運送業の確定申告 ~経費になるものは何?~

2021/03/31更新

この記事の執筆者宮原 裕一(税理士)

個人事業として運送業を営む場合には、その1年間の所得(儲け)について確定申告をする必要があります。運送業の方が所得の計算をするなかで、業務用以外にも自家用車としても使用している方の場合だと、ガソリン代、高速道路代、駐車場代などをどのように経費として計算するのかは悩みどころですね。

今回は、トラックなどの運送業の確定申告で、特に必要経費について解説していきます。

POINT

  • 運送業の業務を行うために必要であるものが経費となる
  • 事業と生活との両方に使用するものには按分が必要
  • 必要経費になりそうでならないものも多数ある

そもそも必要経費って?

確定申告が近くなると、手当たり次第に領収書をかき集めだすというような光景を見ることがありますが、領収書さえあれば経費になるというものではありません。

所得税のうえでは、売上(収入金額)をあげるためにかかった費用のことを「必要経費」といいます。必要経費という言葉からもわかるように、単に支払ったお金のことではなく、あなたが運送業として事業を営むために必要な支出であることが重要です。

例えば同じ飲食店での領収書であっても、単に食事をするためであれば個人の生活にかかるものなので必要経費ではありません。しかし、提携先や得意先との情報交換・接待のためであれば、会議費や交際費として事業の必要経費となるでしょう。

運送業を営むうえで必要なものとして、業務の要である自動車や交通にかかるものは基本的に必要経費となるでしょう。以下に勘定科目の例を挙げておきます。

車両費
ガソリン代、修理代、整備代、車検代など
旅費交通費
駐車場代、有料道路代など
損害保険料
自動車保険や各種賠償責任保険、自賠責など
租税公課
自動車税・軽自動車税・自動車取得税や重量税など

また、運送に伴って必要になる道具なども必要経費ですね。例えば台車や軍手、養生のための梱包材や毛布、ヘルメット、作業着などが挙げられます。これらは「消耗品費」として経理します。

さらに一般的な必要経費としては、事務所・倉庫家賃、電気代などの光熱費、電話代や郵送料などの通信費、文房具や備品などの消耗品費など、さまざまなものがあります。

ただし、これらのうち1組が10万円以上のものなどは減価償却(その種類ごとに決められた年数で分割して経費化すること)をするものかどうかを検討する必要があります。

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生活にも使用しているものは?

上記のように事業で使用しているもののなかには、自分の生活でも使用しているものがあるでしょう。例えば自宅を事務所の兼用として使用していたり、自家用にも自動車を使用していたりすることがあると思います。

このように事業と生活との両方に関わりのある費用を「家事関連費」といいます。家事関連費は生活の部分が混ざっているので全額を必要経費とすることはできず、事業にかかる部分を自分で計算して、その金額だけを必要経費とします。このことを「家事按分」といいます。

家事按分をするためには他人から客観的に理解してもらえるような計算根拠が必要です。例えば自宅を事務所としても使用している場合には、全体の面積に占める作業場などのスペースの割合で按分するのがわかりやすいでしょう。

ガソリン代などは何リットルが生活分というようなことはわかりづらいので、例えば運転日報などで走行距離を記録していれば、事業に使用しているのがどのくらいの割合かが計算できるでしょう。詳細な記録をつけていないような場合でも、例えば生活に使っている頻度や走行距離がどのくらいかをおおよそで見積もって、事業部分を逆算するというようなことも考えられるでしょう。

必要経費にならないものは?

これまでとは逆に、必要経費になりそうでならないものがあります。具体的にはつぎのようなものが挙げられますので、誤って必要経費に入れてしまわないよう注意しましょう。

所得税や住民税

所得税や住民税(都道府県民税や市町村民税)は必要経費ではありません。個人事業税や消費税(税込経理の場合)は必要経費として計上します。

借入金の元本

トラックの購入のためにローンを組んだ……など事業のために借入をした場合は、利息と併せて返済していきますが、事業の必要経費となるのは利息部分のみで、元本の返済は必要経費になりません。また、借入をしてお金が入ってきたときに収入にならないのは言うまでもありませんね。

交通反則金など

業務中にスピード違反や駐禁などで交通反則金を支払うことになった場合。業務中なので必要経費になりそうですが、罰金や反則金は必要経費として認められません。ただし、レッカー車での移動代や保管料など、業務中に生じたものであれば経費となります。

社会保険料

国保や年金などは事業の必要経費ではありませんが、所得税の計算上で「社会保険料控除」として控除を受けることが出来ます。

生命保険料

自分や家族についての生命保険料は事業の必要経費ではありませんが、所得税の計算上で「生命保険料控除」として一定額の控除を受けることが出来ます。

家族への家賃

同じ財布で暮らしている家族(生計一親族)に対して、持ち家の家賃を支払っても必要経費にはなりません。そして家賃を受け取った家族の収入にもなりません。

家族への給与

驚かれるかもしれませんが、所得税では生計一親族(生計を一にする親族。日常の生活の資を共にする親族のこと)への給与は原則として認められていません。ただし、事業専従者については、白色申告では「事業専従者控除」が受けられ、青色申告では届出等一定の要件に合致すれば「青色事業専従者給与」として必要経費が認められます。

その他、運送業で必要経費にならないもの

先ほど運送業で必要経費になるものとして例示しましたが、これは運送業のために使用したものというのが前提の話です。

例えばプライベートで自動車を利用したときの駐車場代や有料道路代は、運送業のためではないので経費として計上できません。このように個別に判断ができるものは「事業主貸」として経費でないものという記帳をするか、現金払いなどであれば記帳しないというのも方法です。

ガソリン代や自動車税のように、個別に分けられないものは先ほどの家事按分をしてプライベート部分の金額は「事業主貸」として記帳します。

まとめ

いかがでしょうか。帳簿づけに慣れないうちは、何が経費になって何がならないのかの判断に迷うことが多いですが、まずは運送業の業務に必要なものかどうかを考えることから始めてみてはいかがでしょうか。

例えば、運転中に必要な眠気覚ましのガムやドリンク剤、運転の時にしか履かない運転専用のシューズ、運転時の眩しさを軽減させるためのサングラスなど、本当に業務に必要なものであれば経費として計上できます。

年間を通しては同じような支払いが多々出てくるので、一度判断がつけばだんだんと帳簿づけも簡単になってくるでしょう。

photo:PIXTA

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この記事の執筆者宮原 裕一(税理士)

宮原裕一税理士事務所新規タブで開く」代表税理士。弥生認定インストラクター。
弥生会計を20年使い倒し、経理業務を効率化して経営に役立てるノウハウを確立。経営者のサポートメンバーとして会計事務所を営む一方、自身が運営する情報サイト「弥生マイスター」は全国の弥生ユーザーから好評を博している。

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