経費のポイント払いはOK?超インテリお笑いコンビ「Gパンパンダ」に聞いてみよう!【連載】

「これって経費にしていいの?」「経費の支払いって、ポイントでもいいの?」……自分で経費計上の判断をしなくてはならない個人事業主の場合、迷うこともあるのではないでしょうか。
今回は「経費」の知識やルールについて、公認会計士兼税理士の星野さんと、MENSA会員の一平さんによる超インテリお笑いコンビ・Gパンパンダのお2人にお話を伺いました。
ロンドンハーツ(AbemaTV開局3周年記念)でも、芸人仲間の納税事情に鋭すぎる目つきで切り込み、大好評だった星野さん。今回の解説も、経費の奥深さにズバッと斬り込んでくれること間違いなしです!
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目次
クレジットカードの「ポイント」を使ったら「雑収入」で処理
――今回のテーマは、個人事業主・フリーランスの方々が頭を悩ませがちな「経費について知っておきたいこと」です。経費の判断基準については、以前インタビューさせていただいた『確定申告パーティーしちゃう?超インテリお笑いコンビ「Gパンパンダ」なら確定申告をどう乗り切る?』に詳しく載っていますので、そちらも参考にしていただきつつ、まずは経費の支払い方法に関して伺っていきたいと思います。
星野:現代社会では、支払い方法の選択肢もいろいろありますからね。
――普段の買い物で、キャッシュレス決済も増えて、クレジットカードを使っている方は多いですよね。クレジットカードで購入すると、後で買い物に使えるポイントがつくものがあります。ほかにもポイントカードのある家電量販店やコンビニエンスストア、ドラッグストアで買い物をするとお店のポイントがついたり。そのカードなどに貯まったポイントで、仕事に関する品物を買い、それを経費として計上するときに注意することはありますか?
星野:たとえばカードのポイントで、経費になる500円分の消耗品を購入しました、というケースで考えてみましょうか。複式簿記で、借方勘定科目は「消耗品費500円」になりますよね。これを現金で払っている場合は、貸方勘定科目に「現金500円」が来るんですけど、ポイントで払っているときは、通常の会計処理とはちょっと異なり、ポイントを使ったタイミングで「雑収入500円」を貸方に計上します。
(例)500円の消耗品に現金500円を支払った場合
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
消耗品費 | 500 | 現金 | 500 |
(例)500円の消耗品にポイント500円分を充当して支払った場合
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
消耗品費 | 500 | 雑収入 | 500 |
一平:ええー!?そうなんだ!僕も帳簿をつけてるけど、その方法は知らなかったな。
星野:500円という現金が、実際に自分の手元から出ていったわけではないからね。
一平:貸方に「事業主借」は使わないの?
星野:そこの違いは、「ポイントがどういう経緯で手元に残っているか」というところによるんですよ。カードのポイントって、そのカードで何か品物を買ったときに貯まるものだと思うんですが、ポイントが貯まる要因となった品物が仕事用のものなのか、プライベート用のものなのかで、処理が変わると考えられますね。
一平:めんどくせえ……。
――そうですね~、気分が萎えますね……。
星野:ちょっと!一平君!それに進行役のライターさんも萎えちゃダメでしょ!あなたがこの記事を放り出したら、誰にも何も伝わらないんですから(笑)。
――いや~……だって、あまり深く意識せずにカードにたまったポイントで品物を買うときもあるじゃないですか~?今月でポイント消えちゃうしとか~。
一平:いえ!これはルールにのっとれば大丈夫です!!カードのポイントは、経費にあたる品物では使わない!仕事用の品物はすべてポイント以外の方法で支払う!これで完璧だ!!!!!(興奮)
星野:えー、雑収入勘定で処理するのは、事業で使った品物の購入で貯まったポイントの使用に当てはまります。つまり、事業で使った品物で収入が生まれたということ。でもプライベート用のものを購入した場合は、事業主借を使って、「事業とは関係のないものですよ」というのがわかるようにするわけです。
とはいえ、この両者の振り分けをするのがめちゃくちゃ面倒だと思うので、一平くんのアイデア通り、「事業で使う品物は、カードのポイントでは買わない」というのがラクではありますね。
――個人事業主・フリーランスの方は、自分の中でを使う用途をしっかり決めておきたいところですね。
一平:ポイントをプライベートでの使用に限定するなら、いろいろな商品の購入に使えるよう、ポイントの提携先が多いカードを選んでおくのもいいね。
星野:もし事業用の品物をどうしてもポイントで買いたい場合は、ちょこちょこポイントを使うのではなく、一括で使いきるようにしたほうがいいですね。そうすると1つの仕訳で処理が済むので。
一平:フリーランスって、仕訳に縛られたつまんない人生なのか~。全然自由じゃないな~。
星野:仕訳って素晴らしいものなんだから、ナメんなよ(真顔)。
――事業で使う品物をポイントで買うなら、仕訳についても意識しておくと、確定申告の際に困らなくて済むということですね。
一平:ズバリ、それがポイント払いの……?
星野:(少し悩んで)……もしかして、ポイント払いの……大事なポイント?「ポイントのポイント」ってこと???
一平:やめてくれよー!税理士ジョーク!
星野:うわ~。こんなダジャレ言わせるなよ~~。
――さて、小粋な税理士ジョークも飛び出したところで……。
星野:僕が自発的に税理士ジョークを言ったと記事に書かれたら、イタいやつだと思われるんで、やめてください……。
一平:文字でスベるの、嫌だよな(笑)。
――文字でも熱量が伝わるよう、頑張ります(笑)。カードのポイントについては、付与されるたびに収入として処理しないといけないのでしょうか?
星野:これは諸説あるんですが、品物を買ったときのタイミングで、ポイントが与えられることは確かです。ただし、それは使ったときに初めて得をするものだとも思うんですよ。
一平:うん。それは確かにそうだね。
星野:持っていても使わなかったら得をしないので、付与のタイミングよりも使うタイミングにまとめて処理をしちゃうほうが、実態に合っているという考え方のほうが、今は有力かなと思います。
一平:じゃあ、ポイントで払った分を雑収入に計上すれば、もうそれだけでポイントの処理は終わり?
星野:そうそう。
一平:いちいち「ポイントをもらいました」という処理はしなくていいってことだね。
星野:付与されたタイミングでなく、使ったタイミングで処理をしていけば大丈夫。電子マネーやスマホ決済サービス等で新しいポイントの制度もできているので、そのときどきで法律が変わることがあるかもしれません。ご注意ください!
領収書がない経費の処理に!「出金伝票」との付き合い方
――次は、個人事業主・フリーランスの必需品という意見もある「出金伝票」とは、どういうものなのか教えていただけますか?
一平:出た!これ、嫌なんだよ~。いったい何なんだよ!
星野:いきなり一平くんが荒れていますが、一旦置いておいて(笑)。えー、個人事業主が経費を計上するときは、前提として領収書やレシートを保管しておくというのが原則です。ただ、そういうものがどうしてももらえないケースもありますよね。
一平:自動販売機でジュースを買ったり、電車やバスに乗ったりしたときとかね。
星野:それから、お葬式でお香典を渡したときに「領収書もらえますか?」なんてことも、常識的に言えません(笑)。そういったときに、「領収書やレシートはないけれど、こうやってお金を使いました」ということを示すため、出金伝票というものを書くことができます。ここには、日付や相手先、何の目的で、何にいくら使ったか……などをまとめます。こうすることによって経費に計上できるんです。
『大きな図ですぐわかる はじめての青色申告』監修:宮原裕一(税理士)より引用
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一平:領収書やレシートがないものでも経費にできるって、意外と知らない人もいるみたいだよね。
星野:ただ、何でもかんでも出金伝票に書けば経費にできる、というわけではありません。たとえば、架空の取引の内容を出金伝票に書いて、経費にしている人がいるかもしれないので、記載内容が怪しい出金伝票は、税務調査の際にしっかりチェックされると思っておきましょう。
一平:具体的な証拠がないわけだからね~
星野:まず、出金伝票を書く場合には、取引内容や勘定科目など、使用範囲をちゃんと決める。「○○の内容については、出金伝票にまとめると決めています」と、しっかり説明できるようにしておきましょう。
あと、結婚式のご祝儀などであれば、招待状を取っておいて、一応の証拠として出金伝票にプラスするなどの方法が一般的ですね。出金のときは意外と、領収書以外の証拠になるものが手元に残ったりもします。そういうものをなるべく取っておいて、税務調査のときに納得してもらえる材料をそろえておくべきだと思います。
一平:Excelにまとめるのはどう?必ず出金伝票を使わないといけないの?
星野:市販の出金伝票を使わなきゃいけないというルールではないよ。書いている内容がちゃんと合っていれば、Excelなどの一覧にまとめて、それを印刷して証拠として持っておくのも認められるから。
一平:お香典もExcelにまとめていい?
星野:いいんだけど、お香典でシートがびっしり埋まっちゃうのは、気分的にちょっと悲しいかな……。
――ちなみに、一平さんは、市販の出金伝票を使っていますか?
一平:ちょっとちょっと。こんな前時代的なもの、使うわけないですよ!テクノロジーが発達したこの現代社会で、誰が使ってるんですか?もう令和だよ?
星野:それを僕に言われても~。伝票は最終的に、情報を加工できない紙の状態で残さないといけないから、最初から紙に書き込むほうがいいって人もいるんだよ。
一平:なるほど。改ざんできちゃうからデータだとダメなんだ。でも、出金伝票を毎日ちまちま書いてたら、そのうち利き手が腱鞘炎になって、出金伝票が原因で医療費控除を受けることになっちゃう。
星野:まあ、それも立派な節税テクニックのひとつなんで、全然利用してもらって。
一平:立派じゃないでしょ~(泣)。
――領収書が出ない経費に関しては、各々に合う方法で管理していきましょう!ということですね(笑)。
星野:税務署の人に、ちゃんと記録をつけていると伝えることが目的ですからね。形式にとらわれすぎず、実態を証明できるようにしておくことが重要です。
一平:面倒で記録をサボるっていうパターンが一番よくないから、自分がやりやすい方法で続けていけばいい、と。
――たとえば、領収書やレシートをなくしたとき、その代わりに出金伝票を使うのはアリですか?
星野:あ~、それは望ましくないですね。領収書・レシートは保管義務があるので。
一平:望ましくないってことは、100%ダメではないってこと?
星野:明言しづらいですが……例えば税務調査の際、領収書やレシート以外の出金の証拠が残っていて、経費として認められるケースもあります。ですが本来、明らかに領収書やレシートが出るはずなのに、それを出金伝票に書くっていうのは、「嘘なんじゃないの?」と疑われてしまいやすいからね。領収書やレシートがもらえるものについては、基本的にはそれを全部なくさないように保管してください。
一平:はーい。
星野:ん?ずいぶん素直だね?
一平:税務署の人を論破するより、領収書を保管するほうが絶対ラクだから(笑)。封筒に入れてとっておくぞ!
Photo:沼田学