まだ間に合う!事業者の軽減税率対策。超インテリ芸人・Gパンパンダに聞こう!

2019年10月から、消費税率の10%への引き上げと同時に、軽減税率制度がスタートします。軽減税率制度は、国民の生活に配慮した政策ということですが、そもそもいったいどんな制度なのでしょうか?個人事業主の影響はどのようなものでしょうか?公認会計士兼税理士の星野さんと、MENSA会員の一平さんによる超インテリお笑いコンビ・Gパンパンダのお2人に、お話を伺いました!
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目次
軽減税率8%の対象は「飲食料品」と「新聞」の2つだけ
――2019年10月から、いよいよ消費税率が10%に上がり、軽減税率制度が導入されますね。個人事業主としても、一消費者としても、いろいろな影響が気になります。公認会計士&税理士芸人の星野さん、押さえておくべきポイントについて教えてください!軽減税率について、わからないことだらけです……!
星野:あらかじめ知っておくと、安心ですからね。今回も頑張ります!
一平:おいおーい!僕も全然詳しくはないですけど、一応ニュースとかはチェックしてますよ。
――さすがですね、一平さん!ではまず、消費税増税の感想を教えていただけますか?
一平:一消費者として……信じられないことになってしまいました。国民全体が一律で取られるお金が増えるという、恐ろしい話です。「日本は貧富の差がどんどん開いている」という記事などを見ることも増えたので、もっと『貧』に対して優しい国であってほしいなと思います。税理士さんとしてはどうですか?
星野:消費税はある種公平という考え方もあります。所得税は儲けに応じて税率も上がるわけですが、それは稼いでいる人からすると「なんで稼げば稼ぐほど、税金をたくさん取られなきゃいけないんだ!頑張って稼いでいるのに!」と不満に思うわけですよ。そういう意味で消費税は、公平・平等でもあるかなと。
一平:税理士だから税金側の立場に立ちやがって!とにかく、消費税は公平じゃない!!
――冒頭からヒートアップしていますね(笑)。
星野:僕もよく、税理士の仕事内容を知らない方から「税金上げないでよ~」と言われますが、税理士は、税率を上げることを決める人ではありません。この記事を読んでいる方は、一平くんのように勘違いして責めないでいただきたいものです。
一平:税理士は僕らと同じで、あくまで国のルールに従う人?
星野:そうです。ルールを作っている側じゃなく、僕たちもプレーヤー側です。
一平:それなら許してやるか。
――早速ですが、軽減税率の基本的な考え方について教えてください!
星野:2019年の10月1日から、消費税が10%に上がります。これを消費税の「標準税率」といいます。ただ、今の一平くんのように「そんな急に税率上げられても困るよ~」という方もいます。
一平:一部の人じゃなく、国民全員の意見だよ。僕が国民の代弁者です。
星野:確かに「国民の生活を考えると、急に税率を上げるのはかわいそうかな」という意見がありまして。「生活に必要なものは、税率8%のままにしましょう」となり、本当に一部のものの消費税だけ、従来の8%が適用され続けることになったんですね。これを「軽減税率」といいます。
――8%の軽減税率は、どんなものが適用対象になるんですか?
星野:1つ目は「飲食料品の譲渡(販売)」。とはいえ例外もあって、たとえば標準税率10%対象の外食や、お酒は避け……。
一平:おっ!早速、税理士ジョーク!?「酒は、避ける」って!ウェーイ!!出ました~!!
星野:……ちょっとちょっと!急なテンションの上がり方!
――この取材では、税理士ジョークを見逃さずに拾っていかないといけないですからね。( ..)φメモメモ
星野:「拾っていかないといけない」って、どういう仕事なんですか(苦笑)。
一平:今回は出だし好調だな~、星野。
星野:これが好調とされてしまうのか……(ため息)。
一平:もっとクオリティの高いジョークを出していっても、いいんだよ?
星野:それは、おいおいということで……(笑)。とにかく、外食やお酒のように、軽減税率の対象外になる飲食料品もあることは知っておいてください。
そして2つ目の対象は「新聞の譲渡(販売)」です。ただしこれも、週に2回以上発刊されている新聞で、定期購読契約をしているものだけ8%というルールがあります。
一平:週刊の新聞とかは当てはまらないんだね。…あれ?!もしかして、僕の読んでいる電子版の新聞も対象外?
星野:電子版の新聞は、現物の「譲渡」ではないため、対象外ですね。軽減税率の対象になる取引は、飲食料品と新聞の譲渡(販売)の2つです。
一平:……2つだけ!?
星野:「もっと生活に必要なものはあるだろ!」という意見もあるんですけど、「これはOK」と決めると、「じゃあ、こっちはどうなるの?」となって、例外規定がどんどん増えていっちゃうんですよ。
たとえば、家電も8%と決めてしまうと「これは家電に入る?入らない?」と、まぎらわしいものに対する論点が生まれて混乱してしまうので、現状は「飲食料品と新聞の2つだけ8%」と国は定めていますね。
一平:2つ……これは少ないぞ……。「『生活に必要なもの』とは、いったい何ですか?」と国に問いたいね。これ、誰が決めたんだ!?
星野:……おじさま、おばさまたちが。
一平:特定できない人たちか(苦笑)。じゃあ、お菓子とかはどうなの?
星野:お菓子は飲食料品なので、8%のままだね。
一平:ええ~?お菓子はセーフなんだ。漫画は?
星野:漫画単体なら10%ですよ。
一平:お菓子と漫画で、「生活に必要かどうか」って扱いが違うのかよ~。なんじゃそりゃ!
星野:そうなんですよね、その趣旨で考えると「お菓子は、おかしい!」という意見も……。
一平:あっ!
――おっ!
カメラマン:はっ!
編集担当:わっ!
星野:お菓子が軽減税率の対象なのは、おかしいと考える人もいますよね(ニヤニヤ)。
一平:消費税だけじゃなく、星野のお笑い率も軽減されてるぞ……。
――お笑い軽減税率は困るので、10%に引き上げてください。
星野:そうですね……このままだと税理士芸人じゃなく、ダジャレ男として覚えられてしまいます(汗)。えー、話を戻しましょう。
軽減税率そのものが、増税における例外だと考えておくほうがいいかもしれません。
一平:「国の恩情」ってことなんだね。
軽減税率導入後の請求書や領収書には、8%と10%を併記
――軽減税率が導入されることで、個人事業主には具体的にどのような影響が考えられますか?たとえば芸人である一平さんや、ライターである私など、飲食料品や新聞などを販売しない業種の個人事業主にとっては、軽減税率は本当に自分に関係があるのかな?と考えてしまうのですが……。
一平:僕もいまひとつ実感がわかないなあ……。単に「増税が嫌だなー」って思うだけで。
星野:確かに、飲食料品や新聞の販売を行っていない個人事業主ならば、売上については一律10%の消費税率ということで、計算ミスなどの心配は少ないと思います。
あとは主に消費税申告が必要な個人事業主の方に関わる話ですが、「区分記載請求書等保存方式」というのが始まります。今後の消費税申告には、この区分記載請求書が必要になるんです。もし軽減税率適用対象品目がある場合には、印をつけるなどして「これが軽減税率対象の商品です」とわかるようにします。
それから、税率毎に区分して合計した対価の額の合計(税込)もしっかり記載してください。これらが記載してある請求書を持っていてはじめて、消費税申告のときに仕入れ税額控除が行えるというルールになることを理解しておいていただければと思います。
一平:消費税申告をする必要がない個人事業主には、あんまり関係ないのかな?
星野:自分が消費税申告をする側じゃなくても、取引相手が消費税申告をする場合、その相手側から請求書類の発行を求められることはあると思います。その際に、区分記載請求書を書くことになるとも思うので、書き方のポイントをあらかじめ押さえておくといいですね。
――個人事業主の場合でも、たとえば飲食店をされている方など、業種によっては取引相手から領収書やレシートの発行を求められる場合もありますよね。その際に気をつけることはありますか?
星野:売上側の個人事業主の方は、消費税率を間違えて計算しないように気をつけることが重要です。取引相手に領収書やレシートを発行する際には、消費税を8%で計算したのか10%で計算したのか、それがわかるような形式で出してあげないといけません。なお、標準税率10%の品目のみを販売している方は、区分記載請求書ではなく、従来の書式の請求書でも対応可能です。
区分記載請求書等保存方式の請求書の記載例(※免税事業者、簡易課税事業者は除く)
【画像】
弥生:軽減税率チェックリスト・飲食店の方向けより
一平:領収書やレシートに記載しないといけない事項が増えるってことね。じゃあ、僕たちがお笑いの単独ライブを開催するときに、物販でごはんを売るときは面倒なんだな。
星野:あんまり芸人の物販でごはんを売る人はいないけどね(笑)。保健所の営業許可とかも取らなきゃだし。
2019年分の確定申告では、経費や請求書に税率8%と10%が混在する!?
――ところで、軽減税率スタートにともない、確定申告への影響についても気になります!
一平:僕も!僕も!ずっと考えていたんだけど、確定申告のやり方も変わるよね?1月~12月の分を申告するわけだけど、10月~12月の間は2通りの消費税率があるってこと?
星野:その通りです。たとえば、個人事業主の経費で自分が出費するものに関しては、取引先への差し入れで飲食料品を買った場合、8%の軽減税率の対象になるものがあるので、そのときは間違えず8%を適用するよう注意してください。
一平:10月以降に買った仕事用の飲食料品などについては、軽減税率の対象かどうか、いちいち意識しておかないとってことか……地獄……(崩れ落ちる)。
宛名と総額しか書かれていないシンプルな領収書をもらっちゃうと、内訳がわからなくなりそうでヤバいね。
星野:確定申告のときに困らないよう、その日のうちに簡単にでもメモしておけるといいかもね。
一平:うーん。わからなくなったら、全部10%で申告しておけばいいかな!
星野:いやいや。経費を多めの金額で申告すると、儲けが小さくなっちゃうからダメだよ。
一平:うわっ!いきなり危ないところだった!(苦笑)じゃあ、全部8%で申告しよう!
星野:経費の対象が全部8%のものって、あり得ないから怪しさ満点だけど(笑)。
一平:ひえ~!やっぱり、確定申告の経費側にもめちゃくちゃ影響があって大変じゃん……!
星野:10月以降は特に、意識的な帳簿付けを心がけておきたいところです。
一平:結局、個人事業主って……確定申告のことを毎日意識していなきゃいけないんだよな……(泣)。2019年から個人事業主になった人は、なおさら大変そうだね。
星野:通常の確定申告にも、まだ慣れてないもんね。スモビバ!さんの記事や、星野のnoteなどを読んで、ぜひ頑張って対応してください。
一平:軽減税率の影響を受けない人なんて、いないんだね。みんな大変……。
星野:そう。みんな大変なんだよ……。とくに、軽減税率が導入されて、一番注意しなければならないのは、やはり飲食料品や新聞を販売されている個人事業主や企業の方ですね。
一平:うわあっ……!かわいそう……。ヤバい、飲食料品や新聞を売る人はどうすればいいんだ?みんな絶対ミスるじゃん!
星野:飲食料品や新聞を販売されている個人事業主や会社の方の場合、消費税8%のものと10%のものが出てくるケースがあると思うので、注意する必要があります。たとえば自分が個人事業主で、お客さんに飲食料品と家電を売ったと考えましょう。
一平:個人事業主のわりに、扱う商品が幅広い店だな~。
星野:それは別にいいんだよ(笑)。この場合に、もし消費税率を間違えて計算すると、売上の金額も変わってしまいますよね。本当は10%のものを8%で計算すると、売上の額が小さくなる。そのまま売上の額を小さく申告する……つまり、申告額を偽ったことになってしまうので、過少申告加算税がかかる可能性もあるわけです。
一平:あらら。うっかりミスが脱税とみなされて、ペナルティにつながっちゃうのか。売上側の人は、どういう対策を取ればいいの?
星野:一番メジャーだと思われるのは、登録する商品に応じて「この品物は8%、その品物は10%」と判断してくれるシステムをレジに入れることかな。そうすればお会計のときに、正しい税率が適用された売上の額が出せるようになる。そういうPOSシステムやレジを導入しましょう、という流れがあるわけです。
一平:うええっ!みんなレジを新しく買ったり、アップデートしたりしなきゃいけないんだ!?余計な出費~~~!
星野:軽減税率対応のレジを導入する人は、国からの補助金があるよ。レジ1台あたり20万円まで。いろいろな審査や条件などがありますが。
一平:補助金のこと、知らないと大損しちゃうね。みなさん、レジの補助金、ちゃんともらってくださいね~。
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――増税や軽減税率の導入に関しては、税理士さんも忙しくなりそうですか?
星野:僕たちもみなさんと同じで、新しい会計ソフトに関しては勉強する必要がありますね。あとは、「これは消費税率8%?10%?」という論点が、今の段階でもすでにいろいろあるので、実際の確定申告のタイミングになってみて、判断が難しいものが出てくることも予想されます。
一平:僕も早めに会計ソフトに慣れておかなきゃ。慣れさえすれば、完璧に処理できるようになるはず!普段の帳簿付けに使っている会計ソフトは、軽減税率に対応するバージョンへのアップデートが必要になるかもだから、ちゃんと確認しておいたほうがいいね。
星野:そうだね。一平くんは会計ソフトが命綱だから(笑)。
一平:会計ソフトって本当にすごいんだよ?
星野:……知ってるよ!税理士なめんな!!
――会計ソフトがすごいことはわかっています(笑)以前の記事でも熱く語っていただいてますから。
星野:会計ソフトを操作してみて、「これはどっちだろう?」と悩む仕訳も出てくるだろうけどね。
一平:税理士と契約していない個人事業主の場合、自分ひとりの判断では、軽減税率の対象になるかどうかどうしてもわからないものがあったら、どうすればいいの?
星野:国税庁が、「消費税軽減税率電話相談コーナー」を設けているので、そちらに電話で問い合わせるか、所轄の税務署に相談するといいでしょう。ですが、ただでさえ確定申告の時期の税務署はめちゃくちゃ混むから、軽減税率導入後の混み具合は予想できないね。心配な人は、確定申告の時期を避けて、早めに相談に行きましょう。
一平:やっぱり面倒だ~。おい、税理士さん。増税や軽減税率なんかやめて、みんなの税金を安くしてくれよ~!
星野:ここまでたくさん話してきたのに、結局ふりだしに戻ってる……!一番身近な相方の一平くんに、軽減税率について、何も伝わっていないということだけはないように願います(苦笑)。
――業種にかかわらず、増税と軽減税率は、どんな人にも大きな影響があることがわかりました。一平さんに、軽減税率に関する理解をさらに深めてもらうため、次回は星野さんから楽しいクイズ形式で説明していただきます。正解数によってご褒美があるらしいので、頑張ってください!
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Photo:沼田学