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前受金とは?預り金・仮受金との違いと仕訳例について解説

勘定科目のひとつに「前受金(まえうけきん)」という科目があります。

前受金とは、経理の世界でも「事前に受け取ったお金」という意味で使われます。それでは何の前に受け取ったお金なのでしょうか?この点が理解できれば、どのようなときに前受金の科目を使用すればよいかわかります。

今回は、前受金の使い方や、前受収益や預り金、仮受金や前渡金など、混同しやすいその他の科目との使い分けについて見ていきましょう。

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  • 前受金とは、「将来的に売上高となるべきお金を事前に受領したとき」に使用する
  • 前受金は、顧客に対して商品やサービスを提供しなければならない状態を表しているため、負債に分類される
  • 前受金は、前受収益や預り金など、他の負債科目と用途をしっかりと区分して使用する

そもそも前受金ってどんなもの?

注文を受けてから、顧客に納品するまでに期間を要するもの、例えば受注生産や予約販売などの場合は、商品を納品する前に顧客から代金の一部もしくは全部を受領することがあります。 このお金は前金や内金、手付など呼び名はいろいろですが、共通していえるのはまだ顧客への商品の提供が終わっていないということです。

売上高は、顧客への商品の納品完了後に初めて計上できます。 いくらお金を先に受け取ったからといって、商品の納品が終わっていなければ売上高に計上するわけにはいきません。 しかし、お金は受け取っているわけですから、この入金をなんらかの科目で処理しなければいけません。 その際に使われるのが「前受金」です。

モノ以外にも、例えば研修会社が顧客向けに研修を実施するときに、実施前に代金を事前に受領する場合など、サービスの提供を行う前に前金を受け取ったときにも前受金が使われます。

簡単にまとめると、商品の納品前やサービスの提供前に事前に受け取ったお金を売上高計上するまでの間に一時的に処理するための科目、それが前受金です。 将来的に売上高になるお金かどうか、それが前受金かどうかの判断基準といえます。

例えば、不動産賃貸業などの場合で、翌月4月分の家賃を前もって3月に入金してもらう場合(不動産科目の場合は前受賃貸料)。この場合も「前受金」として処理します。

前受金って、どうして「負債」なの?

前受金は、顧客に商品を納品したり、サービスを完了したりする前に受領するお金です。

自社の視点で見れば、前受金を受領しているということは、裏を返せば将来的に商品やサービスの提供義務を負っているということになります。 さらには、もしなんらかのアクシデントなどによって商品やサービスの提供ができなくなった場合には、前受金の返金義務も発生します。

このように、自社にとっては、前受金はあくまで商品やサービスの代金を事前に受け取ったに過ぎません。 前受金の残高が残っているということは、将来的な商品やサービスの提供義務が残っているということです。

つまり、前受金は、そうした義務を表すものとして、「負債」となります。 負債というとネガティブな感じもしますが、商品やサービスを提供する側としては、代金後払いよりも前払いしてもらったほうが代金回収の面でも安心ですし、会社の資金面でも前もって受けたお金を活用して仕入れなどを行えるというメリットがあります。

商品の納品まで前受金を取っておかなければならないということはありませんので、金融機関からお金を借りるのと同じように、事業のために自由に使えばよいのです。 負債という響きに引っ張られて前受金をネガティブにとらえる必要はないということです。

前受金の仕訳例

前受金の仕訳自体は非常にシンプルです。

1ヵ月後に商品を納品する契約を結んで、商品代金10万円を前もって受領した

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
現金及び預金 100,000 前受金 100,000

1ヵ月後に商品を納品した

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
前受金 100,000 売上高 100,000

大切なのは、どのタイミングで売上高に振り替えるかということです。

売上高に振り替えるタイミングは、商品の納品やサービスの提供が完了したタイミングです。 売上高への振替のタイミングがずれると期間損益にも影響しますので、しっかりと社内で確認を行わなければいけません。

商品代金の前受金の場合には、売上高原価との対応もあります。 売上高と売上高原価の比率である売上高原価率を毎月チェックしておけば安心です。もし、前受金から売上高への振替が漏れていれば、売上原価率が高くなってしまうので、振替の漏れにも気づきやすいでしょう。

また、複数の顧客から前受金を受領した場合には、どの顧客からの前受金かということもしっかりと区分して管理しなければいけません。区分管理をしないと、本来は売上高に振り替えるべき前受金がずっと残ってしまうということにもなりかねません。

やよいの青色申告 オンライン」などの会計ソフトを使えば、科目のほかに取引先の情報も設定できますし、別途Excelなどの表計算ソフトを使って個別の金額を区分管理して、会計ソフト上の前受金の残高と合わせるという方法でもよいでしょう。

前受収益、仮受金、預り金との違いと仕訳例

前受収益

もっとも前受金と混同しやすいのが、「前受収益」ではないでしょうか? 前受金と同じく負債に区分されますし、名前も似ています。 しかし、このふたつの科目は会計上、明確に区別されています。 前受収益は、1年間など継続的なサービスの提供を行っている場合に使用します。 といってもピンとこないと思いますので、仕訳例を見てみましょう。

取引先への貸付金の利息の向こう1年分として12万円を受領した

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
現金及び預金 120,000 受取利息 120,000

決算を迎え、上記利息のうち、4ヵ月分は翌期にかかるものであるため、振替仕訳を行う

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
受取利息 40,000 前受収益 40,000

翌期になったので、再度振替仕訳を行う

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
前受収益 40,000 受取利息 40,000

このように、前受収益は、受け取ったお金が翌期以降の分を含んでいる場合に、翌期に収益を計上するために経過的に用いる科目です。 前受金が代金の一部または全部を前もって受領したときに使用される科目なのに対して、前受収益は収益を適切に各期に配分するために使われる科目です。

ほかには、1年分の家賃を前もって受け取った場合なども考えられますが、いずれにしても前受収益は前受金ほどには使用頻度は高くありません。

仮受金

「仮受金」は、何の入金かわからない場合に使う負債科目です。

経理が把握していない請求書に基づいて入金があった場合など、処理の科目が不明な場合に一時的に使用します。 前受金とやや名前は似ていますが、まったく異なるものです。

仮受金はやむを得ず使う科目であって、社内で書類や情報のやり取りがしっかりと行われていれば、仮受金は発生しないはずです。仮受金が発生してしまったら、社内の情報共有のどこかに問題があるということがいえます。

A社から1万円の入金があったが、何の入金かわからなかったため、やむを得ず仮受金で処理した

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
現金及び預金 10,000 仮受金 10,000

営業担当に確認したところ、A社に来月納品する商品の内金であることがわかった

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
仮受金 10,000 前受金 10,000

預り金

「預り金」も負債に分類されますが、前受金との使い分けが必要です。 前受金も、前もって預かっているお金という意味で、預り金として処理してしまいそうですが、両者は明確に異なります。

前受金は、商品の納品やサービスの提供が終わった後に売上高に振り替えるために使用するのに対して、預り金は基本的に、その後の損益には影響しません。

例えば給与から天引きした源泉所得税のように、預かったお金をどこかに支払うことで預り金が消えるという流れになります。従業員などがどこかに支払うべきお金を会社が一時的に預かって、代わりに支払っているというイメージです。

額面200,000円の給与を支払って、各種天引きを行った

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
給与手当 200,000 現金預金 160,400
    預り金(源泉所得税) 4,000
    預り金(住民税) 10,000
    預り金(社会保険料) 25,000
    預り金(雇用保険料) 600

翌月、天引きした源泉所得税を国に納付した

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
預り金(源泉所得税) 4,000 現金預金 4,000

前受金と関係が深い前渡金、売掛金の仕訳例

前渡金

「前渡金」は、資産の部に分類されますが、前受金の鏡のような科目です。

前払金という科目が使われることもありますが、前渡金と同じものです。自社が1ヵ月後に納品する商品のために内金を受領したときは、まずは前受金で処理して、納品が終われば売上高に振り替えます。これは相手から見れば、1ヵ月後に仕入れる商品のために、仕入れ先に内金を支払ったということです。

このときに、前渡金を使います。こちらが前受金を使ったということは、相手は前渡金を使っているということです。

1ヵ月後に商品の納品を受ける契約を結んで、商品代金20万円のうち半額の10万円を前もって支払った

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
前渡金 100,000 現金及び預金 100,000

1ヵ月後に商品の納品を受けて、代金の残額は翌月末に支払う予定である

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
仕入高 200,000 前渡金 100,000
    買掛金 100,000

売掛金

売掛金は、前受金との関係では、商品納品時に発生することがあります。

1ヵ月後に商品を納品する契約を結んで、商品代金20万円のうち半額の10万円を前もって受領した

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
現金及び預金 100,000 前受金 100,000

1ヵ月後に商品を納品して、代金の残額は翌月末に入金される予定である

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
前受金 100,000 売上高 200,000
売掛金 100,000    

このように、前受金が商品代金の一部である場合には、売上高と前受金の差額は売掛金として処理します。売上高の相手科目を全額前受金にしてしまうと、前受金がマイナスになってしまいます。 差額の10万円は未回収の商品代金なわけですから、差額は売掛金として処理します。

ただし、商品の納品と同時に残額を受領した場合は、売掛金の代わりに、現金及び預金で処理すればよいでしょう。

まとめ

前受金という科目は、前もって顧客からお金を預かるため、その後の商品やサービスの動きを把握していないと、ずっと貸借対照表に取り残されてしまうこともあります。毎月末には売上高に振り替えるべき金額がないか、前受金の残高をチェックしましょう。

また、前受金ひとつをとっても、このようにさまざまな勘定科目との使い分けがあります。 日常の仕訳でも、どの勘定科目に区分すればよいのかわからず悩む場面もあるでしょう。

そんなときは、会計ソフトを使えばよいでしょう。「やよいの青色申告 オンライン」のように、取引を選べば仕訳をしてくれる機能がついているものがオススメです。

photo:Getty Images

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