃないと相談しちゃいけない」と思っている人がいますが、それは間違い。これまでの皆さんの経営の経験においても、金融機関の人に「お金が必要なんですけど、どうしたらいいですか」と聞いて、一緒に「どの融資メニューにしましょうか」と話し合いながら決めてきた方がほとんどでしょう? 新型コロナの影響がある現在だって、それは一緒なんです。

「新型コロナの影響で今はこういう状況なんです」と相談すれば、金融機関の人は慣れているから、「では、売上が何%下がったか調べてください」というふうに、やるべきことの指示をしてくれます。あるいは、「売上が20%くらい下がっています」と言えば、「じゃあ、この融資メニューが使えるかもしれないので、役所に行ってください」と、適切な施策を具体的に教えてくれるはずです。まずはその人に教えてもらったとおりに動いてみればいいと思いますよ。


──ということは、経営者の方はどの支援策を利用するか、自分で悩む必要はないんですね。

大野修平先生

大野:
こういう緊急事態に、100点満点の解決策を狙う必要なんかありません。100点を取るための準備に時間を使い過ぎて、「うちの会社に一番いい融資メニューはこれだ!」とわかったときには手元の資金が尽きていた……ということでは本末転倒です。70~80点を狙って手っ取り早く専門家に相談し、とにかく会社として生き長らえることを優先してください。

経営者の方は、資金繰りの心配よりも本当はもっとやらないといけないことがあります。先ほどお話ししたとおり、自分たちのビジネスの本質的な提供価値は何なのかを考えたり、従業員の方々のメンタル部分をケアしたり。そういったことに経営者の方が取り組んで、専門家が資金繰りのアドバイスをする。そういう役割分担が必要でしょう。


──「新型コロナの影響で、税金や社会保険料などの納付が難しい」という場合も、専門家の力を借りてOKでしょうか?

大野修平先生

大野:
それも経産省のパンフレットで猶予制度などがはっきり発表されているので、税金関連は税理士、社会保険料は社労士に相談するといいでしょう。顧問契約を結んでいない方は、パンフレットに記載の相談窓口に問い合わせてください。

納付の心配をしてモヤモヤしているよりは、早く相談して、「大丈夫ですよ」と言ってもらうのが心理的にもいいと思います。

ただし、気をつけないといけないのは、あくまで‟猶予”であって、‟免除”ではないということ。後でキャッシュアウト分が増えるということは、ちゃんと考えておかないといけません。

新型コロナ関連の給付金や特別融資は、ほぼ「売上高」が判断基準になる。早めに売上の集計を!


──さまざまな融資などの申請に備えて、具体的に準備しておくといいものは何ですか?

大野修平先生

大野:
決算書・確定申告書類の控え、月次試算表などが求められると考えられますが、これらはそもそも補助金や融資の申請のためではなく、経営のために必要なものです。「月次試算表、作ってないから慌てて準備しなきゃ」という方は、これを機に大いに反省してください! ……と言うとちょっと偉そうですが(笑)。今後のために、税理士にも協力してもらいながら、そういった体制を作っておくといいんじゃないかと。

景気がいいときは、ある程度どんぶり勘定でも何とかできるんですよ。でもこれから1~2年、下手したら10~20年にわたる不景気に突入しようとしているなかで、毎月の数字もわからずに経営するなんて、こんな恐ろしい話はありません。


──その他に、やっておくといいことは?

大野修平先生

大野:
新型コロナ関連の給付金や特別融資、貸付制度に関しては、ほぼすべてのメニューが、‟売上高”が判断基準になるので、これまでの売上の集計はすぐに行うほうがいいでしょう。とにかく早めにやっておかないと、それぞれの要件に合致するかどうかの判断ができないので。


──専門家への相談の際も、これまでの売上高がわかっているとスムーズな部分も多そうです。

大野修平先生

大野:
そうですね。また、国や自治体から出されているさまざまな給付金も、売上高が判断基準になるものが多くありますからね。

ただ、給付金は可能な限り利用してほしいものですが、その場しのぎの資金とも言えるんです。新型コロナの影響が数ヵ月や半年で収まるのであれば、「給付金でなんとかなってよかったね」という感じかもしれませんが、僕の感覚だと、新型コロナの影響は決してそんな早くは終わらないと考えていて。

そうすると、国が1~2年間ずっと給付金を出し続けるのも不可能だと思うので、あくまで給付金は対症療法じゃないかな、と。やはり今、中小企業の経営者にもっとも大切なのは、「withコロナ」の社会状況のなかでできるビジネスを、あらためて問い直すことではないでしょうか。

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後編につづく

本文写真撮影(トップ画像をのぞく):塙薫子

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