減価償却とは?対象になるものと計算方法をGパンパンダ(超インテリお笑い芸人)が解説!

これから個人事業主やフリーランスになりたいと考えている方が知っておくべき会計用語のひとつが「減価償却(げんかしょうきゃく)」です。
減価償却にはさまざまなメリットがあります。ただし、複雑なルールを理解しないまま適当に処理してしまうと、思わぬミスにつながって損をしたり、税務調査で指摘されたりしてしまうケースも!?
今回は、減価償却についての注意点やポイントを、公認会計士兼税理士の星野さんと、MENSA会員の一平さんによる超インテリお笑いコンビ・Gパンパンダのおふたりと一緒に勉強していきましょう!
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2022年(令和4年)分の所得税の確定申告の申告期間は、2023年(令和5年)2月16日(木)~3月15日(水)です。最新版の確定申告の変更点は「2023年(2022年分)確定申告の変更点! 個人事業主と副業で注目すべきポイントとは?」を参考にしてみてください!
目次
取得した品物を何年かかけて経費にしていく「減価償却」とは?どんな計算をする?
――この連載は、個人事業主になろうと考えている方が、個人事業主としてやっていく際に必要な情報をお伝えしていくことがコンセプトです。これまで、個人事業主になる前にやっておくべきことや、税金、税理士の選び方などを星野さんにお話しいただきました。今回は「減価償却」がテーマです。なんだか一平さんのお顔がキリッとしていますね。
一平:はい! 今回学んだことを活かして、なんでもかんでも償却してやろうと思ってます!
星野:一平くんの意気込みはちょっとおかしい気がしますけど、とにかくやる気があるのはいいことですね。
――まずは大前提として、「減価償却」とはどういうものなのか、基本的な考え方を教えていただきたいです。星野先生、お願いします!
一平:減価償却というのは、事業用に購入した品物がとても高価なものだったら、少しずつ経費にしていこうというシステムですね。
星野:……僕でなく、一平くんがスラスラと答えてくれましたね。
――……一平さん、すごい(笑)。
一平:ちょっとー! 早々に「なんで一平が答えるんだよ!」ってツッコんでもらう予定だったのにー!! 星野がずっとニコニコして聞いてるから、僕もフワッとした状態のまま説明しちゃったじゃん(笑)。
星野:説明するのは、お前じゃないんだよ~。……ご希望通り、一応ツッコんでおきました(笑)。さて、ここから本題に入ります(キリッ)。
収支の計算をするときには、会計期間という時間的な区切りを設けます。例えば、2019年中に仕事で使うために買ったものは、2019年分の所得税の確定申告で経費に計上しますね。品物を取得したタイミングと、経費にするタイミングが同じ会計期間になるというのが基本的なケースです。
その一方で、長い期間使うものに関しては、少し異なるケースがあります。たとえば2019年に20万円のパソコンを買い、「この先何年も使います」という場合、「2019年に20万円の経費がありました」ということにしてしまうと、2019年の所得は非常に小さくなる一方、2020年以降は、2019年同様にパソコンを使用しているのにも関わらず、それに対応する経費が計上されなくなってしまいますよね? これではそれぞれの会計期間において、品物を使っている実態と、利益の出方がかけ離れてしまいます。
そこで、一般的に1年以上の長期間にわたり使用される資産(固定資産)について、その取得にかかった支出を、使用する実態に合わせて何年かかけて経費にしていく……という処理を、減価償却といいます。
一平:なるほど! 実際は固定資産の代金はもう払っているけど、帳簿上は経費として計上し続けるってことだよね。僕の説明より、とてもわかりやすいですね。
星野:お褒めいただき、ありがとうございます(笑)。
――青色申告と白色申告で、減価償却の考え方やルールに違いはありますか?
星野:会計期間をまたがって長い間使うことになる固定資産は、減価償却計算をするわけですが、その判断の目安について説明していきましょう。
まず、金額10万円未満のものを買った場合は、「長く使うものだとしても、買った年の経費にしていいですよ」というルールになっています。たとえば僕たちお笑い芸人が衣装を買った場合、何年か着続けますが、10万円未満なら買った年の経費にできます。これが「少額減価償却資産」という考え方です。
この考え方を前提としたときに、青色申告をする人は金額のボーダーラインが上がって、30万円未満のものについても買った年に経費にできるというルールが追加されるんです。このルールを「少額減価償却資産の特例」といいます。
一平:おお!やりました!!
星野:「やりました」とは?
一平:それで、去年買ったパソコンをやりました!
星野:パソコンをやりましたか。日本語がちょっとおかしいですが(笑)。
一平:使っている会計ソフトに「30万円未満だから、やっていいぞ!」って言われて。よくわからないけどやったほうがいいのかな~と思って、やりました! 星野先生、あれは本当にやったほうがよかったんですか?
星野:所得が出ている場合、所得を減らしたほうが税金も減りますよね。その年に税金を減らせると、手元に残るお金は増えるので、それを運用したり、次の営業活動への投資をしたりすることなどもできます。基本的には、手元にお金が残るほうがいいということで、特例を使うほうがベターという考え方でいいと思います。
一平:やってよかった~!
星野:減価償却に関しては、固定資産に応じて「耐用年数」というのが決められています。たとえば、一平くんの話に出てきたパソコンの耐用年数は4年。つまり、通常なら4年かけて経費にしていきますが、少額資産の場合は、例外的に1年だけで経費にしてしまいましょう、ということなんです。
さらに、これとはまた別の制度で、10万円以上20万円未満のものに関しては「一括償却」という考え方があります。こちらは、もともとの耐用年数が何年に設定されているかにかかわらず、3年間で均等に償却してしまいましょう、というやり方です。
一平:そうなんだ。そのやり方は知らなかったなあ。
星野:耐用年数が5年のものでも、10万円以上20万円未満なら、3年で償却するやり方も選択できるというわけです。耐用年数に従った通常の償却もできるし、一括償却もできるし、青色申告なら少額減価償却資産の特例を使うこともできるので、好きな方法を選べます。
取得価額 | 10万円未満 | 10万円以上20万円未満 | 20万円以上30万円未満 | 30万円以上 |
---|---|---|---|---|
通常の減価償却 | × | 〇 | 〇 | 〇 |
少額減価償却資産 (全額経費) |
〇 | × | × | × |
一括償却 (3年均等) |
× | 〇 | × | × |
少額減価償却資産の特例※ (全額経費) |
× | 〇 | 〇 | × |
※少額減価償却資産の特例は青色申告のみ
一平:いろいろ選べるのは便利そうなイメージだけど……その分、どれを選べばいいかよくわからないよ。
星野:一般的には、先ほども話したように、手元にお金が残るほうが新規事業の運用に使えたりするので、早めにたくさん費用を上げるという考え方がいいと思います。でも一方で、取得して計上しようとしている年に所得がそれほど出ていなかったり、それほど出ていなかった場合、高額なものを翌年以降も経費にするほうが得するケースもあり得ます。
一平:なるほど! 所得に応じて選べばいいんだね。
星野:ただ、一括償却はスタートの年に確定させなきゃいけないんです。利益の推移を見て「2年目から一括償却にしま~す」というのはNGで、品物を取得した年に「これは一括償却します」と決める必要がありますし、その後の利益がどうなろうとも3年間できっちり償却しないといけません。
一平:今の話を聞いたら、僕のパソコン、一括償却にして3年かけて経費にしたほうがよかった気がしてきた……。
星野:ずいぶんガッカリした顔をしてるなあ。
一平:ガッカリだよ~。読者のみなさんは、僕みたいにガッカリしないよう気をつけてくださいね~~~。
星野:実感のこもったメッセージが、みなさんの参考になるといいね(苦笑)。
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「少額減価償却資産の特例」は、いつまで利用できる?
――どうやら少額減価償却資産の特例は、利用できる期日が決まっていると聞いたのですが……?
星野:この特例は、実は永続的に決まっているものではなくて……うーん、何と言ったらいいのかな。
一平:僕たちの大好きな、確定申告に関するボーナスタイムってこと?
星野:そう。期間限定で設定されているボーナス的なルールなんです。本当はもっと早く終わっている予定だったんですが、これまでも延長されてきていて。この取材時(10月末)だと、取得日が2020年3月31日までの資産に関して適用される予定です。(※)
一平:えー。4月以降は特例が使えなくなっちゃうってこと?
星野:もしかすると、また延長になるかもしれないから、情報をチェックしておくといいですね。
一平:延長されるかどうかって、何を見たらわかるの?
星野:期間が延長されるかどうかは、国税庁の告知を見てください。
一平:堅苦しいから見たくないな~! どうしたらいいんだ!? この『スモビバ!』のサイトでは告知されますか?
編集担当:延長される場合もされない場合も、掲載予定です(キリッ)。
一平:よかったー! みなさん、『スモビバ!』をチェックすれば大丈夫ですよ! 国税庁の告知なんて僕は絶対に見ないもん(笑)。
星野:あまりそういうことを堂々と言うな!
一平:Safariとかの「よく閲覧するサイト」の欄に、国税庁のホームページが出てくる人間はなんか嫌だよ(笑)。星野先生の予想だと、延長されそう? されない可能性もある?
星野:延長されるんじゃないかな。これまで2回延長されてるし。
一平:あー、この特例はもうズルズルのやつなんだ(笑)。とにかく、みんなこまめに『スモビバ!』見とけよ!ってことですね。
星野:『スモビバ!』をチェックすることも大切ですが、延長にならない場合、少額減価償却資産の特例を使いたいものがあるなら、2020年の3月31日までに購入して、事業で使用し始めることが必要ですので、それも忘れずに!(※)
(※)令和2年度税制改正により、少額減価償却資産の特例の適用期間が2022年3月31日まで延長されました。なお、2020年4月1日以降は、連結法人、常時使用する従業員500人超の中小企業者等が本特例の対象外になりました。令和2年度税制改正についての記事は、公開次第お知らせします。(2020年4月6日 Gパンパンダ星野さま確認の上、スモビバ!編集部 追記)
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資産のすべてが減価償却の対象ではないことに要注意!
――次は、減価償却できるものと、できないものについて教えてください!間違えやすいものなどはありますか?
星野:資産であることを前提として、「時の経過に応じて、その資産の価値が減る」というのが減価償却の考え方です。なので、時が経過しても価値が減らないものは、減価償却できません。たとえば、貴重とされる骨董品とか……。
一平:壺だね!
星野:壺だけには限りませんが(笑)。アンティークの家具とか。
一平:アンティークのテーブルなんかは、おしゃれなレストランに結構ありそうじゃない?
星野:通常のテーブルとして考えるなら、時の経過に応じて価値が減っていきますが、とても貴重なテーブルで、使用する目的ではなく、その存在自体に価値があるという場合は、減価償却の対象にはなりません。他には、土地や借地権などもそうですね。
一平:減価償却の対象にならないような人間になりたいね!
星野:人間は、そもそも減価償却の対象ではありません(キッパリ)。
一平:いや、秀逸なたとえだったんだけど……。
星野:一平くんが何を言っているのか、よくわからなかったですね(キッパリ)。
一平:それ自体に価値がある扱いのものって考えると、お店や会社に鑑賞用として置いてあるでっかいぬいぐるみとかも、プレミアがついていたりしそうだな~。でも個人事業主としては、減価償却できない資産より、減価償却できる資産のほうが、節税につながってお得なんじゃない?
星野:品目によるけど、資産の価値が上がることもあるし、それによって売却益を得られるケースもあり得るから、減価償却ができるかできないかという点で、どっちがお得とかは一概には言えないね。
一平:時の経過に応じて価値が減るかどうかのジャッジとか、法定耐用年数は、誰が決めてるの?
星野:……知らないオトナが。
一平:なんだそれ! もしかしたら僕たちの知らないところで、耐用年数をサイコロで決めてるかもしれないんだなー。
星野:6年までしか決められないじゃん。
一平:正二十面体のサイコロとかかな?(真剣)
――先日、スニーカー好きのお笑い芸人さんが、購入したスニーカーを番組で紹介し、プレミアがついているとお話しされていたのですが、この場合のスニーカーは減価償却できないのでしょうか?
星野:うーん。国税庁の耐用年数表に「靴」という項目の記載がないので、靴はそもそも減価償却資産の対象ではないですね。
一平:耐用年数表っていう一覧があるんだね。買ったものが減価償却できるかできないかの参考になりそう。
星野:ビジネスに関係があるなら、スニーカーの場合は、固定資産のその他に入れて処理するかな。耐用年数表に記載されているかわからないものや、判断に迷うものは、税務署や税理士に確認してみるのがいいと思います。
――一見、複雑そうに思える減価償却ですが、おふたりの解説のように、長期間にわたって使用する固定資産について、その年の利益を生み出すために使われた分だけ、費用として分割計上していくと考えればわかりやすいですね。
後編では引き続き、Gパンパンダのおふたりに(答えるのは、当然星野さんだけど)、中古品やセット商品を減価償却する場合のポイントについて、具体例をまじえつつ解説してもらいます!
そして、いよいよお待ちかねの税理士ジョークも飛び出すかもしれません……乞うご期待!
Photo:沼田学