スモールビジネス(個人事業主、中小企業、起業家)の
業務や経営にまつわる疑問や課題をみんなで解決していく場
検索
メニュー
閉じる
ホーム 確定申告 フリーランスのプログラマ・SE・ITエンジニアの確定申告のやり方【個人事業主】

フリーランスのプログラマ・SE・ITエンジニアの確定申告のやり方【個人事業主】

サラリーマンを辞めて開業届をだして独立し、フリーランスのSEやプログラマ、ITエンジニアになって初めての確定申告は、なにから始めたらいいのかわからないもの。どんな書類が必要なのか、どんなものが経費になるのか、そもそもひとりで確定申告できるのか、自分で確定申告をするとどのくらい時間がかかるのか――。そんなふうにして悩むのは、個人事業主ならば誰もが一度は通る道です。でも安心してください、ひとつずつわかりやすく説明いたします!

お知らせ

2022年(令和4年)分の所得税の確定申告の申告期間は、2023年(令和5年)2月16日(木)~3月15日(水)です。最新版の確定申告の変更点は「2023年(2022年分)確定申告の変更点! 個人事業主と副業で注目すべきポイントとは?」を参考にしてみてください!

  • 一般的に経費の少ない職業であるフリーランスプログラマ・SE・ITエンジニアは青色申告がオススメ
  • 在宅型、常駐型など仕事のスタイルが違っても、フリーランスプログラマ・SE・ITエンジニアの収入は決算書上の「売上」となる
  • フリーランスのプログラマ・SE・ITエンジニアの経費となるもの、ならないものについて知ろう

フリーランスのプログラマ・SE・ITエンジニアの報酬・収入と源泉徴収の仕組み

フリーランスのプログラマ・SE・ITエンジニアの所得(儲け)は、簡単に言うと「所得(儲け)=売上 - 経費」で計算します。サラリーマン時代の収入(給与所得)とは違い、フリーランスになってからの報酬や収入は「事業所得」となります。後ほどご説明しますが、青色申告をすることで「純損失の繰越控除」などのメリットも、給与所得ではなく事業所得に対して適用されます。

所得を計算するためには「売上」と「経費」を把握しないといけません。この項では「売上」についてみていきましょう。「経費」については後述します。フリーランスのプログラマ・SE・ITエンジニアの方の「売上」は、その年の1月~12月に仕事をした分の「報酬」です。当月分の報酬が翌月に入金される(例えば12月分の報酬が翌年1月に入金される)場合は、2月~翌1月に入金された金額となります。あくまでも12月に仕事をした分までの売上を入れます。

ですので、12月に着手し、検収が年をまたいで1月以降になる場合には、実際に請求書を出すのが1月以降であっても、12月に仕事をした部分の売上を計算して、会計上は売上を計上する必要があります。

仕事の相手先によっては、年が明けてから「支払調書」が送られてくることがあります。相手先が「あなたに今年、これだけお支払いしましたよ」とお知らせする用紙です。この「支払調書」に書かれている金額は、その年に実際に支払われた金額となりますので、当月分の報酬を翌月に入金される場合は、前年12月~11月までに仕事をした分となり、決算書の「売上」の金額と差が出ます。

サラリーマンだったときは、「支払調書」とは違う「源泉徴収票」というのを、年末にもらっていたと思います。この2つは一見よく似ていますが、「支払調書」はフリーランス、「源泉徴収票」はサラリーマン(雇用関係にあるアルバイトやパートを含む)がもらうものです。そして、サラリーマンがもらう給料からは所得税が引かれているので「源泉徴収票」には「源泉所得税(引かれていた所得税)」が載っています。

一方、「支払調書」にも、所得税があらかじめ引かれている場合にはその金額が「源泉所得税」として載りますが、フリーランスのプログラマ・SE・ITエンジニアの場合は、原則、所得税は引かれていません。

源泉徴収の対象となる報酬・料金等は決まっていて、弁護士、税理士等の士業の仕事や原稿料、デザイン料などいろいろなものがありますが、プログラマやSE・ITエンジニアはその対象となっていないからです(ただし、その仕事内容が源泉徴収の対象となるものであった場合には、引かれていることがあるかもしれません。その場合は、確定申告で計算した税額との差額を納付(場合によっては還付)することになります)。

なお、会社は従業員に「源泉徴収票」を発行する義務がありますが、フリーランスに「支払調書」を発行する義務はありませんので、もらえないこともあります。そして確定申告書に「支払調書」を添付する義務はありません。決算書の「売上」欄に、今年した仕事の分の報酬が載っていればいいのです。

フリーランスのプログラマ・SE・ITエンジニアにとっての青色申告と白色申告のメリット・デメリット

さて、フリーランスの方は「青色申告」か「白色申告」をしますが、どのように違うのでしょうか。

簡単に言うと、青色申告はきちんと帳簿をつける必要がありますが、税金がお得になります。青色申告をするには、その適用を受けたい年の3月15日までに、税務署に「青色申告承認申請書」を提出します。開業した年の場合は、開業から2ヵ月以内に提出します。この提出がない方は白色申告をすることになります。

白色申告は、簡単な帳簿をつければいいですが、税金がお得になることはありません。青色申告のメリットはいくつかありますが、主なものは次の3つです。

(1)65万円か10万円の「青色申告特別控除」

税額は、所得(儲け)×税率で計算されますが、この「所得」を計算するときに、実際の所得から65万円か10万円引けるというもの。実際の所得は大きい方が嬉しいですが、税金の計算をするときには所得は小さくなった方が有利です。

所得によって税率が異なりますが、一番低くても所得税の税率は5%、住民税は一率で10%ですので、最低でも合わせて15%はかかります。課税所得金額(所得 - 所得控除)が100万円の場合、税額(所得税+住民税)は15万円ですが、青色申告特別控除65万円を引くと課税所得金額は35万円となり、税額(所得税+住民税)は5万2,500円となり、9万7,500円も税金が少なくなります。所得が大きければ税率は高くなり、65万円控除のインパクトは大きくなります。

一般的に、フリーランスのプログラマ・SE・ITエンジニアは経費が少ない業種です。この「青色申告特別控除」は経費が65万円多くなるのと同じことなので、青色申告がお勧めです。

(2)赤字を翌年以降の黒字と相殺できる(3年間)

例えば、去年50万円の赤字だったとして、今年は110万円の所得(儲け)が出た場合、青色申告特別控除65万円を引く(メリット(1))と45万円になりますが、そこからさらに去年の赤字分を引いて、「今年の利益=110万円-65万円(特別控除)-50万円(去年の赤字分)=△5万円→0円」になります。(引ききれなかった5万円は、来年の所得から引けます)

本当は110万円も儲かっているのに、青色申告をしていると、特別控除と前年の赤字のおかげで(税金の計算上の)所得は0円。つまり所得税が0円になるのです。

一方、白色申告の場合は、純損失額を翌年以後に繰り越すことができないので、所得110万円のまま、そこに(所得控除は引きますが)税率をかけて税金を納めることになります。

(3)30万円未満の備品が全額経費になる

青色申告の場合、30万円未満の備品を購入した場合、全額その年の経費にできます(年間合計300万円まで)。

白色申告の場合は、10万円以上の備品は経費にならず、資産計上をし、何年かに分けて経費化(減価償却)していきます。

その他にも、青色申告にはいろいろなメリットがあります。

フリーランスのプログラマ・SE・ITエンジニアの報酬・収入の種類

仕事のスタイルが違っても、フリーランスのプログラマ・SE・ITエンジニアの収入は決算書上では「売上」となる

フリーランスのプログラマ・SE・ITエンジニアの場合、仕事のスタイルによって、在宅、リモートワーク型、クライアント常駐型、常駐とリモートの掛け合わせなど、さまざまな仕事のスタイルがあります。いずれの場合であってもフリーランスの収入は決算書上の「売上」となります。

給与でもらう場合は?(月給・日給・時給)

会社と雇用関係がある場合は、その収入は「給与」となります。月給でもらう正社員(サラリーマン)も、日給や時給でもらうアルバイトやパートも「給与」です。

この場合、その年の収入が1ヵ所からの給与しかなければ(年末調整されていれば)確定申告する必要はありませんが、フリーランスとしての収入と給与との両方ある場合には、決算書の「売上」にはフリーランスとしての売上のみを計上し、確定申告書を作成するところで、「事業所得」(フリーランスとしての仕事の所得)と「給与所得」を合算します。

フリーランスのプログラマ・SE・ITエンジニアの経費になるもの、ならないもの

次に、「所得(儲け)=売上 - 経費」の「経費」について見ていきましょう。

内容 経費 理由 科目
事業税   租税公課
所得税、住民税 × 個人の税金のため。
事業用のお金から支払った場合は、「事業主貸」を使用する
 
委託先への宅急便代 仕事で使うため 荷造運賃
自宅兼事務所の電気代 家事按分 水道光熱費
ICカードのチャージ代 チャージ全額は×。家事按分 旅費交通費
仕事先への交通費 交通費精算書をつけて仕事のみとわかる場合
自分の出張手当 × 従業員の出張手当は「旅費交通費」になるが、事業主自身の出張手当は認められない  
携帯電話代 仕事用の携帯がある場合 通信費
プライベートと兼用の場合は家事按分
プロバイダとの契約料   通信費
クラウドのサーバ利用料   通信費
HP作成料、名刺 HP作成料は30万円以上であっても、内容が頻繁に更新されその支出の効果が1年以上に及ばないと考えられるため、原則全額経費。 広告宣伝費
取引先や同業者との食事 親睦を深め、今後の仕事につなげるため 接待交際費
会議費
取引先への手土産 接待交際費
同業者との旅行 接待交際費
家族との食事
友達との飲み会
× 事業とは関係がないため  
一人でカフェで仕事しながらのコーヒー代 カフェで仕事をしていたのなら経費 会議費
一人での食事代 × 仕事をしていなくても食べるため  
仕事で使う文房具、プリンター、インクなど   消耗品費
技術書   消耗品費、
新聞図書費
印刷代 プレゼン用など 消耗品費、
雑費
自宅兼事務所のトイレットペーパー、ゴミ箱など × 仕事をしていなくても使うから  
30万円未満(※)のパソコン、ディスプレイ、タブレット端末 (※)白色申告の場合は10万円未満 消耗品費
30万円以上のパソコン 「工具器具備品」として資産計上し、4年間にわたって経費化 減価償却費
パソコン用ブルーライトカット眼鏡   消耗品費
マイクヘッドセット   消耗品費
30万円未満(※)の開発用ソフトウェア (※)白色申告の場合は10万円未満 消耗品費
30万円以上の開発用ソフトウェア 「ソフトウェア」として資産計上し、5年間にわたって経費化 ソフトウェア償却
自宅兼事務所の家賃 家事按分 地代家賃
レンタルオフィス代   地代家賃
コアスペース代   支払手数料、
地代家賃
必要経費の振込の手数料   支払手数料
子どもの塾代の振込手数料 × 事業とは関係のない振込のため  
スーツ、仕事用バッグ、仕事用メガネ × 仕事以外でも身に着ける可能性があるため。
屋号等が入っていれば〇
 
美容院代 × 事業とは関係がないため  
国民年金、国民健康保険 × 経費にはならないが、「所得控除」で引ける  
病院代(医療費) ×  

売上は迷うことはないのですが、経費は「経費になるのかならないのか」と迷うことが多いと思います。「売上を得るために直接要した費用、業務上の費用」が経費になります。

例えば、今後の仕事獲得のためにプログラミング言語の研修を受けた場合の受講費、ゲームアプリ開発者がゲームアプリを仕事のために購入した場合のアプリ代などは経費になります。

でも「ご飯食べないと仕事できない……」と言っても、仕事してなくてもご飯は食べるので×です。特に、食事や飲み会などの「接待交際費」はチェックされやすい項目です。レシートがあればなんでも経費になるわけではありません。

図中の△(家事按分)については次の項で説明します。

なお、決算書にあらかじめ印刷されている科目以外にも、よく出てくるものがあれば別途科目を作り、空白欄に記入しましょう(図中の「支払手数料」「新聞図書費」など)。

家事按分について

家で仕事もしている、いわゆる「自宅兼事務所」にしている方は、家賃や電気代等を「家事按分」します。全額を経費に入れることはできないけど、事業に使っている割合の分だけ経費にするというものです。この割合は、家賃や水道光熱費などは専有面積や使用時間、携帯電話やICチャージなどは事業用に使う頻度などで割合を決めます。

例えば家賃・水道光熱費の割合は、ほとんど自宅で仕事をしている場合、週5日間、1日10時間ほど、事務所スペースとして部屋の3分の1程度を使用している場合には、

7分の5(日) × 24分の10(時間) × 3分の1(㎡) = 約10%

となり、家賃の10%程度を経費にすることができるでしょう。

自宅兼事務所としつつも、コワーキングスペースでも作業している方の場合、自宅で仕事をする時間が1日にのうち4時間程度であれば(その他条件は上記と同じ場合)、

7分の5(日) × 24分の4(時間) × 3分の1(㎡) = 約4%

となります。

また、週2日クライアント常駐型で働き、週3日自宅で仕事を1日10時間ほどする場合(その他条件は上記と同じ場合)は、

7分の3(日) × 24分の10(時間) × 3分の1(㎡) = 約6%

となります。

いずれにしても、税務署に「どうしてこの割合なのか」と聞かれた場合に、合理的に説明できる数字である必要があります。

なお、持ち家の場合、家賃はありませんが、固定資産税や水道光熱費等を家事按分することはできます。その場合、按分割合が5割を超えると住宅ローン控除を受けることができなくなります。また、5割以下であっても、例えば3割を事業用の経費にしている場合には、住宅ローン控除は7割しか受けられなくなりますので、注意してください。

フリーランスのプログラマ・SE・ITエンジニアの確定申告の実際の流れ

プログラマ・SE・ITエンジニアがフリーランスになったら確定申告が必要

副業をしていないサラリーマンなら、原則として確定申告をする必要はありませんが、フリーランスや個人事業主となったプログラマ・SE・ITエンジニアは、確定申告をしないといけません。

そもそも確定申告ってどんなもの?

サラリーマンのときは、会社が税金を計算し、給料から差し引いてその分を税務署に納税してくれていたので、原則として確定申告をする必要はありませんでした。でも独立してフリーランスのプログラマやSE、ITエンジニアとなった方は、自分で①1年間の所得(儲け)を計算し、そこから②税額を計算して、それを③申告して④納税します。

確定申告の流れは?

① 所得(儲け)を計算する

「所得 = 売上 ― 経費」で計算されます。この計算を行う用紙を「決算書」と言います。後述する青色申告の場合は「青色申告決算書」、白色申告の場合は「収支内訳書」といい、様式や枚数は違いますが、どちらも儲けを計算するためのものです。

ここに、売上と経費を記載し、所得(儲け)を計算します。フリーランスSE・プログラマ・ITエンジニアの所得は「事業所得」になります。

② 税額を計算する

①の決算書の所得をもとに税額を計算します。この用紙を「確定申告書」と言います。確定申告書にはAとBの2種類がありますが、フリーランスの方は「確定申告書B」を使います。

①で計算した「所得」から「所得控除」を差し引いて、そこに税率をかけて税額を計算します(「所得控除」とは、基礎控除や配偶者控除などのほか、支払った国民年金保険料や国民健康保険料、ふるさと納税した場合の寄付金などのこと)。

③ 申告する

①②で作成した「決算書」と「確定申告書」を税務署へ提出します。領収書や請求書は一緒に提出せず、自分で保存しておきます(7年間)。必要な添付書類は一緒に提出します(おもに所得控除を証明するもの)。

提出方法は、税務署へ持参、郵送、電子申告がありますが、申告時期は税務署が大変混雑するため、郵送がお勧めです。その場合、控えと切手を貼った返信用封筒を入れておくと、収受印が押された控えが戻ってきます。簡易書留にしておくと安心です。

なお、持参したからと言って、その場で計算の内容まで確認してもらえるわけではありません。

④ 納税する

③で申告(提出)したら、納税も忘れずにしましょう。期間は申告期間と同じ、2/16~3/15(その日が土日の場合は、次の月曜日)までです。納付書に税額を記入して、金融機関や税務署でお金を払います。なお、③の申告(提出)をする前に納税を先にしても問題はありません。税額が確定したら忘れないうちに納税しておきましょう。

会計ソフトを使うと便利

これまでの①~④の説明で、自分でできる気がしない……と思った方も多いと思います。でも会計ソフトを使えば、「いつ、いくらの売上があったか」「いつ、誰に何のお金をいくら払ったか」などを画面の指示に従って入力するだけで「決算書」も「確定申告書」も正確にできるようになっているので大変便利。

また、最高65万円の青色申告特別控除に必要な複式簿記での帳簿つけや貸借対照表なども「やよいの青色申告 オンライン」を使えば、とてもかんたんにできてしまいます。今は無料なものやリーズナブルなソフトもありますし、エンジニアのみなさんは、ぜひ手書きではなく会計ソフトで作成してみてくださいね。

まとめ

いろいろ書きましたが、迷ったときは、

「売上の計上漏れ」
「個人的な支払が経費になっていないか」
「適正な家事按分」

の3つに気を付ければ大丈夫。早めに準備をして、スムーズに確定申告を完了させましょう。

photo:PIXTA

c_bnr_fltblue_online-2
閉じる
ページの先頭へ