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社会保険の手続きが「ワンストップサービス」でもっと簡単になる!?【人事担当者必読】

2020年11月頃から「社会保険手続きのワンストップサービス化」が開始される予定です。従業員の入社や退社のときに必要となるのが社会保険関係の手続きですが、手続きによって、提出先もさまざまなため、抜け漏れが起こってしまうこともあるでしょう。今回は、オンライン化によってそんな担当者の悩みを解決してくれると期待されている「社会保険手続きのワンストップサービス化」について解説します。

お知らせ

2022年(令和4年)分の所得税の確定申告の申告期間は、2023年(令和5年)2月16日(木)~3月15日(水)です。最新版の確定申告の変更点は「2023年(2022年分)確定申告の変更点! 個人事業主と副業で注目すべきポイントとは?」を参考にしてみてください!

POINT
  • 社会保険手続きのワンストップサービス化とは、さまざまな提出先がある各種手続きを集約して、一度で済ませること
  • 社会保険手続きのワンストップサービス化により、手続きはオンライン化され、紙の書類は将来的に無くなっていく
  • ワンストップサービスの開始は2020年11月頃の予定

社会保険関係の手続は提出先がバラバラ!

社会保険関係でどのような手続きと提出先がどれくらいあるのかご存じですか? 例えば、従業員が入社や退社をしたときに行う手続きには、以下のようなものがあります。

従業員が入社したとき

1) 年金事務所や(健康保険組合に加入している場合)健康保険組合への、健康保険や厚生年金保険への資格取得届の提出
2) ハローワークへの、雇用保険の資格取得届の提出
3) 従業員が住んでいる自治体への、住民税の特別徴収(=給与天引き)の手続き

従業員が退社したとき

1) 年金事務所や(健康保険組合に加入している場合)健康保険組合への、健康保険や厚生年金保険への資格喪失届の提出
2) ハローワークへの、雇用保険の資格喪失届の提出や離職票の発行手続き
3) 従業員が住んでいる自治体への、住民税の特別徴収(=給与天引き)取りやめの手続き

これらの手続きは、見てのとおり届出書類の提出先がバラバラのため、それぞれ個別に手続きを取る必要があります。また入社してくる従業員の契約形態(正社員なのかパートタイマーなのかといったこと)によって取るべき手続きは変わってきますが、1人が入社してくると最大で上記のような3種類の手続きが必要になってきます。

健康保険・厚生年金保険に加入する人は基本的に雇用保険にも加入しなければなりませんが、加入のための書類は別々ですし、同じ情報を2つの加入書類に記載するなど、手間もかかります。

特に入退社の頻度が多い企業の担当者にとっては、どの従業員についてどの手続きを取ったのかということを管理しておく必要もあります。

例えば、従業員本人や扶養している家族について、保険証の手続きが遅くなっていたり、漏れていたりしたせいで、従業員から保険証を催促されてしまい頭を悩ませるといった経験をした担当者も多いのではないでしょうか。

社会保険手続きのワンストップサービス化によって、手続きがシンプルになる!

このような悩みや手間の多い入退社手続きを、できる限りシンプルにしようということで議論されているのが、社会保険・税手続のワンストップサービス化です。

一般的に、「ワンストップサービス」とは、一ヵ所で用事が済んでしまう、ここに行けばすべてが解決する……ということです。

「社会保険・税手続のワンストップサービス」というのは、これまでは提出先が分かれていた社会保険や税金(ここでは主に従業員個人の住民税)に関する届け出の入力を一ヵ所に集約することで、企業担当者の事務負担を軽減しようということです。

一ヵ所に集約するといっても、年金事務所やハローワークなどの機関を一つにまとめる総合的な機関を作ろうというわけではありません。企業の担当者が一つのソフトウェアに入力して、その情報の中から各手続きに必要な情報を抽出して手続きを行おうということです。

一つのソフトウェアに入力すれば、同じ情報をいろいろな機関に繰り返し提出するということもなくなります。このように便利なワンストップサービス化ですが、さきほどから「ソフトウェア」という言葉を使っているのでもうお気づきかと思いますが、社会保険・税手続のワンストップサービス化にとって欠かせないのが、「社会保険・税手続のオンライン化」です。

オンライン化というのは、従業員の入退社にかかる各種届出書を、紙ではなく、インターネットを通じて行うというものです。

今でも、従業員の入退社の際には、健康保険・厚生年金保険や雇用保険の資格取得届や資格喪失届を紙で作成している企業が数多くあります。作成した書類は、窓口に持参したり、郵送で各機関に送付したりすることで提出します。

オンライン化によって、入退社の都度、各機関の窓口で並んだり、処理を待ったりする必要もなくなります。毎度さまざまな機関に足を運んでいる企業担当者にとっては時間の節約につながりますし、細かい話ですが、郵送で提出している企業にとっては郵送代も節約できるようになります。

実際には、オンライン化はこうしたワンストップサービスが議論される前から、導入が進められていました。健康保険・厚生年金保険や雇用保険に関する手続きであれば「e-Gov」、住民税関係であれば「eLTAX」というオンラインシステムが稼働していて、それぞれの手続きはインターネットを通して行えるようになっています。

その意味では、ある程度オンライン化は先行して進んでいる状況です。しかし、上記の「e-Gov」と「eLTAX」自体が直接に情報連携しているわけではありません。民間のソフトウェアを使って、各システムに情報を流すことはできますが、結局手続きごとに、複数のオンラインシステムへの入力やデータ送信が必要となるため、ワンストップサービスとは言えない状況です。

マイナポータルによりワンストップサービス化が実現する

そこで、オンライン化とワンストップサービスをつなげるための施策として検討が進められているのが、マイナポータルを活用したデータ連携です。

マイナポータルというのは、写真付きの個人番号カード(個人番号の通知カードではありません)の交付を受けている個人が使えるポータルサイトです。個人番号カードを使ってマイナポータルにログインすることで、自分の世帯情報や、住民税の情報、社会保険の加入状況などを閲覧することができます。

このマイナポータルをつかって、オンライン化とワンストップサービスを実現することが構想されていますが、その流れはこうです。

①企業が従業員から各手続きに必要な情報を収集する

ここでの必要な情報というのは、氏名や住所、生年月日、個人番号(家族を扶養に入れる場合には、家族の個人番号)など、入社時に確認する情報であり、ワンストップサービスに伴って、新たな情報を従業員から収集しなければならないということはないと考えられます。

②企業は、専用ソフトウェアに各従業員の情報を入力する

専用ソフトウェアについては、これから開発が進んでいくものと思われます。この専用ソフトウェアには、さまざまな手続きに関する書類を作成するために、多くの情報を保管する必要があります。

③各従業員のマイナポータルを通じて、各機関に入退社の事実を通知する

専用ソフトウェアに企業担当者が情報を入力することで、各機関に対して、必要な届出を一括して送信してくれるようになります。これによって、これまでさまざまなシステムに個別に情報を入力していたプロセスが不要になると考えられます。

④日本年金機構やハローワーク、各市区町村が、健康保険・厚生年金保険や雇用保険、住民税などの各種手続きを行う

届出書を提出したあとは、各機関が手続きを行ってくれますので、その手続きの完了まで待つことになります。これまではe-GovやeLTAXといった各ソフトウェアにログインして、手続きの状況を別々に見にいったり、書類提出であれば各機関からの手続き完了の書面が郵送されてくるのを待ったりする必要があります。しかし、ワンストップ化によって、専用ソフトウェアを通して、税や社会保険などの手続きを横断して、一つの画面ですべての進捗状況が確認できるといったことも考えられます。

さらに、ワンストップサービス化の構想では、企業が積極的に書類を提出するのではなく、専用ソフトウェアに必要情報を入力して、あとは、各機関が情報を取りに行くという流れに代わるといった応用もありえます。

企業担当者としては、上記の流れでいうところの②に該当するところで、専用ソフトウェアに一度きり従業員情報を打ち込めば済むということで、まさにワンストップサービスということになります。これまで別々のオンラインソフトに打ち込んだり、別々の機関の窓口に書類を提出したりしていたのが、一つのソフトウェアに集約されるということです。

また、このサービスを使うためには、ソフトウェアへの入力やデータ転送が必要です。ワンストップサービスを実現するためには、その裏返しにオンライン化も必須ということです。

今は紙の届出書を提出している企業も、ワンストップサービス化の流れの中では、オンライン化も同時に行わなければならず、将来的には紙での届出書はほぼ出番がなくなるということになります。

オンライン化は、行政の現場でも業務効率化のために推進されている取り組みですので、企業担当者としては、「ITは苦手だから紙で……」といったことも、そのうち通用しなくなるかもしれません。

企業担当者として、オンライン化・ワンストップサービス化に向けての備えは?

企業担当者としては、来たるオンライン化・ワンストップサービス化の波に向けて、どのような準備をしておけばよいのでしょうか? もしすでに「e-Gov」や「eLTAX」といったオンラインによる申請を行っているのであれば、ワンストップサービス化の流れの中でも、それほど抵抗なく業務を進めることができるでしょう。

ワンストップサービス化によって専用のクラウドソフトの導入があったとしても、使用するソフトウェアが変わるだけです。ソフトウェアに入力して、データをオンラインと通して送信するという基本的な流れが変わらない以上、要領も同じです。

一方、現在は紙を中心に手続きをしている場合は、ワンストップサービス化の前提として、まずはオンライン化に慣れることが必要です。

オンライン化には、電子証明書の取得や、「e-Gov」や「eLTAX」といったソフトウェアの操作が必要となります。慣れない担当者にとっては、聞いただけでも耳が痛くなりそうな言葉ですが、業務の変革期には、このような初めての作業が付き物です。社内のワークフローの関係もあると思いますが、一つひとつ調べながら、オンライン化を進めてみてはいかがでしょうか。

ワンストップサービスの開始は2020年11月頃の予定ですが、しばらくは従来どおり紙での申請も受け付けてもらえるでしょう。

しかし、いずれはオンライン化を前提にワンストップサービスでの申請が基本となる時代もやってくる可能性があります。事前にオンラインの手続きに慣れておけば、ワンストップサービス化の波が来たときにも、きっと落ち着いて対応できるでしょう。

photo:Getty Images

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