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ホワイト企業とは?ホワイト企業とブラック企業を判別するプロに聞いてみた!安全衛生優良企業マーク推進機構・ 木村誠氏インタビュー

「ブラック企業か? ホワイト企業か?」

今の時代、この評価基準が会社のイメージや信用、採用の場面で、とても大きな影響を及ぼすようになっています。では、ブラック企業の烙印を押されないためには、どんな対策を取っておくべきなのでしょうか。

実は、「ホワイト企業」の判断の目安として、就職活動中や就職を控える学生さんなどの認知率が高く注目されているマークがあります。また、ホワイト企業と認められるには、労働環境をどんな風に整えたらいいのでしょう?

安全で健康な職場づくりを目指し、多くの企業をサポートしている、非営利一般社団法人
安全衛生優良企業マーク推進機構・理事長 木村誠さんに伺いました。

就職先の労働環境を重視する時代

就職先の労働環境を重視する時代

――でも、それでは就活生も困ってしまいますね。本当に社員の労働環境を良くしようと頑張っている企業がどこなのか知りたいのに……。

そのためにも、こうした”ホワイト企業マーク”を広めたいと考えています。このマークを取得するための基準は高く、審査は非常に厳しいものです。例えば、ホワイトマーク認定取得のための項目数は約80。マニュアルは100ぺージにもおよびます。

ポイントになるのは、コンプライアンス、労働安全衛生法、労働基準法を守り、働く環境を確保しているかというところ。具体的には、メンタルヘルス、過重労働防止、受動喫煙。製造業系ならリスクアセスメントの状況は大丈夫か?とった項目がトータル的に見られます。

それらをエビデンス(確認書類)としてしっかり提出して、認定を受けることになります。

――そこまで厳しいと、中小企業が取得するにはハードルが高い気もしますが、やはり取得企業は大手企業が多いのですか?

いいえ。現時点(2018年10月末時点)でホワイトマークを取得している企業は40社弱ですが、大企業もあれば、従業員が20~30名くらいの中小企業もあります。中小企業でも経営者の意識が高く、経営がしっかりしているところは取得できていますね。取得している企業の業種はさまざまですが、主に50代以下の年齢層の経営者が多いです。親御さんの会社を引き継いだ経営者の方もいます。

――実際にマークを取得した中小企業からは、どんな声が聞かれましたか?

例えば、あるアミューズメント企業。マークを取得したら各地方の労働局で局長が授与式を行うのですが、新聞社やテレビ局が取材に来て、メディアの露出が増えることに。社員の家族の間でも話題になって、社員のモチベーションがアップしたそうです。

さらに、あるIT企業の場合。いつも出稿している就職メディアにマークを取得した旨を掲載したところ、応募者が約5倍になり、結果として14ヵ月で54名のエンジニアが採用できて、従業員50名から100名以上に倍増したそうです。全国的にエンジニアの人材は不足していて、採用が難しい時代と言われていますが、マークを掲げるだけで大きな反応があった実例です。

――労働環境への関心の高さが伺えますね。取得するための助成金などはあるのでしょうか。

“ホワイト企業マーク”取得そのものには助成金はないのですが、取得に際し、その企業の全体的な取り組みのなかで、利用できる助成金を見つけ出せるようなコンサルティングをしています。コンサルティング料金を賄えるほどの助成金が取得できるケースも多いですね。

パワハラ訴訟、タレコミ……経営側のリスクとは?

――ニュースなどで、パワハラ訴訟についてもよく聞かれるようになりました。

最近では、ブラック企業を辞めた若者が、会社にパワハラ訴訟を起こして700万円支払わせた経緯を書いた本が話題になっているほどです。上司が部下を罵倒した声をレコーダーに録音して証拠を固める方法など、誰でも有利に企業を訴える方法を知ることができる時代とも言えます。

人を人とも思わないような経営をしていると、「うまいことやって会社から金を取ってやろう」と思われてしまうというリスクも考えておくべきでしょう。

また、辞めた社員、辞める前の社員が労働基準監督署に「タレこみ」をするようなケースも非常に多くなっています。ただでさえコストをかけて採用活動をしても人が集まらない、人手不足の今の時代。まして、ブラックリストに載るようなことは、企業にとって大きな痛手となってしまいます。

パワハラ訴訟、タレコミ......経営側のリスクとは?

――うちは大丈夫か?とドキッとした経営者の方やお勤めの方がいるかもしれません。自社の「ブラック企業度」を見極めるにはどうしたらいいですか?

ブラック企業リストが公表されたとき、「ホワイト企業を目指すのはまだ早いけど、少なくともブラック企業になったら困る」という企業からのお問い合わせを多数受けまして。

そこで、設問200問を1問30秒で答えることで、ブラック診断度、ホワイト到達度を測れる診断テスト「ホワイト労務診断」というサービスを実施するようになりました。こちらをさらに簡易にしたものですが、自社の労働環境の実力を知りたいという人には、こちらの「ホワイト企業マーク簡易診断」をお勧めしています。

【参考】
SHEM:ホワイト企業マーク簡易診断

これは、女性の活躍支援「えるぼし」、子育て支援「くるみん」、若者の雇用促進「ユースエール」など、それぞれの審査基準に則した設問に答えることで、会社のホワイト到達度などの実力がわかるというものです。

働き方改革こそ企業が生き残る道

働き方改革こそ企業が生き残る道

▲非営利一般社団法人 安全衛生優良企業マーク推進機構 米持さん(左)、社会保険労務士・安全衛生優良企業アドバイザー 楚山さん(中央)と一緒に事務所ビル屋上にて

――やっぱりホワイト企業を目指したい。そんな経営者の心得とは?

まずは労働に関する正しい知識を身に付けること。

例えば、法定労働時間を定めた「36(サブロク)協定」ですが、経営者の半分以上が知らなかったというデータがあるそうです。人を雇う経営者であれば、当然知っておくべきことだと思います。

【関連記事】
これをしたらブラック企業です!サブロク協定とは?〜労働時間編〜

また、労働に関する法律がどんどん変わる点にも注意しなければなりません。例えば現在、管理職は残業の対象になりませんが、2019年4月からは会社側が残業などの労働時間を把握するよう義務づけられます。管理職だからといって、残業させ放題ではいけないということです。

――最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。

今後日本の労働人口が不足することはあらゆるデータからもわかっていて、なにかしらの手を打たないと、企業が生き残れないことは明白です。

ただ、大手のみならず、中小企業でも働き方改革に成功した例がどんどん出てきています。

経営者の方には、ぜひ安全で健康で、働きやすい職場環境を整えることを考えていただきたいですね。そうすれば必ず、採用力がアップし、離職率をダウンさせ、それにより生産性の向上が実現できるという「経営の肝の部分」も確保できるはずです。

Photo:塙薫子

木村 誠きむら まこと

木村 誠

非営利型一般社団法人安全衛生優良企業マーク推進機構 理事長。安全衛生優良企業アドバイザー。ホワイトマーク(Wマーク)の推進を通じて就活生が安心して就活できる社会の実現をすべく、社会起業家として活動中。
非営利型一般社団法人安全衛生優良企業マーク推進機構

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