これをしたらブラック企業です〜中小企業でも健康診断の受診は義務?注意すべき「安全衛生」について〜

近年「ブラック企業」という言葉がマスコミなどの間でよく取り上げられていますが、どんなことをしたらブラック企業と呼ばれてしまうのでしょうか。記事「要注意!ブラック企業にならないために」で代表的な事項を挙げていましたが、今回は、健康診断の実施や長時間労働者・特定業務従事者への配慮など、企業が準備しておかなければならない安全衛生について説明します。
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目次
- POINT
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- 労働安全衛生法の目的は、2つ
- 従業員への健康診断の実施が義務づけられている
- 長時間労働者には医師との面接指導が必要
労働安全衛生法をご存知ですか?
労働安全衛生法は昭和47年に労働基準法から分離独立して作られた法律で、事業規模を問わず労働者を使用して事業を行う者(事業者)はすべて適用されます。しかし、あまり知られている法律ではないかもしれません。この法律の主な目的は以下の2つです。
- 職場で働く人の安全と健康を確保すること
- 働きやすい職場環境を整備すること
つまり、従業員に毎日ケガ無く元気に気持ちよく働いてもらう職場環境をつくるということです。非常に大切なことだと思いませんか?
この法律は、一般的に「安衛法」と呼ばれています。
健康診断の実施が義務づけられている
安衛法では、会社が従業員の健康状態を把握し、適切な健康管理を行うために健康診断の実施を義務づけています。同時に従業員側にも健康診断を受ける義務があります。忙しいとか面倒だからという理由で健康診断の受診を拒否することは、基本的に許されません。
また、正社員はもちろんのこと、以下の2つの要件を満たすパート・アルバイトに対しても健康診断を実施する義務があります。
- ① 1年以上継続して勤務している(または継続勤務の見込みがある)
- ② 正社員の週所定労働時間の3/4以上働いている
健康診断を受診させる際の注意点
健康診断にはさまざまな種類がありますが、代表的なものを挙げます。
まず、定期健康診断はよく知られていると思います。1年以内ごとに1回実施すれば良いことになっています。
また、特定業務従事者の健康診断というものもあり、こちらは6ヵ月以内ごとに1回の実施が必要です。特定業務と聞くと特別に危険な業務を連想しがちですが、そのなかには深夜業(夜10時~翌朝5時)を含む業務も入っています。飲食店などは該当するところもあるのではないでしょうか。
なお、雇入れ時にも健康診断の実施が必要です。ただし、採用前3ヵ月以内に所定の項目について健康診断がされている場合は、その結果を会社に提出すれば良いことになっています。
健康診断を実施した後に注意すること
健康診断は、実施してそれでおしまいではありません。会社は健康診断の結果に基づいて健康診断個人票を作成し5年間保存しなければなりません。また、健康診断のうち一定のものについては労働基準監督署へ報告する義務があります。定期健康診断の報告の場合は50人以上の事業場が対象です。
そして、もっとも見落とされがちなのが、健康診断の結果に異常の所見があった従業員についての医師や歯科医師の意見聴取です。これは人数に関係なく、50人未満の事業場でも対象になりますので注意が必要です。
健康診断と、医師等の意見聴取についての詳細はこちらです。
【参考】
・厚生労働省:労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう
・宮城産業保健総合支援センター:事業主の皆様へ 健康診断の結果についての医師からの意見聴取
長時間労働者への医師面接の義務づけ
脳・心臓疾患の発症が長時間労働との関連性が強いとされていることから、医師による該当者への面接指導を行うことが会社に義務づけられています。
また、労災認定された自殺事案には長時間労働であったものも多いことから、この面接指導の際には、うつ病等のストレスが関係する精神疾患等の発症を予防するために、メンタルヘルス面にも配慮することが求められています。これは50人未満の事業場でも対象になります。
詳細はこちらです。
【参考】
・厚生労働省:長時間労働者への医師による面接指導制度について
地域産業保健センターの利用
上記で述べました「健康診断で異常の所見があった従業員についての医師等の意見聴取」や「長時間労働者への医師面接」は、50人未満の事業場でも対象になるというお話をしましたが、そのような事業場は、産業医の選任が義務づけられていないために医師の手配を考えなくてはなりません。そんなときは地域産業保健センターを利用することをおすすめします。保健指導などの産業保健サービスを無料で提供しています。
詳細はこちらです。
【参考】
・厚生労働省:こころの耳 地域窓口(地域産業保健センター)
まとめ
少々なじみのない安衛法ですが、実は非常に大切なことを定めていることがおわかりいただけましたでしょうか。今回はその代表格である健康診断やその後の措置についてお伝えしました。この基本部分をおさえることがブラック企業と呼ばれないための第一歩となるでしょう。
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photo:Getty Images