白色申告の控除 〜種類や金額について知りたい!〜

所得税の確定申告には白色申告と青色申告とがあり、白色申告の方が簡単といわれています。簡単な分、税制上のメリットが少ないとも言われていますが、白色申告で控除されるものにはどのようなものがあるのでしょうか。白色申告での控除の種類や金額について、また、どのような帳簿を準備すればいいのか、解説いたします。
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目次
- POINT
-
- 「控除」には「所得控除」と「税額控除」という2つがある
- 税制改正により2020年から基礎控除が38万円から48万円に引き上げに
- 白色申告の事業専従者控除で、事業主の配偶者であれば最大86万円の控除
白色申告の控除の種類や金額について
控除と経費の違いとは?
所得税の計算をしていると、「経費」と「控除」という言葉が出てきます。どちらも所得税の計算をするなかで「差し引かれるもの」という点では同じですが、この2つはまったく異なるものです。
「経費」は所得計算の基礎となるものです。事業所得の場合は収入金額(売上など)を上げるために直接要した費用(商品の仕入れ代金など)と、その年の業務上の費用(店舗・事務所家賃や通信費などの諸経費)の額が経費として認められるものです。
「控除」は経費と違って、各納税者の個人的事情を加味したり、政策的な見地から税額を安くしたりできるように制度として用意されているものです。
所得控除と税額控除の違いとは?
さらに、のちほど所得税の計算についてもご説明いたしますが、「控除」という言葉には「所得控除」と「税額控除」という2つがあります。この2つの違いは単純で、税率を掛ける前なのか後なのかという違いです。
「所得控除」とは、所得税の税率を掛ける前の段階で控除されるもので、例えば誰にでも認められる「基礎控除」などが当てはまります。税率を掛ける前に控除されますから、安くなる税額は控除金額に税率を掛けた金額となります。
「税額控除」とは、所得税の税率を掛けた後の段階で控除されるもので、例えばマイホームを住宅ローンで購入した場合の「住宅ローン控除」などが当てはまります。税率を掛けた後に控除されますから、控除金額と安くなる税額は基本的に同額となります(税額の方が少なくて控除しきれない場合もあります)。
白色申告で適用可能な控除の種類
それでは、実際に利用できる控除を紹介しましょう。
所得控除は、その制度の条件に該当すれば基本的に誰でも利用できるものです。つまり、サラリーマンでも年金生活者でも、青色申告の個人事業主でも同じ条件で利用できます。
控除の名称を挙げてみると、
・雑損控除 ・医療費控除 ・社会保険料控除 ・小規模企業共済等掛金控除 ・生命保険料控除 ・地震保険料控除 ・寄附金控除 ・寡婦・寡夫控除 ・勤労学生控除 ・障害者控除 ・配偶者控除 ・配偶者特別控除 ・扶養控除 ・基礎控除
があります。
それぞれの詳細については、こちらの記事でくわしく解説していますので、参考にしてみてください。
【参考記事】
・あらためて押さえておきたい所得控除一覧
税額控除は、基本的にはその制度の条件に該当すればよいのですが、特に事業などにかかるものについては「青色申告であること」という条件もついたりします。税額控除には沢山の種類がありますが、代表的なものでいうとマイホームを購入したときの住宅ローン控除や、株式等の配当を受けたときの配当控除、事業のための特定の機械装置などを購入したときの特別控除などがあります。
改正される基礎控除
さて、平成30年度の税制改正で、所得控除の基本ともいえる「基礎控除」に改正がありますので説明しておきましょう。
基礎控除は控除そのものに条件はなく、現行では一律に38万円が所得から控除されるものです。今回の改正により2020年から控除額が48万円に引き上げられるとともに、合計所得金額が2,400万円超の人については段階的に控除額がゼロになっていくようになります。なお、この10万円の引き上げ分、給与所得者の給与所得控除や年金所得者の公的年金控除は10万円引き下げられることとなります。
また、青色申告についてもメリットである最大65万円の青色申告特別控除が55万円に引き下げられますが、期限内に電子申告(e-Tax)を行うなどの追加の要件を満たせば65万円とすることができます。
【参考記事】
・【平成30年度税制改正】青色申告特別控除65万円が見直しに!個人事業主は減税になるの?!
白色申告の事業専従者控除で、事業主の配偶者であれば最大86万円の控除が
さきほど紹介した各種控除のほか、白色申告の個人事業主固有のものとして「事業専従者控除」というものがあります。
所得税では個人事業主の生計一親族(同居親族など)に対しての給与は原則として必要経費になりません。ただし、以下の要件のすべてに該当する事業専従者がいる場合には、事業主の配偶者であれば最大86万円、配偶者でなければ専従者一人につき最大50万円を事業所得から控除することができます。
事業専従者の要件
- ① 白色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること
- ② その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること
- ③ その年を通じて6月を超える期間、その白色申告者の営む事業に専ら従事していること
なお、青色申告事業者の場合は届け出により一定の条件を満たす家族について青色事業専従者給与として、経費にすることが認められています。
【参考記事】
・専従者給与とは何か?家族に支払う給料を経費扱いにする方法
白色申告の基礎知識
そもそも白色申告ってどんなもの?
個人事業主などが所得税の確定申告をするにあたって、白色申告と青色申告のどちらを選ぶかという選択をする必要があります。しかしながら、少しばかり選択のニュアンスが違っていて、税務署に申告についての申請を出さずに確定申告をする場合には、全員白色申告になるのです。「確定申告は、最低限このような方法で所得などの計算をしてくださいね」という水準のものが白色申告で、帳簿づけの水準が上がるかわりにさまざまな税制上のメリットが受けられるのが青色申告なのです。白色か青色かを選ぶというよりは、白色からステップアップして青色にするかどうかを選ぶということなのですね。
どんな帳簿を準備すればよい?
簡単といわれる白色申告でも、帳簿づけは必須です。といっても、お金の残高を記録する現金出納帳などの記帳までは求められていません。売上や仕入、諸経費を時系列に並べて勘定科目と金額がわかるように記帳していく「簡易な方法による記帳」で大丈夫です。
この帳簿は、7年間の保存義務があります。
【関連記事】
・個人事業主なら覚えておきたい白色申告に必要な記帳の書き方(法定帳簿)
所得税の計算はどのように行われる?
まずは所得税の計算をどのように行うかを説明しておきましょう。
「所得」とは?
所得税は個人の1年間の「所得」に対してかかる税金です。所得税では「事業所得」、「給与所得」などと収入の種類に応じて10種類の所得区分があり、基本的には「所得金額=収入金額-必要経費」で計算されます。
所得税の計算式
所得税は上記の所得金額に税率をかけるのかというと、そうではありません。所得金額から各種の控除を差し引き、そこに税率をかけて税額を計算します。
所得税=(所得金額-所得控除)×税率-税額控除
なお、所得税の計算は、所得区分に応じて所得を合算して計算する総合課税と、別々に計算する分離課税の方法があります。個人事業主の「事業所得」は総合課税での計算となり、その税率は所得が上がるほど段階的に税率が高くなっていく「超過累進税率」となっています。
所得税の速算表
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
白色申告の控除についてのまとめ
白色申告するメリットは?
白色申告は、帳簿づけとして最低限のレベルのものでよいことから、とにかく簡単であるということが言えます。しかしながら、簡単であることがメリットといえるのかどうかは考えものです。少なくとも事業を行うということは、儲けを出すことが前提です。儲けが出るということは税金を納めるということと対になりますから、税制上でさまざまな特典がある青色申告と比較すると、メリットは薄れてしまいますのでそこだけは覚えておいてください。
青色申告に切り替えるとしたら?
では、どのタイミングから青色申告にするのがよいでしょうか?
ひとつは、帳簿づけのレベルを上げることと、それに見合うメリットを受けられるかどうかが判断のポイントとなるでしょう。例えば、事業で黒字にはなるものの、社会保険料控除や扶養控除などの各種控除で納税額が少なくなるようなケースでは、青色申告の特典による節税額はそこまでないかもしれません。今後の事業規模の拡大に応じて切り替えのタイミングをはかってもよいでしょう。
もちろん、一定水準での帳簿づけは青色・白色の選択にかかわらず、事業の経営状況の把握などに役立つことなどは言うまでもありません。
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photo:Getty Images