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よく使う特例制度の適用期限延長と社会情勢の変化にあわせた税制改正のポイント【平成30年度税制改正】

平成30年度(2018年)の税制改正では、社会情勢の変化にあわせ、社会全体のコスト削減や企業の生産性向上を意図した改正点が目を引きました。今の時代に則した法人事業概況説明書の記載内容の改訂や、経済社会のICT化などの進展に伴う大法人の法人税等の電子申告義務化に加え、平成28年度に創設した固定資産税の特例措置にかわる固定資産税の特例が新設された点が注目されています。また、中小企業者等の少額減価償却資産の特例や交際費の損金不算入制などよく使う特例制度の適用期限延長もご紹介します。

POINT
  • 社会情勢の変化に伴い、様式と記載内容を改訂--法人事業概況説明書
  • 中小企業はどうなる!? --大法人の法人税等電子申告の義務化
  • 固定資産税がゼロの可能性も!? --固定資産税の特例

法人事業概況説明書の記載内容が変更に

平成30年(2018年)4月1日以後に終了する事業年度分から、法人事業概況説明書の記載内容に変更があります。

法人事業概況説明書

(出典:国税庁「法人事業概況説明書の様式改訂について」をもとに著者が一部加筆)

 

主なポイントは次のとおりです。

(1)「納税地等」欄等の記載削除と「法人番号」欄の追加

記載内容を簡素化するという観点から、「納税地」(ざっくり言うと本社住所)および「応答者氏名」の記載がなくなり、新たに「法人番号」欄が追加されました。

 

法人番号を失念した場合は、国税庁の「法人番号公表サイト」から検索できます。

(2)自社ホームページアドレスの記載方法の見直し

これまで、電話番号記載欄の下に自社のホームページアドレスを記載する箇所がありましたが、新たに自社ホームページの有無をチェックする欄が追加されました。

個人的な予想ですが、これまでは自社ホームページのある法人でも「ホームページの内容が充実していない」「あえて書く必要性がわからない」などの理由で、記載していない法人が少なからずあったように思います。新しい形式になり、ホームページの有無をチェック形式で回答することで、「有」にチェックした法人のホームページ記載を促す目的があるのかもしれません。

(3)「事業内容」欄の記載内容の詳細化

これまでの事業内容欄の上段に「(カッコ)業」と業態を記載する欄が追加されました。
事業内容をより詳細に記載するように促す変更、といえるかもしれません。

(4)「支店・海外取引状況」欄の見直し

これまでの「支店・海外取引状況」欄を「支店・子会社の状況」「海外取引状況」の2つに区分し、「支店・子会社の状況」では支店・子会社を国内と海外に区分して記載できるようにしました。

記載方法がわかりづらかった点が整理された、といえるでしょう。

(5)「電子計算機の利用状況」欄の見直し

社会情勢の変化等を踏まえて、これまでの「電子計算機の利用状況」欄を「PC利用状況」欄と「販売形態」欄に区分し、それぞれに記載内容が見直されました。

まず、「PC利用状況」欄は、PCの利用の有無に加えて、OSの種類を回答する欄が追加されました。OSはWindows、Mac、Linux、その他にチェックするようになっています。予想ですが、税務調査等の際に調査対象法人が使用しているOSに対応できる調査官を選定する、あるいは調査官育成のためのデータとしても活用できるようにするのかもしれません。

さらに、メールソフト名の記載や、販売形態欄が追加となり、電子商取引の有無だけでなく、その内容(売上、仕入、経費)や販売チャネル(自社HP、他社HP)をチェックする欄が設けられました。

これまで実態がつかみづらかった電子商取引の実態について、税務当局が高い関心を寄せていることが伺えます。

(6)「経理の状況」欄の見直し

「経理の状況」欄の「消費税」の経理処理の方法(税込経理方式、税抜経理方式)は、これまで売上、仕入、固定資産、経費ごとに記載するようになっていましたが、一本化されて一括で記載できるようになりました。

また、「社内監査」欄が追加となり、実施の有無等を記載することになりました。社内監査は、内部・外部を問わず、ガバナンスや経理に関する監査を行なっていれば「有」にチェックすることができます。(たとえばISO内部監査などの厳しい監査だけでなく、法人会の「自主点検チェックシート」などのチェックシートを活用した社内監査でも「有」にチェックできます。)

チェック欄の下に具体的に書く(カッコ)がありますが、この欄については、たとえばどのような監査を行なったのか、どの部門(あるいは外部の者)が行なったのか、といったことを記載すれば問題ありません。書き方がわからない場合は、「有」のみにチェックをして(カッコ)のほうは空欄でもかまいません。

(7)「主要科目」欄等の見直し

主要科目に「特別利益」および「特別損失」欄を追加するなど、昨今の社会経済の情勢の変化や作成の簡便性を考慮し、記載しやすい形に改められました。また、「インターネットバンキング等の利用の有無」欄が廃止されました。

このたびの法人事業概況説明書の様式改訂は、全体として、昨今の社会情勢の変化にあわせて、記載内容が整理された、という印象です。

特に事業内容の詳細な記載を促す変更や社内監査の有無の記載の追加、パソコンの利用状況やホームページ、電子商取引についての詳細な記載が求められるようになりました。行っている事業の詳細や、特に電子商取引などの実態について、より詳しく知りたいという税務当局の意思を感じます。

大規模法人の電子申告義務化で、納税環境の電子化が進む!?

平成30年度の税制改正では、納税手続きの電子化を進める改正が注目されました。

法人税等にかかる申告データを円滑に電子提出できるよう環境整備が進められているなか、平成32年(2020年)4月1日以後に開始する事業年度から、大法人の法人税、地方法人税および消費税の電子申告が義務化されます。

大法人(内国法人のうち、事業年度開始の時において資本金の額等が1億円を超える法人等)の法人税や地方法人税、消費税の確定申告書、中間申告書および修正申告書の提出について、電子申告(e-Tax)による提出が義務付けられ、申告書の添付書類も同様の取り扱いとなります。

同時に、電気通信の故障、災害その他の理由により電子申告ができない場合には、納税地の所轄税務署長の承認を受けて、例外的に書面により提出できる、とされます。ちょっと大雑把に言うと、大法人は電気通信の故障や災害などよほどの理由がない限り(さらに所轄税務署長の承認も必要)、基本的に書面での申告書提出ができなくなるということです。

この改正に付随して、納税環境の電子化促進のための環境整備としてさまざまな取り組みが決定・検討されています。

これまで法人の提出する法人税申告書には代表者および経理責任者等が自署し、自己の印を押さなければならない旨の規定がされていましたが、平成30年(2018年)4月以降、この制度は廃止されました。この結果、e-Taxで法人税申告書を送信する場合、これまで代表者と経理責任者等の電子署名が必要でしたが、平成30年(2018年)4月以降は経理責任者等の電子署名は不要となりました。

また、前述したように法人税および地方法人税の申告手続きについて、別表(明細記載を要する部分のみ)や財務諸表、勘定科目内訳明細書にかかるデータ形式の柔軟化、勘定科目内訳明細書の記載内容の簡素化等をはかることも検討されています。本件は現時点で詳細は決まっていませんが、作成に手間と時間がかかる勘定科目内訳明細書の記載内容の簡素化については、どのように簡素化されるのか、注目が集まっています。

納税環境の電子化については、e-Tax等の送信容量の拡大などの運用上の対応も同時並行で進んでおり、今後も運用環境を整えながら制度を進めていくことが予想されます。

法定調書の書面提出要件が厳しくなった点などから推測すると、法人税等の電子申告義務についても、義務化される法人の範囲が段階的に広がってゆき、これに付随して申告書類の記載内容等にも適宜改正が加えられていくことが考えられます。

将来的には、「中小企業者だから電子申告は関係ない」とはいえなくなる時代が来るかもしれませんね。

中小企業の生産性向上をさらに後押しする、固定資産税の特例措置

中小企業の投資を後押しする大胆な固定資産税の特例の創設も、平成30年度の税制改正で話題を集めています。

「生産性革命集中投資期間中における臨時・異例の措置」というインパクトのある表記のもと、現在、国会で審議中の生産性向上特別措置法の制定を前提に、中小企業の一定の設備投資について、固定資産税の課税標準をゼロ以上1/2以下とする、3年間の時限的な特例措置です。

「中小企業の一定の設備投資」とは、一定の中小企業者(資本金の額等が1億円以下の法人、常時使用する従業員数1,000人以下の個人事業主等で、市町村の導入促進基本計画に適合し、かつ、労働生産性を年平均3%以上向上させるものとして認定を受けた者で、大企業の子会社を除く)の、先端設備等導入計画に記載された一定の機械・装置等で、生産、販売活動等の用に直接供されるもののうち、生産性向上特別措置法の施行の日から2021年3月31日までの間に取得されるものをいいます。

軽減率(ゼロから1/2)は、市町村の条例で定める割合とされているため、地域によっては当該固定資産税がゼロになる可能性もあります。

平成30年度 中小企業・小規模事業者関係 税制改正について

(出典:中小企業庁「平成30年度 中小企業・小規模事業者関係 税制改正について」をもとに、著者一部改訂)

 

なお、これに伴い、平成28年度に創設した現行の特例措置(中小企業等経営強化法に規定する認定経営力向上計画に基づき中小事業者等が取得する一定の機械・装置等に係る固定資産税の課税標準の特例措置)は、期限の終了をもって廃止となり、平成31年(2019年)4月1日に規定が削除されます。

中小企業の業況は回復傾向にあるものの、労働生産性は伸び悩んでおり、大企業との差も拡大傾向にあります。また中小企業が所有している設備のなかには老朽化が進むものもあり、これが生産性向上に向けた足かせとなっている面もあります。

少子高齢化や人手不足、働き方改革への対応等、昨今の事業環境は中小企業にとって舵取りの難しい局面を迎えています。事老朽化が進む設備を生産性の高い設備に一新することは、こうした事業環境への対応を促し、事業者自身の労働生産性の向上にも役立つものとなりそうです。

よく使う特例制度の適用期限延長にも注目

毎年使っている制度の中には、実は期限つきの特例であるものも少なくありません。今回の税制改正で、適用期限が延長された税制のうち、よく使われるものは次のとおりです。

(1)交際費の損金不算入制度

交際費等の額は、原則として、その全額が損金不算入とされていますが、損金不算入額の計算に当たっては、会社の規模等に応じ、一定の措置が設けられています。特に期末の資本金の額等が1億円以下である等の中小法人については、年800万円以下の交際費等は原則として損金算入できる制度を使う法人が多いかと思います。この措置の適用期限が2年延長されました。

(2)中小企業者等の少額減価償却資産の特例

従業員1,000人以下の中小企業者等が、1件30万円未満の減価償却資産(いわゆる「少額減価償却資産」)を取得した場合、当該減価償却資産の合計額300万円を限度として、全額を損金に算入することができる、いわゆる「少額減価償却資産の特例」も、期限付きの特例です。平成30年(2018年)3月31日までであったこの特例の適用期限が、平成32年(2020年)3月31日までの2年間、延長されました。

所得税についても同様の取扱いとなり、中小企業者に該当する個人で青色申告書を提出する方が取得等し、かつ、不動産所得、事業所得または山林所得を生ずべき業務の用に供した減価償却資産で、その取得価額が30万円未満である少額減価償却資産については、その取得価額に相当する金額(当該減価償却資産の合計額300万円が上限)を、その方のその業務の用に供した年分の不動産所得の金額、事業所得の金額または山林所得の金額の計算上、必要経費に算入することができます。

納税環境の電子化の進展や、中小企業の生産性向上のための設備投資を積極的に後押しする大胆な税制など、大きな変化が話題の中心となりがちな税制改正ですが、特例制度の適用期限延長等は、日常の経理処理や社内ルールへの影響が大きいものもあり、目立たないながらも重要なポイントです。

2年後、これらの制度がどのようになるのか、あらためて注目したいですね。

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photo:Getty Images

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