「資金繰り表」を作ってキャッシュフローを見える化!もう資金ショートの心配なし!?

【会計士オオノ先生に聞く!お金の経営相談】
コワーキングスペースとカフェを兼ねたお店を運営しているゆうちゃん。新米経営者である彼女は、融資や資金調達、経営のあれこれに詳しい公認会計士・税理士のオオノ先生からいろいろと教えてもらっています。
前回作成した事業計画書をもとに、今回はより実際の経営に役立つ資金繰り表の作成方法を解説してもらいます。大野先生と実践的な資金繰り表を作成すれば、資金ショートの心配もなくなるかも!?
[おすすめ]法人の会計業務をかんたんに!無料で使える「弥生会計 オンライン」
目次
- POINT
-
- 資金繰り表の「月末現預金残高」がマイナスだと、資金ショートを起こしているということ
- 資金繰りがマイナスになりそうだったら、まずは「売上増加」や「コスト削減」によって資金繰りを改善できないかを検討する
- 金融機関などから資金調達する際には、資金繰り表で現預金の動きを把握しておくことが大事
※本記事は「資金繰り表・サンプル」のエクセルファイルをダウンロードして、事業計画書のサンプルと数字をつき合わせながらお読みいただくと、より実践的な理解を深めるための助けとなります。ぜひ以下よりゆうちゃんが経営しているお店の「資金繰り表・サンプル」のExcelファイルをダウンロードしてからお読みください。
>>「資金繰り表・サンプル(shikingurihyousample.xlsx)」こちらよりダウンロード(.xlsx形式)
まずは「現預金残高」から入力していこう
オオノ先生:じゃあ、前回作った事業計画書をもとに、次は資金繰り表を作っていこう。ちなみに、今月の月末の現預金残高はどれくらいになりそう?
ゆうちゃん:だいたい200万円くらいね。
オオノ先生:そうですか。それではまず、「資金繰り表・サンプル」の⑯「売上入金」のシートの一番下の行「月末現預金残高」の10月のところに200万円を入力してください。それが資金繰りの出発点になります。(読者の方は、ダウンロードしたExcelファイル「資金繰り表・サンプル」をご覧ください)
【⑯売上入金】
ゆうちゃん:(……あれ? 今、すごい機密情報をさり気なく聞き出された気がするけど……)
オオノ先生:次は、売上の入金タイミングを資金繰り表に反映していきましょう。売上はすべて現金売上ですか?
ゆうちゃん:うん。大抵は現金だけど、カフェスペースの夜の部の売上の3割くらいはクレジットカードで支払われるかな。
オオノ先生:じゃあ、その分は翌月の入金としましょう。「売上入金」の行に反映していきますよ。
【⑯売上入金】
ゆうちゃん:へー、こうやって資金繰りを追いかけていくのか。あ、「仮受消費税」も10%で計算されているんだね。
オオノ先生:そうです。損益計算書を税抜きで作っているので、売上入金に10%を乗じた額を仮受消費税として資金繰り表に反映します。次は「仕入代金の支出」を見ていきましょう。
ゆうちゃん:これは、損益計算書の売上原価から考えれば良いのかな。
オオノ先生:基本的にはそうなんですが、仕入れてから売上原価になるまでに時間がかかる場合、つまり在庫回転期間が長くなる場合には、その期間も考慮しないといけないですね。
ゆうちゃん:ウチの仕入れは食品だから、在庫回転期間は短いよ。長くて1週間かな。
オオノ先生:そうですよね。それくらい短い場合には売上原価の計上月=仕入れた月と考えてOKです。ちなみに、仕入れてから支払いまでは何ヵ月サイトですか?
ゆうちゃん:基本的には当月支払いだね。
オオノ先生:では、売上原価の計上月=仕入れ代金の支払い月として、資金繰り表の⑰「仕入支出」シートの「仕入支出」の行に入力しましょう。
【⑰仕入支出】
ゆうちゃん:次は人件費ね。お給料は翌月10日払いだから、資金繰り表には翌月に入力すれば良いんだよね? 損益計算書の11月の人件費だったら、資金繰り表の⑱の「人件費支出シート」の12月の人件費支出に入力するって感じだ!。
オオノ先生:そうです。わかってきましたね。
【⑱人件費支出】
オオノ先生:次の「その他経費支出」については、人件費以外の販管費の支払いタイミングに合わせて入力すればよいのですが、これは各勘定科目によってさまざまだと思います。おそらく当月払いが多いかな? と思うんですが、どうでしょう?
ゆうちゃん:うん! 交通費なんかは立替精算でお給料と一緒に翌月払いにしてるけど、その他の費用は大抵当月払いだね。
オオノ先生:だったら旅費交通費だけ翌月払いで資金繰り表に反映しても良いですが、旅費交通費自体は金額も小さいですし今回はすべて当月払いで入力して良いと思います。どれくらい正確にやるかはケースバイケースですね。
ゆうちゃん:そっか。区分する手間と、それによって得られる資金繰り表の正確性との比較で決めれば良いのね。
オオノ先生:そうです。注意点としては減価償却費ですね。減価償却費自体は資金を支出するものではありませんので、資金繰り表には反映しません。固定資産を購入したときに全額を「固定資産等購入支払」として資金繰り表に反映します。
ゆうちゃん:「仮払消費税」は「仕入支出」と「その他経費支出」の10%ね。資金繰り表⑲の「その他経費支出・税金費用」のシートに入れていくね。
オオノ先生:はい。だいたいそれで合っていると思います。「固定資産等売却収入」や「固定資産等購入支払」があるときには、それらにかかる消費税も含めてくださいね。
ゆうちゃん:その下は「支払利息」か。今、ウチは借入をしてないから「支払利息」はなし!っと。
オオノ先生:前期の消費税と法人税の支払いはいくらですか?
ゆうちゃん:たしか、消費税が20万円、法人税が10万円だったかな。
オオノ先生:ではそれらの支払いも⑲の「その他経費支出・税金費用」のシートの「税金費用」の行に反映しておきましょう。決算の2ヶ月後に納付ですね。
【⑲その他経費支出・税金費用】
ゆうちゃん:そこから下は、ウチには関係なさそうね。ということは……
オオノ先生:はい! 資金繰り表は完成ですね。
ゆうちゃん:やったー!終わったー!
オオノ先生:記入が終わったら、最後にここまでの預金残高を確認します。⑲の「その他経費支出・税金費用」のシートの「月末現預金残高」を確認しましょう。
ゆうちゃん:どういうこと?
オオノ先生:つまり、この「月末現預金残高」がマイナスだと、資金ショートを起こしているということです。
ゆうちゃん:そっか。ウチの場合はどの月もプラスだから大丈夫ってことね。これがもしマイナスだったらどうするの?
資金繰りが改善できなそうな場合、金融機関からの資金調達も検討しよう
オオノ先生:まずは、「売上増加」や「コスト削減」によって資金繰りを改善できないかを検討しますが、それでもダメなら借入や増資、つまり資金調達が必要になりますね。資金調達も資金繰り表に反映しますよ。
ゆうちゃん:そう言えば、センセー、前に金融機関に大切な取引先と思われるためにも、借入をしておいたほうが良いって言ってたよね?
オオノ先生:そうですね。
ゆうちゃん:ウチもそろそろ金融機関との取引を始めようと思ってるんだよね。
オオノ先生:では仮に1月に300万円を日本政策金融公庫から借りたとして、その前提で資金繰り表を作ってみましょうか。
ゆうちゃん:たすかるぅー。
オオノ先生:借入期間は7年、現在の「中小企業経営力強化資金」の金利(※)が、経営者保証なし、担保なしという条件で2.26%なので、それで計算しましょう。
(※2019年12月現在)
ゆうちゃん:1月に300万円借りるんだから、⑳「300万円借入」シートの財務収入の「借入」に入力して……。
【⑳300万円借入】
オオノ先生:返済期間が7年なので、月々の元本返済は約36,000円ですね。これを「借入金返済」の行に入力していきます。入力したのがこちら、㉑元本返済のシートですね。
【㉑元本返済】
ゆうちゃん:利息は?
オオノ先生:支払利息は損益計算書にも計上されますから、まずは損益計算書に支払利息の金額を記入します。金額計算は少し複雑ですが、計算すると1月の支払利息が5,758円ですね。それ以降はだいたいこんな感じになります。㉒「支払利息PL」のシートを見てみてください。
【㉒支払利息PL】
ゆうちゃん:この金額を資金繰り表㉓「支払利息 資金繰り表」のシートの「支払利息」の行に転記するのね。
【㉓支払利息 資金繰り表】
オオノ先生:そうです。これで借入についても反映できました。㉓「支払利息 資金繰り表」のシートの「月末現預金残高」がぐっと増えて余裕をもった経営ができていることがわかると思います。
【㉓支払利息 資金繰り表】
ゆうちゃん:これだけ手元にお金があると、突発的なトラブルが起こっても資金ショートの可能性は低くなるね。あ、この㉓「支払利息 資金繰り表」シートの「現預金増減差額」もプラスだから、借入金の返済をしても現預金は増えていっているってことね。
オオノ先生:そのとおりです。しかも金融機関との取引を開始できていますので、万が一のときにも頼みに行ける金融機関が増えているってことですね。
ゆうちゃん:そっか。そう考えると支払利息って金融機関に払う交際費みたいなものなんだね。それが5,000円くらいと思えば安いもんだね。
オオノ先生:そうですね。元本を返済していくと利息もどんどん少なくなってきますから、平均すると月の利息は3,000円弱ってところでしょう。
ゆうちゃん:よーし、そろそろ本気で金融機関との付き合いを考えてみようかな。まずは、事業用口座がある銀行に連絡してみるね。
オオノ先生:ちょっと、待ってください! 金融機関に連絡する前に、最後のレクチャーとして、次回は「金融機関が重視するポイントや、金融機関との付き合い方」を伝授いたしますね。
- 【関連記事】
- なぜ、会社は「突然死」するのか〜経営者は知っておきたい倒産と資金繰りの大事な話〜【会計士オオノ先生に聞く!お金の経営相談】
- スモールビジネス経営者が知っておきたい”融資”の話-大野修平先生(公認会計士)インタビュー
- 手もと資金がどんどん減る!?事業成長に運転資金が追いつかない「成長痛パターン」とは【会計士オオノ先生に聞く!お金の経営相談】
撮影:塙薫子