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ホーム 給与業務・人事・採用 従業員が出産や育児で会社を休むとき、会社はどんな対応をしたらいい?

従業員が出産や育児で会社を休むとき、会社はどんな対応をしたらいい?

『スモビバ!』の記事「妊娠・出産・育児・介護に関する「休業」と必要な手続き」では、妊娠・出産・育児・介護に関する「休業」について基本事項を説明しました。ここでは出産や育児で休む従業員へ、会社がどのように対応したら良いのか、またどのような制度があるのか、より具体的にご説明します。

POINT
  • 出産・育児に関するさまざまなな法令・制度がある
  • 従業員には、制度を周知すること
  • 「くるみんマーク」で企業イメージをアップしよう

出産・育児に関するさまざまな法令・制度

出産・育児に関する法令や制度は実にたくさんありますので、把握しておきましょう。たとえ就業規則に記載していなくても、法令が最優先されます。

こちらの記事(「これをしたらブラック企業です!~妊娠、育児、介護~マタハラ・ケアハラについて知っておこう」)でも触れていますが、今回は主なものを時系列で追っていきます。

妊娠がわかったら

女性従業員の出産予定日から、産休と育休のスケジュールを確認しましょう。労働基準法では産前6週、産後8週の産前産後休業が、育児・介護休業法では原則子が1歳になるまで育児休業を取得できることになっています。

以下のサイトで出産予定日か育児休業開始日を入力すれば、申請時期・休業期間を自動計算で教えてくれます。

【参考】
厚生労働省委託 母性健康管理サイト「女性に優しい職場づくりナビ」:産休・育休はいつから?産前・産後休業、育児休業の自動計算

そして、以下のような法令にもとづく制度がありますので会社として対応しましょう。

簡易業務への転換(労働基準法)※妊娠中

事業主は、妊娠中の女性労働者から請求があった場合は、他の軽易な業務に転換させなければなりません。例えば重い荷物を頻繁に持つ業務や、段差のある場所を行き来する業務などから、デスクワークなどへ転換することを指します。

母性健康管理の措置(男女雇用機会均等法)※妊娠中+産後1年

事業主は、女性労働者が妊産婦のための保健指導または健康診査を受診するために必要な時間を確保することができるようにしなければなりません。また、妊娠中および出産後の女性労働者が健康診査等を受け、医師等から指導を受けた場合は、その女性労働者が指導事項を守ることができるようにするために、勤務時間の変更や勤務の軽減等の措置を講じなければなりません。例えば1日あたり30分~1時間程度の時差出勤や時間短縮、休憩時間の延長、休憩回数の増加などが考えられます。また、通院休暇制度を設ける場合には給与支払いの有無はあらかじめ決めておきましょう。その場合、有給休暇の利用とは別であることを明確にすることも大切です。

【参考記事】
有給休暇を取る理由は基本的になんでもOK~有給休暇制度について~

時間外・休日労働、深夜業の制限(労働基準法)※妊娠中+産後1年

事業主は、妊産婦から請求があった場合は、時間外労働・休日労働、深夜業をさせてはいけません。ただし、その妊産婦が管理監督者である場合は、時間外・休日労働をさせることができます。

【参考記事】
「管理監督者」と「管理職」との違い、「名ばかり管理職」問題とは?

産休に入ったら

出産手当金(健康保険法) ※産休中、給与の支給が無かったとき

健康保険の被保険者は、出産日以前 42 日から出産日の翌日以後56 日までの間(つまり産休を取っている間)、休業1日につき賃金の3分の2相当額が健康保険から支給されます。なお、出産日当日は「産前」の扱いです。

【参考】
全国健康保険協会:出産で会社を休んだとき

社会保険料免除(健康保険法・厚生年金保険法)※産休中

産休中の社会保険料は、必要な手続きをすることにより、労働者負担分・事業主負担分のどちらもが免除されます。この手続きをするのは一般的に会社の人事給与担当者ですので、必ず忘れないようにしましょう。

【参考】
日本年金機構:産前産後休業保険料免除制度

出産したら

出産育児一時金(健康保険法)※出産時(男性従業員も対象)

被保険者およびその被扶養者が出産した時に協会けんぽまたは健康保険組合ヘ申請すると、原則として1児につき原則40万4千円が支給されます。申請は、会社を通さずに出産する医療機関等が直接してくれることもありますので、出産する従業員に確認してもらいましょう。

【参考】
全国健康保険協会:子どもが生まれたとき

育休に入ったら

社会保険料免除(健康保険法・厚生年金保険法)※育休中(男性従業員も対象)

育休中(子が3 歳に達するまで)の社会保険料は、必要な手続きをすることにより、労働者負担分・事業主負担分のどちらもが免除されます。こちらの手続きも一般的に会社の人事給与担当者がすることになっています。

【参考】
日本年金機構:育児休業保険料免除制度

育児休業給付金(雇用保険法)※育休中、給与の支給が無かったとき(男性従業員も対象)

雇用保険の被保険者が1歳(保育園に入れない場合などは1歳6か月または2歳)に満たない子を養育するために育休を取得した場合に、一定の要件を満たすと育児休業給付の支給を受けられます。支給額は、育休を開始してから180 日目までは、休業開始前の賃金の 67%(それ以降は 50%)です。育児休業給付の受給要件については、厚労省の以下のページを参考にしてみてください。

【参考】
厚生労働省:Q&A~育児休業給付~

職場復帰したら

育児時間(労働基準法)※産後1年

生後1年に達しない子を育てる女性から請求があった場合、会社は、1日2回、各々少なくとも30分の育児時間を与えなければなりません。

短時間勤務制度(育児・介護休業法)※子どもが3歳になるまで(男性従業員も対象)

事業主は、3 歳未満の子を養育する一定の労働者について、短時間勤務制度(1 日原則として6 時間)を設けなければなりません。
また、短時間勤務制度のために給与額が下がり、そのことが将来の年金額に影響しないようにするための措置があります。詳細はこちらをご覧ください。

【参考】
日本年金機構:養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置

所定外労働の免除(育児・介護休業法)※子どもが3歳になるまで(男性従業員も対象)

事業主は、3 歳未満の子を養育する一定の労働者から請求があった場合は、所定外労働(残業)をさせてはいけません。

時間外労働・深夜労働の制限(育児・介護休業法)※子どもが小学校に入学するまで(男性従業員も対象)

事業主は、小学校入学前の子を養育する一定の労働者から請求があった場合は、1 カ月 24 時間、1 年 150 時間を超える時間外労働をさせてはいけません。同様に、深夜(午後 10 時から午前 5 時まで)においても労働をさせてはいけません。

子の看護休暇(育児・介護休業法)※子どもが小学校に入学するまで(男性従業員も対象)

小学校入学前の子を養育する労働者は、事業主に申し出ることにより、年次有給休暇とは別に1 年につき子が1 人なら5 日まで、子が2 人以上なら 10 日まで、病気やけがをした子の看護、予防接種及び健康診断のために休暇を取得することができます。なお、この休暇は有給か無給かをあらかじめ決めておきましょう。

ここまでの説明を図にしました。妊娠中~出産~育児期間にわたってさまざまな制度に守られていることがおわかりになるでしょう。

子の看護休暇(育児・介護休業法)※子どもが小学校に入学するまで(男性従業員も対象)

制度を周知する

育児・介護休業法は頻繁に改正を繰り返していますが、直近では平成29年(2017年)10月1日に施行されました。そのなかには妊娠等した労働者に育児休業等の制度を周知する事業主の努力義務が盛り込まれています。まずは会社として制度を把握しておくこと、それを就業規則に規定するなどしておくこと、従業員に周知してその制度を利用できるようにしておくことが大切です。

「くるみんマーク」で企業イメージアップ

次世代育成支援対策推進法に基づき「子育てサポート企業」として厚生労働大臣の認定を受けた証に「くるみんマーク」があります。また、より高い水準の取り組みを行っている企業として認定された証である「プラチナくるみんマーク」があります。これらは企業イメージアップ、従業員の採用・定着などに役立ちます。事業規模や業種などの制限はありません。

「くるみんマーク」で企業イメージアップ

【参考】
厚生労働省:くるみんマーク・プラチナくるみんマークについて

まとめ

出産や育児で休む従業員へ会社がどのように対応したら良いのか、おわかりいただけましたでしょうか。さまざまな法令にもとづく制度がありましたが、「請求があった場合には」とか「必要な手続きをすることにより」というフレーズが何度も出てきたことにお気づきでしょうか。つまり、従業員が請求をしたり、会社が手続きをするなど能動的に行動を起こさないと制度利用ができないものも多いということです。従業員を大切にし、働きやすい職場づくりをするためにも、ぜひ把握しておきましょう。また、制度利用についての説明を従業員にしておくことも大切です。

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photo:Getty Images

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