日本政策金融公庫とは? 融資を受けるためのロードマップ

事業を進めていくなかで、金融機関からの借り入れも視野に入ってきます。民間の金融機関からの融資は、中小企業ではリスクが大きいからと応じてもらえないことがあるのも事実。そのような場合を補完するのが日本政策金融公庫です。今回は日本政策金融公庫の融資を受けるまでのロードマップを見ていきます。
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目次
- POINT
-
- 事業再生のための融資など、事業者のニーズに合わせた貸付制度がある
- 申し込みから融資決定まで平均3週間程度
- 基準貸付利率は1%台で推移
事業再生など事業者のニーズに合わせた貸付も行う
「事業拡大するために資金が欲しい」
「設備投資をしたいが資金が足りない」
「運転資金不足が不安。資金繰りを改善したい……」
このようにさまざまな理由で資金が不足する中小企業にとって、大きな支えとなるのが、日本政策金融公庫(以下、日本公庫)です。
日本公庫は100%政府出資の政策金融機関です。中小企業への事業資金融資だけでなく、個人への教育ローンの貸付や、新たに農業経営を開始する人へ無利子で資金の融資などを行っています。2011年には「東日本大震災復興特別貸付」を実施するなど、自然災害や経済環境の変化などにも対応するセーフティネットとしても機能しています。
全国に支店網があり、固定金利での融資や、長期の返済が可能など、民間の金融機関より有利な融資制度が多く、設立間もない法人やこれから事業を始めようとする人であっても、融資を受けやすいのが特徴です。
事業再生分野や地域経済の活性化など、民間金融機関だけでは十分に対応できない政策性の高い分野にも特別貸付を行っています。長期的な資金供給を目的とする中小企業事業への貸し付けは有担保が原則です。
融資対象者は、小売業の場合で資本金5,000万円以下または従業員50人以下など、業種や企業の規模(資本金・従業員数)によって制限されます。
また、融資制度によっても対象者が異なります。
日本政策金融公庫の主な融資制度
融資制度 | 融資限度額 | 融資期間(うち据置期間) | |
---|---|---|---|
新企業育成貸付 | 新事業育成資金 | 6億円 | 設備資金:20年以内(5年以内) 運転資金:7年以内(2年以内) |
女性、若者/シニア起業家支援資金 | 7億2,000万円(うち運転資金2億5,000万円) | 設備資金:20年以内(2年以内) 運転資金:7年以内(2年以内) |
|
企業活力強化貸付 | 企業活力強化資金 | 7億2,000万円(うち運転資金2億5,000万円) | 設備資金:20年以内(2年以内) 運転資金:7年以内(2年以内) |
IT活用促進資金 | 7億2,000万円(うち運転資金2億5,000万円) | 設備資金:20年以内(2年以内) 運転資金:7年以内(2年以内) |
|
その他の融資制度 | 食品貸付 | 7,200万円 | 設備資金:20年以内(2年以内) |
新創業融資制度 | 3,000万円(うち運転資金1,500万円) | 各融資制度に定めるご返済期間以内 |
それぞれの融資制度の融資対象
◎新事業育成資金
新規性、成長性のある事業を始めておおむね7年以内
◎女性、若者/シニア起業家支援資金
女性または35歳未満か55歳以上かつ新たに事業開始または事業開始後おおむね7年以内
◎企業活力強化資金
卸売業、小売業、飲食業またはサービス業で、店舗の新築・増改築や機械設備の導入する場合
◎IT活用促進資金
情報化投資を行う場合
◎食品貸付
食品関係の小売業・製造小売業などで、店舗の新築・増改築、機械設備の導入、フランチャイズチェーンへの加盟などを行う場合
◎新創業融資制度
新たに事業開始または税務申告を2期終えていない場合
申し込みから融資決定まで平均3週間かかる
中小企業の事業者が、この日本公庫から融資を受けたい場合、どのように手続きをしたらよいのでしょうか。融資を受けるまでのロードマップを見ていきましょう。申し込みから融資決定まで平均3週間程度かかります。
1.融資相談
相談できる窓口は主に2つです。
- 日本公庫各支店の中小企業事業窓口(法人登記上の本店所在地を管轄する支店)
- 最寄りの商工会議所での定例相談の場
会社案内、決算書、事業計画書などを持参すると、より具体的な相談ができます。
2.申し込み
必要書類は登記簿謄本、試算表、設備資金見積書など。必要に応じて補足資料を追加提出します。
3.審査
事業内容や資金用途についての質問を受けたり、公庫職員による店舗や会社への訪問調査を受ける場合があります。
4.融資決定
融資決定後、貸付契約のほか、抵当権設定などの諸手続きが必要であれば行います。完了すると送金されます。
5.返済
取引金融機関の口座から約定日ごとに返済金が、口座振替されます。設備資金として利用する場合は、適正に取得したかどうか金額や時期などの報告が必要です。
基準貸付利率の多くは1%台で推移
返済にかかる利率は、返済期間や担保の有無によって異なります。
2018年4月11日現在、中小企業事業の主要貸付利率は、貸付期間が13年未満の場合、基準利率が1.16%、13年超~14年未満で1.19%、19年超20年未満で1.45%などとなっています。特別金利が適用されれば貸付利率が1%未満となることもあり、民間の金融機関よりもかなりお得な利率となっています。
適用利率は担保の有無を含む信用リスクなどに応じて所定の利率が適用され、遅延損害金の利率は年8.9%(2018年4月1日から2019年3月31日までの貸付け)となるので要注意です。
融資の後も、経営課題や財務についてのきめ細かなアドバイスを受けられ、ビジネスマッチングの情報も増えるなどチャンスが拡がります。検討している方は、融資の審査を突破し、収益の改善や事業拡大のチャンスをつかんでいただきたいです。
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