「管理監督者」と「管理職」との違い、「名ばかり管理職」問題とは?

会社員のAさんが「今度、係長から課長になるんだけど、残業手当がつかなくなるんだよ。手取りがかなり減っちゃうよ」と嘆いています。皆様のまわりでもそんな話を聞いたことはありませんか?果たしてそれは問題がないのでしょうか。今回は管理監督者と管理職の違い、また昨今問題視されている「名ばかり管理職」について解説します。
[おすすめ]「弥生の給与計算ソフト」なら目的や業務別に選べる!まずは無料体験
2022年(令和4年)分の所得税の確定申告の申告期間は、2023年(令和5年)2月16日(木)~3月15日(水)です。最新版の確定申告の変更点は「2023年(2022年分)確定申告の変更点! 個人事業主と副業で注目すべきポイントとは?」を参考にしてみてください!
目次
法で定められた労働時間・休日・休憩
会社員のAさんが「今度、係長から課長になるんだけど、残業手当がつかなくなるんだよ。手取りがかなり減っちゃうよ」と嘆いています。果たしてそれは問題がないのでしょうか。
労働基準法では労働時間・休日・休憩について以下のように定めています。
- 労働時間……原則として1日8時間以内、1週間40時間以内
- 休日……毎週少なくとも1回又は4週間を通じて4日以上
- 休憩……労働時間が6時間を超えて8時間以下の場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上
【参考記事】
・あらためて知っておきたい「残業手当」の基礎知識
・これをしたらブラック企業です! 振替休日と代休の違いは? 〜休日・休憩編〜
このように、労働時間・休日・休憩の大原則があるのですが、これに適用されないことになっている労働者がいます。そのなかのひとつとして挙げられるのが管理監督者です。つまり会社は管理監督者が時間外労働をしても残業手当を支払わず、休日出勤をしても休日出勤手当を支払わず、休憩を取らせなくて良いことになっています。
管理職はみんな管理監督者?
では、管理監督者とはどんな人でしょうか。管理職とは違うのでしょうか。労働基準法で定める管理監督者とは、以下のすべてに当てはまる人です。
① 経営者と一体的な立場で仕事をしている……経営者から労務管理に関する一定の権限を委ねられている
② 出社、退社や勤務時間について厳格な制限を受けていない……必ず〇時までに出社する、など決められていない
③ その地位にふさわしい待遇がなされている……給与や賞与などが一般の社員よりも優遇されている
ですから、単なる役職の名称(肩書き)で判断されるものではないのです。冒頭のAさんのケースは課長という「管理職」であっても「管理監督者」ではないと思われます。もし本当の管理監督者ならば残業手当がつかなくなっても役職手当などが支給され、一般社員時代よりも給与額が下がることはないはずです。
このように、上記の①②③に該当しないにもかかわらず会社独自の判断で管理監督者扱いをされている管理職は「名ばかり管理職」と呼ばれ、問題視されています。管理監督者とするには上記の①②③に該当する職権や処遇が必要です。
管理監督者、ここに注意
先ほど述べました要件に該当していたとしても、管理監督者は労働時間・休日・休憩の大原則に適用されないことから、以下の点について間違えやすいので注意しましょう。
- 深夜労働に関しては適用される……深夜労働(22時~朝5時)の割増賃金は支払う必要があります
- 有給休暇も適用される……有給休暇を他の社員と同様に付与する必要があります
- 労働時間の管理をする必要がある……タイムカードを押さなくてよいわけではありません。長時間労働による健康障害を防止する義務が会社にあります
- サブロク協定の労働者側に入る……サブロク協定締結の際には労働者側となります。ただし、記載する対象人数には入れません。また、過半数代表者を選ぶ側となりますが過半数代表者になることはできません
【参考記事】
・ちゃんと把握していますか? 従業員の労働時間
・これをしたらブラック企業です!サブロク協定とは?〜労働時間編〜
まとめ
管理職と管理監督者はイコールではないことはおわかりいただけたでしょうか。肩書きではなく、その実態で管理監督者かどうかを判断するということが理解されていないために「名ばかり管理職問題」は現在でも多く発生しています。正しい理解と適切な運用をすることが必要です。
【関連記事】
・要注意! ブラック企業にならないために
photo:Getty Images