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帳簿の「摘要」には何を書く?目的や記載すべき項目について税理士が解説

帳簿や振替伝票、出金伝票などの会計伝票を目にすると、どのような様式でも、基本的に「摘要(てきよう)」という欄が存在します。日付や勘定科目、金額などの欄と比較すると、摘要の欄はスペースが多く取ってあり、さまざまなことを記載する必要がありそうです。この摘要には何を記載すればよいのでしょうか。また、記載しないと何か不都合なことがあるのでしょうか。

今回は帳簿の摘要について解説します。

POINT
  • 摘要は、取引の内容をわかりやすくするために記載するメモのようなもの
  • 消費税の仕入税額控除では、帳簿記載要件として摘要への具体的な記入が求められる
  • 2019年10月1日以降の消費税改正後は、軽減税率を区分して記載することも求められる

勘定科目「摘要」とは?

帳簿の様式には、仕訳帳に総勘定元帳、現金出納帳などさまざまなものがありますが、基本的にどの帳簿でも「摘要欄」というものがあります。

「摘要」を辞書で引くと、「要点を抜書きすること」とあります。つまり、摘要欄は取引の内容を分かりやすくするための、メモ欄のようなものですね。

一方で、「勘定科目」は簿記上の言葉で、その取引金額の内容を端的に表す項目名です。勘定科目は、その内容によって資産・負債・純資産・収益・費用の5つのグループに分けられ、一定期間の儲けを見る損益計算書、一定時点の財政状況を見る貸借対照表を構成するものです。

会計ソフトでの帳簿付けの場合、「勘定科目」と「摘要」は別の入力項目として用意されているのがほとんどです。しかし、もともとの手書きの帳簿では、摘要欄の中で勘定科目やその他の情報を記入するようになっていました。

【仕訳帳の摘要欄の記入例】

【仕訳帳の摘要欄の記入例】

それが、会計ソフトが普及し始めると、勘定科目と内容を記載する摘要とは別にするようになります。なぜなら、会計ソフトは一種の仕訳のデータベースであり、「売上」や「現金」などといった勘定科目を、データを集計するためのキーとして利用するからです。自由に文字を記載できる摘要に勘定科目を記載すると、データの集計が難しくなってしまうため、項目を別にする必要があったのです。

摘要欄を記入する目的

それでは、摘要欄にさまざまな情報を記入するのは何のためでしょうか。3つの目的を見てみましょう。

①後で帳簿を見たときに何に対していくら使ったかがわかるようにするため

まずは、自分の商売、お金の流れをはっきりわかるようにすることが挙げられます。例えば、プリンタが壊れて5万円のものに買い換えたとしましょう。現金で購入した場合には、以下のような仕訳になります。

(例)50,000円のプリンタ(消耗品)に現金50,000円を支払った場合

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
消耗品費 50,000 現金 50,000

しかし、もし帳簿の記録がこれだけだったらどうでしょうか。5万円の支出はそこそこな金額です。自分で支払をして自分で帳簿づけをしていれば、まだその内容を思い出せるでしょうが、他の人がつけたとしたら、それが何だったかを聞くか調べるかしなければなりません。摘要欄にどこで何に使ったのかを記載しておくことで、そのような無駄な時間を過ごさずにすみます。

なお、会計ソフトを使用する場合には、例えば弥生会計 プロフェッショナルのように、摘要にある特定のキーワードを基に、そのキーワードが存在する勘定科目の金額だけを集計する『摘要損益計算書』や『元帳摘要集計表』機能を利用したりすることもできます。例えば、売上や給与等諸経費の摘要にスタッフの名前を入れておくことで、スタッフ別の営業成績を集計したりすることができますね。

②税法を守るため

税法(税金の法律)では、帳簿に記載する事項がいくつか定められています。所得税では、青色申告者につき、所得の金額が正確に計算できるよう、取引のうち、総収入金額及び必要経費に関する事項について「整然と、かつ、明瞭に記録」しなければならないとしています。

法人税でも同様に、青色申告法人につき、その資産、負債及び資本に影響を及ぼす一切の取引につき、複式簿記の原則に従い、「整然と、かつ、明瞭に記録」しなければならないとしています。

帳簿というツールを使うことで、取引を整然と記録することができますが、明瞭に、つまり内容がはっきりとわかるようにするためには摘要を記載することが必須であるということですね。

また、消費税については後ほど触れますが、一定の記載事項がないと制度の適用が認められなかったりすることもあるので注意が必要です。

③税務調査をはじめとする外部チェック対応のため

これは、上記の自分のためと税法のためとにかかることでもあります。例えば自分で帳簿づけをしていて、そのチェックや決算を会計事務所に任せている場合や、税務調査で帳簿を提示する場合など、外部からのチェックを受けるために摘要欄を埋めておく必要があるでしょう。

帳簿をチェックする中で、摘要を見ても不明な点が多い場合などは、帳簿以外の書類を調べる必要が出てきますので、税務調査で提示を求められる資料が多くなったり、ずさんな経理と心証を悪くしたりする可能性も出てきます。

 

摘要欄に記入すべき項目とは?

摘要欄に記入すべき項目とは?

どこまで細かく摘要欄に書けばいい?

摘要欄にはどこまでのことを記載すればよいのでしょうか。所得税の帳簿の記載事項につき、規則ではどのように定められているのか、「所得税法施行規則 第58条」と大蔵省告示から抜粋し、売上と諸経費を例に見てみましょう。

・売上に関する記載事項
「取引の年月日、売上先その他の相手方、品名その他給付の内容、数量、単価及び金額並びに日々の売上の合計金額
ただし、保存している納品書控、請求書控等によりその内容を確認できる取引については、その相手方別に、日々の合計金額のみを一括記載することができる
また、小売りその他これに類するものを行なう者の現金売上については、日々の合計金額のみを一括記載することができる」

とても面倒に感じてしまいますが、基本的に納品書や請求書などの売上の内容に関する書類は発行しているはずですから、その場合は相手先別に合計金額を記載し、摘要には「○○商店へ売上」などと記載すればよいのです。

(例)1月5日、掛け取引先の○○商店へA商品2,000円を5個、合計10,000円を納品した。○○商店への納品書の控を保存している。

日付 借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額 摘要
1/5 売掛金 10,000 売上 10,000 ○○商店へA商品2,000円を5個売上

また、小売店や飲食店のように、不特定多数のお客様への売上がある業種の場合は、レジを締めた後の1日の合計額を金額欄に記載し、摘要には「本日分売上」などと記載すればよいのです。

(例)1月10日、飲食店のレジを締めたところ、1日の現金売上は100,000円だった

日付 借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額 摘要
1/10 現金 100,000 売上 100,000 本日分売上

なお、法人の場合も基本的には同様(「法人税法施行規則」第54条別表20参考)ですが、上記小売業等の売上に関して、日々の現金売上につきその総額のみを記載しようとする場合には、『売上に関する帳簿の記載事項の省略承認の申請』を提出して承認を受ける必要があります

・諸経費に関する記載事項
「消耗品費、地代家賃、接待交際費のように、それぞれ適宜な科目に区分して、それぞれその取引の年月日、事由、支払先及び金額
ただし、少額な費用については、その科目ごとに、日々の合計金額のみを一括記載することができる。」

諸経費については、取引毎に摘要へ支払先と事由を記載することが必要です。

(例)1月15日、△△マートで文房具500円を購入した

日付 借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額 摘要
1/15 消耗品費 500 現金 500 △△マート 文房具

または、少額な費用であるため1日の合計額として次のような記載でもいいでしょう。

日付 借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額 摘要
1/15 消耗品費 500 現金 500 本日分

もし摘要に相手先や内容を書かないと、どうなる?

帳簿の摘要に何も書いてなかったらどうでしょうか。例えば、消耗品費として70,000円の記載があり、摘要に何も書いていなければ、その支払いの事実や経費性について気になってしまいますよね。

ここで、その金額について領収書があれば、まだ内容や金額の正確性などは確認することができます。しかし、その領収書もなく相手先や内容もわからないということであれば、一般的に考えて経費として認められませんよね。

税務調査などで要らぬ手間をかけてしまわないよう、摘要に内容を記載して、領収書などもしっかり保存しておくようにしましょう。

ただし、誤解していただきたくないのは、領収書があれば経費で落ちる、ということではありません。必要経費は、その事業を遂行するために必要な経費であり、領収書はその支払いの事実を補足するものであることに注意してください。

消費税の仕入税額控除の要件

消費税の課税事業者で、いわゆる本則課税である場合には、売上などで預かった消費税から支払った消費税を差し引いて納税額を計算します。このとき、仕入れや諸経費について支払った消費税を差し引く「仕入税額控除」については帳簿記載要件というものがあります。
その帳簿に記載する事項とは、次の4つの事項が挙げられます。

①取引の相手方の氏名又は名称
②取引年月日
③取引内容
④取引金額

このうち、特に①の取引の相手方の氏名又は名称と、③の取引内容が摘要として記載する部分になるでしょう。

帳簿の記載を簡略化できる方法

さきほど所得税での記載事項を紹介しましたが、所得税では日々の合計で記帳ができるのに比べて、消費税ではより厳しいものとなっていますね。ただし、すべての内容を事細かく記載しなければならないというわけでもありません。

ここでは、摘要の記載を簡略化できる方法をいくつか紹介しましょう。

・ 1回の取引で2種類以上の商品を購入した場合
例えば、スーパーマーケットでボールペンとお茶を購入した場合、取引内容としてそれぞれの品目を記載することになりますが、経費に属するものであれば「文房具等」として記載してかまいません。

・ 月締めで継続的な取引をしている仕入先の記帳頻度
例えば、小売業の仕入先で継続的に取引があり、月締めで請求書を受領するような場合、取引日毎に記載する必要はなく、締め日に合計金額を記帳して「〇月分」といった記載をしてかまいません。

・ 取引先の略称を用いたい場合
帳簿記載要件にある「取引の相手方の氏名又は名称」とは、原則として個人事業主であればフルネーム、法人であれば「株式会社○○」のように商号を記載することになっています。

しかし、例えば個人の飲食店などでは屋号で営業が行われるのが一般的です。このようなときは、所在地や電話番号などで相手方が特定できるときは正式名称でなくてもかまいません。

また、特定の取引先が複数ある場合などは、正式名称と略称が併記された取引先名簿等を備え付けることで、略称やコード、記号番号などで相手方を記載することも可能です。

消費税改正後の記載事項

2019年10月1日から消費税率が引き上げられると同時に、軽減税率制度がスタートします。

収入については、これまでの記載方法に加え、標準税率10%なのか軽減税率8%なのかを区分して経理することが必要になります。

そして、仕入や諸経費に係る消費税の仕入税額控除については、当面の間(2019年10月1日~2024年9月30日)、これまでの「請求書等保存方式(前述の帳簿の記載をし、併せて請求書等を保存する方式)」に代えて「区分記載請求書等保存方式」によることとなります。

区分記載請求書等保存方式とは、標準税率と軽減税率を区分して記載する帳簿と、その区分を明らかにしてある区分記載請求書等とを併せて保存するものです。

区分記載請求書等保存方式の帳簿で、これまでの帳簿記載要件に加わるのは、取引内容につき軽減税率の対象である場合にはそれを区分して、軽減税率の対象であることを記載することです。

とはいえ、帳簿の1行1行に「軽減税率対象品目」などと記載するのは実務上かなりの手間となりますので、摘要に「※」などの記号を記載するとともに、帳簿の欄外に「※は軽減税率対象品目」と記載するなどの対応をとることができます。今後、摘要を活用する機会が増えそうです。

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よくある質問

Q 帳簿の「摘要」とは?

A 摘要欄(てきようらん)は取引の内容を分かりやすくするための、メモ欄のようなものです。詳しくはこちら

Q 摘要欄を記入する目的は?

A 主に①後で帳簿を見たときに何に対していくら使ったかがわかるようにするため②税法を守るため③税務調査をはじめとする外部チェック対応のため、の3つです。どれも重要なポイントのため、詳しくはこちらをご覧ください。

Q もし摘要に相手先や内容を書かないと、どうなる?

A 税務調査で手間がかかったり、消費税の仕入れ税額控除の要件を満たせなかったりする可能性があります。摘要欄に何を記載するかについてはこちらをご覧ください。

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