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インバウンド需要対応アプリで起業するには?マジェステック・藤崎裕子氏インタビュー

2020年の東京五輪に向けて、日本にはこれからますます多くの外国人が訪れると予想されています。それに伴い、期待されるのが「インバウンド需要」。

インバウンド需要とは、訪日外国人による消費活動のこと。訪日外国人により快適に日本でのひとときを過ごしてもらうためのおもてなしのひとつにスマホアプリの活用もあるでしょう。

今回は、中国語アプリを多数開発しているマジェステック合同会社代表の藤崎裕子さんに「インバウンド需要」と「スマホアプリで起業」について、注意点や成功のポイントを伺いました。

中国人は言いにくいこともはっきり言ってくれるありがたい存在。でも、問題も!?

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――会社には中国人スタッフもいらっしゃるのですか?

アプリ開発チームのメンバーには、中国人もいます。従業員としてではなく、業務委託関係として、一緒にアプリの運用やアプリの開発を行っています。

PCひとつでできるのがこの仕事の魅力だと思っているので、会社という場所に集まって仕事をするわけではありませんね。みんなそれぞれに仕事を持っているので、早朝にパソコンで会議をしたり、上がっているデータについては共有サーバーを確認したり、それぞれの場所でそれぞれの時間に仕事をしています。

もちろんミーティングもありますが、中国人スタッフとは、はっきり意見を言わないと伝わらないため、お互いの意見をよく交わし合います。言いにくいことも遠回しな言い方ではなく、ストレートに言ってくれるので、これはとてもありがたいことだと思っています。

ミーティングは、中国語で行うことも多いですが、スタッフの中国人は日本語も上手です。みんな日本が大好きなので。でも、中国人スタッフに限りませんが、みんな良いものを作りたいという気持ちでプロ意識が強く、おたがいの意見の妥協点を探しにくいというのは悩ましいところです。

中国人スタッフと仕事をする際、気を付ける点は、人前で叱らない、責めないこと。また、話すべきことは遠回しな表現をせず、はっきり伝えることも大事。その際は、理由や根拠も伝えることで、異文化理解にもつながっていくと思います。

また、これまで苦労した点を挙げるなら、中国では、担当者が辞めた場合、担当案件のデザインなど仕事が引き継がれないことが多いのです。そのため、関わっていた担当者が辞めたあと、途中からやり直したプロジェクトがありました。

このほかにも、合意書などを交わしたあとに、内容が2転3転、挙げ句の果てに、取引会社が変更したことも。中国では、より良い案が出てきた場合には文書など交わして決定した後でも変更しようとすることがあります。

日本だとなかなかあり得ないことですが、文化や慣習の違いで起こりがちな事例を知っておくことも外国人と仕事をするには大事なことだと思います。

インバウンド需要に応える よい日本を伝えるアプリの作り方とは?

――インバウンド需要は意識していますか?

起業するきっかけとなったのは、インバウンドサービスでしたが、最初からインバウンド需要を意識していたわけではありません。

「リアル中国語アプリ」の場合、リリース当初は実践的な中国語を習得したい人向けでしたが、日本でのインバウンドの潮流から、アプリ内でフレーズをリクエストできる機能にてインバウンド接客に使われるフレーズのリクエストを多くいただくようになり、順次インバウンド接客のシーンに合わせたカテゴリを追加しました。

こちらは、コミュニケーションアプリとして好評で、書籍化もされました。書籍は、「販売業」「飲食店」「化粧品」「ドラッグストア」「家電」などの業界を対象とした、接客向け中国語のフレーズ集ですが、この反響はその後、インバウンド向けアプリの受託を始めるきっかけになりました。

また、アプリ制作では、アプリを通してもっと多くの日中交流が始まり、訪日外国人の方々が日本をもっと好きになってくれたらうれしいと思いながら制作しています。

自分自身の経験ですが、キャスターとして中国へ行くことになったとき、まだ中国のことをあまり知らず、実は決してよい印象ではありませんでした。しかし、日々仕事をしながら中国人に接していると、世話焼きで親しみやすく、いい人が多く、徐々に中国のことが好きになっていきました。今後は間接的にでも日本の良さや美しさを多くの外国人に伝えられるようなアプリを制作したいですね。

――インバウンド向けにアプリを開発する際、大事にしていることはありますか?

各国の文化や習慣や感覚の違いを考え、外国人の目線で制作することです。日本ではあまり意識されませんが、宗教観や国によって異なる人との距離感というのも意識しています。

――今後、インバウンド需要を考慮して起業したい人や、スマホアプリで起業を考えている人へメッセージをお願いいたます。

2020年の東京五輪に向けて、訪日外国人が増えていく中、インバウンド需要は、いろいろな領域での挑戦が可能だと思います。インバウンド需要を意識したアプリを制作する場合は、可能であれば対象の国の方に使ってみてもらうのが良いかと思います。。

その場合は、チェックというより、よい日本を伝えられているかどうか、設計時に意図したように操作できているか、デザインなど監修の違いから誘導がわかりにくくないか、想定していなかったその国特有のニーズがありはしないかなど、アプリを外国人がどう感じるかという点がポイントになります。

例えば中国人の場合だと、日本と比べて人との距離感が近い、キャッシュレス化が進んでいて支払い方法が豊富、利用されている中国特有のSNSや、利用できない世界的なサービスが多いなど知っていると、よりニーズにあったものを作りやすいといえるでしょう。

また、マジェステックは、合同会社なのですが、私も代表というより、一社員として働いています。合同会社の場合、株式会社より立ち上げの費用も安く、役員の任期を定める必要がない、決算公告の義務がないなど、株式会社に比べて起業しやすい側面があります。こんなことも起業する場合の選択肢のひとつになるかもしれませんね。

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Photo:塙薫子

藤崎裕子ふじさき ゆうこ

ななしの

マジェステック合同会社
中国の日本語番組のキャスターを経験。帰国後は日本企業でスマートフォン・アプリケーションの開発に携わり、現在はマジェステック合同会社で主にアプリ制作を行っている。
ネイティブの中国語会話を学べるアプリ「リアル中国語会話」「超・中国語耳ゲー」「Fun! Japanese」をリリース。

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