ホワイト企業とは?ホワイト企業とブラック企業を判別するプロに聞いてみた!安全衛生優良企業マーク推進機構・ 木村誠氏インタビュー

「ブラック企業か? ホワイト企業か?」
今の時代、この評価基準が会社のイメージや信用、採用の場面で、とても大きな影響を及ぼすようになっています。では、ブラック企業の烙印を押されないためには、どんな対策を取っておくべきなのでしょうか。
実は、「ホワイト企業」の判断の目安として、就職活動中や就職を控える学生さんなどの認知率が高く注目されているマークがあります。また、ホワイト企業と認められるには、労働環境をどんな風に整えたらいいのでしょう?
安全で健康な職場づくりを目指し、多くの企業をサポートしている、非営利一般社団法人
安全衛生優良企業マーク推進機構・理事長 木村誠さんに伺いました。
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就活生が安心して就活できる社会を作るために
――木村さんは、非営利一般社団法人 安全衛生優良企業マーク推進機構を2015年に設立されました。その経緯について教えていただけますか?
私は大手企業に勤務したのち起業。その後、知人のベンチャー企業の役員として席をおく機会がありました。そこはサービス残業が横行しているような非常に酷い労働環境で、唖然としたんですね。
結局、その会社は上場しましたが、ちょうど自分の息子が就職活動を始める時期だったのです。前述の会社のように、経営者が目先の利益だけを考え、若者を使い捨てにするような会社には絶対に就職させたくないと思いました。
その頃、メンタルヘルスの問題が大きな社会課題になっていました。2015年12月から、労働者が50人以上の事業場には、ストレスチェックが義務づけられ、企業の側もストレスチェックをちゃんと実施しようという気運が高まってきた時期でもあります。2018年現在、50人未満の事業場でのストレスチェックは「努力義務」ですが、同時に、ちゃんとストレスチェックを実施している企業と、していない企業があることにも気がついたのです。
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もちろんストレスチェックを実施している企業のほうが、就活生も安心して入れますよね。それを判定するための方法や目印はないのかな? と考えていたところ、厚生労働省が優良企業の証として、ホワイトマーク=安全衛生優良企業公表制度を発行していることを知りました。
▲ホワイトマーク。厚生労働省が2015年6月1日からスタートさせた、厳しい基準を全社統一でクリアしたことを条件に付与される優良企業の認定マーク
実際に厚生労働省に足を運び、詳細を聞いてみたところ、基準が高くてしっかりした制度だと改めて認識することに。ぜひこの制度を世の中に広めたいと思い、このNPOでもある非営利一般社団法人を立ち上げました。
――設立されてからはどんな活動をされてきましたか?
「就活生が安心して活動できる社会」をミッションとして掲げ、安全衛生優良企業公表制度=ホワイトマークを広めるために、厚生労働省の委託事業者として全国でセミナーを開催しています。セミナーは企業向けのみならず、学生や求職者向けにも行っています。
当初は安全衛生優良企業制度のみでしたが、現在は経済産業省の「健康経営優良法人認定制度」、厚生労働省の「くるみん認定」「プラチナくるみん制度」「えるぼし認定」「ユースエール認定制度」へと範囲を広げました。
また、これらのマークを取得したいという企業へのコンサルティング事業も行っています。
画像提供:非営利一般社団法人安全衛生優良企業マーク推進機構
ブラック企業とホワイト企業が混在している!?
――設立されてから3年間で、世間の関心や社会の動きは変わってきたのでしょうか?
当初ホワイトマークができたときは、認知度もゼロに近く、問い合わせもなく、「このままなくなってしまうのではないか?」と思ったほどでした。
しかし転機は社会問題にもなった大手企業で過労死事件が起きたこと。さらに働き方改革法案が通るなど、世の中が大きく変わったのです。さらに2017年5月からは、ブラック企業リストが大々的に公表されるようになりました。
実はそれまでもブラック企業リストの定義にあてはまる法令違反をしている会社は、全国の労働局で把握されていました。ただ、「死人を出しているような会社が公開されなくていいのか?」という声が大きくなったことから、あらためて大々的に公表されるようになったわけですね。
弊社でも「優ジロウ」というサイトを作り、ホワイト企業とブラック企業をリスト化して掲載しています。合計6,000社弱を検索できますが、このサイトには毎月5万超の方が訪れています。
ここ3年、こういった動きがあったせいか、ホワイトマークの認知度も徐々に上がり、企業団体や大学からの問い合わせが頻繁に来るようになっています。さらに学生からの「ブラック企業に入らないようにするにはどうしたらいいか?」という問い合わせや相談も増えてきました。
――ただ、ブラック企業の認知度が上がった一方で、そもそもホワイト企業とブラック企業を区別するのが難しいという声もあります。
そうですね。”ホワイト企業マーク(※)”といっても、我々のほかに民間2社でもオリジナルのマークを発行しています。
一方で、学生がアルバイト先で気に入らないことがあると、「ブラック企業だ!」とネットに書きこむような行為も見られます。そう考えると、現在はそれぞれが混在している状態といってもいいでしょう。
(※)各認定マークの総称