令和元年(2019年)の年末調整の変更点について【人事給与担当者は必見!】

年末調整の時期が近づいてきました。会社員やアルバイトなど、多くの給与所得者の方にとっては、年末時点での各種の状況を勤務先へ申告することで、給与から1年間源泉徴収された所得税の額が調整されることになります。
手続きに対応する企業の人事給与担当としては、年間の一大イベントでもある年末調整業務を間違わず円滑にすすめるため、制度の変更点を確認しておきたいところです。
今回は令和元年(2019年)の年末調整における変更点について解説します。
なお、年末調整においては、2018年にその制度が大きく変更になり、配偶者だけでなく、控除を受ける本人にも要件が増えたり、各種申告書等の用紙(様式)が変更になっています。
主な変更箇所や改正の注意点は、こちらの記事「平成30年の年末調整での変更点【人事給与担当者は必見!】」をご覧ください。
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目次
- POINT
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- 各種様式での元号の変更がある。平成表記の書類は、修正不要
- 住宅ローン控除申告書の記載事項の見直しがされている
- 2020年分の扶養控除等(異動)申告書の変更は、大きく2つ
各種様式での元号の変更
2019年5月1日、皇位継承が行われたことにより元号が「令和」に改められました。この改元に伴い、年末調整の手続きで使われる様式に表記される元号が一部変わります。国税庁や総務省が公表する控除申告書や源泉徴収票・給与支払報告書の様式において、2019年および2020年以降を和暦で表す際の元号が、基本的に「令和」と改められています。
【例:配偶者控除等申告書】
国税庁 [手続名]給与所得者の配偶者控除等の申告より
【例:給与所得の源泉徴収票】
国税庁 [手続名]給与所得の源泉徴収票(同合計表)より
ただし、例外もあります。扶養控除等(異動)申告書では、2019年5月1日以降を表す和暦の元号は「平成」と表記され、西暦年が併記されています。
扶養控除等(異動)申告書は、その年最初の給与を受ける前までに提出する書類で
あるためです。つまり、大多数の人が2019年の扶養控除等(異動)申告書を提出していた1月~4月まで元号は平成でしたので、扶養控除等(異動)申告書は年末調整の際も「平成」表記のままで使うのだと考えられます。
【平成31年(2019年)分 扶養控除等(異動)申告書】
国税庁 [手続名]給与所得者の扶養控除等の(異動)申告より
また、(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書も大多数で「平成31年分」となっていますが、これは改元前に税務署から提出者に送付された申告書用紙が使われるからです。
なお、「平成31年(2019年)分」「平成31年分」と表記されている申告書について、それらの箇所を訂正する必要はありません。
住宅ローン控除申告書の記載事項の見直し
年末調整において住宅ローン控除を受ける人は、(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書を勤務先に提出します。
ただし、平成31年(2019年)4月1日以後に提出される申告書において、住宅の取得をした年月日をはじめとする下記の項目については、提出者による記載を求められなくなりました。
<対象項目>
- 住宅の取得年月日・居住開始年月日
- 取得対価・費用の額
- 床面積
- (特定増改築等住宅借入金等特別控除を受けている場合)
2 %の控除率の対象となる工事費用の額
令和元年(2019年)分以降の年末調整において、従業員から提出を受けた申告書にこれらの記載がない場合、申告書と一体になっている税務署発行の控除証明書に記載された該当項目の内容を企業側の人事給与担当者は確認することになります。
翌年・令和2年(2020年)分の扶養控除等(異動)申告書の変更
2019年分の年末調整の際に、翌年、令和2年(2020年)分の扶養控除等(異動)申告書もあわせて従業員から提出を受けている企業では、令和2年分の扶養控除等(異動)申告書での変更点も気になるところです。
令和2年分の扶養控除等(異動)申告書では元号の表記が改められた以外に、大きく2つの変更点があります。
【令和2年分 扶養控除等(異動)申告書】
国税庁 [手続名]給与所得者の扶養控除等の(異動)申告より
1.各種控除における所得の見積額の条件
扶養控除等(異動)申告書で申告する各種の控除について、条件とされている所得の見積額の条件が令和2年から以下のように変更となります。
- 源泉控除対象配偶者に関する控除:95万円以下(改正前:85万円以下)
- 扶養控除/寡婦(寡夫)控除:48万円以下(改正前:38万円以下)
- 勤労学生控除:75万円以下(改正前:65万円)
これらの変更に伴い、扶養控除等(異動)申告書に記載される説明・注意書き内の該当金額もそれぞれ変更されます。
具体的に見ていきましょう。
【例:源泉控除対象配偶者や同一生計配偶者の所得の見積額に関する注記】
2.単身児童扶養者の記載事項追加
令和2年分以降の扶養控除等(異動)申告書から、住民税に関する事項として「単身児童扶養者」欄が追加されます。
申告書の提出者が単身児童扶養者*に該当する場合には、児童扶養手当の証書番号や同一生計内すべての児童の氏名・所得見積額を記載します。
* 単身児童扶養者:
児童扶養手当を受けている未婚のひとり親で、対象児童の総所得金額等が48万円以下の人
【住民税に関する事項に加わった「単身児童扶養者」欄】
【単身児童扶養者の記載要領】
国税庁 令和元年分 年末調整のしかた より
まとめ
令和元年(2019年)分の年末調整の変更点は、いかがでしょうか?
大きな変更があった平成30年と比べると、業務への影響は小さいと思われるかもしれません。ただ、手続きに使用する様式の変更はありますので、最新版の「弥生給与」などの給与計算ソフトを活用したり、国税庁ホームページの記載例などを参考にしたりしつつ、チャレンジしてみてください。