確定申告の控除は税金のハイパーボーナス! Gパンパンダ(超インテリ芸人)と漏れなく確認しておこう!

税金に関しては「控除」と呼ばれる仕組みがあります。控除を受けると税金が安くなるという、うれしい制度である「控除」は、個人事業主やフリーランスならぜひとも知っておきたいポイントです。今回は、公認会計士兼税理士の星野さんと、MENSA会員の一平さんによる超インテリお笑いコンビ・Gパンパンダのお2人と一緒に、所得税に関する控除のポイントを押さえましょう!
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目次
生きているだけで節税に!?基礎控除はハイパーボーナス!
――この連載は、個人事業主になろうと考えている人が、個人事業主としてやっていく際に必要な情報をお伝えしていくことがコンセプトです!これまで、個人事業主になる前にやっておくべきことや、税金、税理士の選び方などを星野さんにお話しいただきました。今回は「控除」がテーマです。
星野:そもそも、控除とはどういうものなのかについて説明していきましょうか。まず、所得税というのは儲けの額、つまり所得に応じて税額が決まるものです。所得が大きければ大きいほど税率を上げ、所得が小さい人は税率を下げて、なるべく税負担が平等になるように……という考え方に基づいた仕組みになっています。
ただ、実際の人間の生活は、例えば家族のことや病気のことなどなど、それぞれ所得には現れない、プライベートの事情がありますよね。そういった個人的な事情を税金に反映しようという意味で、「控除」という制度があるんです。
一平:控除を増やすと節税につながるんだよね。
星野:そうだね。そしてすべての人が、必ず所得額から引くことのできる所得控除が「基礎控除」です。所得税計算をする際の基礎控除の額は、一律38万円です。
一平:いや~。誰でも無条件で38万円分は確実に節税できるなんて、ありがとうございます!
星野:さらに、日本の所得税制度では、大きく分けると「所得控除」と「税額控除」の2種類があります。
所得控除は、ある要件に当てはまった人が、一定金額だけ所得から差し引くことができるもの。
税額控除は、所得に税率をかけて税金額を計算した後で、さらにそこから、ある要件に当てはまった人が所得税額から差し引くことができるというもの。それぞれ控除するタイミングが異なり、次のような例があります。
・所得控除(所得から差し引ける)
基礎控除(38万円)、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、勤労学生控除、寡夫・寡婦控除、障がい者控除、社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、医療費控除、寄附金控除、雑損控除。
・税額控除(税額から差し引ける)
住宅ローン控除、配当控除、政党等寄附金特別控除など。
――ちなみに一平さんは、控除に対してはどんな印象を持っていますか?
一平:これはもう「ラッキー!」ですね。ハイパーボーナスタイムです。控除はあればあるほどいい!
星野:そうだねえ。あればあるほどいい。
一平:国が、ちゃんとひとりひとりを人間として扱ってくれている、最高のシステムではないでしょうか!?条件にさえ当てはまれば、何もしなくても勝手に税金が少なくなる。こういうシステムがあるのは、とてもいい国だ~。
――一平さんの顔がニコニコとしていて、うれしそうですね(笑)。さて、どうやら基礎控除が、2020年分から変わるらしいと聞いたのですが……。
一平:そうなの!?知らないよ!それ、誰かちゃんと大声で言ってる?
星野:税務署が告知してはいるよ。まだ少し先の話だから、そこまで大声ではないかもしれないけど(笑)。
一平:僕の大事な基礎控除、いったいどうなっちゃうの!? 生きているだけで、38万円も所得から引いてもらえるありがたいものなんだから。
星野:基礎控除はとてもありがたいものだと、一平くんも認識していますが……。2020年からは、その基礎控除額が38万円から48万円に引き上げになります!
一平:……ウェーイ!さらにハイパーボーナスだー!!でも、なんでなんで???
星野:レベル感を設けよう、ということになったんです。全員が基礎控除額48万円ではありません。年間の所得が2,400万円以下の人は基礎控除額48万円なんです。
一平:ええ?基礎控除が、平等じゃなくなっちゃうってこと?
星野:2,400万円超2,450万円以下の人は、基礎控除額32万円!2,450万円超2,500万円以下の人は、基礎控除額16万円!
合計所得金額 2,400万円以下 |
合計所得金額 2,400万円超 2,450万円以下 |
合計所得金額 2,450万円超 2,500万円以下 |
合計所得金額 2,500万円超 |
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2019年分まで | 一律38万円 | |||
2020年~ | 48万円 | 32万円 | 16万円 | 0円 |
一平:どうして、たった50万円ずつ刻むんですか?(笑)
星野:50万円で刻むことが大切なわけではなく、基礎控除を所得に応じて逓減(ていげん)しているものにする、という趣旨だと考えられます。そして合計所得金額が2,500万円を超えた人は、基礎控除額0円になります。
一平:2,500万円稼ぐより、2,499万円稼ぐ人のほうがお得だな~。
星野:しっかり聞いていましたか?基礎控除額が0円になるのは、所得が2,500万円”超”の場合ですから、2,500万円でも2,499万円でも基礎控除額は同じですよ?
一平:げー!細かいなあ!
星野:2,500万1円と2,500万円で比較するなら意味は分かりますが。とにかく、これまでとは違い、所得の金額に応じて、基礎控除額にも差がつくようになるんです。
一平:な、る、ほ、どっ♪僕からしたら、得しかないけどね♪
星野:早く芸人として2,500万円”超”稼げるようにもなりたいですけどね!(笑)
社会保険料控除は、支払った全額が対象となるありがたい制度!
――個人事業主やフリーランスの方が、ぜひとも知っておいたほうがいい控除はありますか?
星野:まずは「社会保険料控除」でしょうか。個人事業主だと、国民健康保険料や国民年金を自分で支払っていて、「金額が高いなあ……」と苦しんでいる方も多いと思います。そこで、国民健康保険料や国民年金の支払った全額分について、社会保険料控除として、所得の控除が受けられます。
一平:ウェーイ!!!
星野:これもまた、個人事業主にとっては素晴らしい制度ですね。
一平:社会保険料控除って、個人事業主以外の人は使えない制度なの?
星野:会社員の方などにも同様の控除はありますが、会社負担分がない分、個人事業主は会社員よりも社会保険料を多く支払っているので、この社会保険料控除は、よりいっそう助かる制度だと思いますよ。
一平:確かに助かってるよ~。僕ももちろん活用してる制度です!
星野:逆にこれを知らないと、かなり損しちゃいますよね。
一平:「知らなかった!今まで申告してないよ!」という人は、もうゲームオーバー?
星野:過去5年以内の確定申告の分なら、更正の請求はできますよ。2014年分については、2019年12月31日まで申告することができます。申告し直せば、税金が返ってきます。
一平:5年分って、相当な金額になるんじゃない?これぞハイパーボーナス!知らなかった人や忘れていた人は、申告し直すほうがいいですよ!
星野:国民返金の控除証明書や、国民健康保険料の支払った金額がわかる資料があれば、大丈夫ですよ。
一平:それらの領収書とかをなくしちゃった場合は、どうしたらいい?
星野:区役所や年金事務所で所定の手続きを踏めば再発行してもらえるので、過去の分も諦めずに、社会保険料控除を受けましょう!
――例えば、民間の保険会社の個人年金もOKなんでしょうか?
星野:それは、生命保険料控除として控除の対象になりますね。
一平:民間のものでも大丈夫なんだ!それも調べてみたほうがいいね。
個人事業主ならではの控除「小規模企業共済等掛金控除」
――次に、個人事業主ならではの控除、つまり会社員だと受けられない控除について、お話をお願いします!
星野:個人事業主ならではの控除には、「小規模企業共済等掛金控除」が該当します。会社勤めの方だと、勤続年数に応じて退職金がありますよね。そのようなイメージで、個人事業主や中小企業の役員が、事業から引退した時のために独立行政法人中小企業基盤整備機構という、国が全額出資している機構にコツコツ拠出していくことができます。同様に、個人型年金に掛金を支払っていくという方法もあります。その拠出しているお金を控除できる制度が、小規模企業共済等掛金控除です。
一平:これも全然知らなかった!こういう話、本当に誰がどこで言ってるわけ?
星野:所得税の確定申告に関する手引きに書いてあるよ。もしかして、確定申告のときに読んでいないんですか?
一平:…………(押し黙る)。
星野:まあ、「小規模企業共済等掛金控除」という字面だけをパッと見て、「自分は”企業”に属してないから関係ない」と思っちゃう人もいるかもしれないね。
一平:今回の記事を読んで、この控除を知った人はラッキーだね!僕も10万円の所得を、特に使い道も考えずに貯金するより、共済金として積み立てていったりするほうが、控除に該当するからかなりお得な気がしてきたよ。
星野:「急に物入りになったときに備えて、手元に現金や貯金があるほうがいい」という人もいるから、個人のマネープランに応じて、うまくこの控除を利用してもらえるといいね。
災害や盗難被害は雑損控除の対象に
――では他に、意外に知られていない控除はありますか?
星野:所得控除は14種類あるんですが、「雑損控除」について話しておきましょうか。
一平:雑損控除?これも初耳だなあ。
星野:仕事ではなく、プライベート関連で災害などに遭って、家など生活に必要なものが損害を受けたときに、その損害と、それを直すためにかかったお金などが、雑損控除の対象になります。
一平:へえ~!知らなかった!
星野:盗難なども対象になりますよ。
一平:詐欺も?
星野:あ~。詐欺は自己責任の側面があるため、雑損控除の対象外になってしまいますから、気をつけないとですね。
一平:なんでだよ!盗難だって、家の鍵をうっかりかけ忘れてたとかのパターンもあるよ?
星野:そう責められても、僕個人は「本当にごめんなさい」としか言えないんですが(泣)。
一平:控除の対象にもならなくて、ひたすら損するだけだから、振り込め詐欺などには注意!!ってことだね。
星野:あと、雑損控除の対象は、あくまでプライベートなものに限ります。生活に必要なものですね。そのため、自宅のシロアリ被害や、豪雪地帯の雪害、除雪作業料なども対象になったりします。
一平:雪が降る地域の人は、家のメンテナンスにかなりお金がかかるケースもありそうだもんなあ。個人が抱えるプライベートの事情に配慮してくれる雑損控除も、我が国の心優しい一面ですね!
――これまで、特に経費に関しては「仕事に関係するものじゃないと絶対ダメ!」とめちゃくちゃ厳しく判定されるイメージでしたが、プライベートの損害を気遣ってくれる仕組みもあるのが意外でした。
星野:国の”ギャップ萌え”な部分ですね~。
一平:超ツンデレですよね~。日常の税金は”ツン”でガンガン取り立てておいて、ふとしたときに控除で”デレ”を見せてくる。くーっ!たまらない!!
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控除は併用OK!注意点を押さえてどんどん併用!
――国の優しさである控除について、さらに詳しく知りたいのですが、複数の控除を併用してもいいのでしょうか?また、併用のコツなどはありますか?
星野:もちろん併用はできますよ。自分に当てはまる控除は、どんどん受けてください。そうすることで、大きな節税効果が得られます。
一平:併用にコツなんかないでしょ!?とにかく全部の控除を受けまくるだけ!
星野:もう、そんな乱暴な言い方(笑)。例えば「ふるさと納税」だと、所得によって控除の限度額があるので、その点には留意しておくといいかもしれません。めちゃくちゃたくさんふるさと納税をしたからといって、その全額が控除の対象になるわけではないのでね。上限額を確認しておきましょう。
――ふるさと納税には、「ワンストップ特例制度」というものがあるそうですが?
一平:聞いたことあります!自分でふるさと納税の控除を申請しなくても、勝手に申請してもらえる、みたいなやつだったような……?
星野:ふるさと納税などで寄附金控除を受ける場合は、原則として確定申告が必要です。ただし、「会社員などで普段は、所得税の確定申告をする必要がない方」、かつ、「ふるさと納税の寄付先が5ヵ所までの方」は、確定申告をしなくても寄附金控除を受けられるというのが、ワンストップ特例制度というものです。
一平:おおー。便利な制度じゃん。
星野:とはいえ、個人事業主の方はもともと確定申告をする必要があるので、残念ながらこのワンストップ特例制度は使えません。ふるさと納税をしているなら、それもちゃんと寄附金控除の欄に書きましょうね。
一平:僕が使えないってことは、無意味な制度ってことだね。
星野:そんなことはないですよ。誤解を生む言い方はやめましょうね(笑)。
一平:とにかく、知らない控除は自分にまったく関係がないと思っちゃってたから、そこをちょっと改めていきたいな。
星野:ベーシックですが、併用できる控除の例としては、扶養控除、配偶者特別控除、生命保険、地震保険、さっき話題に出た社会保険料控除なども忘れちゃダメですね。
一平:いいこと思いついた!自分が持っていない控除を持っている相手を探し、条件が合う人同士で結婚して、たくさんの控除を夫婦で受けまくるのもいいんじゃない?新しい結婚の形・控除婚!
星野:そろそろ取材に疲れてきたからって、とんでもないアイデアを出すんじゃないよ!(汗)。
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青色申告と白色申告で控除に違いが。青色事業専従者給与って?
――では最後に、青色申告と白色申告で受けられる控除に違いはあるのか教えてください!
星野:青色申告の人は「青色申告特別控除」が有名ですけど、それ以外にもあるんです。例えば、家族に従業員として働いてもらうときに、その家族に支払っている給料は、一般的な給料とは異なり、「家庭の中で回っているお金」というイメージですよね。そのお金をどのくらい経費にできるか……という点に違いがあります。白色申告の場合、「専従者控除」という控除がありますが、事業者の配偶者であれば86万円、配偶者でなければ専従者一人につき50万円という上限が設けられています。
青色申告のほうが、ざっくり言うとチェックやルールが厳しいです。そのかわり、白色申告のような上限の設定はなく、しっかり事前に届出書を出して、その通りに給与の支払いを行っていれば、労働の対価として相当であると認められる範囲で控除を受けることができます。この制度が、「青色事業専従者給与」といいます。
一平:家族に仕事を手伝ってもらう個人事業主の人は、この制度を使うことを考えたほうがいいんだね。
星野:あくまで対象は「事業専従者」なので、従業員として働いてくれる家族が、他に本業などがあるとNGだよ。また、専業主夫・主婦などの場合は、配偶者特別控除のほうが当てはまるので、それも気をつけてくださいね。
一平:僕が将来結婚して、普段SNSで発信している「謎解き」のビジネスを奥さんに手伝ってもらうときには、青色事業専従者給与の制度を使いますよ!奥さんにイラストを描いてもらったり、SNSを更新してもらったりしようっと。
星野:……そのくらいの作業、控除を使わず自分でやれよ!
――納税者のプライベートな事情に配慮し、税負担を軽くしてくれる、ありがたい「控除」。今回、いろいろな種類の控除があるとわかりましたが、個人事業主・フリーランスの方が自分で申告しなければ適用されない控除もあります。せっかくの控除を逃してしまわないよう、しっかりチェックしておきましょう!
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Photo:沼田学