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元入金の疑問解消!帳簿がマイナスでも大丈夫?フリーランスでも必要?

元入金(もといれきん)は個人事業主の帳簿づけで出てくる勘定科目のひとつです。
しかしながら、元入金という勘定科目は開業時などには使うものの、毎日の取引の中で使うことはありません。元入金とはいったいどのようなものなのでしょうか。
今回は、元入金の意味や計算方法、仕訳の仕方などについて解説します。

POINT
  • 元入金は事業のために用意した資金という意味の勘定科目。
  • 元入金は開業時に開業のために用意した資金のことを指し、開業後は個人事業主が自分の事業のためにどのくらいの資金を出資しているのかをあらわす。
  • 元入金は白色申告から青色申告へ変更した場合、青色申告で10万円控除の簡易簿記から65万円控除の複式簿記へ変更した場合など、資産や負債の残高を仕訳するときにも必要。

元入金とは?個人事業主の元入金と法人の資本金の違いとは?

元入金とは?

元入金とは、個人事業主が自分の事業のためにどのくらいの資金を出資しているのかをあらわすものです。

開業時には、開業のために用意した資金が元入金となります。そして、その後の各年度においては、年度が始まる時点で事業のために用意してある資金が元入金となります。

元入金は、個人事業主が複式簿記による帳簿づけを行うときに出てくる勘定科目で、事業の財政状態をあらわす貸借対照表の右側、「資本(純資産)の部」に表示されます。

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なお、ここでいう資金は、現金や預金などのお金だけに限りません。在庫商品であったり、未回収の売上代金である売掛金であったり、内装やクルマ、備品などのモノであったりとさまざまな資産を含みます。

一方で、個人事業主には未払いの仕入れ代金である買掛金や、銀行から借りたお金などマイナスの財産である負債もありますから、資産の総額から負債の総額を差し引いた正味の財産が元入金の金額となるのです。元入金の具体的な計算方法は後ほど説明します。

資本金との違いは?

元入金は個人事業主が出資したお金ということから、よく法人の資本金と間違われることが多いですが、個人事業主の元入金と法人の資本金とでは大きく扱いが異なります。

個人事業主の場合、個人というひとりの人間の中で、生活をしている自分と事業を行っている自分とがあり、事業用の財産というのは個人の財産のうちの一部を切り取ったものになります。それが元入金です。

個人事業で得た利益は、そもそも自分のものですから、それを事業のために再投資するも、生活のために使うもまったくの自由です。

言い換えれば、事業のために用意した資金は自由に出し入れすることができます。
そのため、元入金の金額は毎年変わることになります。

一方、法人の場合、法人は法で人格を認められたものであり、その財産は法人のもので、個人のものではありません。

例えば株式会社であれば、自分が起こした会社であっても、その会社の財産は自分のものではなく、出資者である株主のものなのです。(もっとも、株主一人で設立したオーナー会社であれば自分のもののようではありますが)

会社は株主から出資を受けた資金をもとに会社を運営し、利益を出して株主に配当します。
事業のために用意した資金であっても、それが株主から出資を受けたものなのか、会社が事業で自ら生み出した利益なのかをきっちりと区分する必要があります。
そのため、株主からの出資である資本金は、増資や減資を行わない限りは毎年度同じ金額となります。

元入金は帳簿上マイナスになってもいい?

元入金は事業のために用意した資金と説明しました。しかし、実際に帳簿づけを行って試算表や決算書などで勘定科目の金額を集計してみると、元入金の金額がマイナスになってしまうことがあります。これでは事業の資金がマイナスになるということになりますが、元入金がマイナスになってしまっても大丈夫なのでしょうか?

結論からいうと、元入金がマイナスになることは大いにあり得ます。複式簿記の仕組みから考えると、より論理的に説明がつくのですが、難しくなってしまいますので単純な例を挙げましょう。

例:
① 事業を始めるにあたり、100万円の資金を用意し、さらに銀行から300万円を借り入れた。合計400万円が元手となった。
② 1年目の決算を迎える。1年目は苦戦してしまい、生活のために手元にあったお金を使い、残りが200万円となった。

さて、この時点で手元のお金(資産)は200万円あり、銀行からの借入(負債)は300万円残っています。
元入金は資産の総額から負債の総額を差し引いた正味の財産と説明しました。

この場合はどうでしょうか?

手元のお金(資産)200万円-銀行からの借入(負債)300万円=△100万円(元入金)

このように、元入金はマイナスとなってしまいます。基本的には事業のためのお金(資産)が借入などの負債よりも少なくなっているときにマイナスとなるのです。計算上では当然にあり得ることなのです。

ただし、マイナスがあり得ることだからと、そのままでは好ましくありません。先ほどの例のようなことから、元入金がマイナスになる原因は、事業が赤字基調であるとか、儲け以上にお金をプライベートに持っていっているというようなことになります。

特に銀行からお金を借りているときなどは、貸したお金が生活に使われていると思われかねません。健全な経営のためにも、儲けたお金は事業用に残しておくなどして元入金がマイナスにならないように心がけましょう。

開業時の元入金の仕訳・計算方法

開業時の元入金の仕訳

さて、実際に開業したときの仕訳はどのようにしたらよいのでしょうか。開業するときに元手となるのはお金です。ここでは、新規に事業用の口座を開設する場合と、もともとある口座を事業用に利用する場合とを紹介します。

例1:事業資金として500,000円を用意し、新規に口座を開設して400,000円を預け入れ、残り100,000円を手元の現金とした。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
現金 500,000 元入金 500,000
普通預金 400,000 現金 400,000

お金の流れとしては、現金500,000円を用意したところで元入金とし、その現金のうち400,000円を新規口座に預け入れたというものです。

例2:生活用に利用していた預金を、そのまま事業用として使用することにした。残高は500,000円で、手元用に100,000円を引き出した。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
普通預金 500,000 元入金 500,000
現金 100,000 普通預金 100,000

例1とは反対に、もともと預金残高としてある500,000円を元入金とし、その預金から100,000円を引き出したというものです。

新規開業の場合は、どちらのパターンでも仕訳はシンプルですね。

白色申告から青色申告にした場合など

元入金を使うタイミングは開業のときだけではありません。元入金は複式簿記での帳簿づけで必要になってくる勘定科目です。

白色申告から青色申告へ変更した場合や、青色申告でも10万円控除の簡易簿記から65万円控除の複式簿記へ変更した場合など、あらためて資産や負債の残高を仕訳するときに必要になってきます。

※簡易簿記でもすべての項目を網羅して帳簿することによって貸借対照表が作成できれば65万円控除は認められます。

例1:これまで白色申告だったが、今年から複式簿記での青色申告で65万円控除を受けることにした。昨年末の事業用の財産を調べてみると次のとおりだった。

手元の現金30,000円、普通預金370,000円、売掛金50,000円、パソコンで減価償却で経費化していない残高100,000円、経費で使うクレジットカードの未払金50,000円

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
現金 30,000 未払金 50,000
普通預金 370,000 元入金 500,000
売掛金 50,000
器具備品 100,000

いきなり聞きなれない言葉がたくさん並んでしまい、難しく感じてしまうかもしれませんが、パズルのように考えてみてください。

まずは、調べたものが資産(プラスの財産)なのか、負債(マイナスの財産)なのかを考えます。資産であれば左側に、負債であれば右側に当てはめていきましょう。

すべての勘定科目の配置を終えたら、資産(左側)の金額、負債(右側)の金額をそれぞれ合計してみます。資産の合計が負債の合計よりも多い場合は、その差額を元入金として右側に配置します。

あまり好ましくはありませんが、資産の合計が負債の合計よりも少ない場合は、その差額を元入金として左側に配置します。元入金は基本的に右側に配置されるものなので、左側に配置するときはマイナスであることをあらわしています。

元入金と似ているようで違う「事業主借」とは?

元入金は事業のために用意した資金という意味の勘定科目ですが、似たようなものに「事業主借(じぎょうぬしかり)」という勘定科目があります。

事業主借は、事業用のお金が足りないときにプライベートのお金を投入した場合や、プライベートで使っている預金から経費を支払った場合などに使用します。

例1:仕入れ代金の支払いで預金残高が不足するのでプライベートのお金100,000円を預け入れた。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
普通預金 100,000 事業主借 100,000

例2:プライベートで使用している電子マネーで文房具1,000円を購入した。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
消耗品費 1,000 事業主借 1,000

事業主借は常に右側に配置する勘定科目です。

ここで、事業主借がプライベートのお金を持ってくるときの勘定科目ということは、開業時の仕訳などでも事業主借を使用してもいいのではないかと思われた方もいるでしょう。

確かに数字の帳尻合わせという意味では両者とも同じ結果となりますが、元入金が開業時や各年度の始まりにどのくらいの資金を用意しているかをあらわすのに対し、事業主借はその年度でプライベートからどのくらいの資金を投入したかをあらわしています。

また、次で説明しますが事業主借は年度替わりのときには元入金の金額に吸収されてしまいます。ですから、少なくとも複式簿記での帳簿づけを行い、貸借対照表を作成するような場合には元入金を使うようにしましょう。

年が替わるときの元入金の仕訳・計算とは?

元入金の金額は、毎年変わるとお伝えしましたが、年が替わるときには繰越のための元入金の計算をしなければなりません。

年を繰り越すときのルールとして、元入金にその年の利益(損失)やプライベートのお金のやり取りである事業主貸・事業主借の金額を吸収させるということがあります。

算式であらわすと以下のとおりです。

翌年分の元入金=本年分の元入金+利益(損失の場合はマイナス)+事業主借-事業主貸
※利益は青色申告特別控除を差し引く前の金額です

これを年の繰越時に仕訳するときは以下のようになります。

例:決算を終えて、利益は4,200,000円となった。
なお、本年の元入金は500,000円、事業主借の残高は600,000円、事業主貸の残高は4,500,000円だった。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
損益 4,200,000 元入金 4,200,000
事業主借 600,000 元入金 600,000
元入金 4,500,000 事業主借 4,500,000

この仕訳をすることにより、元入金の残高は
本年分(当初)500,000+損益4,200,000+事業主借600,000-事業主貸4,500,000=800,000円が翌年分に繰り越す元入金の金額となります。

フリーランスでも元入金は必要?

いわゆるフリーランスと呼ばれる業種では、開業に際しての資金が少額で済むことが多いですね。このような場合でも、元入金は必要なのでしょうか。

青色申告で最大65万円の青色申告特別控除を受けるためには、基本的に複式簿記による帳簿づけを行い、帳簿を基にして貸借対照表を作成する必要があります。

貸借対照表の特徴として、「借方(左側)の合計と貸方(右側)の合計とは必ず一致する」というものがありますが、そのためには必ず元入金の存在が必要になってきます。
たとえ小規模であっても、個人事業主として事業を行う以上は、現金、預金や売掛金などは年末の残高として残るものです。

そうすると、ここまでご説明してきたとおり、元入金の金額が必ず計算されます。

つまり、事業規模の大小にかかわらず、複式簿記の帳簿づけを行う以上は元入金が必要なのですね。
もちろん、白色申告や10万円控除の青色申告では貸借対照表を作成しないため、元入金を使用せずに事業主借で代用してもよいでしょう。

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