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嫌な人と仕事したって楽しくない!「ひとり社長」で食べていく方法【経営コンサルタント・一圓克彦氏インタビュー】

20代の頃から、飲食店やIT系、製造業や小売業など、大小さまざまな企業経営に携わった経験を経て、最終的に「ひとり社長」となった顧客リピート総合研究所株式会社 代表取締役・一圓克彦(いちえん・かつひこ)さん。組織のしがらみに縛られず、自分の責任で、自分の思いどおりに、自分の会社を経営する「ひとり社長」というスタイルが注目を集めています。

そんな一圓さんに、ひとり社長でいることのメリット、「ひとり」だけどひとりで抱え込まない仕事術から、ひとり社長のスケジュール管理法、そして気になるお金の話まで、大いに語っていただきました。

ひとり社長の最大のメリットは、余計な固定費がかからないこと

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――実際ひとり社長になられてみて、どんなよいことがありましたか?

一圓さん:余計なコストがかからないということです。まずは、事務所の家賃などの固定費。

僕は今のひとり社長のスタイルでやる前に、システム開発とデザインの会社を立ち上げたことがあるんです。そのときは事務所を借りて、照明や家具にもこだわって、内装もオシャレなインテリアにしました。でも、敷金・礼金を入れて、まず最初に500万円が飛び、毎月のオフィスの家賃が20万円超。しかも、売上ゼロという状態が続きました。

そうすると支払いが迫ってくるので、やりたくない仕事、お金のためにやる仕事がメインになってしまうんです。でも、即金性の高いビジネスは、将来の発展が見込めない単純労働が多くて。目先の金作りのために2年間くらい棒に振ったことがありました。

そういった失敗を踏まえて、現在は事務所などの固定費は極力かけないようにしています。

――では現在、事務所はどうなさっているのですか?

一圓さん:不動産賃貸契約ではなく、東京・大阪・札幌の中心部にレンタルオフィスを借りています。今は3ヵ所の支社があって、利用料は3ヶ所合計で毎月15万円程度。事務所にはほとんど物も置かず、1ヵ月前に申請すればすぐに解約できるので、いつでも夜逃げができます(笑)。

またひとり社長のメリットは、人を雇わないために人件費がかからない点です。社員がいると毎月給料を支払わなければならず、実はこれが相当なプレッシャーです。ひとり社長なら仮にその月の売上が足りなくても、自分の給料を我慢すればなんとかなりますからね。

――ご自分のお給料はどのように決めていますか?

一圓さん:役員報酬は1年に1回、今年の利益、来年の見通しをもとに税理士さんと相談して決めています。ただ、一般的な僕と同い年(44歳)のサラリーマンの方の年収よりも低く設定しています。昔、年収1億円だとはしゃいでいた時期もありましたけど。年収が上がっても社会保険料と所得税が上がるだけで、いいことはなにもないことがわかっているので。

それから給料をたくさん取ってしまうと、給与には消費税がかからないので、控除できる消費税額が減るというデメリットもあります(笑)。

また、ひとり社長なので、書籍代を新聞図書費で処理するなど、ある程度のモノが経費として認められるので、個人の財布から出て行くお金も少なくて済むのかもしれません。

法人化する大きな理由とは?

――コンサルティング業を始めた当初から、事業は順調だったのですか?

一圓さん:コンサルティング契約を取るために自分で経営セミナーを開催しても、最初のうちは契約はゼロでした。

でもその後、商工会議所の講演会など、人が集まるところに呼ばれて行けばいいと気づきまして。どうすれば講演会に講師として呼んでもらえるのかを研究していたら、1年半後くらいから徐々に呼ばれるようになり、2~3年目には全国から500本くらいの講演会のオファーが来て、一番多いときで年間267本も登壇させてもらいました。

――講演会に呼ばれるようになってから契約も増えたのですね。一圓さんは個人事業主でなく、会社として法人化されていますね。その理由とは?

一圓さん:僕も最初は個人事業主でコンサルタントになるつもりでした。でも、講演会数が200回を超えて、売上が1,000万円を超えるようになりました。個人事業主のままだと消費税の課税事業者になるのですが、法人化すれば、法人としての最初の2年間は消費税が免除になるという理由で、法人にしました。

――そして、2社目の「LectLab」という会社は、最初から株式会社にされていますね。それはなぜでしょうか?

一圓さん:2回目の結婚相手が社会保険労務士で、ファイナンシャルプランナーなんです。なので、年金や資産運用にうるさくて(笑)。彼女から、事業を起こすなら最初から法人化して厚生年金に加入するのが鉄則と言われました。個人型確定拠出年金(iDeCo)も法人にしたら掛金が上限6万円になるし、小規模企業共済も併用しています。

最近、老後の資金が2,000万円必要ということが話題になっていますが、あれはあくまでも厚生年金利用者の話。国民年金だと5,000万円くらい必要とも言われています。そういった老後へのリスクヘッジも、法人にする根拠のひとつです。

税務署をなめたら痛い目に遭う!?

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――では、ひとり社長が気をつけなければならないことは?

一圓さん:税金と社会保険ですね。特にひとりで会社をやっていると、会社のお金=自分のお金のような感覚で、飲み代を経費で落としまくっている人もいます。でも、決算が終わり、法人税を払い終わったと思ったら、今度は消費税も納めなくてはなりません。そのとき手もとに資金がないと困りますから。

それから、消費税の課税期間は原則1年なんですけど、個人の場合は前年、法人の場合は前事業年度の消費税の年税額が48万円を超えると、中間申告が必要なんです。消費税額の一部を前納する制度ですね。その支払いタイミングが毎月の社会保険費と相まって、会社の資金が回らなくなってしまっている人もまわりでよく見かけます。

あとは税金の徴収です。僕も一回、税務署から連絡が来て「売掛金を差し押さえる」と言われたことがあります。税務署や労働基準監督署など「署」のつくところは捜査権を持っているので、立ち入ってどの取引先にどの程度の売掛金があるかを調査する権利があるんです。それを調べて、取引先に案内を出すと言われました。

そんなことをされたら信用ガタ落ちですから。おかんにお金を借りてすぐ払いましたけど(笑)。別に怖い人が取り立てに来るわけじゃないしと、税金をなめている人いますが、あとで痛い目に遭うかもしれませんよ。税金の納付には要注意です(笑)。

好奇心旺盛な人がひとり社長に向いている

――それでは、ひとり社長に向いている人、向いていない人の違いはどこにあると思われますか?

一圓さん:起業家には、僕みたいにひとりでなんでもやってしまいたいタイプと、右腕を育ててうまく組織を作るタイプがいます。ひとり社長が向いているのは、前者だと思います。

あとはそもそも「起業に向いているタイプ」と「会社員に向いているタイプ」があると思います。その違いは、柔軟な思考ができるかどうか、フットワークが軽いかどうか。

例えば今なら、コンビニでキャッシュレス決済をやっているか否かが目安になるかもしれません。

つまり、「キャッシュレスなんてとんでもない! 現金が一番なんだ」と考えるのではなく、「なにこれ、どうやるの? ひとまずやってみよう!」と好奇心旺盛な人は起業家に向いているような気がします。

「そもそもこれってなんなんだろう?」と自分の頭で考えて、自分のやりたいようにやることに喜びを感じる人ですね。

――ただ世の中には、失敗するのが怖いなどの理由でなかなか起業に踏み切れないという人がいるかもしれません。

一圓さん:僕が居酒屋経営で大失敗をしたとき、このままお金が底をついたら、怖いおじさんにどこかに連れていかれたりして、とんでもないことになるのでは? と思っていました。でもそんなに怖い目にも遭いませんでしたし、今もこうやって命もあります。

起業をためらう人は、会社を辞めるとなったら、周囲から「あいつ、おかしい」と言われるのではないか? 万が一失敗したら、「ほら見たことか」と言われるのではないか? と他人の目が気になるのかもしれません。

でも僕は失敗することより、周囲の声にとらわれたり、失敗を恐れたりして、なにもしないことのほうがよっぽど悲しいことなのではないかと思います。

こんなにたくさんの失敗をしてきた僕だからこそ、失敗しても大丈夫だよ、やりたいことを全部やろうよと皆さんに伝えたいですね。

――そういった金銭的な意味でも、ひとり社長であれば比較的失敗しにくいのかもしれません。

一圓さん:たしかにひとり社長の方がコストもかからないし、リスクは低いですよね。

先に加盟金が2,000万円くらい必要なビジネスみたいなリスキーな選択や、お金の使いどころを間違いなければ、失敗する可能性は非常に低いと思います。

また社長ひとりなら労働法に守られているわけじゃないので、ビジネスがなかなか軌道に乗らなかったら、24時間働けばいいんですよ。いざとなったらコンビニでバイトしたっていいじゃないですか!

――最後に「ひとり社長」の魅力をお願いします!

一圓さん:僕は大小さまざまな会社の経営を経て、一番楽しく人生を送れる働き方はなんだろう? とずっと考え続けて来ました。そこで行き着いたのが、「ひとり社長」という働き方のスタイル。ぜひ多くの方に知っていただきたいですね。

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Photo:塙薫子

一圓克彦いちえん・かつひこ

いちえんかつひこ

一圓克彦事務所代表。顧客リピート総合研究所株式会社 代表取締役。
1975年大阪生まれ。製造業、福祉事業、IT事業、飲食業など、大小7業種の企業経営を自ら経験した「実践型」のリピーター・ファン創出コンサルタント。自らの実体験に基づいた「リピーター・ファン作り」に関する講演やセミナーは随所に笑いを取り入れたエンターテイメント型で、全国で反響を呼んでいる。
著書として『0円で8割をリピーターにする集客術』(あさ出版)、『ひとり社長の稼ぎ方・仕事のやり方』(明日香出版社)など。

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