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なぜ、会社は「突然死」するのか〜経営者は知っておきたい倒産と資金繰りの大事な話〜【会計士オオノ先生に聞く!お金の経営相談】

皆さんこんにちは。公認会計士・税理士のオオノです。

このコーナーでは、新米経営者ゆうちゃんのまわりで起きる出来事を通じて、会社の血液とも言える資金繰りについて学んでいただいています。

第1話のハヤトさんのケースでは設備投資における「突然死」について、第2話のマサヤさんのケースでは運転資金における「成長痛」について学んでいただきました。

損益計算書における利益計算は、多くの経営者にとって馴染み深い部分だと思いますが、資金繰りについては学ぶ機会があまり多くはないと思いますので、しっかりと自分のものにしていただきたいと思います。

さて、今日は、そもそも「倒産」とはどういう状態なのか?について学び、さらになぜ銀行と付き合っていた方がいいのか?について解説いたします。

POINT
  • 倒産とは、一般的には「お金が足りなくて債務を支払えなくなった状態」のことを指すことが多い
  • 会計上で黒字かどうかは、倒産するかどうかに関係ない
  • 金融機関から借入をしておくべき理由を知っておこう

そもそも倒産ってどういう状態?

オオノ先生

オオノ先生:ところでゆうちゃん、そもそも倒産ってどういう状態かわかります?

ゆうちゃん

ゆうちゃん:え……、あらためて聞かれるとわかんないな。センセー、会社が倒産するって、どういうことなの?

オオノ先生

オオノ先生:そうですね。まずはそこから始めましょうか。実はですね、「倒産」って、法律的には定義されていないんですよ。

ゆうちゃん

ゆうちゃん:え? そうなの?

オオノ先生

オオノ先生:そうなんです。ですので、人によっていろいろな定義をしているのですが、一般的には「お金が足りなくて債務を支払えなくなった状態」を倒産と呼ぶことが多いですね。

ゆうちゃん

ゆうちゃん:「債務を支払えなくなった状態」か……。じゃあ、債務が無ければ倒産しようがないってことね。

オオノ先生

オオノ先生

定義上、そうなりますね。

ゆうちゃん

ゆうちゃん:債務って、いわゆる「借金」のことよね。だったら、借入れさえしなければ会社は潰れないってことか。

オオノ先生

オオノ先生:いえいえ、それは違いますよ。

ゆうちゃん

ゆうちゃん:え?

オオノ先生

オオノ先生:もちろん借入金も債務に含まれますが、債務ってそれだけではないですよね。事業を行っていると、買掛金や未払費用などさまざまな債務が発生しますからね。

ゆうちゃん

ゆうちゃん:債務っていうと、つい、借入れのことを思い浮かべちゃうけど、確かにそれ以外にもいろいろあるわね。

オオノ先生

オオノ先生:事業をやっていると、必ずなんらかの債務が発生するものなのです。

ゆうちゃん

ゆうちゃん:じゃあ、事業をやると債務が発生しちゃうんだから、事業さえやらなければ倒産はしないってことね!

オオノ先生

オオノ先生:……。ゆうちゃん、それじゃあ本末転倒ですよ……。

ゆうちゃん

ゆうちゃん:じょ、冗談よ……。とにかく、事業を行ってくうえで、債務と上手く付き合っていかないといけないってことね。

オオノ先生

オオノ先生:そういうことです。

会計上では黒字企業でも、倒産する!?

ゆうちゃん

ゆうちゃん:そのためには、ウチもしっかりと黒字を出さなくっちゃね。

オオノ先生

オオノ先生:ゆうちゃん、また会計上の「損益」と「資金繰り」の話がごっちゃになってますよ。

ゆうちゃん

ゆうちゃん:あっ!「倒産」するかどうかの定義は、「債務が支払えなくなるかどうか」だから、資金繰りの話なのね。

オオノ先生

オオノ先生:そのとおりです。ということは?

ゆうちゃん

ゆうちゃん:ということは……えっ!? もしかして、会計上で黒字かどうかは、倒産するかどうかに関係ないってこと?

オオノ先生

オオノ先生:よくわかりましたね。そのとおりです。倒産するかどうかは、赤字か黒字かに関係ないんですよ。

ゆうちゃん

ゆうちゃん:ちょ、ちょっと待って。それって、黒字だからって倒産しないとは限らないってこと?

オオノ先生

オオノ先生:そうなんです。東京商工リサーチが行っている2017年「倒産企業の財務データ分析」調査によると、倒産企業のうち赤字だった企業は53.7%、およそ半分だけなんです。

【参考】
東京商工リサーチ:2017年倒産企業の財務データ分析

ゆうちゃん

ゆうちゃん:ってことは、残りの半分近くは黒字ってこと!?

オオノ先生

オオノ先生:はい。そういうことです。

ゆうちゃん

ゆうちゃん:会計上の業績には赤字か黒字かしかなくて、倒産企業の半分が赤字、半分が黒字ということは……。

オオノ先生

オオノ先生:赤字か黒字かは倒産するかどうかには関係ないってことになりますよね。

ゆうちゃん

ゆうちゃん:ちょっと信じられない結果だけど、それが真実なのね……。

オオノ先生

オオノ先生:さらに信じられないかも知れませんが、2015年の調査では54.0%が黒字、2016年は50.2%が黒字と、倒産企業の過半数は黒字です。

倒産した企業に占める黒字企業と赤字企業の割合

 

倒産した企業に占める黒字企業と赤字企業の割合

ゆうちゃん

ゆうちゃん:えー!? 過半数!?

オオノ先生

オオノ先生:はい。さらにさらに2017年のデータを見てみると、倒産企業のうち減収企業、つまり売上が前期から下がった企業は68.3%ですが、裏を返せば3割が増収で倒産しているといえます。2016年は倒産企業の37.9%が増収、2015年は倒産企業の43.4%が増収です。

倒産した企業に占める増収企業と減収企業の割合

 

倒産した企業に占める増収企業と減収企業の割合

ゆうちゃん

ゆうちゃん:これってもしかして、マサヤくんのような「成長痛パターン」ってこと?

オオノ先生

オオノ先生:そのとおりです! さらに、倒産企業の約6割は債務超過とのことですが、これだって実質的な倒産とも言える「休廃業数」を加味して考えると、見え方が変わってきます。

ゆうちゃん

ゆうちゃん:債務超過っていうのは、資産より負債のほうが多い状態のことよね?

オオノ先生

オオノ先生:そういうことになりますね。実は休廃業した企業というのは、倒産企業の約3倍も存在するんですよ。つまり休廃業という実質的な倒産企業を分母に加味すれば、債務超過していた倒産企業の割合は6割ではなく、15%ほどだということができます。

ゆうちゃん

ゆうちゃん:損益計算書が黒字か赤字か、貸借対照表が資産超過か債務超過かだけを見ていたんじゃ安心できないってことか。

オオノ先生

オオノ先生:はい。そうです。もちろん、損益計算書や貸借対照表も倒産を予知するのに役立てることはできますが、それだけでなく資金繰りを見ていく必要があります。

ゆうちゃん

ゆうちゃん:やっぱり、資金繰りが重要なのね。

オオノ先生

オオノ先生:資金繰りの話はあまりクローズアップされることが少ないので馴染みが薄いと思いますが、とても重要です。

ゆうちゃん

ゆうちゃん:確かに、顧問の税理士の先生には損益計算書と貸借対照表しか作ってもらってないし……。

オオノ先生

オオノ先生:そうですよね。資金繰りについては、少しずつ勉強していきましょう。

ゆうちゃん

ゆうちゃん:うん。しっかり勉強していくわ。でもセンセー、今すぐにでも始めたほうが良いことってないの?

金融機関から借入をしておくべき理由

オオノ先生

オオノ先生:そうですね、倒産を防ぐには銀行との付き合い方も大切です。

ゆうちゃん

ゆうちゃん:銀行との付き合い方?ああ、ハヤトくんやマサヤくんのように、ちゃんと銀行から借入をしていれば、万が一のときに助けてくれるってことね。

オオノ先生

オオノ先生:そうです。

ゆうちゃん

ゆうちゃん:あれ? でも、なんで銀行は助けてくれたんだろう?

オオノ先生

オオノ先生:そこです!ちょっと遠回りしますが、その点を説明しますね。どんな会社でも、事業をしていると2種類の取引先がいると思います。

ゆうちゃん

ゆうちゃん:2種類の取引先?

オオノ先生

オオノ先生:はい。お金をもらう取引先とお金を払う取引先です。

ゆうちゃん

ゆうちゃん:なるほど。お金をもらう取引先はお客さん、お金を払う取引先は仕入先や外注先ってことね。

オオノ先生

オオノ先生:ゆうちゃん、この2種類の取引先、どっちが大切ですか?

ゆうちゃん

ゆうちゃん:どっちがって……そんな急に言われても困るよ……。どっちも大切な取引先だし。

オオノ先生

オオノ先生:わかってます。でも、あえて順位をつけるとしたら?

ゆうちゃん

ゆうちゃん:あえて? ん~、だったらやっぱりお客さん、お金をもらう取引先かな。

オオノ先生

オオノ先生:そうですよね。どんな企業にとっても、お客さんっていうのはとても大切です。お客さんがいなくなっても良いって思う人はいないですし、お客さんとはずっと取引を続けたいなと思っていると思います。

ゆうちゃん

ゆうちゃん:お客さんがいなければビジネスにならないし。

オオノ先生

オオノ先生:はい。そして、それは金融機関も同じなのです。

ゆうちゃん

ゆうちゃん:金融機関もお客さんが大切ってこと? そんなこと、もったいぶって言わなくたってわかるよ。

オオノ先生

オオノ先生:では、金融機関にとってのお客さんって誰だと思います?

ゆうちゃん

ゆうちゃん:金融機関にとってのお客さん? そりゃあ、私みたいに金融機関に預金口座を作っている人たちじゃないの?

オオノ先生

オオノ先生:ブー! 違います。ゆうちゃん、お客さんですから、「売上を立ててくれる人」たちのことですよ。預金は金融機関の売上じゃないですよね。

ゆうちゃん

ゆうちゃん:預けたお金が売上だって言われて金融機関のものになっちゃたら、誰も預金なんかしないか。え? じゃあ、金融機関のお客さんって誰なの? 金融機関の売上って……。

オオノ先生

オオノ先生:それは彼らの損益計算書を見ればわかります。金融機関の損益計算の一番上に計上されているもの。それが「貸出金利息」です。つまりお金を貸して、そこから得られる利息収入が彼らのメインの売上ということです。

ゆうちゃん

ゆうちゃん:ええっ! じゃあ、せっせせっせとお金を貯めていた私より、お金を借りている企業のほうが金融機関にとっては大切な取引先ってこと?

オオノ先生

オオノ先生:そうなりますね。そして、大切なお客様であるお金を借りている企業がもし困っていたら、金融機関はなるべく助けたいって思うんですよ。やっぱり。

ゆうちゃん

ゆうちゃん:お客さんにいなくなられちゃ困るし、付き合いが長くなるほど助けたくなるだろうしね。

オオノ先生

オオノ先生:そうですね。ですが、それ以外にも金融機関には助けざるを得ない事情があるんですよ。

ゆうちゃん

ゆうちゃん:助けざるを得ない事情? それって……。

オオノ先生

オオノ先生:ゆうちゃんが街中の銀行に良くと、立派なビルで、優秀そうな行員さんいて、金融機関ってさぞかし儲かっているんだろうなって思いませんか?

ゆうちゃん

ゆうちゃん:思う思う。システム改修なんかもしょっちゅうやってるし。

オオノ先生

オオノ先生:だけど、さっきも言ったように彼らの売上って1%や2%の利息からのものなんですよ。この1%や2%の利息って、利益じゃなくて、売上ですよ。

ゆうちゃん

ゆうちゃん:そっか、金融機関って、実はとっても薄利多売なのね。

オオノ先生

オオノ先生:そう。そして、その薄利多売な商売をしている銀行のもとに、お金に困っているお客さんが来たら……。

ゆうちゃん

ゆうちゃん:ど、どういうこと?

オオノ先生

オオノ先生:例えば金融機関のもとに、すでに3,000万円貸しているお客さんが、「今月、あと500万円ないと、支払いができずに潰れてしまいます……」と相談にやって来たと想像してください。金融機関はこの申し出を断りますか?

ゆうちゃん

ゆうちゃん:どうだろう? わかんないよ。

オオノ先生

オオノ先生:もし、これを金融機関が断って、この会社が本当に潰れたとします。すると貸している3,000万円は返ってこなくなって、金融機関は損失をこうむりますよね。

ゆうちゃん

ゆうちゃん:そうね。

オオノ先生

オオノ先生:薄利多売な彼らが、この3,000万円の損失を1%の利息で埋め合わそうとすると、新たに30億円(30億円×利息1%=3,000万円)の新規貸出をしなければならないんですよ。

ゆうちゃん

ゆうちゃん:それって、現実的じゃないよね。あ、だからハヤトくんもマサヤくんも助けてもらえたのか!

【ハヤトくんの事例】
飲食店の2店舗目を出店したら資金繰りが悪化…どうしたらいい?【会計士オオノ先生に聞く!お金の経営相談】
【マサヤくんの事例】
手もと資金がどんどん減る!?事業成長に運転資金が追いつかない「成長痛パターン」とは【会計士オオノ先生に聞く!お金の経営相談】

オオノ先生

オオノ先生:そういうことです。ですから、金融機関と上手く付き合って、いざという時に助けてもらえる関係を作っておかなければなりません。

ゆうちゃん

ゆうちゃん:つまり、ちゃんと金融機関からお金を借りて、金融機関にとってのお客さんになっておけってことね。

オオノ先生

オオノ先生:そうですね。

【参考記事】
運転資金に困らない金融機関の選び方

ゆうちゃん

ゆうちゃん:……でも、まだ、借金をするのって怖い気がするんだけど……。

オオノ先生

オオノ先生:もちろん、お金を借りるっていうことをあまり簡単に考えて欲しくはないので、ゆうちゃんのその気持ちは間違いではありません。だけど、経営者に求められるのは「正しく怖がる」という態度ですよ。

ゆうちゃん

ゆうちゃん:「正しく怖がる」……?

オオノ先生

オオノ先生:はい。まだまだ、ゆうちゃんは借入れについてたくさん誤解をしていると思います。借入れを「正しく怖がる」ために、別の機会に「借入」について勉強していきたいですね。

ゆうちゃん

ゆうちゃん:たしかに、私まだ借入についてまだなにも知らないや。よし、センセー、またしっかり教えてー。

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