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老後ってヤバい?若手フリーランスのための「保険」と「年金」の話【お金の専門家・横川楓】

少子高齢化が叫ばれるなか、世代間格差は広がり、若手世代を中心に受け取れる年金額を心配する声が広がっています。特に、これからフリーランスになることを計画している方、若手フリーランス・個人事業主の方などは、「自分たちの老後はどうなってしまうの?」と将来のお金について不安に思うこともあるでしょう。

そこで、「ミレニアル世代(2000年以降に成人になる世代)のお金の専門家」として活躍し、若い人をターゲットにお金の知識の啓蒙活動、カウンセリングを行っている横川楓さんに、若手フリーランス・個人事業主の保険や年金、貯蓄や投資、お金との付き合い方について、連載でお伺いします。

連載第1回目は誰もが気になる「保険」と「年金」をテーマにお届けします。

国民年金だけだと老後は毎月5万5千円…今後は減額の可能性も

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――しばしば話題に上がる、年金問題。公的年金制度は今後どうなってしまうのでしょうか。

横川横川:今の国民年金の制度は、今働き盛りの人が、今の年金受給者を支える仕組みで、基本的には人口が増えることで支給が安定するように設計されています。そのため、人口が減り続け、人口構造が逆ピラミッドの状態になっている今、年金をもらう人は増えるのに、保険料を納める人は減っていくという現象が起きてしまっているのです。

現時点での年金額は、会社員だった方だと基礎年金+厚生年金を受け取ることができますが、それでも平均の月額で14万円弱と言われています。自営業やフリーランスの場合、国民年金だけしか加入していなければ平均給付月額5万5千円程度です。実際問題として、それだけで生活するのはまず無理ですよね。

しかも今後も減額される可能性もありますので、今や年金だけに頼る時代ではないと考えなければいけないでしょう。

――そんな状況を知ると、若者のなかには、年金なんて払いたくない、という方も多いと思います。

横川横川:金額は期待できないとはいえ、そもそも公的年金を支払うのは国民の義務。絶対に払わなければいけません。滞納し続けると延滞料金が課せられ、銀行口座が差し押さえられることもあります。

また、病気やけがをしたとき、生活や仕事が制限されたときに受け取ることのできる障害年金、被保険者が亡くなったときに遺族(配偶者または子ども)が受け取れる遺族年金も、公的年金を払っていないと受給できません。公的年金にはそんな保険的な意味合いもあるのです。

――でも独立したてでお金に余裕がなくて、今はどうしても払えないといった場合はどうしたらいいのでしょうか?

横川横川:年金事務所の窓口で、免除・猶予の申請を行うこともできます。あと、年金を支払う意思はあるけれど、面倒だ、手続きを忘れてしまう……という人も私のまわりには結構います。その場合、カード払いや銀行引き落としにすることをオススメしています。

「付加年金」「国民年金基金」「iDeCo」は所得控除できるので節税にもなる

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――フリーランスや個人事業主が老後のお金や年金について注意すべき点は何でしょうか。

横川横川:ご存じのとおり、会社員には退職金がありますが、フリーランス・個人事業主にはありません。定年退職がないだけに、一生働き続けることもできますが、公的な年金だけには頼れないとわかっている今、自衛策を考えるべきだと思います。

――では、公的年金以外に、若い世代のフリーランスが老後の備えとして検討したほうがいい制度があれば教えてください。

横川横川:基礎年金に加えて、年金の受け取り額を増やす仕組みにはこのようなものがあります。

●付加年金……定額保険料に付加保険料(月額400円)をプラスして納付すると、老齢基礎年金に付加年金が上乗せされると言うもの

●国民年金基金……国民年金に月々の掛け金を上乗せできる。掛け金は年齢や課税所得によって掛け金は異なるが、月額上限6万8,000円以内で選択

があり、どちらかひとつを選ぶことができます。これに加えて、「iDeCo(イデコ)」という投資的な意味合いが強い年金もあります。

●iDeCo(個人型確定拠出年金)……毎月の積立額は5,000円~。投資先は自分で選んで決めることができる。60歳まで引き出せないので、退職金代わりにできる

iDeCoは「自分で投資するのが不安」という方もいるかもしれませんが、元本保証がある商品もあります。iDeCoは私も始めていますが、日本株、海外株、REIT(不動産投資信託)などいろいろと分散投資しています。

動きを見て投資先の比率を変えることもできるので、損ばかりしてしまうなんてことはないでしょう。

また、「老後にしか使えないお金ばかり増やしても……」と言う方は、「つみたてNISA(少額投資非課税制度)」がオススメです。こちらも投資信託の商品を選んで運用しますが、100円~と少額ずつ積み立てられて、途中で引出もできます。

付加年金、国民年金基金、iDeCo、のどれを利用しても、掛け金、積み立て金は所得控除できるので、節税にもなります。

――これらの制度や商品を使って、基礎年金以外の部分をどのように増やして行くかがポイントですね。

横川横川:はい。ただ、これも生活費以外に使えるお金があってこそ。金銭面の余裕がどのくらいかにもよると思います。

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――なるほど。では、毎月の余裕資金に応じたマネープランをぜひ教えてください!

横川横川:ご自身の収入の状況に応じて、生活や事業に回さなくてもいい余裕の出たお金をこんな感じで将来資金に回すというのも考えられますね。例えば……

●毎月5万円の余裕があるなら……
国民年金基金:1万円、iDeCo:2万円、つみたてNISA:2万円

●毎月3万円の余裕があるなら……
国民年金基金:1万円、iDeCo:1万円、つみたてNISA:1万円

●毎月1万円の余裕があるなら……
iDeCO:5千円、つみたてNISA:5千円

横川横川:国民年金基金は年収や条件によって納付金額が決まっており、自由には決められません。iDeCoは毎月5,000円以上からで、一度掛金を決めたら年1回だけある書類での変更でしか掛金を変更できません。

将来の資金に回す毎月のお金のうち、国民年金基金とiDeCo分を引いた残額をつみたてNISAに回すという決め方でもいいかもしれませんね。

――若手フリーランス・個人事業主でも、いろいろと準備できることは多いんですね。少しだけ、老後の不安が減った気がします。

横川横川:独立開業という道を選んだ、もしくは選ぼうと思っているみなさんは、仕事に対して積極的だと思います。お金まわりは自分でチェックしないと、知らずに損をしていることがとても多いので、ぜひ「お金」についても積極的に自ら動いてもらいたいですね。

今回の話をまとめると……

  • 会社を退職したら、すぐに国民健康保険に加入しましょう。職種によっては加入できる健康保険組合もあるので、退職前に保険料を比較検討してみてもいいでしょう。
  • 公的年金の支払いは国民の義務、必ず支払うこと。また、年金の2階建て部分(※受け取る年金の基礎部分(基礎年金)を「1階建て部分」と呼ぶのに対し、「2階建て部分」は厚生年金など報酬額に比例して追加で収める年金のこと)も収入に応じてプラスすることが大切です。

退職金もなく、会社任せにできないフリーランス・個人事業主だからこそ、老後の問題にしっかり向き合いましょう。

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